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四谷麹町法律事務所ウェブサイト トップページ 平成24年10月31日(水)

2012-10-31 | 日記
 四谷麹町法律事務所所長弁護士藤田進太郎(東京)は,健全な労使関係の構築を望んでいる会社経営者のお手伝いをしたいという強い思いを持っており,使用者・経営者側専門の弁護士として,労働問題の予防解決に力を入れています。
 解雇・退職勧奨の行い方,残業代請求対策,問題社員対応,労働審判対応,団体交渉対応等の労働問題でお悩みでしたら,弁護士藤田進太郎(東京)にご相談下さい。

 近年,解雇,退職勧奨,残業代などに関する労使紛争が急増し,使用者側弁護士が労働問題に関する相談を受けることが多くなっています。
 しかし,労働問題に対するリスク管理意識が希薄な会社がまだまだ多く,無防備な状態のまま,必要な手順を踏まずに従業員を解雇したり,残業代請求対策を取らないまま残業させていたり,問題社員を放置したままにしていたりするケースが散見され,労働者から労働審判を申し立てられたり,労働者が加入した合同労組から団体交渉を申し入れられたりして初めて弁護士に相談し,対応を検討し始める会社経営者が多いというのが実情です。
 会社経営者が,労働問題対応のため必要な弁護士のコンサルティングを受けていないために会社経営に大きなダメージを被り,社員に裏切られたとか,詐欺にあったようなものだとか,社員にも裁判官にも経営者の苦労を分かってもらえないだとか,法律が社会の実情に合っていないだとか嘆いてがっかりしている姿を見ていると,本当に残念な気持ちになります。
 せっかく一生懸命育ててきた会社なのですから,労働問題で大きなダメージを被って取り返しがつかない結果になる前にしっかり対応しておかなければなりません。

 四谷麹町法律事務所所長弁護士藤田進太郎(東京)は,健全な労使関係の構築を望んでいる会社経営者のお手伝いをしたいという強い思いを持っており,経営者側専門弁護士の立場から,労働問題の予防解決に力を入れています。
解雇・退職勧奨の行い方,残業代請求対策,問題社員対応,労働審判対応,団体交渉対応等のため,労働問題の予防解決を中心業務としている経営者側弁護士をお探しでしたら,弁護士藤田進太郎(東京)にご相談下さい。

四谷麹町法律事務所
所長弁護士 藤田 進太郎

サービス内容ページ 平成24年10月31日(水)

2012-10-31 | 日記
サービス内容

1 労働問題の予防解決(経営者側専門)

 四谷麹町法律事務所所長弁護士藤田進太郎(東京)は,健全な労使関係の構築を望んでいる会社経営者のお手伝いをしたいという強い思いを持っており,様々な業種の企業の顧問弁護士として,
① 解雇退職勧奨の行い方のコンサルティング,解雇・退職に関する紛争の対応
② 残業代請求対策のコンサルティング,残業代請求に対する対応・他の従業員への波及防止・労基署対応のコンサルティング
③ 問題社員対応のコンサルティング
④ 労働審判・労働訴訟・仮処分の対応
⑤ 労働組合との団体交渉のコンサルティング,労働委員会における不当労働行為救済申立事件・あっせん・調停の対応・コンサルティング
⑥ 長時間労働,うつ病,セクハラ,パワハラ,石綿吸引,じん肺等に関する損害賠償請求の対応
等の労働問題の予防解決に力を入れています。
 労働問題(使用者・経営者側)は弁護士藤田進太郎東京)にお任せ下さい。

2 企業法務・訴訟対応等

 様々な業種の企業の顧問弁護士として,企業法務全般・訴訟対応等を行っています。

3 企業向けの一般労働相談

 顧問弁護士となっていない企業向けの一般労働相談を行っていますので,従業員とのトラブル等,労働問題でお悩みでしたら,お気軽にご相談下さい。

4 倒産処理・破産管財業務

 企業の代理人として破産を申し立てたり,東京地裁から破産管財人に選任されて破産管財業務を行ったりしています。

5 その他

 経営者・人事労務担当者向けに,労働問題に関するセミナー講師等(所長ご挨拶ページ「主な講師担当セミナー・講演・著作等」参照)を行っています。
 その他,顧問弁護士を務めている企業の関係者からの様々な相談に応じています。

四谷麹町法律事務所 トップページ 平成24年10月31日(水)

2012-10-31 | 日記
四谷麹町法律事務所所長弁護士藤田進太郎東京)は,健全な労使関係の構築を望んでいる会社経営者のお手伝いをしたいという強い思いを持っており,使用者・経営者側専門の弁護士として,労働問題の予防解決に力を入れています。
 解雇退職勧奨の行い方,残業代請求対策,問題社員対応労働審判対応団体交渉対応等の労働問題でお悩みでしたら,弁護士藤田進太郎東京)にご相談下さい。

 近年,解雇,退職勧奨,残業代などに関する労使紛争が急増し,使用者側弁護士が労働問題に関する相談を受けることが多くなっています。
 しかし,労働問題に対するリスク管理意識が希薄な会社がまだまだ多く,無防備な状態のまま従業員を解雇したり,残業代請求対策を取らないまま残業させていたり,問題社員を放置したままにしていたりするケースが散見され,労働者から労働審判を申し立てられたり,労働者が加入した合同労組から団体交渉を申し入れられたりして初めて弁護士に相談し,対応を検討し始める会社経営者が多いというのが実情です。
 会社経営者が,労働問題対応のため必要な弁護士のコンサルティングを受けていないために会社経営に大きなダメージを被り,社員に裏切られたとか,詐欺にあったようなものだとか,社員にも裁判官にも経営者の苦労を分かってもらえないだとか,法律が社会の実情に合っていないだとか嘆いてがっかりしている姿を見ていると,本当に残念な気持ちになります。
 せっかく一生懸命育ててきた会社なのですから,労働問題で大きなダメージを被って取り返しがつかない結果になる前にしっかり対応しておかなければなりません。

 四谷麹町法律事務所所長弁護士藤田進太郎(東京)は,健全な労使関係の構築を望んでいる会社経営者のお手伝いをしたいという強い思いを持っており,経営者側専門弁護士の立場から,労働問題の予防解決に力を入れています。
解雇・退職勧奨の行い方,残業代請求対策,問題社員対応,労働審判対応,団体交渉対応等のため,労働問題の予防解決や労働相談を中心業務としている経営者側弁護士をお探しでしたら,弁護士藤田進太郎(東京)にご相談下さい。

四谷麹町法律事務所
所長弁護士 藤田 進太郎

問題社員FAQ 平成24年10月15日(月)

2012-10-15 | 日記
問題社員FAQ

 問題社員対応解雇退職勧奨などの弁護士相談においてよくある質問に対する一般的な回答について掲載しています。
 設問では,あくまでも一般論を述べているに過ぎませんので,具体的事案にはそのまま当てはまらない可能性がありますし,作成時期によっては,情報が最新のものではなくなっている可能性もあることにご留意下さい。
 現在問題となっている個別具体的な事案の対応については,面談での労働相談をご利用いただきますようお願いします。

四谷麹町法律事務所
所長弁護士 藤田 進太郎

問題事例一覧
Q1協調性がない。
Q2遅刻や無断欠勤が多い。
Q3勤務態度が悪い。
Q4注意するとパワハラだなどと言って,上司の指導を聞こうとしない。
Q5会社に無断でアルバイトをする。
Q6金銭を着服・横領したり,出張旅費や通勤手当を不正取得したりして,会社に損害を与える。
Q7転勤を拒否する。
Q8社内研修,勉強会,合宿研修への参加を拒否する。
Q9就業時間外に社外で飲酒運転,痴漢,傷害事件等の刑事事件を起こして逮捕された。
Q10仕事の能力が低い。
Q11行方不明になってしまい,社宅に本人の家財道具等を残したまま,長期間連絡が取れない。
Q12精神疾患を発症して欠勤や休職を繰り返す。
Q13採用内定取消に応じない。
Q14試用期間中の本採用拒否(解雇)なのに,解雇は無効だと主張して,職場復帰を求めてくる。
Q15退職勧奨したところ,解雇してくれと言い出す。
Q16退職届提出と同時に年休取得を申請し,引継ぎをしない。
Q17退職届を提出したのに,後になってから退職の撤回を求めてくる。
Q18有期契約労働者を契約期間満了で雇止めしたところ,雇止めは無効だと主張してくる。
Q19残業代込みの給料であることに納得して入社したにもかかわらず,残業代の請求をしてくる。
Q20勝手に残業して,残業代を請求してくる。
Q21管理職なのに残業代を請求してくる。
Q22トラブルの多い社員が定年退職後の再雇用を求めてくる。
Q23社外の合同労組に加入して団体交渉を求めてきたり,会社オフィスの前でビラ配りしたりする。
Q24派手な化粧・露出度の高い服装で出社する。
Q25虚偽の内部告発をして,会社の名誉・信用を毀損する。
Q26会社の業績が悪いのに,賃金減額に同意しない。
Q27業務上のミスを繰り返して,会社に損害を与える。
Q28営業秘密を漏洩する。
Q29社員を引き抜いて,同業他社に転職する。
Q30解雇した社員が合同労組に加入し,団体交渉を求めてきたり,会社オフィス前や社長自宅前で街宣活動をしたりする。
Q31ソーシャルメディアに社内情報を書き込む。
Q32管理職なのに部下を管理できない。
Q33精神疾患を発症したのは長時間労働や上司のパワハラ・セクハラのせいだと主張して損害賠償請求してくる。
Q34退職勧奨しても退職しない。

弁護士 藤田 進太郎

労働問題FAQ 平成24年10月15日(月)

2012-10-15 | 日記
労働問題FAQ

 解雇残業代等の労働問題に関する弁護士相談(使用者側)においてよくある質問に対する回答集を作成しました。
 労働問題の予防解決のために役に立つ回答内容になるよう心がけたつもりですが,FAQというものの性質上,回答内容が個別の事案にそのまま当てはまるとは限りませんし,作成から時間が経っている場合は,情報が最新のものではなくなっている可能性があることにご留意いただきますようお願いします。
 解雇残業代等の労働問題について弁護士の踏み込んだアドバイスや最新の情報に基づくアドバイスをご希望の場合は,面談での労働相談を電話予約していただきますようお願いします。

