くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

大魔人(68)

2021-08-16 19:12:45 | 「大魔人」
 アマガエルが伸ばした手を、真人はさっと避けると、言った。
「おまえ、気が変になったのか」と、真人は、人差し指で自分の頭を指さした。「蔵に閉じこもって、つまらない映画ばっかり見てるから、そんな偏った考えになるんだぜ」
 アマガエルは、避ける真人を追いかけて、二度、三度と手を伸ばした。
「いちいち説明するのも億劫だがな」と、真人は言った。「あいつらの本拠地を潰さなきゃ、おまえの言うとおり、犠牲になる子供達が、これからも次々に出てくるんだぞ」

 ――ポン。

 と、アマガエルの手が、真人の小さな肩に触れた。
 しかし、真人はどこかに消え去る事なく、逆にアマガエルが、痛そうに目を押さえて、その場に膝を突いた。
「あーあ。だから、言わんこっちゃない」と、真人は、為空間で失ったはずの右腕を、アマガエルに向けて伸ばした。
 真人の右腕が、内側からひび割れるように持ち上がり、機械的な音をさせて、奇妙な銃器に形を変えた。
「顔を上げて見ろよ。どうして俺が飛ばされなかったか、わかるだろ」と、真人が言うと、アマガエルはまぶしそうに目を開けながら、顔を上げた。
 今まで、石蔵の中だとばかり思っていた場所が、文字どおり、スルスルと幕が落ちるように変わり、壁のなくなった目の前には、為空間からジャガーが戻って来た野球場が広がっていた。
「あっちから戻って来た俺が、これまでなにをしていたかなんて、想像もできなかっただろうな。おまえは当面のやっかいごとだから、いの一番に対策を考えさせてもらったぜ」と、真人は言った。「おまえは、見た物ならば正確に移動させられるが、そうでなければ、どこに相手を飛ばすか、自分でもコントロールできやしないんだ。だから、偽物の景色の中に迷いこませて、おまえの目を錯覚させることで、狙った場所には飛ばせなくさせてやったのさ」
 アマガエルは、ひくひくと痙攣するようなまばたきをしながら、ふらふらと立ち上がった。
「どうだ。俺をひどいところに飛ばそうとした分、自分に向けて跳ね返ってきた衝撃は? 全身の骨が砕けそうなんじゃないか。どこに飛ばそうとしたかは知らないが、南極っていうのも、あながち間違いじゃなかったのかもな」――ひどいヤツだぜ。と、真人は、皮肉っぽく言った。

「いま、気を失うほど痺れさてやるからな」

 真人は言うと、右腕に現れた銃がわずかに光り、アマガエルを狙った銃口が、いまにも火を噴き出しそうに、赤く膨らみ始めた。
「――くっ」と、片膝をついたアマガエルが、地面に手を触れると、野球場に敷かれた砂が、渦を巻いて舞い上がった。
「くそっ、抵抗するんじゃねぇよ」と、舞い上がった砂に、みるみるうちに覆われた真人は、咳きこむように言った。「――少しの間、眠っててもらうだけだって。もうそれ以上、無理するんじゃねぇよ」
 竜巻のように舞い上がった砂が、ザザッと勢いを失って落ち去ると、アマガエルの姿も、どこかに消え去っていた。

「ふふん」 

 と、鼻で笑った真人が、球場の外に見える遊具の置かれた公園に向かって、右腕の銃を構えた。
 どん。という短い震動に続き、目が焼けそうになるほどまぶしい光の矢が、真人の右腕から撃ち放たれた。

 ――サクリッ。

 と、焦げ臭い匂いを漂わせて、アマガエルが隠れていた立木に、こぶし大の穴が開いた。

「地球の裏側まで飛んで行く力は、もう残っちゃいないんだろ」

 と、クツクツと笑いながら、真人は言った。
 木の幹に開いた穴から、真人をそっとのぞき見たアマガエルは、唇を噛んでいた。
 戦うしか、ないようだった。しかし、真人が指摘したように、アマガエルには、もうほとんど力が残っていなかった。目の奥が、焼けつくように痛かった。
 アマガエルは、降参したように木の陰から出てくると、やってくる真人と向き合った。

「覚悟はできたようだな」と、真人は言った。「――じゃあな」

 と、薄ら笑いを浮かべた真人が銃を構えると、アマガエルは、ポケットから取りだした車のキーを、真人に向けて突き出した。
 突き出されたアマガエルの手の内で、瞬間移動されたキーが、真人の視界を奪った。
「――うっ」と、不意を突かれた真人は、銃の狙いをはずすと、顔を背けた。
 すぐに狙いをつけ直そうとした真人の前から、アマガエルは姿を消していた。
 きょろきょろと、あわててアマガエルを探す真人の後ろに、ふらふらのアマガエルが現れ、真人を思いきり押しつけた。
 振り返った真人が、右腕の銃を向けようとすると、ガツンと硬い感触が、背中から伝わってきた。そして、鈍い痛みと共に、気を失うほど重たい衝撃が、全身を襲った。
 アマガエルに押された真人は、砂場に設えられたコンクリートのすべり台に、背中から飛ばされていた。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

よもよも

2021-08-16 06:14:45 | Weblog
はてさて。

蔓延防止で外出もままならないから、

代表して墓参りに行ってきた。。

混んでるようならUターンして時間変えようと思ったけど、

意外にすいてて駐車場もすいすい。

ササッと供物は控えて花と線香だけ供えてきたけど、

複数の親族で来てる人達も何組かいたね・・・。

最近、ネズミみたいな生活してるように思うなぁ。

なんとなくこそこそ隠れるような感じで、

人がいるかいないかいつも周囲を気にして、

悪いことしてるわけじゃないんだけどさ、

人が多い所は避けて、生活してるよね。

今月いっぱいが一つのゴールみたいだけど、

どう? 9月から状況良くなるなんて、

ぜんぜんそんな見通し持てないわXXX
 
アラブの方の国が武装勢力に乗っ取られるとか、

もうウィルスだけでも面倒なのに、

不安の種は後を尽きないね・・・。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする