くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

大魔人(64)

2021-08-12 19:19:10 | 「大魔人」
「これか……。たいしたことはないさ」と、真人は言った。「だけど、利き手じゃない左腕だけじゃ不便で、得意の工作も進みやしないんだ」
「――」と、多田はうなずいた。
「手伝ってくれよ」と、真人は言った。「気心の知れたおまえがいてくれれば、仕事もしやすい」
「さっきの口笛も、もしかして、あんただったのか」と、多田が、思い出したように言った。「見ていたこっちまで体の自由が効かなくなったのに、口笛の音を聞いたとたん、自由が戻ったんだ――」
「まぁ、話せば長いが、あいつには借りがあるからな」と、真人は、遠くを見るように言った。「――あのヒゲがもごもご言ってたのは、飼い犬を躾ける言葉さ。知らない人間が耳にすれば、音の持つ迫力に訳もわからず体が硬直するが、犬を躾ける言葉だってわかる音を被せてやれば、意味がわからなくても、体はすぐに反応するのさ」
「それを、あの外国人は――」
「知っちゃいないだろうな」と、真人は言った。「人が硬直する現象だけをありがたがって、意味を理解して使ってるわけじゃないのさ。だいたいあの言葉は、もう数千年も前に消えちまった言語だからな。俺以外、聞いた事があるやつなんて、いるわけがない。調子に乗って使ってると、そのうち、取り返しのつかない目にあうはずだぜ」
「――今度は、なにをする気なんだ?」と、多田は不安そうに言った。
「それは工房に戻ってからだ」と、真人は言うと、左手を差し出した。「さぁ、俺の石を返してくれ」
 と、多田は急に顔を伏せて、首を振った。
「はぁ?」と、真人が大きな声を出した。「今、おまえが使ってただろ」
「――すまん」と、多田は頭を下げると、持っていた指輪をおそるおそる前に出した。
「――」と、真人は無言のまま、多田が差し出した指輪を見た。

「石は? どこにやった」

 と、言った真人の目の前にある指輪には、宝石が乗っていなかった。
「おいおい……」と、真人は、あきれたように言った。「石に発信機はつけなかったがよ。まさか、はずしちまうとは思わなかったぜ」
「万が一のことを考えてだよ」と、多田が言った。「投影機と石を分けておけば、武器として使うときに、なくす心配はないだろ」
「冗談だろ」と、真人があきれたように言った。「さっき、別人に自分の姿を投影したのは見ていたがよ。はなっから土台だけの指輪じゃ、なくすもなにもないだろうが」
「いや、それは――」と、多田は、ホームズとかいう名の泥棒から、盗難予告があり、なんとか守ろうとしたが、本物の替わりに填めていたイミテーションの宝石を、まんまと盗まれてしまったことを話した。
「――じゃあ、そのなんとかいう泥棒は、偽物を盗んでいったんだな」と、真人は念を押すように言った。
「そうだ」と、多田は言った。「本物の石は、別の指輪に填めて、ほかの男に渡してある」
「男? どんなやつだ」と、真人は言った。
「取るに足らない探偵だよ」と、多田は言った。「だが、そんなつまらない男だからこそ、あの石を持っているだなんて、誰も思いやしないはずだ」
「――」と、真人は気難しい表情を浮かべたが、すぐに顔を上げて言った。「さぁ、行くぞ」
 真人が言うと、どこからか車のエンジンが聞こえ、古い型のジャガーが、タイヤを鳴らしながらやって来た。
「――この、車は」と、多田は言った。
「友達の車だ」と、真人は言った。「――じゃない、友達になった車だ。さぁ、乗ってくれ。工房に向かうぞ」

 ブロロロロンロロン……

 二人を乗せた車は、明るくなった空を背に、どこかへ走り去っていった。



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よもよも

2021-08-12 06:19:07 | Weblog
はてさて。

寒い。。

約90年ぶりに寒くなったとかって、

予報で言ってたねXXX

あれもこれも温暖化のせいなのかい??

予報も、もう異常だ、とかなんて言わなくなったような気がする。

昔の異常は現在の日常だって事なんかね??

それにしても、イギリスのお医者さんが、

ワクチンなんていくら接種しても、デルタ型は感染するから、

感染広げる歯止めにならない、みたいな事言ってたらしいけど

もう目の前真っ暗じゃないのさ。

どうなんだろうね、この先??

うう、それにしても寒いわ。ストーブ点けるかな・・・。
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