四谷麹町法律事務所
所長弁護士 藤田 進太郎

ご質問一覧
Q130日前に予告すれば,社員を自由に解雇することができるのですよね?
Q2解雇予告又は解雇予告手当の支払なしに即時解雇がなされた場合の解雇の効力を教えて下さい。
Q3費用対効果の面で,弁護士に解雇を相談するタイミングについて,アドバイスはありますか?
Q4普通解雇において,解雇権濫用の有無を判断する具体的事情として実務上争われるのは,どのような点ですか?
Q5懲戒解雇において,解雇権濫用の有無を判断する具体的事情として実務上争われるのは,どのような点ですか?
Q6解雇する場合の注意点,よくある失敗はどのようなものですか?
Q7勤務成績,勤務態度が悪いことは本人が一番よく知っているはずだし,このことは社員みんなが知っているような場合であっても,証拠固めが必要だというのはどうしてですか?
Q8辞めてもらうしかないくらい問題のある社員であっても,今さら,注意,指導,警告が必要でしょうか?
Q9解雇に踏み切る前の「警告」としては,どの程度まで踏み込んだ警告をすべきでしょうか?
Q10問題社員の解雇に臨むに当たってのあるべきスタンスはどのようなものだと考えますか?
Q11整理解雇において,解雇権濫用の有無を判断する際の要素としては,どのようなものが検討されますか?
Q12①人員削減の必要性については,どのようなことを検討する必要がありますか?
Q13②解雇回避努力については,どのようなことを検討する必要がありますか?
Q14③人選の合理性については,どのようなことを検討する必要がありますか?
Q15④手続の相当性については,どのようなことを検討する必要がありますか?
Q16整理解雇に臨むスタンスとしては,どのように考えていますか?
Q17当社では,就業規則を作成しておらず,懲戒に関する定めはありませんが,問題を起こした社員であれば,懲戒解雇してもいいですよね?
Q18問題社員を懲戒解雇したところ,問題社員から訴訟を提起されました。訴訟提起後,詳しく調査してみたところ,別の懲戒解雇事由が新たに判明しました。最初の懲戒解雇の理由として,後から判明した事実を追加することはできますか?
Q19懲戒解雇事由に該当し得る場合であっても普通解雇できますか?
Q20懲戒解雇が無効と判断されそうになった場合に,当該懲戒解雇の意思表示は普通解雇の意思表示として有効であると主張できますか?
Q21普通解雇すれば有効となりそうなのですが,懲戒解雇した場合に有効かどうかは微妙な場合,どのように解雇すればいいでしょうか?
Q22試用期間中の社員であれば,本採用拒否は自由にできますよね?
Q23試用期間中の社員は通常よりも緩やかな基準で本採用拒否できるのですよね?
Q24三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決のいう「解約権留保の趣旨,目的」とはどういう意味ですか?
Q25採用面接時に能力が低い応募者だということが判明した場合であっても,就職できないでいる応募者にチャンスを与える意味で採用し,試用期間中役に立つ人材と判断できたら本採用拒否せずに雇い続けるというやり方をどう思いますか?
Q26試用期間満了前の本採用拒否(解雇)の有効性判断基準は,どのように考えるべきでしょうか?
Q27試用期間中の解雇であれば,解雇予告とか,解雇予告手当の支払とかはいらないのですよね?
Q28問題社員の対応に苦労しないようにするために一番重要なのは,何だと思いますか?
Q29試用期間の長さはどれくらいにすべきですか?
Q30使用者に配転命令権限があるといえるためには,どのようなことが必要ですか?
Q31勤務地限定の合意があったとの主張に対し,どのように対応すればいいでしょうか?
Q32労働条件通知書の「就業の場所」欄には,どこまで書く必要があるのですか?
Q33配転命令が権利の濫用になるのはどのような場合ですか?
Q34配転命令を拒否した正社員を懲戒解雇することができますか?
Q35契約社員,パートタイマー,アルバイト等の非正規労働者であれば,いつでも辞めさせることができますよね?
Q36有期労働契約期間満了で退職してもらう場合の手続的な注意点を教えて下さい。
Q37有期労働契約期間満了で辞めてもらう場合は,解雇とは違いますから,簡単に辞めてもらうことができますよね?
Q38雇止めが争われるリスクが高いのはどのような場合ですか?
Q39有期労働契約の更新拒絶(雇止め)が争われた場合の主張立証の分担はどのようなものになりますか?
Q40雇止めを争われないようにするための注意点を教えて下さい。
Q41雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるような事案かどうかについて判断する際の考慮要素はどのようなものですか?
Q42試用期間を設けても本採用拒否が無効と判断されるリスクがあるので,当社では正社員候補者であっても,まずは全員,有期労働契約を締結しています。その上で,正社員に相応しければ正社員として登用し,正社員に相応しくなれば期間満了で辞めてもらっています。いいやり方だと思うのですが,いかがでしょう?
Q43解雇・雇止めが無効だったとしても,ノーワーク・ノーペイなのですから,働いていない期間の賃金は支払わなくてもいいのですよね?
Q44解雇・雇止めが無効だった場合,使用者はいつまで賃金を支払わなければならないのですか?
Q45解雇が無効と判断されましたが,解雇後,当該労働者が他社で働いて収入を得ていました。解雇期間中の賃金を満額支払ってしまうと二重取りになってしまいます。解雇期間中の賃金支払額を減額してもらうことはできないでしょうか?
Q46解雇が無効と判断され,解雇期間中の賃金の支払を命じる判決を放置していたところ,強制執行されてしまいました。強制執行のため,源泉所得税をを源泉徴収できなかったのですから,源泉所得税を納付しなくても大丈夫ですよね?
Q47解雇が無効と判断され,解雇期間中の賃金の支払を命じる判決が出ました。当該労働者からは,「債務名義があるのだから,源泉徴収せずに全額払って欲しい。」と言われています。使用者としては,債務名義を取られている場合も源泉徴収すべきかどうかを教えて下さい。
Q48解雇予告手当不払のリスクとしては,どのようなものが考えられますか?
Q49解雇した覚えがないのに,出社しなくなった労働者から,口頭で即時解雇されたから解雇予告手当を支払えと請求されています。どう対応すればいいでしょうか?
Q50辞めさせたい問題社員がいる場合,どのように対処すればいいのでしょうか?
Q51労使紛争予防の観点から重要な退職手続時のポイントを教えて下さい。
Q52失業手当に関し,自分から退職届を出して退職すると自己都合退職として扱われ,失業手当を受給する上で不利な取扱を受けることはありませんか?
Q53退職勧奨を行う上で重要なポイントは何だと思いますか?
Q54労基法上,使用者が残業代の支払義務を負うのはどのような場合ですか?
Q55常時10人未満の労働者を使用する使用者については,残業代(労基法上の時間外割増賃金)の支払に関し,例外が定められていると聞いたのですが,それはどのようなものですか?
Q56所定労働時間が7時間の事業場において,1日8時間までの時間帯(1時間分)の法内残業について,残業代を支払わない扱いにすることはできますか?
Q57所定労働時間が7時間の事業場において,1日8時間までの時間帯(1時間分)の法内残業について,残業代を支払わない扱いにすることについて,どう思いますか?
Q58労基法37条所定の残業代(割増賃金)算定の基礎となる労基法32条の労働時間は,どの範囲の時間を指すのですか?
Q59労働時間性が問題となりやすいのは,どのような時間についてですか?
Q60終業時刻を過ぎても退社しないままダラダラと会社に残っている社員がいる場合,会社としてはどのような対応をすべきですか?
Q61最近,残業に関する相談は,どのようなものが多いですか?
Q62残業時間が長いのは仕事熱心だからだとは思いませんか?
Q63労働時間はどのように把握すればいいでしょうか?
Q64自己申告制を採用する場合の注意点を教えて下さい。
Q65タイムカードに打刻された出社時刻・退社時刻と労働時間の開始時刻・終了時刻との関係を教えて下さい。
Q66労働時間を記載した社員の日記,手帳へのメモ等によって,残業代の請求が認められることがありますか?
Q67割増賃金(残業代)請求との関係で,使用者が労働時間を把握することにメリットはありますか?
Q68ダラダラ残業の一番の問題点は何だと思いますか?
Q69長時間労働を抑制する方法として,どのようなやり方がいいと思いますか?
Q70就業時間外に行われる研修,講習,自主活動等の時間について,残業代を支払う必要があるかどうかは,どのような基準で判断すればいいのですか?
Q71研修等の労働時間性を判断するにあたり,「就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無」が問題となるのはどうしてですか?
Q72研修等の労働時間性を判断するにあたり,「教育・研修の内容と業務との関連性が強く,それに参加しないことにより本人の業務に具体的な支障が生ずるか否か」が問題とされているのはどうしてですか?
Q73「自由参加」の社内研修や勉強会の時間は,労基法上の労働時間に該当しないですよね?
Q74資格試験の受験時間,受験準備のための勉強時間,講習会参加の時間は,労基法上の労働時間に該当しますか?
Q75合宿研修の時間は,労基法上の労働時間に該当しますか?
Q76全員参加の研修期間中の年次有給休暇取得の請求がなされた場合,会社は研修期間中の年休取得を拒絶することができますか?
Q77労基法上,月給制の正社員に関する残業代(割増賃金)の金額は,どのように計算すればいいのですか?
Q78当社では,基本給のほか様々な手当を支給していますが,残業代の計算に当たっては,基本給のみを残業代計算の基礎賃金としています。これで大丈夫でしょうか?
Q79除外賃金にはどのようなものがありますか?
Q80残業代の時効は,何年ですか?
Q81残業代の遅延損害金の利率は,退職後は年14.6%という高い利率になるというのは本当ですか?
Q82付加金(労基法114条)とは,どういうものですか?
Q83週40時間,1日8時間を超えて労働した場合でも残業代を支給しない合意は有効ですか?
Q84年俸制社員については,残業代を支払わなくてもいいのですよね?
Q85当社は,同業他社よりも高額の基本給・手当・賞与を社員に支給し,毎年,昇給もさせていますので,社員の残業に対しては,十分に報いているはずです。それでも残業代を別途支払う必要はあるのですか?
Q86残業代(割増賃金)に関し,使用者と社員が合意することにより,割増部分を特定せずに,残業代込みで月給30万円とか,日当1万6000円などとすることはできますか?
Q87残業代込みの賃金ということで社員全員が納得しており,誰からも文句が出ていないのですから,別途残業代を支払わなくてもいいのではないですか?
Q88使用者と社員が合意することにより,日当を1日12時間勤務したことに対する対価とすることはできますか?
Q89残業代に関し,使用者と社員が合意することにより,残業時間にかかわらず,一定額の残業手当(固定残業代)を支給するとすることはできますか?
Q90固定残業代の比率・金額を高く設定することについてどう思いますか?
Q91固定残業代の支給名目はどのようなものがいいでしょうか?
Q92残業代を基本給とは別に支払うよりも,残業代込みということで基本給を支払った方が,基本給の金額が高く見えて,社員募集の際に体裁がいいのではないでしょうか?
Q93管理職であれば,残業代を支払わなくてもいいですよね?
Q94管理監督者の一般的な判断基準はどのようなものですか?
Q95管理監督者該当性に関し,従来の一般的な判断基準とは違う判断基準を用いて判断した裁判例には,どのようなものがありますか?
Q96営業社員であれば残業代を支払わなくてもいいのですよね?
Q97事業場外みなしの適用がある営業社員について,「当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合」(労基法38条の2第1項但書)には,どのように対処するのがお勧めですか?
Q98残業代請求対策の基本的発想として,何が重要と考えていますか?
Q99労働審判法の目的を教えて下さい。
Q100労働審判手続の特徴として,どのような点が特に重要と考えていますか?
Q101労働審判手続の特徴として,迅速な解決が予定されていることが重要と考えているのはなぜですか?
