「やりやがったな」と、真人は顔を上げると、どこまでも続く空を見ながら、独り言のように言った。「つまらない事をしてくれたもんだぜ。天使にとっちゃあ俺ごとき、手の平の上で、遊んでいるようなもんなんだろうな」
――くそっ。
「“家族”だと、“友達”だ、だと」と、一人で話す真人を、マーガレットは、奇妙な顔をして見ていた。
「悪いのですけれど」と、マーガレットは、声をひそめて言った。「誰と、お話しをしているんですの」
「欲しければ取り返してみろ。そういうことなんだろ」と、真人は、ため息交じりに言った。「めずらしく弱気になった俺が、あさはかだったぜ。そうだよな。天使に頼みごとをするなんて、それは俺らしくない」――待ってろよ。必ず、奪い返してやるからな。
真人はマーガレットを見ると、歯を食いしばりながら、けれど、うれしそうな声で言った。
「ありがとう。大切にするよ」――で、おばちゃんに、言っておいてほしいんだけど。と、真人は、思い出したように言った。
「? なんですの」と、マーガレットは、真人の顔をのぞきこんで言った。
「あっかんべぇ」
と、真人は、しかめっ面をして、べろりと赤い舌を出すと、くるり踵を返して、見えない壁の向こうに、姿を消した。
「なんなんですの。まったく」と、ドキリとして胸に手をあてたマーガレットは、けれどどこかうれしそうに、唇をとがらせた。
――ここではないどこか。今ではない、また、いつかのできごと。だった。
「前」
「次」
――くそっ。
「“家族”だと、“友達”だ、だと」と、一人で話す真人を、マーガレットは、奇妙な顔をして見ていた。
「悪いのですけれど」と、マーガレットは、声をひそめて言った。「誰と、お話しをしているんですの」
「欲しければ取り返してみろ。そういうことなんだろ」と、真人は、ため息交じりに言った。「めずらしく弱気になった俺が、あさはかだったぜ。そうだよな。天使に頼みごとをするなんて、それは俺らしくない」――待ってろよ。必ず、奪い返してやるからな。
真人はマーガレットを見ると、歯を食いしばりながら、けれど、うれしそうな声で言った。
「ありがとう。大切にするよ」――で、おばちゃんに、言っておいてほしいんだけど。と、真人は、思い出したように言った。
「? なんですの」と、マーガレットは、真人の顔をのぞきこんで言った。
「あっかんべぇ」
と、真人は、しかめっ面をして、べろりと赤い舌を出すと、くるり踵を返して、見えない壁の向こうに、姿を消した。
「なんなんですの。まったく」と、ドキリとして胸に手をあてたマーガレットは、けれどどこかうれしそうに、唇をとがらせた。
――ここではないどこか。今ではない、また、いつかのできごと。だった。
「前」
「次」