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解雇予告後退職前の社員の管理に関する注意点を教えて下さい。

2016-08-17 | 日記

Q.解雇予告後退職前の社員の管理に関する注意点を教えて下さい。


A.解雇 予告された社員は,自己都合退職した社員以上に,働くモチベーションが下がりがちです。モチベーションの下がった社員の対応により,業務に重要なミスが発生したり,顧客から苦情が寄せられたりすることがないよう,原則として引継業務やアルバイトでもできるような責任の軽い業務のみを行わせ,正社員でなければ任せられないような重要な業務からは外すべきでしょう。年休消化の希望があれば年休を消化させたり,最低限の引継に必要な時間を除いて転職活動をすることを容認したりして,最低限の引継業務以外は就労を免除するといった措置をとってもいいかもしれません。 
 また,解雇予告された社員の中には,機密情報を不正に持ち出したり,消去したりする者もいますので,不審な行動がないか,上司が監督する必要があります。機密情報を不正に持ち出したり,消去したりするのを防止するため,原則として会社のパソコンは使わせず,どうしても必要な場合は,上司の監視の下,パソコンを使用させるといった対応をするのが望ましいところです。
 機密情報保護の必要性が特に高い担当業務の場合は,
 ① 解雇予告後は,年休消化の希望があれば年休を消化させたり,最低限の引継に必要な時間を除いて就労義務を免除し転職活動をすることを容認したりして,機密情報にはアクセスさせない
 ② 解雇予告するのではなく30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払って即時解雇し,パソコン等に触れさせないまま,最低限の私物を持たせて退社させ,残った私物は宅配便で自宅に発送する
といった配慮が必要なケースもあると思われます。


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解雇する時は30日前に解雇を予告した上で,平均賃金30日分の解雇予告手当を支払えば問題ないのか

2016-08-17 | 日記

Q.社員を解雇するに当たり,30日前に解雇を予告した上で,平均賃金30日分の解雇予告手当を支払おうと思います。これで問題ないでしょうか?


A.貴社の対応で労基法上問題があるわけではないのですが,解雇 予告義務(労基法20条)に関し,誤解があるように思えます。
 労基法20条1項本文が要求しているのは,
 ① 30日前の解雇予告
 ② 30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払
のいずれかです。つまり,①②いずれかをすれば足り,両方を行う必要はありません。
 ①30日前に解雇予告した場合は,②解雇予告手当の支払は不要です。この場合,解雇予告から30日間は労働契約が存続していますから,退職までの期間は当該社員に仕事をするよう命じることができます。
 ②30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払った場合は,即時解雇しても労基法20条には違反しません(民事上,解雇が有効かどうかは,別問題です。)。
 なお,解雇予告の日数は,平均賃金を支払った日数分短縮することができますから(労基法20条2項),
   解雇予告から解雇までの日数+解雇予告手当として支払われた平均賃金の日数≧30日
であればよいことになります。例えば,解雇日の15日前に解雇予告するのであれば,解雇日までに15日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払えば労基法20条には違反しないことになります。


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出社しなくなった労働者から,口頭で即時解雇されたから解雇予告手当を支払えと請求された場合の対応

2016-08-17 | 日記

Q.解雇した覚えがないのに出社しなくなった労働者から,口頭で即時解雇されたから解雇予告手当を支払えと請求されています。どう対応すればいいでしょうか?


A.使用者は解雇 した覚えがないのに,出社しなくなった労働者から,口頭で即時解雇されたとして解雇予告手当の請求を受けることがあります。このような主張がなされる一番の原因は,出社しなくなった社員に対し出勤を催促したり,退職届を取得するのを怠ったりしたことにあります。
 突然,出社しなくなった社員に対しては,必ず出勤を催促して下さい。まずは電話を掛け,それでも出勤しない場合には,電子メールや書面での催促をすることになります。
 本人が,会社を辞めると口頭で言ってきた場合は,必ず退職届を提出させるようにして下さい。自分から会社を辞めると言っておきながら,退職届を提出していないのをいいことに,解雇されたと後から言い出す問題社員 が後を絶ちません。
 退職届が提出されている事案,退職勧奨 もしていないのに勝手に自己都合で辞めたいと言い出した労働者が解雇予告手当の請求をしてきたような悪質な事案等の場合は,最後まで解雇予告手当の支払を拒絶するのが原則的対応です。他方,退職勧奨により辞めてもらうようなケースで,退職届の提出もないような事案については,辞めてもらうために必要なコストだと思って,退職合意書を作成し,署名押印させた上で,解雇予告手当相当額程度は支払ってあげて解決することもあります。


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雇入れから14日以内であれば,自由に解雇できますよね?

2016-08-17 | 日記

Q.雇入れから14日以内であれば,自由に解雇できますよね?