Q102裁判官(労働審判官)が直接関与して権利義務関係を踏まえた調停が試みられ,調停がまとまらない場合には労働審判が行われ,労働審判に対して異議を申し立てた場合には,自動的に訴訟に移行することが重要なのはどうしてですか?
Q103労働審判の平均審理日数はどれくらいですか?
Q104労働審判での解決率はどれくらいですか?
Q105労働審判利用の理由としては,どのようなものが多いのでしょうか?
Q106労働審判手続の結果に対する満足度はどうなっていますか?
Q107労働審判を申し立てられた場合における使用者側の対応として,何が一番大事だと思いますか?
Q108労働審判の第1回期日は変更してもらえますか?
Q109労働審判の答弁書を作成する十分な時間が取れないのですが,どうすればいいでしょうか?
Q110紛争の実情をよく知っている担当社員が第1回期日に出頭できないのですが,どうすればよろしいでしょうか?
Q111労働審判を申し立てられた場合に弁護士に相談する上で特に注意する点はありますか?
Q112労働審判の答弁書を作成する上での注意点を教えて下さい。
Q113労働審判の第1回期日の出頭を弁護士に任せ,会社関係者は出頭しないことにしたいのですが,いかがでしょうか?
Q114労働審判の第1回期日にかかる時間はどれくらいですか?
Q115労働審判の第2回期日以降は,どれくらいの時間がかかりますか?
Q116労働審判手続において調停が成立しなかった場合は,どうなるのですか?
Q117労働審判に対し異議を申し立てるかどうか迷っています。何を基準に判断すればいいでしょうか?
Q118労働審判に異議を申し立てて訴訟に移行した場合,どのような流れで訴訟が進められるのでしょうか?
Q119労働審判に異議が申し立てられて訴訟に移行した場合,最初から訴訟が提起された場合と比べて,解決までの時間が長くなってしまうのでしょうか?
Q120労災保険給付がなされれば,使用者は,労働者から損害賠償請求を受けずに済むのでしょうか?
Q121業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷に関し,使用者が負う注意義務の具体的内容はどのようなものですか?
Q122身体に対する加害行為を原因とする被害者の損害賠償請求において賠償額を決定するに当たり,損害の発生又は拡大に寄与した被害者の性格等の心因的要因は考慮されますか?
Q123紛争調整委員会が労働局長の委任を受けて行うあっせんには,どのような特徴がありますか?
Q124紛争調整委員会から,「あっせん開始通知書」が会社に届きました。どのように対応すればいいでしょうか?
Q125「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なくて拒むこと。」(労働組合法7条2号)は,不当労働行為の一つとして禁止されていますが,「使用者」とは雇用主のみを指すのですか?
Q126「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なくて拒むこと。」(労働組合法7条2号)は,不当労働行為の一つとして禁止されていますが,「雇用する労働者」に該当するかどうかは,どのような基準で判断すればよいのでしょうか?
Q127誠実交渉義務とはどういうものですか?
Q128団体交渉が行き詰まった場合でも,団体交渉を打ち切ることはできないのでしょうか?
Q129社員が社内の多数組合を脱退して,社外の合同労組に加入してしまいました。ユニオン・ショップ協定に基づいて,当該社員を解雇しようと思いますが,大丈夫でしょうか?
Q130当社では,社内組合との間で,当該社内組合が唯一の交渉団体である旨の規定(唯一交渉団体条項)のある労働協約を締結しています。この度,社外の合同労組から団体交渉申入れがあったのですが,唯一交渉団体条項の存在を理由に団体交渉を拒絶することはできないでしょうか?
Q131会社オフィス前における労働組合による街宣活動が違法と評価されるのは,どのような場合ですか?
Q132企業経営者の自宅付近で行われる労働組合による街宣活動が違法と評価されるのは,どのような場合ですか?
Q133夏の節電の仕方としては,どういったやり方がお勧めですか?
Q134節電の手法としてサマータイム制の導入は有効だと思いますか?
Q135労働審判期日では緊張して,言いたいことが言えなくなりそうです。どうすればいいでしょうか?
Q136賃金から社宅の費用を控除することはできますか?
Q137『労使関係法研究会報告書』が提示した労働組合法上の労働者性の判断基準はどのようなものですか?
Q138「①事業組織への組み入れ」の有無を判断する際には,どのような事情を考慮する必要がありますか?
Q139「②契約内容の一方的・定型的決定」の有無を判断する際には,どのような事情を考慮する必要がありますか?
Q140「③報酬の労務対価性」の有無を判断する際には,どのような事情を考慮する必要がありますか?
Q141「④業務の依頼に応ずべき関係」の有無を判断する際には,どのような事情を考慮する必要がありますか?
Q142「⑤広い意味での指揮監督下の労務提供,一定の時間的場所的拘束」の有無を判断する際には,どのような事情を考慮する必要がありますか?
Q143「⑥顕著な事業者性」の有無を判断する際には,どのような事情を考慮する必要がありますか?
Q144社員を解雇するに当たり,30日前に解雇を予告した上で,平均賃金30日分の解雇予告手当を支払おうと思っているのですが,これで問題ないでしょうか?
Q145解雇予告後,退職前の社員の管理に関する注意点はどのようなものですか?
Q146パート,アルバイトには,年次有給休暇を与える必要はありませんよね?
Q147パート,アルバイトの1週間あたりの所定労働日数,所定労働時間が変更された場合,付与すべき年次有給休暇の日数は,どのようにして決めればいいのでしょうか?
Q148退職間近で業務の引継ぎをしてもらわなければ困る社員が,退職日までの全ての所定労働日に関し,貯まっていた年給を使って休みたいと言ってきました。年給取得を拒んで,業務の引継ぎをさせることはできますか?
Q149退職したばかりの社員から連絡があり,退職日を1か月程度先に変更した上で,年次有給休暇を取得したいと言ってきました。これに応じる必要はあるのでしょうか?
Q150勤務開始から1年7か月で退職する予定の社員がいます。退職予定の社員であっても,目立った欠勤をせずに1年6か月継続勤務したら,11日の年休を付与しなければならないのでしょうか?年休付与日数を残勤務期間に応じた日数に減らすことはできませんか?
Q151年次有給休暇を取得する日の3日以上前に年休取得を書面で申請しない場合は,年休取得を一切認めないという運用にはできないでしょうか?
Q152「事業の正常な運営を妨げる場合」(労基法39条5項)に該当するかどうかは,どのような要素を考慮して判断すればいいのでしょうか?
Q153当社は社員が2名しかいない零細企業のため,社員に年休を取得されると,常に事業運営に支障を来すことになってしまいます。それでも年休取得を認めなければならないのでしょうか?
Q154採用面接の際,「うちの会社は年休がないけど,それでもいいですか?」との質問に対し,「年休なしでも構いません。ぜひ雇って下さい。お願いします。」と回答したこともあって採用した社員が,年休の取得を求めてきました。労基法上,年休取得の要件を満たしている場合は,年休取得に応じざるを得ないのでしょうか?
Q155労基法39条1項には,年休が付与されるためには全労働日の8割以上出勤しなければならないと定められていますが,遅刻,早退した日であっても,出勤したことになるのでしょうか?
Q156労働基準法39条1項の出勤率の算定に際し,産前産後休業期間については,出勤したものとして取り扱うべきでしょうか?
Q157「全労働日」(労基法39条1項)とは,何を指すのですか?
Q158当社では年休取得者に対し,「通常の賃金」を支払うこととしていますが,パート,アルバイトの場合,1日の所定労働時間が長い日と短い日があるため,どの日に年休を取るかによって休んだ日の賃金額が変わってきます。何とかならないでしょうか?
Q159労基法上の年次有給休暇(労基法39条)はいつまで繰り越されるのでしょうか?
Q160年次有給休暇(労基法39条)を買い上げることはできますか?
Q161定年は何歳と定めてもいいのですか?
Q16260歳の定年退職間近な社員が,65歳までの雇用確保を要求してきました。何を根拠にそんなことを言っているのでしょうか?
Q163高年齢者雇用安定法9条の高年齢者雇用確保措置として,どれが取られることが多いのでしょうか?
Q164高年齢者雇用確保措置を取らないとどうなりますか?
Q165当社は高年齢者を雇い続けるだけの経済的余裕がありません。どうすればいいでしょうか?
Q166継続雇用制度の対象となる高年齢者の基準により再雇用等がされなかった高年齢者の割合はどれくらいですか?
Q167高年齢者雇用確保措置(高年齢者雇用安定法9条1項)としては,どれがお勧めですか?
Q168高年齢者を再雇用するかどうかは,どのような基準で決めればいいでしょうか?
Q169再雇用した高年齢者の賃金額はどの程度が妥当だと思いますか?
Q170定年退職者から,定年退職後も65歳まで,従来と同じ労働条件で継続雇用するよう要求されています。応じる必要はあるでしょうか?
Q171高年齢者の継続雇用を拒絶した場合に紛争になりやすいのは,どのような場合ですか?
Q172能力の高い定年退職者に重要な職務に従事してもらうため,通常の高年齢者よりも高い給料で仕事をしてもらいたい場合はどうすればいいでしょうか?
Q173就業規則の再雇用基準を満たす高年齢者が再雇用を希望したにもかかわらず再雇用しなかった場合,再雇用されたことになってしまうのでしょうか?
Q174定年退職者を再雇用した場合の雇用期間を1年とすることはできますか?
Q175継続雇用制度の対象者となる高年齢者に係る基準を定めた労使協定を労働基準監督署に届け出る必要がありますか?
Q176「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っていること。」(賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号)にいう「合理的な理由」があるといえるためには,どの程度の理由があることが必要なのですか?
Q177契約期間3年の契約社員が勤務開始1年半で辞めたいと言い出し,退職届を提出してきました。退職を拒絶することはできますか?
Q178給料を完全出来高払制にすることはできますか?
Q179労基法27条に違反して保障給が定められていない場合,民事上,保障給の支払義務はありますか?
Q180出来高払制の場合にも残業代を支払う必要がありますか?
Q181毎月一定額の基本給と成績に応じた出来高払の給料がある場合,残業代の基礎となる賃金はどのように計算すればよいのですか?
Q182労働審判の答弁書では,「答弁を基礎付ける具体的な事実」(労働審判規則16条1項3号)の記載が求められていますが,この項目には具体的に何を書けばいいのですか?
Q183労働審判の答弁書において申立人の主張を否認する場合,否認の理由を記載する必要がありますか?
Q184「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は就業規則の作成届出義務があるとされていますが(労基法89条),労働者の人数は企業単位,事業場単位のどちらで考えればいいのでしょうか?
Q185問題を起こした社員がいたので,6か月に渡り減給処分10%としようと思いますが,法的に問題がありますか?
Q186一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えて減給処分を行う必要がある場合,一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超える部分の減給を次期の賃金支払期に行うことができますか?
Q187解雇が強行法規違反で無効になる場合には,どのようなものがありますか?
Q188心理的負荷による精神障害が労災認定されるかどうかは,行政レベルでは何を基準に判断されるのですか?
Q189労基署に相談してから解雇を行えば,裁判にも勝てますよね?
Q190賃金債権放棄の有効性は,どのような基準で判断されますか?
Q191賃金債権の相殺に対する労働者の同意の有効性は,どのような基準で判断されますか?
Q192賃金減額に対する同意の有効性は,どのように判断すればいいのですか?
Q193就業規則に反する労使慣行が労働契約の内容となることがありますか?

