原油の安定供給が増えることになり、原油価格はどうなるとか、制裁参加の為遠のいていた日本とイランの関係が復活可能となり、原油開発の再開や、輸出や投資も増やせるといった論調が多いのですが、中国経済が低迷することを軸にして論理展開し、イランからの輸入増に警告を発している記事がありました。
7月14日、イランの核問題が最終合意に達した。合意によりイランは今後10年以上ウラン濃縮などの核開発活動が制限されるが、その見返りとして、数十億ドルに上る海外資産の凍結と原油輸出に関する制裁が解除される。
<中略>
■イランの原油輸出再開で割を食うロシア
ロシアの石油業界から見ると、イランの制裁解除は歓迎すべき出来事とは言えない。
7月1日公表のロイター調査によれば、制裁が解除されれば、イランは年内に日量25~50万バレルの原油増産が可能で、2016年半ばまでに最大75万バレル増産できる見通しだ。
これにより割を食うのはロシアのようである。2012年以降、原油代金のドル決済などが禁止されたため、EU諸国はイランからの原油輸入を停止し、アジア諸国はイランからの原油輸入量を大幅に減少させた(イランの原油生産量は2011年の日量360万バレルから260万バレルに落ち込んだ)。その穴を埋めたのが、イランの主要油種と成分が類似しているロシア産原油だった。
貿易に関するデーターベースであるトレード・マップが集計したデータによれば、アジアと欧州へのイラン産原油がロシア産原油に振り替わった分は日量平均で42万バレルである。
イラン国営石油会社は、「アジア市場を原油輸出の最優先市場と見なしているが、欧州への輸出能力も最大化し、制裁前の市場シェアに戻すつもりだ」としている。2014年の原油生産量が日量1085万バレルを超えて今年に入っても史上最高レベルの原油生産を続けるロシアにとっては、決して小さくない「代償」だろう。
<中略>
■原油価格を左右するのはやはり中国?
市場の関心は米国をはじめとする世界経済の今後の動向に移り始めている。7月8日付ブルームバーグは、「原油相場の下落により米国とアジアの需要が『驚異的』に拡大し、今年と来年にかけて原油価格を押し上げる」というヘッジファンド関係者の見通しを紹介している。
また、米国務省でエネルギー政策の責任者を務めたパスカル氏は、「将来の原油価格を左右する最大の要因はやはり中国だ」と断言する。
しかし7月13日、中国の6月の原油輸入量が日量約718万バレル、前年比で27%増となったことが明らかになったが、原油市場は全く反応しなかった。中国の原油輸入量が再び米国と首位を争う規模となり、原油需要が依然堅調であることが示されたにもかかわらず、である。
やはり中国経済の将来性に対する見方は、これまでになく悲観的になっているようだ。最近の中国は、景気減速が近隣諸国の景気の足を引っ張っているとして「お荷物」的な扱いをされ、「世界的な金融緩和の波に乗ったツケを払う時が迫りつつある」との見方も強まっている。
7月9日、IMFは2015年の経済見通しを発表し、記者会見でプランシャール調査局長は「中国株式市場のバブルは崩壊した」と述べた。7月15日に発表された第2四半期の経済成長率は市場予想を上回る7%増だったが、自動車市場の成長は3%にとどまるなど、中国は今や低成長時代に移行しつつある。
中国メデイアによれば、「株価が急落するとともに不動産価格も下落した」という。昨年からの株価高騰で利益を挙げた投資家が購入した高級住宅が、株価急落によって相場より安い価格で売りに出される現象が頻発している。不動産市場が株価急落の「逃避場」として機能していない。この現象は日本が90年代以降に経験した「悪夢」そのものである。
中国政府は実体経済への悪影響を防ぐため、株式の購入などを含む1兆元超の株価てこ入れ対策を講じている(ちなみにリーマン・ショック後の中国の経済対策は4兆元だった)。しかし、7月13日付ウォール・ストリート・ジャーナルは「中国株式市場の危機がもたらす政治的・経済的影響の長期化は避けられず、石油需要の見通しにも悪影響を与える」と指摘している。今回の中国の株式バブル崩壊が、米国をはじめとする世界の債券バブル崩壊の引き金になっても不思議ではない(7月16日付ブルームバーグは「『中国の株価急落はサブプライムローン危機より影響が大きい恐れがある』と資産家らが警告を発している」と報じている)。