A.この質問は,労基法21条が,解雇予告義務の適用がない労働者として,「試の使用期間中の者」を規定しつつ,14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は解雇予告義務の適用がある旨を定めていることから生じた誤解と思われますが,労基法21条は,解雇予告義務の適用がない労働者について規定した条文に過ぎず,同条の定める解雇予告義務の適用がない労働者に該当したからといって直ちに解雇 が有効になるものではありません。
 雇入れから14日以内の労働者を解雇した場合であっても,解雇に客観的に合理的な理由がなかったり,解雇が社会通念上相当でなかったりすれば,解雇権を濫用したものとして解雇は無効になります(労契法16条)。
 また,労働者が業務上負傷し,又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間の解雇,女性労働者の妊娠,出産,産前産後休業等を理由とする解雇,労働基準法違反の申告を監督機関にしたことを理由とする解雇,性別を理由とする解雇,不当労働行為の不利益取扱いとなる解雇,公益通報をしたことを理由とする解雇等,一定の場合については,法律上解雇が制限されており,これらに反する解雇は無効となります。
 雇入れから14日以内の労働者を解雇する場合は,勤務期間が短いだけに,解雇に客観的に合理的理由があることを立証するための客観的証拠が不足しがちであり,むしろ,よほど明白な解雇理由があるような場合でない限りは,解雇が無効と判断されるリスクが高いように思えます。
 早期に和解や調停が成立した場合には和解金の額が低めになりやすいですが,和解や調停が成立せず,判決に至ったような場合には,思いの外高額の賃金の支払を命じられることがあります。


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30日前に予告すれば,社員を自由に解雇することができますよね?

2016-08-17 | 日記

Q.30日前に予告すれば,社員を自由に解雇することができますよね?


A.30日前の予告というのは,使用者が労働者を解雇 しようとする場合には,原則として,30日以上前に解雇の予告をするか,30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないこと(労基法20条)を念頭に置いている質問と思われますが,労基法20条は解雇予告等について定めた条文に過ぎず,同条を遵守したからといって直ちに解雇が有効になるものではありません。
 30日前に予告してから解雇したとしても,解雇に客観的に合理的な理由がなかったり,解雇が社会通念上相当でなかったりすれば,解雇権を濫用したものとして解雇は無効になります(労契法16条)。
 また,労働者が業務上負傷し,又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間の解雇,女性労働者の妊娠,出産,産前産後休業等を理由とする解雇,労働基準法違反の申告を監督機関にしたことを理由とする解雇,性別を理由とする解雇,不当労働行為の不利益取扱いとなる解雇,公益通報をしたことを理由とする解雇等,一定の場合については,法律上解雇が制限されており,これらに反する解雇は無効となります。



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解雇予告手当不払のリスクとしては,どのようなものが考えられますか?

2016-08-10 | 日記

Q.解雇予告手当不払のリスクとしては,どのようなものが考えられますか?


A.即時解雇した場合に解雇予告手当を支払わないことのリスクとしては,
 ① 30日分の平均賃金相当額の解雇予告手当の請求を受けるリスク
 ② 即時解雇としての効力が生じず,退職時期が最大30日経過後になるリスク
 ③ 訴訟において解雇予告手当と同額(以下)の付加金の支払(労基法114条)を判決で命じられるリスク
 ④ 刑事罰(労基法119条1号,6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)を受けるリスク
 ⑤ 上記①②③④に関連する交渉,訴訟,労基署(検察庁)対応の煩わしさ,弁護士費用等の負担
などが考えられます。


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解雇予告義務の適用がない労働者はいますか?

2016-08-10 | 日記

Q.解雇予告義務の適用がない労働者はいますか?


A.労基法21条では,解雇予告義務の適用がない労働者として,
 ① 日々雇入れられる者
 ② 2か月以内の期間を定めて使用される者
 ③ 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
 ④ 試の使用期間中の者
が規定されていますが,①については1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合,②③については所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合,④については14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は解雇予告義務の適用があります。
 試用期間中であれば解雇予告義務の適用はないと誤解されていることがありますが,試用期間 中であっても14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は,解雇予告するか解雇予告手当を支払わなければなりません。


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解雇予告除外認定とはどのようなものですか?

2016-08-10 | 日記

Q.解雇予告除外認定とはどのようなものですか?


A.「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇 する場合」(労基法20条1項ただし書)に該当する場合には,労働基準監督署長の解雇予告除外認定を得て,解雇予告又は解雇予告手当の支払なしに解雇することができます。
 解雇予告除外認定は,解雇の効力発生要件ではなく,認定申請及び認定決定の有無にかかわらず,「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」に該当する場合は,予告手当の支払のない即時解雇も有効ですが,解雇予告除外認定の申請をせずに即時解雇した場合には,労基法20条違反として罰則(労基法119条1号)の適用があります。
 他方,解雇予告除外認定を受けたものの,訴訟において「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」に該当しないと判断された場合は,罰則の適用はありませんが,即時解雇の効力は生じません。


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解雇予告手当は給料日に支払えばよろしいでしょうか?