弁護士 藤田 進太郎

サービス内容 平成24年10月15日(月)

2012-10-15 | 日記
サービス内容

1 労働問題予防解決(経営者側専門)
 四谷麹町法律事務所所長弁護士藤田進太郎東京)は,健全な労使関係の構築を望んでいる会社経営者のお手伝いをしたいという強い思いを持っており,様々な業種の企業の顧問弁護士として,
① 解雇退職勧奨等の退職に関する紛争の予防・解決
② 残業代・労働時間に関する紛争の予防・解決
③ 問題社員対応
④ 労働審判・労働訴訟・仮処分の対応
⑤ 労働組合との団体交渉・労働委員会における不当労働行為救済申立事件の対応
⑥ 長時間労働,うつ病,セクハラ,パワハラ,石綿吸引,じん肺等に関する損害賠償請求の対応
等の労働問題の予防解決に力を入れています。
 労働問題(使用者・経営者側)は弁護士藤田進太郎東京)にお任せ下さい。

2 企業法務・訴訟対応等
 様々な業種の企業の顧問弁護士として,企業法務全般・訴訟対応等を行っています。

3 企業向けの一般労働相談
 顧問弁護士となっていない企業向けの一般労働相談を行っていますので,従業員とのトラブル等,労働問題でお悩みでしたら,お気軽にご相談下さい。   

4 倒産処理・破産管財業務
 企業の代理人として破産を申し立てたり,東京地裁から破産管財人に選任されて破産管財業務を行ったりしています。

5 その他
 経営者・人事労務担当者向けに,労働問題に関するセミナー講師等(所長ご挨拶ページ「主な講師担当セミナー・講演・著作等」参照)を行っています。
 その他,顧問弁護士を務めている企業の関係者からの様々な相談に応じています。

弁護士 藤田 進太郎

石綿判決言渡期日とマスコミの取材

2012-10-15 | 日記
10月30日(火)13:15,私が会社側代理人を務めた事件に関し,東京地裁522号法廷で判決が言い渡されます。
会社の元従業員の遺族が,元従業員が死亡したのは業務遂行中に石綿を吸引したのが原因だなどと主張し,会社の安全配慮義務違反等を理由として,損害賠償請求をしている事案です。
既に労働者災害補償保険の支給決定が行われている中,会社の業務と損害との間の相当因果関係,会社の安全配慮義務違反の有無が正面から争われているのが特徴的な事案です。

本日,同事件に関し,裁判所から電話があり,当日は取材がなされる予定だから,出頭するのであれば5分前には着席して欲しいとのことでした。
通常は,判決期日は欠席して,後から秘書が判決書を書記官室に取りに行って終わりなのですが,マスコミの取材が入るような事件ですから,判決言渡期日にも出頭して来ようと思います。
いい結果が出るといいのですが。

弁護士 藤田 進太郎

業務上のミスを繰り返して,会社に損害を与える。

2012-10-09 | 日記
Q27 業務上のミスを繰り返して,会社に損害を与える。

 基本的には適正な採用,社員の適性に合った配置・人事異動,十分な注意・指導・教育,人事考課,保険加入によるリスク管理等で対処すべき問題だと思います。
 業務上のうっかりミス(過失)については,損害賠償請求はなかなか認められないし,認められたとしても損害額の一部にとどまり,実際の回収可能性も低いことが多いというのが実情です。
 事前の対策としては,業務上のミスによる損害を,当該社員に対する損害賠償請求で填補できるものとは考えるべきではありません。

 懲戒処分,解雇損害賠償請求をするためには,どのようなミスを繰り返し,会社がどのような損害を被ったのかの説明ができるようにしておく必要があります。
 その都度記録を残し,始末書を取るなどして,証拠を残しておくべきです。

 社員の故意又は重過失により会社が損害を被った場合には,社員に対して損害賠償請求をすることができます。
 社員に軽過失しかない場合に損害賠償請求できるかどうかは事案次第ですが,軽過失は免責される事例が多くなっています。
 また,そもそも,就業規則に故意又は重過失により会社に損害を与えた場合には社員が損害賠償義務を負う旨の規定がある場合は,通常は軽過失は免責される趣旨と解釈されるため,故意又は重過失の有無が問題となり,軽過失の有無は問題となりません。

 社員に損害賠償義務が認められる場合であっても,賠償義務を負う損害額は損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度にとどまるため,故意によるものでない限り,社員に対し請求できる損害額は全体の一部にとどまることが多いということをよく理解しておく必要があります。
 労働契約の不履行について違約金を定め,損害賠償額を予定する契約をすることは禁止されているため(労基法16条),社員がミスした場合に賠償すべき損害額を予め定めても無効となります。

 損害賠償額を賃金から控除するのは,賃金の全額払いの原則(労基法24条1項)に反し無効とされるリスクがあるため,賃金からの控除ではなく,振り込ませるなどして支払わせるのが無難だと思います。

 社員に対し損害賠償請求できる場合であっても,身元保証人に対し同額の損害賠償請求できるとは限りません。
 裁判所は,身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき社員の監督に関する会社の過失の有無,身元保証人が身元保証をなすに至った事由及びこれをなすに当たり用いた注意の程度,社員の任務又は身上の変化その他一切の事情を斟酌するものとされており(身元保証に関する法律5条),賠償額がさらに減額される可能性があります。

弁護士 藤田 進太郎

会社の業績が悪いのに,賃金減額に同意しない。

2012-10-09 | 日記
Q26 会社の業績が悪いのに,賃金減額に同意しない。

 賃金減額の方法としては,①労働協約,②就業規則の変更,③個別同意によることが考えられます。

 労働組合との間で賃金に関する労働協約を締結した場合,それが組合員にとって有利であるか不利であるか,当該組合員が賛成したか反対したかを問わず,労働協約で定められた賃金額が労働契約で定められた賃金額に優先して適用されるのが原則です(労組法16条)。
 したがって,労働者が賃金減額に反対していたとしても,当該労働者が加入している労働組合との間で賃金を減額することを内容とする労働協約を締結すれば,賃金を減額することができることになります。
 労働協約が締結されるに至った経緯,当時の会社の経営状態,同協約に定められた基準の全体としての合理性に照らし,同協約が特定の又は一部の組合員を殊更不利益に取り扱うことを目的として締結されたなど労働組合の目的を逸脱して締結されたものである場合には,その規範的効力を否定され(朝日海上火災保険(石堂・本訴)事件最高裁第一小法廷平成9年3月27日判決),賃金減額の効力が生じませんが,例外的場面といえるでしょう。

 労働協約の規範的効力が及ぶ範囲は組合員との範囲と一致するため,労働協約締結後に組合員となった者にも労働協約の規範的効力が及びますが,労働組合を脱退した場合には労働協約の規範的効力が及ばなくなります。
 したがって,労働協約による賃金減額の効力が及ぶのは,原則として労働協約を締結した労働組合の労働組合員に限られることになります。

 労働協約には,労組法17条により,一の工場事業場の4分の3以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは,当該工場事業場に使用されている他の同種労働者に対しても右労働協約の規範的効力が及ぶ旨の一般的拘束力が認められており,この要件を満たす場合には,賃金減額に反対する未組織の同種労働者に対しても労働協約の効力を及ぼし,賃金を減額することができます。
 労働協約によって特定の未組織労働者にもたらされる不利益の程度・内容,労働協約が締結されるに至った経緯,当該労働者が労働組合の組合員資格を認められているかどうか等に照らし,当該労働協約を特定の未組織労働者に適用することが著しく不合理であると認められる特段の事情があるときは,労働協約の規範的効力を当該労働者に及ぼし,賃金を減額することはできません(朝日海上火災保険(高田)事件最高裁第三小法廷平成8年3月26日判決)が,例外的場面といえるでしょう。

 具体的に発生した賃金請求権を事後に締結された労働協約により処分又は変更することは許されません。

 少数組合に加入している組合員に対しては,労組法17条の一般的拘束力は及びませんので,少数組合に加入している組合員の賃金を減額するためには,当該少数組合と労働協約を締結するか,就業規則を変更するか,個別同意を取る必要があります。
 未組織組合員に一般的拘束力が及ばない場合に賃金を減額するためには,就業規則を変更するか,個別同意を取る必要があります。

 就業規則により賃金を減額する場合は,就業規則の不利益変更に該当するため,就業規則の変更が有効となるためには,以下のいずれかの場合である必要があります。
① 労働者と合意して就業規則を変更したとき(労契法9条反対解釈)
② 変更後の就業規則を周知させ,かつ,就業規則の変更が,労働者の受ける不利益の程度,労働条件の変更の必要性,変更後の就業規則の内容の相当性,労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき(労契法10条)

