晴れ春の日差しは燦燦と降り注いでいた杉の花粉が盛んに飛ぶそんな日である・・・。
目がショボショボとし、鼻がムズムズとして詰まり、花粉症の症状か・・・。春が来るのは嬉しいが杉の花粉は勘弁して欲しいものだが・・・。鼻を喉を洗いに行かねばならないか・・・。
九太郎は外へ出たがって困る・・・。出て色々と恐怖感を味わったことであろうが・・・。1時間ほど外に遊びに出たが・・・。癖になるのか・・・遊び癖・・・。
九太郎がいく・・・1
母の乳にしがみ付き温温と育っていたところお嬢さんに籠に入れられ今の主のところへ連れて行かれた。主を見たとき目を丸くして驚いた。頭の髪はもう何年も散髪屋のドアを開けたことがなく、髭は白く頬を覆い、目はトラのように大きく、鼻は小鼻の張った団子鼻、体躯は背丈の割には横に大きく・・・。そんな主と対面して俺は尻尾を立てて臨戦態勢に入った。
「二ヤーンゴロゴロ」と主は猫語で言った。
発音に少し訛りがあるが良く来たなと言っているらしい。目が穏やかに笑っている。主は何匹か猫を飼った経験があるらし。その猫に訛りがあったのだろうと思った。猫語に堪能であるようだが日本人が英語を喋るようにたどたどしい。
「二ヤーン」と、俺は小さく鳴き出方を見た。そして、科を作って見上げてやった。これは人間の心揺さぶる動作である。
「ニヤンニヤン」と主が鳴いた。
今日からお前の飼い主は我輩であると言っている。分かったと言う証拠に尻尾を三回振ってやった。
「オスなの、盛りがついたら大変だわ・・・去勢をしなくては」
主の隣でおとなしそうにしていたおばさんがきつい言葉を発した。
俺は腰を引いて飛び掛る体制に入った。
「ニャニャーン」
主が心配するなと言った。
「二ヤーン二ヤーン」と、俺は鳴いて態勢を解いた。
出会いはこんな具合だったが・・・。この主の奇行気まぐれにはほとほと手を焼く羽目になるのだが・・・。出会いの縁に戸惑う日々を経験するのだが・・・。
まずはご挨拶で・・・。
「ニヤヤヤン・・・」
菊池寛は物書きは日ごろの生活が物を書かすという様なことを言ったが、詰まり文学的な生活をしろということか・・・。本を読み、人の心を研究し、人間の喜怒哀楽をマスターし、野辺に咲く一輪の花に心動かせ、行く雲に儚さを感じ、川の流れに定めの森羅万象を感じ、愛されるより愛することを望み、貧しくても人を助け、奢らず、卑下せず、政治を常に牽制し、万民の幸せを祈り・・・。
てな事に精進して良いものを書けということか・・・。
今日は菊池寛を・・・。
"菊池寛を読む"
作家として『父帰る』や『真珠夫人』など数々の話題作をものしながらも、「生活第一、芸術第二」をモットーに、文芸春秋社の経営にその辣腕をふるい、ジャーナリズム王とも文壇の大御所とも称され、自らが築いた王国に君臨した男、菊池寛。代表作にこめられた彼の文化戦略とは何か。菊池寛と彼がつくりあげた時代とを多角的に読み解く斬新な試み。
【目次】
第1講 差異の劇場―「藤十郎の恋」(四つのテクスト/小説と戯曲のあいだ ほか)/第2講 仇討の考現学―「恩讐の彼方に」「下郎元右衛門」(“仇討もの”というジャンル/井原西鶴の系譜 ほか)/第3講 共同体の資本論―「父帰る」「入れ札」「身投げ救助業」(境界性と相同性/無名の個人 ほか)/第4講 貞操の市場―「真珠夫人」(記憶の偏差/速度と遅延 ほか)/第5講 ジャーナリズム王の受難―事変と武士道(受難とはなにか/皇国史観と武士道 ほか)
人間・菊池寛
ジャーナリズムの仕掛人たち、黒岩涙香から小田久郎まで101人―総合雑誌、文芸誌、女性誌から人文書、科学書、リトルマガジンにいたるまで、明治・大正・昭和、一世紀余の名編集者の生涯と業績を集成。
【目次】
黒岩涙香/徳富蘇峰/宮武外骨/内田魯庵/大橋乙羽/堺利彦/杉村楚人冠/羽仁もと子/長谷川天渓/佐藤義亮/下中弥三郎/野間清治/岩波茂雄/滝田樗陰/鈴木三重吉/中根駒十郎/山本実彦/平塚らいてう/中村武羅夫/石川武美/嶋中雄作/菊池寛/白井喬二/森下雨村/長谷川巳之吉/木佐木勝/木村毅/江戸川乱歩/岡田貞三郎/加藤謙一/林達夫/堀内敬三/吉野源三郎/大宅壮一/楢崎勤/神吉晴夫/小林秀雄/横溝正史/春山行夫/上林暁/雨宮庸蔵/美作太郎/永井龍男/臼井吉見/和田芳恵/山本健吉/北原武夫/淀川長治/野田宇太郎/池島信平/保田与重郎/名取洋之助/木村徳三/花森安治/中原淳一/戸塚文子/扇谷正造/西谷能雄/清水達夫/青山虎之助/斎藤十一/上林吾郎/山本夏彦/巖谷大四/今井田勲/角川源義/伊達得夫/黒崎勇/三枝佐枝子/長井勝一/徳間康快/大久保房男/坂本一亀/谷川健一/野平健一/鶴見俊輔/松本道子/小尾俊人/中井英夫/嶋中鵬二/川島勝/田村義也/綱淵謙錠/中島和夫/菅原国隆/宮脇俊三/小島千加子/石井恭二/田中健五/山岸章二/甘糟章/伊吹和子/小野二郎/福島正実/岡部昭彦/木滑良久/粕谷一希/澤地久枝/半藤一利/近藤信行/小田久郎
昨日は春一番が吹いたのか
春が来たのに寒さ去らずか
2006/03/07夕方は張るといえども寒さ広がる・・・。