大工だった曽祖父が百五年前に建てた実家の家の玄関は引き戸で、普段の戸、格子戸、夜に閉める戸と、三種類の戸が使い分けられるように出来ているんです。僕が子供の頃に新しいものに取り替えられた普段の戸以外は、古いままです。格子戸を良く見ると、格子の交わるところに、一つ一つ飾りのビスが丁寧に打ち込まれているんですが、三段目の途中ぐらいから断念されてるんです。細く削った木が割れるのを避けるためだったんだろうと思われます。その戸を見ながら、百五年前に曽祖父が「こりゃ、いけなぁ」などと言ったかどうか、想像するのも楽しいことです。
洋司
洋司