 ①に関し,「就業規則の不利益変更は,それに同意した労働者には同法9条によって拘束力が及び,反対した労働者には同法10条によって拘束力が及ぶものとすることを同法は想定し,そして上記の趣旨からして,同法9条の合意があった場合,合理性や周知性は就業規則の変更の要件とはならないと解される。」(協愛事件大阪高裁平成22年3月18日判決)との見解が妥当と思われますが,労働者の同意があれば合理性や周知性は就業規則の変更の要件とはならないとの見解に立ったとしても,合意の認定は慎重になされるのが通常であるため,最低限,書面による同意を取る必要があります。
 労働者が就業規則の変更を提示されて異議を述べなかったといったことだけでは足りません。
 特に,合理性を欠く就業規則の変更については,書面による同意を取ったとしても,労働者の同意があったとは認定されないリスクが高いでしょう。

 ②に関し,賃金,退職金など労働者にとって重要な権利,労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については,当該条項が,そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において,その効力を生ずるとするのが最高裁判例です。
 賃金の減額には高度の必要性が必要となります。

 体的に発生した賃金請求権を事後に変更された就業規則の遡及適用により処分又は変更することは許されないとするのが最高裁判例です。

 社員から個別同意を取ることにより賃金減額をすることも考えられますが,個別合意よりも社員に有利な労働条件を定めた労働協約,就業規則が存在する場合には,それらの効力が個別合意に優先するため(労組法16条,労契法12条),個別合意により賃金を減額することはできません。
 個別合意よりも社員に有利な労働条件を定めた労働協約,就業規則が存在しない場合は,個別合意により賃金を減額することができますが,賃金減額に対する同意の認定は慎重になされることが多いので,最低限,書面での同意を取っておく必要があります。
 賃金減額に異議を述べずに勤務を続けたから黙示の同意があったと説明を受けることがありますが,賃金減額に異議を述べずに勤務を続けたという程度で,黙示の同意があったと認定してもらうのは難しいケースが多いというのが実情です。

 「既発生の」賃金債権の減額に対する同意は,既発生の賃金債権の一部を放棄することにほかなりませんから,それが有効であるというためには,それが労働者の自由な意思に基づいてされたものであることが明確である必要があります(シンガーソーイングメシーン事件最高裁第二小法廷昭和48年1月19日判決)。
 「未発生の」賃金債権の減額に対する同意についても「賃金債権の放棄と同視すべきものである」とする裁判例もあるが,「未発生の」賃金債権の減額に対する同意は,労働者と使用者が合意により将来の賃金額を変更した(労契法8条参照)に過ぎず,賃金債権の放棄と同視することはできないのですから,通常の同意で足りると考えるべきです(北海道国際空港事件最高裁第一小法廷平成15年12月18日判決参照)。

 就業規則に一定額・割合以上の定期昇給を行う義務が定められている場合に定期昇給を凍結するためには,定期昇給を凍結する旨の労働協約を締結するか,定期昇給を凍結する旨就業規則の附則に定める等の就業規則の変更が必要となります。
 労働協約を締結できず,定期昇給を凍結する旨の就業規則の変更に関し同意が得られない場合は,就業変更により一方的に労働条件の変更をせざるを得ませんが,その合理性(労契法10条)の有無が問題となります。
 就業規則に一定額・割合以上の定期昇給を行う義務が定められておらず,使用者に定期昇給の努力義務が課せられているに過ぎない場合は,定期昇給をしなくても法的問題はありません。

 ベースアップは労使交渉により特段の決定がなされない限り行う必要がありません。

 個別労働契約,就業規則,労働協約で一定額・割合の賞与を支給する義務が定められていない場合には,使用者には賞与を支給する義務がないため,賞与不支給としても法的には問題がありません。
 他方,一定額・割合の賞与を支給する義務が定められている場合は,賞与を支給する義務があります。
 賞与を支給する義務がある場合に,就業規則の定めを変更して賞与不支給とする場合には,就業規則の不利益変更の問題となるため,その合理性の有無が問題となります。

 賃金規定で定められた諸手当の廃止,支給停止を行う場合は,賃金規定を変更したり,附則に支給を停止する旨定めたりする必要があり,就業規則の不利益変更の問題となります。

 年俸制を採用した場合に,年度途中で年俸額を一方的に引き下げることができるか,次年度の年俸額引下げを求めたところ合意が成立しない場合における次年度の年俸額がどうなるかは,当該労働契約の解釈の問題です。
 労働契約上明確にしておけば,原則としてそれに従うことになりますが,労働契約上明確でない場合は,年度途中で年俸額を一方的に引き下げることはできないケースが多い印象です。
 次年度の年俸額引下げを求めたところ合意が成立しない場合における次年度の年俸額については,使用者の提示額を超えては請求できないとされた裁判例,前年度実績の年俸額を支給すべきものとされた裁判例等,様々な裁判例があります。

 会社の業績が悪いことを理由とした休業がなされた場合は,通常は使用者の責めに帰すべき事由があると言わざるを得ないため,平均賃金の60%以上の休業手当(労基法26条)を支払う必要があります。
 休業手当の支給義務は,労働協約,就業規則,個別合意により排除することはできません(労基法13条)。

 平均賃金の60%の休業手当を支払う旨の労働協約が締結された場合には,当該労働組合の組合員については,平均賃金の60%の休業手当を支払えば足ります。

 少数組合の組合員など,労働協約の効力が及ばない社員に対し,平均賃金の60%の休業手当を超えて賃金を支払う必要があるかどうかについては,従来,民法536条2項の「使用者の責めに帰すべき事由」の存否の問題として争われてきました。
 使用者が労働者の正当な(労働契約上の債務の本旨に従った)労務の提供の受領を明確に拒絶した場合(受領遅滞に当たる場合)に,その危険負担による反対給付債権を免れるためには,その受領拒絶に「合理的な理由がある」など正当な事由があることを主張立証すべきであり,その合理性の有無は,具体的には,使用者による休業によって労働者が被る不利益の内容・程度,使用者側の休業の実施の必要性の内容・程度,他の労働者や同一職場の就労者との均衡の有無・程度,労働組合等との事前・事後の説明・交渉の有無・内容,交渉の経緯,他の労働組合又は他の労働者の対応等を総合考慮して判断すべきものとされる(いすゞ自動車事件宇都宮地裁栃木支部平成21年5月12日判決)。
 民法536条2項は任意規定であり,特約で排除することもできるため,就業規則において休業期間中は平均賃金の60%の休業手当のみを支払う旨明確に定めておけば,これを超える賃金を支払う義務はないはずですが,就業規則の規定が有効となるためには合理性や周知性が必要となることもあり(労契法7条),事案によっては適用が制限されるリスクがないわけではありません。

 大多数の社員の理解を得られないまま休業を行った場合,会社経営に支障が生じる可能性が高いため,休業は,少なくとも多数派の同意を得てから行うべきでしょう。

弁護士 藤田 進太郎

管理職なのに残業代を請求してくる。

2012-10-09 | 日記
Q21 管理職なのに残業代を請求してくる。

 管理職であっても,労基法上の労働者である以上,原則として労基法37条の適用があり,週40時間,1日8時間を超えて労働させた場合,法定休日に労働させた場合,深夜に労働させた場合は,時間外労働時間,休日労働,深夜労働に応じた残業代(割増賃金)を支払わなければならないのが原則です。
 当該管理職が,労基法41条2号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)に該当すれば,労働時間,休憩,時間外・休日割増賃金,休日,賃金台帳に関する規定は適用除外となりますので,その結果,労基法上,使用者は時間外・休日割増賃金の支払義務を免れることになりますが,裁判所の考えている管理監督者の要件を充足するのは,本社の幹部社員など,ごく一部と考えられますので,通常は,管理監督者扱いとすることで残業代の支払義務を免れることができると考えるべきではありません。
管理監督者としていた社員から労基法37条に基づく割増賃金の請求を受けるリスクを負いたくない場合は,管理監督者とする管理職の範囲を狭く捉えて上級管理職に限定し,その他の管理職は最初から管理監督者としては取り扱わずに残業代を満額支給し,基本給や賞与等の金額を抑えることで,総賃金額を調整したほうが無難かもしれません。

 管理監督者であっても,深夜労働に関する規定は適用されますので,管理職が管理監督者であるかどうかにかかわらず,深夜割増賃金(労基法37条3項)を支払う必要があることに変わりはありません(ことぶき事件最高裁第二小法廷平成21年12月18日判決)。
 また,労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は無効となり,無効となった部分については労基法で定める基準が適用されますので(労基法13条),就業規則等で管理職には残業代を支給しない旨規定したり,個別労働契約で管理職であることを理由として残業代を支給しない旨規定し労働者に署名押印させるなどしてその同意を得ていたとしても,深夜割増賃金の支払義務は免れませんし,当該管理職が労基法上の管理監督者に該当しない限りは,深夜割増賃金以外の残業代(時間外・休日割増賃金)についても,支払義務を免れないことになります。

 管理監督者は,一般に,「労働条件の決定その他労務管理について,経営者と一体的な立場にある者」をいうとされ,管理監督者であるかどうかは,
① 職務の内容,権限及び責任の程度
② 実際の勤務態様における労働時間の裁量の有無,労働時間管理の程度
③ 待遇の内容,程度
等の要素を総合的に考慮して,判断されることになります。

 ①職務の内容,権限及び責任の程度を検討するにあたっては,労務管理を含む事業経営上重要な事項にかかわっているか,事業経営に関する決定過程にどの程度関与しているか,現場業務(管理監督以外の仕事)にどの程度従事していたか,他の従業員の職務遂行・労務管理に対する関与の程度,管理監督者として扱われている社員の割合等が考慮されるます。
 ②実際の勤務態様における労働時間の裁量の有無,労働時間管理の程度を検討するにあたっては,タイムカード等による始業終業時刻管理の有無,欠勤控除の有無等が考慮されます。
 ③待遇の内容,程度を検討するにあたっては,役職手当や賃金の額が役職に見合っているか,社内における賃金額の順位,管理職になった後の賃金総額と管理職になる前の賃金総額との比較等が考慮されます。

弁護士 藤田 進太郎

残業代込みの給料であることに納得して入社したにもかかわらず,残業代の請求をしてくる。

2012-10-09 | 日記
Q19 残業代込みの給料であることに納得して入社したにもかかわらず,残業代の請求をしてくる。

 残業代割増賃金)の支払は労基法37条で義務付けられているものですが,労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,労基法で定める基準に達しない労働条件を定める部分についてのみ無効となり,無効となった部分は労基法で定める労働基準となりますので(労基法13条),労基法37条に定める残業代を支払わないとする合意は無効となるため,残業代を支払わなくても異存はない旨の誓約書に署名押印させてから残業させた場合であっても,使用者は残業代の支払義務を免れることはできないことになります。