2016-08-10 | 日記

Q.解雇予告手当は給料日に支払えばよろしいでしょうか?


A.即時解雇の効力は,30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を現に支払わないと生じません。
 即時解雇したい場合は,その日のうちに賃金を手渡したり,労働者の指定する預金口座に振り込んだりして,現に解雇予告手当を支払う必要があります。
 給料日になってから解雇予告手当を支払った場合,労働者から解雇 の効力が発生した日について争われると,給料日になるまで解雇による退職の効力が生じなくなってしまう可能性があります。


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解雇予告又は解雇予告手当の支払なしに即時解雇がなされた場合の解雇の効力を教えて下さい。

2016-08-10 | 日記

Q.解雇予告又は解雇予告手当の支払なしに即時解雇がなされた場合の解雇の効力を教えて下さい。


A.解雇予告又は解雇予告手当の支払なしに即時解雇がなされた場合は,即時解雇としての効力は生じませんが,使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り,通知後,30日の期間を経過するか,又は通知の後に所定の解雇予告手当の支払をしたときは,そのいずれかのときから解雇 の効力を生じることになります(相対的無効説,細谷服装事件最高裁昭和35年3月11日判決)。


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Q.解雇予告義務(労基法20条)とはどのようなものですか?

2016-08-08 | 日記

Q.解雇予告義務(労基法20条)とはどのようなものですか?


A. 使用者は,労働者を解雇 しようとする場合においては,原則として,少なくとも30日前に解雇予告するか,30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません(労基法20条)。
 解雇の30日前に予告すれば解雇予告手当を支払う必要はありませんし,30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払えば,即時解雇することができます。
 解雇の10日前に予告したのであれば,20日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払えば足ります。解雇の20日前に予告したのであれば,10日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払えば足ります。
 解雇予告から解雇までの日数+解雇予告手当として支払われた平均賃金の日数≧30日であればよいことになります。


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Q.解雇の効力が争われた場合,何が中心的な争点となりやすいですか?

2016-08-08 | 日記

Q.解雇の効力が争われた場合,何が中心的な争点となりやすいですか?


A. 解雇 の効力が争われた場合,解雇事由該当性及び解雇権・懲戒権濫用の有無(労契法16条・15条)が中心的な争点となりやすい印象です。
 解雇予告手当(労基法20条)の請求がなされることもありますが,請求できる金額が平均賃金の30日分に過ぎない上に,解雇の効力自体は争わないことを前提とした請求のため,請求を受けてもあまり怖くありませんし,むしろリスクが限定されたとプラスの評価をしてもいいのではないかと思います。


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Q.解雇の種類を教えて下さい。

2016-08-08 | 日記

Q.解雇の種類を教えて下さい


A. 解雇 には①普通解雇 と②懲戒解雇 があり,普通解雇は狭義の普通解雇と整理解雇 とに分類されます。
 普通解雇と懲戒解雇の区別がついていないケースが散見されますが,両者は性質が異なるものですので,明確に区別する必要があります。
【解雇の種類】
 ① 普通解雇(狭義の普通解雇,整理解雇)
 ② 懲戒解雇



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Q.労働契約の終了原因における解雇の位置づけを教えて下さい。

2016-08-08 | 日記

Q.労働契約の終了原因における解雇の位置づけを教えて下さい。


A. 労働契約の主な終了原因としては,以下のようなものがあります。解雇は,使用者による労働契約の一方的な解除であるところにその特徴があります。
 ① 解雇 (使用者による労働契約の一方的な解除)
 ② 辞職(労働者による労働契約の一方的な解除)
 ③ 合意退職(使用者と労働者の合意による労働契約の解除)
 ④ 休職期間満了による退職
 ⑤ 有期労働契約の契約期間満了による労働契約の終了(雇止め)
 ⑥ 定年退職
 ⑦ 死亡



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Q.中小企業の労働問題としては,どのようなものが多いですか。

2016-08-08 | 日記

Q.中小企業の労働問題としては,どのようなものが多いですか。


 中小企業の労働問題としては,解雇 ,退職,残業代 請求,労働条件の不利益変更,パワハラ セクハラ 等の問題が多いですが,訴訟にまで至るのは,解雇,退職,残業代請求がメインとなるものがほとんどです。
 パワハラ・セクハラは,相談件数自体は多いようですが,パワハラ・セクハラだけで訴訟や労働審判 になるケースはそれほど多くなく,解雇事件や残業代請求事件に付随して損害賠償請求がなされることが多い傾向があります。
 中小企業においては,
 ① 残業代(長時間労働)対策
をした上で,
 ② 解雇・退職の問題
に丁寧に対応すれば,労使紛争のほとんどを予防することができるものと思われます。



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