くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

大魔人(57)

2021-08-05 19:06:47 | 「大魔人」
 と、駅の入口が、遠目にも見える頃になって、おやっ――と、気がついた。
 いつからか、自分のものとは違う足音が、わずかに遅れて聞こえながら、進む方向について来ていた。
 思わず、アマガエルは、歩みを遅くした。
 やはり、あとをつけられているのか、距離が離れているとはいえ、後ろから聞こえてくる足音も、アマガエルの歩調に合わせて、ゆっくりとしたリズムに変わった。

 ――誰だろう。

 と、アマガエルは、歩きながら考えていた。
 教団なら、先に店を出たニンジンのあとを、追いかけるんじゃないだろうか。放火事件を調べている警察なら、警察署に出向いていった時に追い返さず、事情聴取をすればよかった。
「こりゃ、“灯台もと暗し”って、やつですかね」と、アマガエルは、自分自身に苦笑した。
 ニンジンのことばかり気にしていたが、一連の事件に関わっているのは、自分も同じだった。為空間から帰ってきた子供達と、最後まで一緒だったのは、ニンジンと、アマガエルの二人だった。
 真人の姿は見ていないが、戻って来た恵果は、確かに寺に泊めてやった。
 朝になって、どこかに行方をくらませてしまった恵果だが、直前まで一緒にいたアマガエルが、悪魔をかくまっている。と勘違いをされてつけ狙われても、おかしくはなかった。
 後ろからつけてくる足音を気にしつつ、アマガエルは、地下に向かう通路を進んで行った。
 ――プラットフォームで、車両の到着を知らせるアナウンスが流れると、なにげないのを装って振り返り、あとをつけてきている者の姿を探した。
 しかし、列に並ぶ人々に紛れて、怪しいと思われる者の姿は、まるで見つけられなかった。
 アマガエルは、小刻みに列車に揺られながら、目的の駅に到着すると、つかまっていた吊革を離し、降車する乗客の中に混じって、列車を降りた。
 駅の外に出てくると、寒さは相変わらずで、思わず身震いが出た。駅の階段を上り下りする人の足音で、あとをつけてくる者の足音は、かき消されていた。
 まっすぐ、寺に帰ろうとは、思っていなかった。どこかで、正体を暴いてやるつもりだった。
 と、遅い時間にはらしくない、小さな女の子の姿があった。
 ジャンパーを着ていても肌寒い中、半袖の白いワンピースを着た女の子は、少し離れた交差点を、青信号の点灯に合わせて、駆け足で横切っていった。
「――ケイコちゃん?」と、アマガエルは、思わず声を出していた。
 道路を照らす街灯の明かりだけでは、暗くてよく見えなかったが、雰囲気は、恵果にそっくりだった。
「ちょっと待って」と、アマガエルは走り出していた。「ちょっと、聞きたいことがあるんだ」
 どこをどう走ったのか、なかなか距離が縮まらなかった。ちらほらと、見え隠れする小さな姿を、アマガエルは夢中で追いかけていた。
 息が切れるほど走ったにもかかわらず、小さな女の子の姿は、とうとう見えなくなってしまった。立ったまま、膝についていた手を離して顔を上げると、そこは、知らない住宅街の中だった。
「――」と、周りを見回しつつ、アマガエルは、車の往来が見える道路に向かって、歩き始めた。
 歩きながら、見失った女の子の姿がないか、あきらめきれず、きょろきょろと辺りに目を走らせていた。
 と、いつのまにか、後をつけてきていた足音が、聞こえなくなっていた。
 追っ手が見失うほど、息せき切って走っていたわけではなかった。アマガエルは、立ち止まって後ろを振り返ったが、がらんとした夜中の道路には、誰の姿もなかった。
 車が走る通りに出ると、道路に掲げられた標識の案内で、自分の居場所を知ることができた。
 それほど、駅から遠く離れていないのはわかっていたが、どことなく、見覚えのある町並みだったのは、ニンジンの探偵事務所がある近所だったからだった。
「やれやれ」と、アマガエルは、ほっとしたように言った。「まかり間違えば、歓迎されない客を連れて行くところでした」
 くるり踵を返そうとして、アマガエルは、振り向いたまま足を止めた。
 かすかに、鉄のような匂いを感じていた。血のにおいだった。
 アマガエルの表情が、とたんに厳しくなった。
 引き返そうとしていた体を戻し、わずかに漂ってくる匂いを、慎重に追いかけていった。
 等間隔に並ぶ電柱に設置された街灯が、住宅街に延びる道路を、点々と照らしていた。
 と、駐車場にしては狭い、物置を置くには広めな住宅の陰で、アマガエルは足を止めた。
 街灯の光が届くか届かないか、微妙な距離感の場所は、身を隠そうとするなら、ちょうどいい場所かもしれなかった。
 膝を折ったアマガエルは、敷き均された砂利に目を凝らした。街灯の明かりを、自分の影が遮って暗かったが、なにやらわずかに色の変わった場所に手を伸ばすと、指先に液体が触った。
 匂いを確かめると、鉄のような匂いが、ツンと鼻をついた。
「血ですね――」と、アマガエルは言った。
 立ち上がったアマガエルは、怪我を負っているだろう、人影を探した。
 血の跡の残る隙間の奥は行き止まりで、誰もいなかった。と、奥の突き当たりまで足を伸ばそうとして、硫黄の匂いが、かすかに残っているのに気がついた。
「いまじき、花火をする人はいないよな」と、アマガエルはつぶやいた。
 道路に出て、血の跡がないか見回したが、どこにも残っていなかった。
 さて、怪我人はどこに行ったのか――と、道路の先を見ながら顔を上げたアマガエルは、あきれたように、ため息をついた。




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よもよも

2021-08-05 06:18:16 | Weblog
はてさて。

眠れない・・・。

さすがにもう無理かもXXX

風はないし、雨上がりで湿度は高いし、

やっと眠り駆けたら、深夜にいきなしの救急車。。

しかも時間あけずにもう一台。

寝たと思ったら、今度は目覚ましに叩き起こされた。

はぁ・・・。

ため息しか出ないけど、今回の五輪って、

イメージだけど、女性の活躍ばっか目立ってる気がする。。

絵になるよねぇ。
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