 割増部分(残業代に相当する金額)を特定せずに,基本給に残業代全額が含まれる旨合意し,合意書に署名押印させていたとしても,これを有効と認めてしまうと,残業代を支払わずに時間外労働等をさせるのと変わらない結果になってしまうため,残業代の支払があったとは認められません。
 この結論は,年俸制社員であっても,変わりません。
 モルガン・スタンレー・ジャパン(超過勤務手当)事件東京地裁平成17年10月19日判決では,割増部分(残業代に相当する金額)が特定されていないにもかかわらず,基本給に残業代が含まれているとする会社側の主張が認められていますが,基本給だけで月額183万円超えている(別途,多額のボーナス支給等もある。)等,追加の残業代の請求を認めるのが相当でない特殊事情があった事案であり,通常の事例にまで同様の判断がなされると考えることはできません。

 残業代
が賃金に含まれている旨の合意が有効であるというためには,通常の労働時間の賃金に当たる部分と残業代に当たる部分とを判別することができる必要があります。
 割増部分(残業代に相当する金額)が特定されていない場合は,残業代が全く支払われていない前提で残業代が算定され,その支払義務を負うことになります。
 一般的には,支給した残業代の額が労基法37条及び同法施行規則19条の計算方法で計算された金額以上となっているかどうか(不足する場合はその不足額)を計算できる定め方であれば,通常の労働時間の賃金に当たる部分と残業代に当たる部分とを判別することができると評価することができるものと思われます。
 労基法上の計算方法で残業代の金額を計算した結果,残業手当等の金額で不足する場合は,不足額を当該賃金の支払期(当該賃金計算期間に対応する給料日)に支払う法的義務が生じることになります。

 小里機材事件東京地裁昭和62年1月30日判決が「傍論」で,「仮に,月15時間の時間外労働に対する割増賃金を基本給に含める旨の合意がされたとしても,その基本給のうち割増賃金に当たる部分が明確に区別されて合意がされ,かつ労基法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払うことが合意されている場合にのみ,その予定割増賃金分を当該月の割増賃金の一部又は全部とすることができるものと解すべき」判断し,控訴審判決である東京高裁昭和62年11月30日判決はこの地裁判決の判決理由を引用して控訴を棄却し,上告審の最高裁第一小法廷昭和63年7月14日判決も高裁の認定判断は正当として是認することができるとして上告を棄却していることから,労働者側から,割増部分が「明確に」区別されていないから残業代の支払がなされていると評価することはできないとか,労基法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払うことが合意されていないから固定残業代部分を残業代の弁済と評価することはできないとかいった主張がなされることがあります。
 この論争を回避するためには,固定残業代の「金額」を明示して給与明細書・賃金台帳の時間外手当欄等にもその金額を明確に記載しておくとともに,賃金規定に労基法所定の計算方法による額が固定残業代の額を上回る場合にはその不足額を支払う旨規定し,周知させておくとよいでしょう。
 もっとも,労基法所定の計算方法による額が固定残業代の額を上回る場合にはその不足額を支払わなければならないことは労基法上当然のことであり,裁判実務上,この点を独立の要件とは考えないのが一般的です。

 労働条件通知書等において基本給と時間外手当を明確に分けて「基本給○○円,残業手当○○円」と定め,給与明細書や賃金台帳でも項目を分けて金額を明示しているものについては,支給した残業代の額が労基法37条及び同法施行規則19条の計算方法で計算された金額以上となっているかどうかを容易に計算できるのが通常のため,通常の労働時間の賃金に当たる部分と残業代に当たる部分とを判別することができるものといえ,有効性が否定されるリスクは低いと思われます。
 ただし,「基本給15万円,残業手当15万円」といったように,残業手当の比率が極端に高い場合は,合意内容があまりにも労働者に不利益なため,合意の有効性が否定されるリスクが高くなりますので,避けるべきです。
 やり過ぎはよくありません。

 「基本給には,45時間分の残業手当を含む。」といった規定の仕方も広く行われており,一応,通常の労働時間の賃金に当たる部分と残業代に当たる部分とを判別することができるといえなくもありませんので,一般には有効と考えられています。
 しかし,給与明細書・賃金台帳の時間外手当欄が空欄となっていたり,0円と記載されていたりすることが多く,一見して残業代が支払われているようには見えないため,紛争となりやすくなっています。
 また,「45時間分の残業手当」が何円で,残業手当以外の金額が何円なのかが一見して分からず,方程式を解くようなやり方をしないと,残業代に相当する金額と通常の賃金に相当する金額を算定できなかったり,45時間を超えて残業した場合にどのように計算して追加の残業代を計算すればいいのか分かりにくかったりすることがあるため,有効性が否定されるリスクが残ります。
 労基法上,深夜の時間外労働(50%増し以上),法定休日労働の割増賃金額(35%増し以上)等は,通常の時間外労働の割増賃金額(25%増し以上)と単価が異なりますが,どれも等しく「45時間分」の時間に含まれるのか,あるいは時間外勤務分だけが含まれており,深夜割増賃金や法定休日割増賃金は別途支払う趣旨なのか,その文言だけからでは明らかではないこともあります。
 支給した固定残業代の額が労基法37条及び同法施行規則19条の計算方法で計算された金額以上となっているかどうか(不足する場合はその不足額)を容易に計算できるような定め方にしておくべきでしょう。

 営業手当,役職手当,特殊手当等,一見して残業代の支払のための手当であるとは読み取れない手当を残業代の趣旨で支給する場合は,賃金規定等にその全部又は一部が残業代の支払の趣旨である旨明記して周知させておく必要があります。
 労働条件通知書や賃金規定等に残業代の趣旨で支給する旨明記されていないと,裁判所に残業代の支払であると認定してもらうのが難しくなります。
 これに対し,「残業手当」「時間外勤務手当」等,一見して残業代(割増賃金)の支払のための手当であることが分かる名目で支給し,給与明細書にその金額の記載がある場合は,リスクが小さくなります。
 営業手当,役職手当,特殊手当等,一見して残業代の支払のための手当であるとは読み取れない手当の「一部」を残業代の趣旨で支給する場合にも,割増部分(残業代に相当する金額)を特定して支給しないと,残業代の支払とは認められません。
 例えば,役職手当として5万円を支給し,残業代が含まれているという扱いにしている場合,役職者としての責任等に対する対価が何円で,残業代が何円なのか分からないと,残業代の支払が全くなされていないことを前提として残業代額が算定され,支払義務を負うことになります。
 管理監督者についても,深夜割増賃金の算定,支払が必要となるため,同様の問題が生じ得ます。

 固定残業代の比率が高い会社は,長時間労働が予定されていることが多く,1月あたりの残業時間が80時間とか,100時間に及ぶことも珍しくありません。
 長時間労働を予定した給与体系を採用し,長時間労働により社員が死亡する等した場合は,会社が多額の損害賠償義務を負うことになるだけでなく,代表取締役社長その他の会社役員も高額の損害賠償義務を負うことになるリスクもあります。
 固定残業代の金額は,1月当たり45時間分程度の金額に抑えることが望ましく,月80時間分の残業代を超えるような金額にすべきではありません。
 固定残業代の比率が高い会社は,賃金単価が低いことが多く(極端な場合は時給1000円を下回り,賞与を考慮しないとパート・アルバイトよりも時給単価が低いことさえあります。),優秀な社員が集まりにくく,社員の離職率も高くなりがちで,有能な社員ほど,すぐに退職してしまう傾向にあります。
 固定残業代の比率が高い会社は,体裁が悪いせいか,採用募集広告では,固定残業代の比率が高いことを隠そうとする傾向にあります。
 その結果,入社した社員は騙されたような気分になり,すぐに退職したり,トラブルに発展したりすることになりがちです。
 採用募集広告に明示できないような給与体系は採用しないようにする必要があります。

弁護士 藤田 進太郎

退職届を提出したのに,後になってから退職の撤回を求めてくる。

2012-10-08 | 日記
Q17 退職届を提出したのに,後になってから退職の撤回を求めてくる。

 退職届の提出は,通常は合意退職の申し出と評価することができます。
 合意退職は退職の申込みに対する承諾がなされて初めて成立しますから,合意退職の申し出をした社員は,社員の退職に関する決裁権限のある人事部長や経営者が承諾の意思表示をするまでは,信義則に反するような特段の事情がない限り,退職を撤回することができることになります。
 したがって,退職を早期に確定したい場合は,退職を承諾する旨の意思表示を早期に行う必要があります。
 退職を認める旨の決済が内部的になされただけでは足りません。

 退職届を提出した社員から,心裡留保(民法93条),錯誤(民法95条),強迫(民法96条)等が主張されることもありますが,なかなか認められません。
 退職するつもりはないのに,反省していることを示す意図で退職届を提出したことを会社側が知ることができたような場合は,心裡留保(民法93条ただし書き)により,退職は無効となります。
 錯誤,強迫が認められやすい典型的事例は,「このままだと懲戒解雇は避けられず,懲戒解雇だと退職金は出ない。ただ,退職届を提出するのであれば,温情で受理し,退職金も支給する。」等と社員に告知して退職届を提出させたところ,実際には懲戒解雇できるような事案ではなかったことが後から判明したようなケースです。
 懲戒事由の存在が明白ではない場合は,懲戒解雇の威嚇の下,自主退職に追い込んだと評価されないようにしなければなりません。
 退職勧奨を行うにあたっては,「解雇」という言葉は使わないことをお勧めします。

 退職自体は有効であっても,退職勧奨のやり方次第では,慰謝料の支払を命じられることがあります。
 退職勧奨のやり取りは,無断録音されていることが多く,録音記録が訴訟で証拠として提出された場合は,証拠として認められてしまいます。
 退職勧奨を行う場合は,無断録音されていても不都合がないよう気をつけて下さい。

 退職届等の客観的証拠がないと,口頭での合意退職が成立したと会社が主張しても認められず,在職中であるとか,解雇されたとか認定されることがあります。
 退職の申出があった場合は漫然と放置せず,速やかに退職届を提出させて証拠を残しておくようにして下さい。
 印鑑を持ち合わせていない場合は,差し当たり,署名があれば十分です。
 後から印鑑を持参させて,面前で押印させるようにして下さい。

弁護士 藤田 進太郎

退職勧奨したところ,解雇してくれと言い出す。

2012-10-08 | 日記
Q15 退職勧奨したところ,解雇してくれと言い出す。

 退職勧奨した社員から解雇してくれと言われたからといって,安易に解雇すべきではありません。
 後日,解雇が無効であることを前提として,多額の賃金請求を受けるリスクがあります。
 有効な解雇をすることは,必ずしも容易ではありません。
 当該社員が退職することに同意しているのであれば,解雇するのではなく,退職届か合意退職書に署名押印してもらうべきです。

