月曜日
まつむらせんせいらAUSMIP担当の先生をパリに迎える。
まずホテルに集合し半年間の留学生活を振り返る。先生方からは差し入れに日本茶の缶をもらった。初対面の先生から唐突に「こみやまくんは将来何がやりたいの?」と質問される。禅問答のようなやり取りになってしまい、自分が将来について具体的には何も思い描けていないことを思い知る。その後みんなでエッフェル塔へ行く。急に雨が降り出したが防ぐ場所がない。エッフェル塔は物質的には巨大な透明だ。先生方は会議があるので大学で一旦解散し、僕は近くのラヴィレット公園で時間を潰す。無用の赤いフォリーをただ巡りながら歩くには、その間の障害物が多すぎて邪魔だと思った。とはいえ、今では目立たなくなってしまったこの造形物自身が、そうして周りに障害物の発生を喚起しているようにも見えるのだけれど。ポンピドゥーセンターの屋上階にあるレストランでお茶をしてから、オペラ大通りのひぐまラーメンで宴会。一緒に参加してくれたジョージアテックからラヴィレットに留学しているアメリカ育ちの若い学生さんは、日本に帰ったら鳶に弟子入りして修行を積みたいと言う。あっけらかんとした彼のその物言いに、軽い衝撃を受ける。建築はかくも奥深いものなのか。つい飲みすぎる。
火曜日
まつむらせんせいと僕らAUSMIP生三人で、フランス北部のランスに小旅行。
電車の中はさながら就職相談会。先生が知っている現実をたくさん教えてもらう。自分という植物はどの土なら一番よく育つでしょうか?というような相談に来る学生が最近多いという。でもそのように企業を計りにかけて就職先を選んだ人は、その先も自社と他社を比べ続けてしまうので不幸だという。僕は最近友達から聞いた幸せな就職体験談を話す(ある人から又聞きしたどこかの大学の人の話、として)。出会いと直感を信じ、覚悟を決めて選ぶしかない。自分がどう育つかは自分次第。電車が駅に着き、歩いて大聖堂に向かう。旅行者は見当たらない。「三大聖堂」の一つ、ランスの大聖堂。シャガールの寄進したステンドグラスは、シャガールブルー。何度もカメラを向けたが、見えたままの色では写真に写らないことを実感する。街のビストロで昼食をとる。午後はトー宮殿へ。修復された大聖堂の遺物が収められている。最後に本場のシャンパン工場を見学(試飲)してからパリに帰る。金太郎で今日も先生に晩飯をおごっていただく。お国自慢も含めた地方の食文化の話題から始まり、希望も何も失われてしまった土地で必死に働いている人たちの話になる。南アフリカではアパルトヘイト解放以降かえって人種差別が悪化し、エイズの流行と共に風説や迷信を信じる人たちが治癒のためとして見境なく性犯罪に走っているという。そんな土地で自らと妻子の生命を賭けながら、教育にわずかな希望を見出して学校をつくっている人たちの話。アメリカのデトロイトではダウンタウンが無法地帯になっているという。そこではホテルのフロントが防弾ガラスに囲まれていて、部屋から廊下に一歩出るのも不安になるような一夜を過ごしたという話。コロンビアではいくつかの暴力団体が抗争を続けていて、左右前後に警官の護衛がついた状態でしか街を移動できないという。そんな土地に、「スペイン語を習うため」と言って留学している大阪の学生の話。どれも先生が現地に行って実際に体験した話であり、生々しい。僕らはそのたびにアフリカやアメリカの危険地帯の中をさまよい、「そろそろお勘定しようか」をいう先生の一声で気が付くと、元のパリのラーメン屋にいた。世の中にはわずかな希望さえ持てないような場所で働いている人たちもいる。自分たちはこの希望に満ちた環境の中にいて、いったい何を悩んでいるというのだ?
