2023.11.25
如露亦如電応作如是観
稲妻の光のほどか秋の田のなびく穂末の露の命は
半紙
【題出典】『往生要集』大文一
【題意】 露の如く亦た電の如し。応にかくの如き観を作すべし。
(一切の現象は)露のようでありまた稲妻のようである。このように観想するべきだ。
【歌の通釈】
稲妻のようなものか。秋の田になびく稲穂の末に置く露のような命は。
【考】
風に吹かれる稲穂に置く露のようにはかない命。それはさらに稲妻のようだと言った。左注で、『止観輔行伝弘決』を引くのは、「稲妻をてらすほどには出づる息出づる待つ間にかはらざりけり」(公任集・この身稲妻のごとし・二九八)の影響であろう。この出入の息の比喩は、「いづる息の入るを待つ間もかたき世を思ひしるらん袖はいかにぞ」(詞花集・雑下・四〇三・崇徳院)、「いづる息の入るをも待たぬ世の中をいつまで人のうへとかはみん」(教長集・無常思・八五三)というように詠み継がれている。
(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)
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★短い時間の比喩としては、「露」が一般的ですが、ここでは、それにくわえて「稲妻」や「息の出入り」が挙げられています。そうした比喩引き継がれていくところに、和歌の伝統もあるようです。