 即時解雇した場合,解雇予告手当の請求を受けることがありますが,解雇予告手当は平均賃金の30日分を支払えば足りますので(労基法20条1項),1か月分の給料の金額程度に過ぎず,たかが知れています。
 解雇予告手当の請求は,解雇の効力を争わないことを前提とした請求なので,解雇予告手当の請求を受けた場合は,むしろ運がよかったと考えられる事案が多いと考えます。
 解雇の無効を前提として,解雇日以降の賃金請求がなされた場合に会社が負担する可能性がある金額は,高額になることが多いからです。
 単純化して説明しますと,月給30万の社員を解雇したところ,解雇の効力が争われ,2年後に判決で解雇が無効と判断された場合は,既発生の未払賃金元本だけで,30万円×24か月=720万円の支払義務を負うことになります。
 解雇が無効と判断された場合,実際には全く仕事をしていない社員に対し,毎月の賃金を支払わなければならないことを理解しておく必要があります。

 最近では,経営者を挑発して解雇させ,多額の金銭を獲得してから転職しようと考える社員も出てきています。
 また,退職勧奨,解雇のやり取りは,無断録音されていることが多く,録音記録が訴訟で証拠として提出された場合は,証拠として認められてしまいます。
 退職勧奨,解雇を行う場合は,感情的にならないよう普段以上に心掛け,無断録音されていても不都合がないようにしなければなりません。

 労働者側弁護士事務所のウェブサイトの中には,解雇されるとお金をもらえるチャンスであるかのような宣伝しているものも見受けられます
 解雇問題を「ビジネス」として考えている労働者側弁護士もいることに注意しなければなりません。

 解雇してくれと言われて解雇したところ,解雇の効力が争われ,解雇が無効と判断されるリスクが高いような場合は,解雇を撤回し,就労を命じる必要がある場合もあります。
 この場合,概ね,解雇日の翌日から解雇撤回後に就労を命じた初日の前日までの解雇期間に対する賃金の支払義務を負うことになります。
 解雇を撤回して就労を命じた場合,実際に戻ってくるのは3人~4人に1人程度という印象です。
 解雇期間中の賃金請求をする目的で形式的に復職を求める体裁を取り繕う労働者が多いですが,要望どおり解雇を撤回して就労命令を出してみると,いろいろ理由を付けて,実際には復職してこないことも多いというのが実情です。
 ただし,労働組合の支援がある場合は,復職してくる確率が高くなるものと思われます。

 勤務態度が悪い社員,能力が著しく低い社員を退職勧奨したところ,解雇して欲しいと言われ,本当の理由を告げて解雇すると本人が傷つくからといった理由で,解雇理由を「事業の縮小その他やむを得ない事由」等による会社都合の解雇(整理解雇)とする事案が散見されます。
 このような事案で解雇の効力が争われた場合,整理解雇の有効要件を満たさない以上,会社側が負ける可能性が高くなります。
 解雇が避けられない場合,ありのままの解雇理由を伝える必要があります。
 無用の気遣いをして,ありのままの解雇理由を伝えられないと,裏目の結果となることが多くなります。

 「事業主から退職するよう勧奨を受けたこと。」(雇用保険法施行規則36条9号)は,「特定受給資格者」(雇用保険法23条1項)に該当するため(雇用保険法23条2項2号),退職勧奨による退職は会社都合の解雇等の場合と同様の扱いとなり,労働者が失業手当を受給する上で不利益を受けることにはなりません。
 つまり,失業手当の受給条件を良くするために解雇する必要はありません。
 退職届を出してしまうと,失業手当の受給条件が不利になると誤解されていることがありますので,丁寧に説明し,誤解を解く努力をするようにして下さい。
 なお,助成金との関係でも,会社都合の解雇をしたのと同様の取り扱いとなることには,注意が必要です。

 解雇が無効と判断された場合に,解雇期間中の賃金として使用者が負担しなければならない金額は,当該社員が解雇されなかったならば労働契約上確実に支給されたであろう賃金の合計額です。
 解雇当時の基本給等を基礎に算定されますが,各種手当,賞与を含めるか,解雇期間中の中間収入を控除するか,所得税等を控除するか等が問題となります。
 通勤手当が実費保障的な性質を有する場合は,通勤手当について負担する必要はありません。
 残業代は,時間外・休日・深夜に勤務して初めて発生するものですから,通常は負担する必要がありませんが,一定の残業代が確実に支給されたと考えられる場合には,残業代についても支払を命じられる可能性があります。
 賞与の支給金額が確定できない場合は,解雇が無効と判断されても,支払を命じられませんが,支給金額が確定できる場合は,賞与についても支払が命じられることがあります。

 解雇された社員に解雇期間中の中間収入がある場合は,その収入があったのと同時期の解雇期間中の賃金のうち,同時期の平均賃金の6割(労基法26条)を超える部分についてのみ控除の対象となるとするのが,最高裁判例です。
 中間収入の額が平均賃金額の4割を超える場合には、更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(賞与等)の全額を対象として利益額を控除することが許されることになります。

 賃金から源泉徴収すべき所得税,控除すべき社会保険料については,これらを控除する前の賃金額の支払が命じられることになります。
 その上で,実際の賃金支払に当たり,所得税等を控除することになります。

 仮処分で賃金の仮払いが命じられ,仮払いをしていたとしても,判決では仮払金を差し引いてもらえません。
 賃金の支払を命じる判決が確定した場合は,労働者代理人と連絡を取って,既払の仮払金の充当について調整する必要があります。
 他方,賃金請求が認められなかった場合は,仮払金の返還を求めることになりますが,労働者が無資力となっていて,回収が困難なケースもあります。

弁護士 藤田 進太郎

試用期間中の本採用拒否(解雇)なのに,解雇は無効だと主張して,職場復帰を求めてくる。

2012-10-08 | 日記
Q14 試用期間中の本採用拒否(解雇)なのに,解雇は無効だと主張して,職場復帰を求めてくる。

 使用者と試用期間中の社員との間では,既に留保解約権の付いた労働契約が成立していると考えられる事案がほとんどです。
 本採用拒否の法的性質は,留保された解約権の行使であり,解雇の一種ということになるのが通常のため,解雇権濫用法理(労働契約法16条)が適用されることになります。
 採用の場面とは異なりますから,試用期間中だからといって,自由に本採用拒否(解雇)できるわけではありません。

 試用期間中の解雇は緩やかに認められるというイメージがありますが,それは,「当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実」に基づく本採用拒否について言えることであって,採用当初から知り得た事実を理由とした場合は,緩やかな基準で解雇することはできません。
 例えば,本採用拒否(解雇)したところ,「本採用拒否の理由となるような事情がない。」といった趣旨の指摘がなされたことに対する反論として,「本採用拒否の理由となるような事情がないようなことを言っているが,そんなことはない。採用面接の時から,あいつがダメなやつだということは分かっていた。」というようなものは,通用しないことになります。

 試用期間満了前の本採用拒否(解雇)についてですが,使用者の立場からすれば,試用期間を設ける意味は,採用決定後も社員として雇用し続けるか否かの判断を留保し,試用期間満了時までに社員としての適格性を審査して,社員として相応しくないと判断した場合に本採用を拒否して雇用を打ち切ることにありますので,試用期間満了前であっても社員として不適格であると判断した場合は,早期に本採用拒否(解雇)して雇用を打ち切りたいところかもしれません。
 しかし,労働者からすれば,少なくとも試用期間中は雇用を継続してもらえると期待するのが通常であり,試用期間満了前の本採用拒否(解雇)が容易に認められてしまうと,このような労働者の期待が裏切られる結果となってしまいますから,採用後間もない時期の本採用拒否(解雇)等,試用期間満了までの期間が長期間残っている時点での本採用拒否(解雇)は,客観的合理性,社会的相当性を欠くものとして無効(労働契約法16条)と判断されるリスクが高いものと考えられます。
 仮に,使用者から,労働者に対し,試用期間満了前であっても本採用拒否(解雇)することがある旨明示し,労働者がそれに同意して採用されたような場合であれば,労働者がそのような期待を持つことはないとも思われますが,試用期間満了時まで本採用するかどうかの最終判断を留保していることに加え,試用期間満了前の本採用拒否(解雇)まで容易に認められてしまうと,使用者の「いいとこ取り」となり,労働者の立場があまりにも不安定となってしまいますから,やはり,試用期間満了までの期間が長期間残っている時点での本採用拒否(解雇)は,客観的合理性,社会的相当性を欠くものとして無効(労働契約法16条)と判断されるリスクが高いものと考えられます。
 試用期間満了前の本採用拒否(解雇)は慎重に考えるべきであり,試用期間満了時まで社員としての適格性を審査しても適格性がないという結論が出ることが明らかな場合に限り行うべきでしょう。

 解雇の予告(労基法20条)が不要なのは,就労開始から14日目までであり,14日を超えて就労した場合は,試用期間中であっても,解雇予告の手続が必要となります(労基法21条但書)。
 就労開始から14日目までなら自由に解雇できると思い込んでいる方もたまにいますが,完全な誤解であり,むしろ,勤務開始間もない時期の本採用拒否(解雇)は解雇権を濫用したものとして無効となる可能性が高いというのが実情ですから,注意が必要です。

 試用期間の残存期間が30日を切ってから本採用拒否(解雇)を通知する場合は,所定の解雇予告手当を支払う等する必要があります。
 試用期間満了ぎりぎりで本採用拒否(解雇)し,解雇予告手当も支払わないでいると,解雇の効力が生じるのはその30日後になってしまうため,試用期間中満了日の解雇(本採用拒否)ではなく,試用期間経過後の通常の解雇と評価されるリスクが生じることになります。

 訴訟で本採用拒否(解雇)の効力を争われた場合には,本採用拒否に客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されるといえるだけの「証拠」がそろっているかどうかが問題となります。
 抽象的に勤務態度が悪いとか,能力が低いとか言っていたところで,裁判官には伝わりません。
 具体的に,何月何日にどういうことがあったのか記録に残しておく必要があります。
 可能であれば,毎日,本人に反省点等を記載させて,指導担当者がコメントするような形式の記録をその都度作成しておくことが望ましいところです。
 本採用拒否が予想される場合は,原則として,本人が達成すべき合理的事項を事前に書面で明示し,本人に努力する機会を与えた上で,それが達成できなかった場合に行うべきと考えます。

