上海で日本語を話している中国の若者達

中国人に囲まれて日本語で通していく日常の出来事を書き綴っています。

ドレーン・タンク

2010年11月25日 | 日記

すっかり寒くなった上海ですが、暖かな日差しが差し込んでいます。

こんな穏やかな日は、何処までも続くススキの野原を、自転車で大きな硝子シリンダー満杯の超純水を運んでいた日の事を思い出します。

 

今週の日経ビジネスオンラインの伊東乾教授の連載、情報の源流探訪。

今回は菅首相は「もんじゅ」に政治生命を賭けられるか? ――原子炉事故に「政治主導」を問うです。

今回の記事で取り上げているのは高速増殖炉もんじゅですが、みなさんはその実験炉ふげんをご存知でしょうか?

 

あれは今から四半世紀ほど前、私は当時20歳、映画学校2年の冬に、2ケ月だけ休学し、第一子の出産費用を稼ぐ為に、武山の自衛隊基地に隣接する某社の実験プラントで働いていました。

学生結婚だった私が、高額の短期バイトを探していた所、何故か高速増殖炉の実験プラントで運転作業員を行う事になりました。

既に時効だから言えますが、非破壊検査会社(現在は既に廃業)を営んでいた当時の派遣元先は、私の年齢と職歴を偽っていたようです。

派遣先の面接では、高校時代科学部の部長だった時の知識が役立ちました。

(部活では実験ドラフトでトリオール化置換実験を勝手に行なった、テルミットで雲を立ち上らせたりと、化学だけなら共通1次楽勝ラインでしたから。このエピソードも同級生達にネタにされてるなぁ。)

そのプラントが、ふげんをベースに、もんじゅを設計する為に作られた物で、従事する年長作業員が流れの原発労働者である事を知り、これ幸いと、次回作シナリオの為の原発ジプシーについての取材というフィールドワークも兼ねていたのです。

厳重に警備された施設の入り口で専用のバッチを貰い、実験棟での作業ですが、勤1休で2交代。つまり隔日で泊り込み作業です。

(今まで様々なユニフォームに身を包みましたが、ヘルメットに作業着、安全靴姿も気に入っています。)

この2ケ月間の仕事は、四半世紀経った今でも詳細に循環路図、特に緊急時に閉鎖するバルブを思い描く事が出来るほど、命懸けの作業でした。

(まぁ、それに応じただけある、非常に高額の対価を受け取りましたが。)

20メートル以上の高さのある模擬実験炉の天辺に梯子だけで登るのも怖い物ですが、最も恐ろしいのは実験プラントの真下に設置されたのドレーンタンクに眠る2トンの金属ナトリウムです。

記事にある、非呼吸性のアルゴンガスは通常作業時は建屋に満たされていませんが、緊急時には作業員ごとアルゴンガス封入する為に、多量のボンベが備えられていました。

(仮に酸素マスクの近くに作業員が居なかった場合を考えると恐ろしい仕組みです。)

実験は炉心燃料棒に付着する一次循環系の金属ナトリウムの除去方法。燃料棒交換前に実施する高温ブロワーによる除去効果の検証でした。

実際に運転した模擬実験炉から取り出した模擬燃料棒を超純水で洗い、PH値を測定します。 記事が指摘していない本当の危険は(基礎設計に変更が無ければ)事故エリアの真下に存在する数トンの金属ナトリウムの存在です。

仮にメルトダウンが起きると、大型爆弾に信管を差し込んでスイッチを入れるのに等しい事態になります。

米軍が東京に投下した最大の通常爆弾がTNT火薬10トンの爆弾でしたが、それを大きく上回る爆発力があります。

しかし、金属ナトリウムがタンクが破壊されて漏れたとしても、アルゴン封入されている限り、放射能漏れも限定的な物です。

問題は、1次循環系を巡る金属ナトリウムから熱をエネルギーとして取り出す為に、熱交換を行なって蒸気タービンを廻す、 2次冷却系の「大量の水」が存在するという事実です。

1次冷却系は放射能で汚染されていますし、金属ナトリウム蒸気は高腐食性ですから、圧力調整が必要なタービンを廻す事ができません。

そこで低レベル放射能防護で済む2次冷却系でタービンを廻します。この為、高速増殖炉には隣接して大量の水が存在します。

そして仮に融解事故によって2次冷却系配管破損が起こった場合、この水が重力によって流れ込む先にドレーンタンクが存在しています。

電磁ポンプで液体化した金属ナトリウムを上部の炉心に導く為のパイプが貫通しています。 仮にこの1次冷却系配管が破壊されて2次冷却水が流入すると想像を絶する放射能災害が発生します。

 

今回、伊東氏には是非此処まで追いかけて欲しかった記事でした。彼のオウム事件のレポでも思いましたが、詰めが甘いのが非常に残念です。

 

さて、今日は夕方から当社でSCL(上海サークル幹事会)が開かれ、多くのコミュニティの代表者が参加されます。飲み過ぎないようにしなくては。

 

にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。