映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

「ケマダの戦い」「革命児パサタ」

2010-12-26 18:26:47 | 舞台は中南米

1、早すぎる中南米諸国の独立

今までの世界史の中では、ちょっとびっくりすることだが・・・フランス革命勃発、ナポレオン出現直後からラテンアメリカ諸国が一斉に独立を果たす(大西洋革命)。

最も早いのはなんとハイチ・・・「黒いジャコバン」と呼ばれたルーヴェルチュールなる男がナポレオンに抵抗し、1804年独立を果たす。・・・余談ながら、ナポレオンは対ハイチ戦に困りルイジアナをアメリカに売却するというもったいないことをする。

しかし、このラテンアメリカの独立は、西欧諸国の独立やその後のアジア諸国の独立とはなんか違う・・・なんだろう。 簡単に言えば、

①ナポレオン後スペインの統治が緩み、アメリカ、フランスの革命思想が伝播するが、その理解は皮相的。中間市民層は育っていない。

②独立運動の実践者は確かに現地人なのだが、一皮向けば、主導権を握っているのは現地生まれのヨーロッパ人(クリオーリョ)。彼らは商売の自由を求めて・・・本国の締め付けを跳ね除けようと独立運動に走る。

③ヨーロッパサイドでは、ウイーン会議を仕切ったメテルニッヒは四国同盟によって干渉せんとするが、イギリスは自由貿易主義、アメリカはモンロー主義でこれらの独立運動に干渉しない。

ということで、あっという間に、流行現象の如く多数の独立国が出来る・・・本当の意味の国民国家にはほど遠く、その後第二次大戦の後までも、革命、反革命、クーデター、暗殺の歴史を繰り返す。

しかし以下現在もあるほとんどの国の独立はこの時期とされている。

①中南米・・・メキシコ(1821)以下6カ国

②南米大陸北部・・・コロンビア(1819)以下4カ国・・・シモン・ボリバルの活躍が有名・・・ボリビアという国名は彼の名に由来する。

③南米大陸南部・・・ブラジルはポルトガルから亡命した王を擁立して(武力なしに)1822年独立。アルゼンチンはイギリスがちょっかいを出すのでスペイン本国がのりだし、本格的独立戦争のうえ1816年独立。

 2、マーロン・ブランドの二本

ハリウッドの中で最も存在感のある個性派俳優といえば、マーロン・ブランドの名が挙がるのではなかろうか。特にアメリカ的な、自由とか民主主義とかが通じない後進性を持った国や社会の英雄を演じさせれば、その右に出るものがいないと思う。

その彼が演じる中南米舞台の映画が「ケマダの戦い」「革命児サパタ

前者は、1830年代中南米カリブ海の小さな島「ケマダ」の独立運動とその挫折・・・ヨーロッパ人の身勝手な独立支援とそれに乗る現地人白人、黒人の葛藤を非常なリアルさで描く。内容があまりにも歴史上大いにあったであろうことで、映画化時にはスペイン政府などの猛烈な抗議を受け、島の名前を架空のものとし、ポルトガル領であったことにするといった工夫を凝らしたといわれている。いずれにしてもカリブ海諸国の早い「独立」がどういうものであったか、その後もすったもんだを繰り返す事情を実感させてくれる。

後者は20世紀初頭、メキシコのディアス大統領の独裁政治に抵抗する、実在の英雄「サパタ」とマデロ革命の様子を描く。メキシコのサトウキビ畑を巡る土地争い、そこでの戦いの様子がよく分かる。

3、メキシコのマクシミリアン

 ①メキシコでは1824年、共和制樹立に貢献したサンタ・アナが数次に亘り大統領を務め、アメリカの西部開拓攻勢で領土は半減させるが・・・長らく独裁政権を維持する

②1860年、ファレスが政権を握り、教会財産没収や土地改革宣言を出し自由主義改革に取り組み、対外利子支払い2年間停止を発表する。ところが、イギリス、フランス、スペインが共同で出兵して圧力をかけたので利子支払いを再開する。

③イギリス、スペインは撤兵したが、植民地政策を焦るナポレオン3世は理由をつけて軍隊増派・・・64年、オーストリア・ハプスブルグのマクシミリアンを借りてきて皇帝につける・・・メキシコは強硬に抗議、アメリカも同調したのでフランス軍は撤退するが、67年マクシミリアンは銃殺刑に処せられた

④1860年、ファレス大統領改革本格化、

 ⑤1844年、デイアス将軍の軍事独裁

⑥1911年、マデロによるメキシコ革命・・・革命児サパタ

4、アメリカのカリブ海政策

アメリカでは、国内のフロンテイアが消滅するとモンロー主義の見直しが始まり、海外進出論が強まり、まずはカリブ海沿岸地域への干渉が始まる。

①1889年、アメリカが南北アメリカ諸国を集めて「パン・アメリカ会議」を開催、以後定期的に開催しアメリカの外交的道具とスル。

②1898年、米西戦争勃発・・・スペイン領キューバでの独立運動が激化し、アメリカはその急進化が自国の現地投資に及ぼす影響をおそれて、キューバ自治拡大策を主張・・・1898年、米艦メイン号爆沈事件を口実にスペインと開戦、4ヶ月でアメリカ圧勝し、独立したキューバを保護下におく。

③更にパリ条約などで・・・フィリピン、グアム、プエルトリコを獲得、

④かねてからアメリカの砂糖業者が進出していたハワイを併合

⑤1903年パナマをコロンビアから独立させ、1914年パナマ運河が完成、その永久独占権を取得棍棒外交・・・ドミニカ、ハイチ、メキシコに海兵隊出兵

 

人気ブログランキング挑戦



コメントを投稿