 長期雇用を予定した新卒社員については,試用期間中であっても,能力不足を理由とした本採用拒否は難しいと考えておいた方がいいでしょう。
 中途採用者あっても,地位を特定されて採用されたわけではなく,一定の能力を有することを前提として採用されたわけでもない場合,賃金額がそれ程高くない場合,若年層の中途採用の場合等は,能力不足を理由とした本採用拒否は必ずしも容易ではありません。

 本採用拒否に十分な理由がある場合であっても,まずは話合いが先です。
 よく話し合った上で,自主退職を促すべきでしょう。

 採用活動も,試用期間における本採用拒否(解雇)は必ずしも容易ではないことを念頭に置いて行うべきでしょう。
 安易な採用をしてはいけません。
 「取りあえず採用してみて,ダメだったら辞めてもらう。」という発想の会社は,トラブルが多く,社員の定着率が低い傾向にあります。

弁護士 藤田 進太郎

精神疾患を発症して欠勤や休職を繰り返す。

2012-10-08 | 日記
Q12 精神疾患を発症して欠勤や休職を繰り返す。

 精神疾患を発症して欠勤や休職を繰り返す社員については,まず,業務により精神障害が悪化することがないよう配慮する必要があります。
 精神疾患を発症していることを知りながらそのまま勤務を継続させ,その結果,業務に起因して症状を悪化させた場合は,労災となり,会社が安全配慮義務違反を問われて損害賠償義務を負うことになりかねません。
 社員が精神疾患の罹患していることが分かったら,それに応じた対応が必要であり,本人が就労を希望していたとしても,漫然と放置してはいけません。

 所定労働時間内の通常業務であれば問題なく行える程度の症状である場合は,時間外労働や出張等,負担の重い業務を免除する等して対処すれば足りるでしょう。
 しかし,長期間にわたって所定労働時間の勤務さえできない場合は,原則として,私傷病に関する休職制度がある場合は休職を検討し,私傷病に関する休職制度がない場合は普通解雇を検討せざるを得ません。

 精神疾患を発症した労働者が出社してきた場合であっても,労働契約の債務の本旨に従った労務提供ができない場合は,就労を拒絶して帰宅させ,欠勤扱いにすれば足ります。
 労働契約の債務の本旨に従った労務提供ができるかどうかは,職種や業務内容を特定して労働契約が締結された場合は当該職種等についてのみ検討すれば足りるケースが多いですが,職種や業務内容を特定せずに労働契約が締結されている場合は,現に就業を命じた業務について労務の提供が十分にできないとしても,当該社員が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供ができ,かつ,本人がその労務の提供を申し出ているのであれば,債務の本旨に従った履行の提供があると評価されるため(片山組事件最高裁第一小法廷平成10年4月9日判決),他の業務についても検討する必要があります。
 労働契約の債務の本旨に従った労務提供があるかどうかを判断するにあたっては,専門医の助言を参考にする必要があります。
 本人が提出した主治医の診断書の内容に疑問があるような場合であっても,専門医の診断を軽視することはできません。
 主治医への面談を求めて診断内容の信用性をチェックしたり,精神疾患に関し専門的知識経験を有する産業医等への診断を求めたりして,病状を確認する必要があります。
 主治医の診断に疑問がある場合に,会社が医師を指定して受診を命じたところ,本人が指定医への受診を拒絶した場合は,労働契約の債務の本旨に従った労務提供がないものとして労務の提供を拒絶し,欠勤扱いとすることができる可能性がありますが,慎重な検討が必要となります。

 私傷病に関する休職制度は,普通解雇を猶予する趣旨の制度であり,必ずしも休職制度を設けて就業規則に規定しなければならないわけではありません。
 休職制度を設けずに,私傷病に罹患して働けなくなった社員にはいったん退職してもらい,私傷病が治癒したら再就職を認めるといった運用も考えられます。

 明らかに精神疾患を発症しているにもかかわらず,本人が精神疾患の発症や休職事由の存在を否定し,専門医による診断を拒絶することがありますが,精神疾患等の私傷病を発症しておらず健康であるにもかかわらず,労働契約の債務の本旨に従った労務を提供することができていないとすれば,通常は普通解雇事由に該当することになります。
 本人の言っていることが事実だとすれば,普通解雇を検討せざるを得ない旨伝えた上で,専門医による診断を促すのが適切なケースもあるかもしれません。

 精神障害を発症した社員が出社と欠勤を繰り返したような場合であっても,休職させることができるようにしておくべきでしょう。
 例えば,一定期間の欠勤を休職の要件としつつ,「欠勤の中断期間が30日未満の場合は,前後の欠勤期間を通算し,連続しているものとみなす。」等の通算規定を置くか,「精神の疾患により,労務の提供が困難なとき。」等を休職事由として,一定期間の欠勤を休職の要件から外すこと等が考えられます。
 再度,長期間の欠勤がなければ,休職命令を出せないような規定を置くべきではありません。

 私傷病に関する休職制度があるにもかかわらず,精神疾患を発症したため労働契約の債務の本旨に従った労務提供ができないことを理由としていきなり解雇するのは,解雇権を濫用(労契法16条)したものとして解雇が無効と判断されるリスクが高いので,お勧めできません。
 解雇が有効と認められるのは,休職させても回復の見込みが客観的に乏しい場合に限られます。
 医学的根拠もなく,主観的に休職させても回復しないだろうと思い込み,精神疾患に罹患した社員を休職させずに解雇した場合,解雇が無効と判断されるリスクが高くなります。

 本人が休職を希望している場合は,休職申請書を提出させてから,休職命令を出すことになります。
 休職申請書を提出させることにより,休職命令の有効性が争われるリスクが低くなります。

 「合意」により休職させる場合は,休職期間(どれだけの期間が経過すれば退職扱いになるのか。)についても合意しておく必要があります。
 通常,就業規則に規定されている休職期間は,休職「命令」による休職に関する規定であり,合意休職に関する規定ではありません。
 原則どおり,本人から休職申請書を提出させた上で,休職「命令」を出すのが,簡明なのではないでしょうか。

 精神疾患が治癒しないまま休職期間が満了すると退職という重大な法的効果が発生することになりますので,休職命令発令時に,何年の何月何日までに精神疾患が治癒せず,労務提供ができなければ退職扱いとなるのか通知するとともに,休職期間満了前の時期にも,再度,休職期間満了日や精神疾患が治癒しないまま休職期間が満了すれば退職扱いとなる旨通知すべきでしょう。

 休職を繰り返されても,真面目に働いている社員が不公平感を抱いたり,会社の負担が重くなったりしないようにするために最も重要なことは,休職期間は無給とすることです。
 傷病手当金支給申請に協力するのは当然ですが,それを超えて休職期間中も有給とした場合,会社の活力が失われてしまいかねません。
 また,復職後間もない時期(復職後6か月以内等)に休職した場合には,休職期間を通算する(休職期間を残存期間とする)等の規定を置くべきでしょう。
 そのような規定がない場合は,普通解雇を検討せざるを得ませんが,有効性が争われるリスクが高くなります。

 復職の可否は,休職期間満了時までに治癒したか(休職事由が消滅したか)否かにより判断されるのが原則です。
 ただし,職種や業務内容を特定せずに労働契約が締結されている場合は,現に就業を命じた業務について労務の提供が十分にできないとしても,当該社員が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供ができ,かつ,本人がその労務の提供を申し出ているのであれば,債務の本旨に従った履行の提供があると評価されるため(片山組事件最高裁第一小法廷平成10年4月9日判決),他の業務についても労働契約の債務の本旨に従った労務提供ができるかどうかについても検討する必要があります。
 また,休職期間満了時までに精神疾患が治癒せず,休職期間満了時には不完全な労務提供しかできなかったとしても,直ちに退職扱いにすることができないとする裁判例も存在します。
 例えば,エール・フランス事件東京地裁昭和59年1月27日判決は,「傷病が治癒していないことをもって復職を容認しえない旨を主張する場合にあっては,単に傷病が完治していないこと,あるいは従前の職務を従前どおりに行えないことを主張立証すれば足りるのではなく,治癒の程度が不完全なために労務の提供が不完全であり,かつ,その程度が,今後の完治の見込みや,復職が予定される職場の諸般の事情等を考慮して,解雇を正当視しうるほどのものであることまでをも主張立証することを要するものと思料する。」と判示しています。
 休職期間満了時までに精神疾患が治癒せず,休職期間満了時には不完全な労務提供しかできなかったとしても,直ちに退職扱いにすることができないとしたのでは,休職期間を明確に定めた意味がなくなってしまい,使用者の予測可能性・法的安定性が害され妥当ではないと考えられますが,反対の立場を取るにせよ,このような裁判例が存在することを理解した上で対応を検討していく必要があります。

 復職の可否を判断するにあたっては,専門医の助言を参考にする必要があります。
 本人が提出した主治医の診断書の内容に疑問があるような場合であっても,専門医の診断を軽視することはできません。
 主治医への面談を求めて診断内容の信用性をチェックしたり,精神疾患に関し専門的知識経験を有する産業医等への診断を求めたりして,病状を確認する必要があります。
 主治医の診断に疑問がある場合に,会社が医師を指定して受診を命じたところ,本人が指定医への受診を拒絶した場合は,休職期間満了時までに治癒していない(休職事由が消滅していない)ものとして取り扱って復職を認めず,退職扱いとすることができる可能性がありますが,慎重な検討が必要となります。

 休職制度の運用は,公平・平等に行うことが重要です。
 勤続年数等により異なる扱いをする場合は,予め就業規則に規定しておく必要があります。
 休職命令の発令,休職期間の延長等に関し,同じような立場にある社員の扱いを異にした場合,紛争になりやすく,敗訴リスクも高まる傾向にあります。

 精神疾患の発症の原因が,長時間労働,セクハラ,パワハラによるものだから労災だとの主張がなされることがある。精神疾患の発症が労災か私傷病かは,『心理的負荷による精神障害の認定基準』(基発1226第1号平成23年12月26日)を参考にして判断することになりますが,その判断は必ずしも容易ではありません。
 実務的には,労災申請を促して労基署の判断を仰ぎ,審査の結果,労災として認められれば労災として扱い,労災として認められなければ私傷病として扱うこととすれば足りることが多いものと思われます。

 精神疾患の発症が労災の場合,療養するため休業する期間及びその後30日間は原則として解雇することができません(労基法19条1項)。
 欠勤が続いている社員を解雇しようとしたり,休職期間満了で退職扱いにしたりしようとした際,精神疾患の発症は労災なのだから解雇等は無効だと主張されることがあります。
 また,精神疾患の発症が労災として認められた場合,業務と精神疾患の発症との間に相当因果関係が認められたことになるため,労災保険給付でカバーできない損害(慰謝料等)について損害賠償請求を受けるリスクも高くなります。

弁護士 藤田 進太郎