水曜日
カフェでオムレツを食べてから、くろさかくんすがおさんを東駅まで送る。一週間僕の部屋で寝泊りしていた彼らも今日でドイツに帰る。毎晩三人で繰り広げられるパリの文化人類学風考察の時間がとても楽しかった。二人はパリを満喫したようだが、僕はもっと観せてあげたい場所があったので心残りもある。卒業設計のとき、9枚目のプレゼンボードが印刷終わらず「くやしいです」と言って泣いてくれたヘルパーさんを思い出した。二人を見送ったあと駅の周りをぶらぶらしてから映画館に入り、なるべく非道徳的で救いのなさそうな映画を選んで観る。なぜだか、カットがかかったときの役者さんの安心した笑顔ばかりが頭に浮かんでならなかった。
あと一週間パリを回ったらイギリスへ行こうと思っている。胡蝶の夢はまだ続く。
まつむらせんせいらAUSMIP担当の先生をパリに迎える。
まずホテルに集合し半年間の留学生活を振り返る。先生方からは差し入れに日本茶の缶をもらった。初対面の先生から唐突に「こみやまくんは将来何がやりたいの?」と質問される。禅問答のようなやり取りになってしまい、自分が将来について具体的には何も思い描けていないことを思い知る。その後みんなでエッフェル塔へ行く。急に雨が降り出したが防ぐ場所がない。エッフェル塔は物質的には巨大な透明だ。先生方は会議があるので大学で一旦解散し、僕は近くのラヴィレット公園で時間を潰す。無用の赤いフォリーをただ巡りながら歩くには、その間の障害物が多すぎて邪魔だと思った。とはいえ、今では目立たなくなってしまったこの造形物自身が、そうして周りに障害物の発生を喚起しているようにも見えるのだけれど。ポンピドゥーセンターの屋上階にあるレストランでお茶をしてから、オペラ大通りのひぐまラーメンで宴会。一緒に参加してくれたジョージアテックからラヴィレットに留学しているアメリカ育ちの若い学生さんは、日本に帰ったら鳶に弟子入りして修行を積みたいと言う。あっけらかんとした彼のその物言いに、軽い衝撃を受ける。建築はかくも奥深いものなのか。つい飲みすぎる。
火曜日
まつむらせんせいと僕らAUSMIP生三人で、フランス北部のランスに小旅行。
電車の中はさながら就職相談会。先生が知っている現実をたくさん教えてもらう。自分という植物はどの土なら一番よく育つでしょうか?というような相談に来る学生が最近多いという。でもそのように企業を計りにかけて就職先を選んだ人は、その先も自社と他社を比べ続けてしまうので不幸だという。僕は最近友達から聞いた幸せな就職体験談を話す(ある人から又聞きしたどこかの大学の人の話、として)。出会いと直感を信じ、覚悟を決めて選ぶしかない。自分がどう育つかは自分次第。電車が駅に着き、歩いて大聖堂に向かう。旅行者は見当たらない。「三大聖堂」の一つ、ランスの大聖堂。シャガールの寄進したステンドグラスは、シャガールブルー。何度もカメラを向けたが、見えたままの色では写真に写らないことを実感する。街のビストロで昼食をとる。午後はトー宮殿へ。修復された大聖堂の遺物が収められている。最後に本場のシャンパン工場を見学(試飲)してからパリに帰る。金太郎で今日も先生に晩飯をおごっていただく。お国自慢も含めた地方の食文化の話題から始まり、希望も何も失われてしまった土地で必死に働いている人たちの話になる。南アフリカではアパルトヘイト解放以降かえって人種差別が悪化し、エイズの流行と共に風説や迷信を信じる人たちが治癒のためとして見境なく性犯罪に走っているという。そんな土地で自らと妻子の生命を賭けながら、教育にわずかな希望を見出して学校をつくっている人たちの話。アメリカのデトロイトではダウンタウンが無法地帯になっているという。そこではホテルのフロントが防弾ガラスに囲まれていて、部屋から廊下に一歩出るのも不安になるような一夜を過ごしたという話。コロンビアではいくつかの暴力団体が抗争を続けていて、左右前後に警官の護衛がついた状態でしか街を移動できないという。そんな土地に、「スペイン語を習うため」と言って留学している大阪の学生の話。どれも先生が現地に行って実際に体験した話であり、生々しい。僕らはそのたびにアフリカやアメリカの危険地帯の中をさまよい、「そろそろお勘定しようか」をいう先生の一声で気が付くと、元のパリのラーメン屋にいた。世の中にはわずかな希望さえ持てないような場所で働いている人たちもいる。自分たちはこの希望に満ちた環境の中にいて、いったい何を悩んでいるというのだ?
水曜日
カフェでオムレツを食べてから、くろさかくんすがおさんを東駅まで送る。一週間僕の部屋で寝泊りしていた彼らも今日でドイツに帰る。毎晩三人で繰り広げられるパリの文化人類学風考察の時間がとても楽しかった。二人はパリを満喫したようだが、僕はもっと観せてあげたい場所があったので心残りもある。卒業設計のとき、9枚目のプレゼンボードが印刷終わらず「くやしいです」と言って泣いてくれたヘルパーさんを思い出した。二人を見送ったあと駅の周りをぶらぶらしてから映画館に入り、なるべく非道徳的で救いのなさそうな映画を選んで観る。なぜだか、カットがかかったときの役者さんの安心した笑顔ばかりが頭に浮かんでならなかった。
あと一週間パリを回ったらイギリスへ行こうと思っている。胡蝶の夢はまだ続く。
まずいは言い過ぎか。大したことないのに高い!
観光地価格じゃ。
バンシゲル事務所は見ましたか?
請求書見てビックリしたの久しぶり(払ってないけど)。きれいなウェイトレスさん代かなあ。パリはどこもかしこも観光地価格で困ってしまいます。だから安いシテ寮の食堂でつい済ませてしまう。
坂茂事務所見たよー。ちょこんと乗っかってた。思いっきり仮設だったから最初事務所の“模型”かと思った。でもあのデザインはなじんでるね。ドアは閉まってたけど、丸い窓から中覗き込んだら模型がたくさん見えたよ(計画中のポンピドゥー新館かな?)。レストランもそうだけど、ハイテックによってつくられた建築がさらに時を経てリノベーションされていくってなんだか感慨深いですね。
イギリスのセインズベリーセンターもフォスター自身の手によって去年の春からずっと改修中。再開館は5月とのこと。楽しみにしてたのにまたしても観れないのか~泣!