昨日は、いつも楽しみにしている、万葉集の講座に、
行ってきました。
巻十の七夕の歌が続いています。
巻十の七夕の歌には、柿本人麻呂歌集からのものが、
まず、38首、あとは、出典不明歌として60首。
人麻呂以降の時代における七夕伝説への関心を表している、とも言われています。
おそらくは主に、宴席で歌が詠まれる時に、テーマとして七夕があって、それにそって、詠まれたもの。
歌を詠むのは、歌人ではなくて、名もない官人たちが多かったろう、と。
人麻呂歌集の歌や、他の、よく知られているような歌をお手本に作ったり、知ってる言葉を組み合わせただけのような、ちょっとぎくしゃくしたものがあったり、気持ちより、状況ばかりを書いたようなものが多くて、いまひとつ深みにかけたり、やはりそこは、彦星、織姫のお話を、想像して作るわけで、どうしても、作り物っぽさが出てきたりもします。
テーマ自体に、だんだん新鮮さがなくなるし、色あせもするんですね。
で、昨日の講座で、先生が用意してきてくださったのは、
そういう、天の川をはさんだ、作り物のお話の歌ではなくて、
「歴史的事件を含む遠距離恋愛」の歌。
同じ、離れ離れでも、彦星、織姫とは、違う、
実際に離れ離れで、もう、好きな人に会えなくなった人が作った歌。
それは、巻四の534~535。
安貴王(あきのおうきみ)の歌。
簡単に説明すると、安貴王は、志貴皇子の孫。
志貴皇子は、天智天皇の子。
天智は、天武に敗れましたから、その子である志貴皇子は、
皇子だけど、もう天皇にはなれない、どうにもならない皇子。
でも、歌の才能もあって、皆から慕われた人だったとか。
僕が、ANDYのライブでも朗読した
「石走る垂水の上のさわらびの~」っていう歌とか、
「采女(うねめ)の袖吹き返す明日香風~」とか、とってもいい歌を作ってる人で、僕もファンですが、その、志貴皇子のお孫さんの、
安貴王が、天皇にお仕えする女性を娶(めと)ったんです。
(その時の天皇は女性でしたが)それは、あってはいけないことで、
不敬の罪に断ぜられて、二人は離れ離れ。
そこで、安貴王、心に痛み悲しんで、歌を作った、と。
小学館本からの訳を、書くと、
*****
遠妻がここにいないので
道が遠いので
思う心も 安らかでなく
嘆く心も苦しくてならぬが
空を行く雲にでもなりたい
高く飛ぶとりにでもなりたい
明日にでも行って彼女と語り合い
わたしにとって彼女も幸福に
彼女にとってわたしも幸福に
今もありありと面影に見えているように
ぴったりと寄り添っていたいものだ
*****
こうなると、作り事の、彦星、織姫の歌とは違ってきます。
こういう比較をして、お話くださるのも、この講座の、
とっても面白いところなんですよ。
ちょっと長くなりました。
今日も素敵な一日になりますように。
美しい明日へ心をこめて歌っています。
洋司
行ってきました。
巻十の七夕の歌が続いています。
巻十の七夕の歌には、柿本人麻呂歌集からのものが、
まず、38首、あとは、出典不明歌として60首。
人麻呂以降の時代における七夕伝説への関心を表している、とも言われています。
おそらくは主に、宴席で歌が詠まれる時に、テーマとして七夕があって、それにそって、詠まれたもの。
歌を詠むのは、歌人ではなくて、名もない官人たちが多かったろう、と。
人麻呂歌集の歌や、他の、よく知られているような歌をお手本に作ったり、知ってる言葉を組み合わせただけのような、ちょっとぎくしゃくしたものがあったり、気持ちより、状況ばかりを書いたようなものが多くて、いまひとつ深みにかけたり、やはりそこは、彦星、織姫のお話を、想像して作るわけで、どうしても、作り物っぽさが出てきたりもします。
テーマ自体に、だんだん新鮮さがなくなるし、色あせもするんですね。
で、昨日の講座で、先生が用意してきてくださったのは、
そういう、天の川をはさんだ、作り物のお話の歌ではなくて、
「歴史的事件を含む遠距離恋愛」の歌。
同じ、離れ離れでも、彦星、織姫とは、違う、
実際に離れ離れで、もう、好きな人に会えなくなった人が作った歌。
それは、巻四の534~535。
安貴王(あきのおうきみ)の歌。
簡単に説明すると、安貴王は、志貴皇子の孫。
志貴皇子は、天智天皇の子。
天智は、天武に敗れましたから、その子である志貴皇子は、
皇子だけど、もう天皇にはなれない、どうにもならない皇子。
でも、歌の才能もあって、皆から慕われた人だったとか。
僕が、ANDYのライブでも朗読した
「石走る垂水の上のさわらびの~」っていう歌とか、
「采女(うねめ)の袖吹き返す明日香風~」とか、とってもいい歌を作ってる人で、僕もファンですが、その、志貴皇子のお孫さんの、
安貴王が、天皇にお仕えする女性を娶(めと)ったんです。
(その時の天皇は女性でしたが)それは、あってはいけないことで、
不敬の罪に断ぜられて、二人は離れ離れ。
そこで、安貴王、心に痛み悲しんで、歌を作った、と。
小学館本からの訳を、書くと、
*****
遠妻がここにいないので
道が遠いので
思う心も 安らかでなく
嘆く心も苦しくてならぬが
空を行く雲にでもなりたい
高く飛ぶとりにでもなりたい
明日にでも行って彼女と語り合い
わたしにとって彼女も幸福に
彼女にとってわたしも幸福に
今もありありと面影に見えているように
ぴったりと寄り添っていたいものだ
*****
こうなると、作り事の、彦星、織姫の歌とは違ってきます。
こういう比較をして、お話くださるのも、この講座の、
とっても面白いところなんですよ。
ちょっと長くなりました。
今日も素敵な一日になりますように。
美しい明日へ心をこめて歌っています。
洋司