■バブル崩壊の中国に要注意
最後にイランの核合意が日本に与える影響だが、「イランが米国と衝突してホルムズ海峡を封鎖する」という地政学的リスクが低くなり、日本の原油の安定調達にとっては追い風となるとの見方が一般的である。
しかし、7月14日付ウォール・ストリート・ジャーナルは「中国没落のリスク、不測の事態に備えよ」と警鐘を鳴らしている。日本が輸入する中東産原油の100%が中国が軍事施設を拡張しつつある南シナ海を通過する。バブルが崩壊すれば国内での非難をかわすため共産党政権が「狂信的対外強硬主義」という禁じ手を使う可能性がある。そうなれば南シナ海の地政学的リスクはホルムズ海峡と比べようがないほど高まり、日本のエネルギー安全保障は危機にさらされることになる。
今回のイラン核合意により、原油輸入の中東依存度を高まれば、日本が今後支払うことになる「代償」は、大きくなることはあっても小さくなることはないのではないだろうか。
先ず注意しなければならないのは、今回の合意は、イランの核開発の一定期間の中断の話であって、永遠に放棄されたものではないと言う事です。つまり、核開発を再開する可能性は残されていて、再び制裁体制が採られる可能性はあると言う事です。
核の廃絶でノーベル平和賞を貰ったオバマ大統領が、レジェンドを急いだのでしょうか。今回の合意が、米議会で承認されるかは未明です。
イランからの輸入制裁で購入をロシア産に切り替えられていたものが、イランからの購入にもどされれば、ロシアの輸出への影響が出ます。
原油価格下落で、採算コスト割れが懸念されているシェールガスにも逆風です。
しかし、記事では、原油価格の動向は、大消費国の中国の景気動向が左右するというのです。しかも、直近では、中国の需要が増えているデータが公表されているのに、市場での価格は反応していないと。それは、目先を観るのではなく、長期のトレンドで、中国経済の成長の鈍化を見越しているからだと。
中国の需要が微増しても、イランの供給余力が増えてくるので、相殺されて市場価格で反応が観えなかったとは、この記事では解釈されていないのです。
それだけ、中国経済の成長率低迷を深刻に捉えているのですね。
中国経済が低迷すれば、共産党政権への非難が強まる。株価のバブルが官制バブルであったことは明らかになってきています。官制のあらゆる手段を動員した買い支え(含、売買停止や売りの禁止)で、小康状態を保っている様に見えますが、買い支えがいつまで続けられるのか、売買停止は何時まで続けるのか。それらが停止される時が来たらどうなるのか、懸念は払しょくされていません。
政府への不満の矛先転嫁の常套手段は、江沢民が始めた、反日キャンペーンです。
既に、低成長に備え「ニューノーマル(新常態)」を掲げている習近平は、戦後70年を大々的にとりあげて、反日キャンペーンを始めています。
70年のお題目がなくなった後、虎退治の虎を退治し尽くしてしまった後、習近平はどうやって人民の不満の矛先を転嫁するのか。
南シナ海の制海権、制空権を抑える砂の長城は、日本のシーレーンの安全保障の危機です。
ホルムズ海峡の機雷は、今回の合意話が無くても、実現の可能性は限りなくゼロに近い想定話です。南シナ海、東シナ海の危険度は、比べ物にならない確率のたかさです。なので、例示して具体的に話せないのです。この危機を、話題にしないメディアや野党は、安保法制で戦争が始まると、純朴な国民を煽っています。
この危機を認識し、抑止力を高めるのが安保法制と日米の連携強化です。
中国経済の低迷対策=「ニューノーマル(新常態)」の具体的政策に、外需創設と取り込み(一帯一路構想)、その資金集めのAIIB設立を実行したり、株バブルを創ったりしている習近平政権。アイデアの創出と実行力は、薬のネット販売がアベノミクスの第三の矢と言っていたどこかの政府に比べると賞賛できますが、実現には高いハードルがあります。
共産党独裁体制を維持するために、人民をどう洗脳していくのか、習近平の政策への警戒はますます強める必要がありますね。
# 冒頭の画像は、イラン核問題の解決を目指した欧米など6カ国とイランの最終協議
この花の名前は、ヤブレガサ
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