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一日一書 1059 ぽくぽく・八木重吉

2016-12-24 15:04:56 | 一日一書

 

八木重吉

 

連作「鞠とぶりきの独楽」より


 

ぽくぽくひとりでついていた

わたしのまりを

ひょいと

あなたになげたくなるように

ひょいと

あなたがかえしてくれるように

そんなふうになんでもいったらなあ

 

 

「そんなふうになんでもいったらなあ」という重吉の思いは

なかなかそうはいかない、という苦い現実認識のうえにあります。

 

現実にはそうはいかない。

さまざまな思わくや打算が入り込んでしまう。

思いがけない受け取り方をされたり

行為の裏を読まれたり。

 

けれども、芸術的営為というものは

「そんなふうになんでもいったらなあ」という思い以外の何者でもないはず。

 

「ぽくぽくひとりでついている」という孤独な作業。

しかし、それを「ひょいとあなたになげたくなる」というのが、表現。

「ひょいとあなたがかえしてくれる」というのが、共感。

だとすれば、芸術的営為の根源のすべてが、

この詩の中に描かれているというわけです。

 

 

 

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