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三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決のいう「解約権留保の趣旨,目的」の意味

2011-05-26 | 日記
Q24  三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決のいう「解約権留保の趣旨,目的」とはどういう意味ですか?

 「解約権留保の趣旨,目的」と言われても,直ちにはイメージをつかみにくいかもしれませんが,上記大法廷判決は,次のように説明しています。
 「換言すれば,企業者が,採用決定後における調査の結果により,または試用中の勤務状態等により,当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において,そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが,上記解約権留保の趣旨,目的に徴して,客観的に相当であると認められる場合には,さきに留保した解約権を行使することができるが,その程度に至らない場合には,これを行使することはできないと解すべきである。」
 試用期間中の解雇は緩やかに認められるというイメージがありますが,それは,「当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実」に基づく本採用拒否について言えることであって,採用当初から知り得た事実を理由とした場合は,緩やかな基準で解雇することはできないということを理解しておく必要があります。
 例えば,本採用拒否(解雇)したところ,「本採用拒否の理由となるような事情がない。」といった趣旨の指摘がなされたことに対する反論として,「本採用拒否の理由となるような事情がないようなことを言っているが,そんなことはない。採用面接の時から,あいつがダメなやつだということは分かっていた。」というようなものは,通用しないことになります。

弁護士 藤田 進太郎