弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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試用期間中の社員であれば,自由に本採用拒否(解雇)できますよね?

2014-07-31 | 日記

試用期間中の社員であれば,自由に本採用拒否(解雇)できますよね?

 使用者と試用期間 中の社員との間では,既に留保解約権の付いた労働契約が成立していると考えられる事案が多く,本採用拒否の法的性質は,留保された解約権の行使(解雇 )と評価されるのが通常です。
 本採用拒否は,既に採用した社員の解雇であり,新たに採用する場面とは異なりますから,試用期間中だからといって,自由に本採用拒否(解雇)できるわけではなく,「解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」(三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決)ことになります。


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試用期間中の本採用拒否(解雇)であれば,解雇予告も解雇予告手当の支払もいりませんよね?

2014-07-31 | 日記

試用期間中の本採用拒否(解雇)であれば,解雇予告も解雇予告手当の支払もいりませんよね?

 この質問は,おそらく,労基法21条4号の「試の使用期間中の者」が,解雇予告に関する労基法20条の適用を除外されているようにも読めることから出てきたものと思われます。
 しかし,労基法21条但書では,「第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合においては,この限りでない。」と規定されており,解雇予告を考えなくていいのは,入社日から最初の14日間だけです。
 入社から2週間以上経ってしまえば,試用期間 中の社員であっても,解雇予告又は解雇予告手当の支払が必要となります。


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試用期間の長さはどれくらいにすべきですか?

2014-07-31 | 日記

試用期間の長さはどれくらいにすべきですか?

 試用期間 の長さとしては,3か月が一番多く,次に6か月が多いという印象です。
 試用期間は採用された者の地位が不安定なため,あまり長期にわたると公序良俗違反で無効(民法90条)とされる可能性がありますが,1年程度までであれば通常は有効と考えられます。

 勤務開始の時点で正社員として相応しい人間性,能力等を有しているかどうかを判断するだけであれば,試用期間は3か月で十分でしょう。
 他方,実際に技能の養成を試みて,技能の習得能力をテストするのであれば,3か月では足りず,6か月あるいは1年といった比較的長期間が必要となるかもしれません。
 試用期間の長さは,3か月,6か月,1年等,様々なものがあり得ると思いますが,試用期間を設ける目的との関係で合理的な長さに設定すべきでしょう。
 試用期間の長さを検討するにあたっては,何のために試用期間を設けるのかをよく考えることが出発点になります。


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試用期間の法的性格を教えて下さい。

2014-07-31 | 日記

試用期間の法的性格を教えて下さい。

 試用期間 には様々なものがあり,その法的性格は一様ではありません。
 三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決(労判189号16頁)は,「試用契約の性質をどう判断するかについては,就業規則の規定の文言のみならず,当該企業内において試用契約の下に雇用された者に対する処遇の実情,とくに本採用との関係における取扱についての事実上の慣行のいかんをも重視すべきものである」と判示していますので,試用期間の法的性格については,「試用契約の下に雇用された者に対する処遇の実情,とくに本採用との関係における取扱についての事実上の慣行のいかん」等を重視して個別に判断していくことになります。
 同事件原判決が,「上告人の就業規則である見習試用取扱規則の各規定のほか,上告人において,大学卒業の新規採用者を試用期間終了後に本採用しなかった事例はかつてなく,雇入れについて別段契約書の作成をすることもなく,ただ,本採用にあたり当人の氏名,職名,配属部署を記載した辞令を交付するにとどめていたこと等の過去における慣行的実態に関して適法に確定した事実に基づいて,」「右雇用契約を解約権留保付の雇用契約と認め,右の本採用拒否は雇入れ後における解雇 にあたる」と判断したことを同最高裁判決は「是認し得ないものではない。」とした上で,「被上告人に対する本採用の拒否は留保解約権の行使,すなわち雇入れ後における解雇にあたり,これを通常の雇入れの拒否の場合と同視することはできない。」と判断していますので,三菱樹脂事件と同様の事案における試用期間においては,解約権留保付の雇用契約が既に成立しており,本採用拒否は留保解約権の行使(解雇)と考えるべきことになります。
 一概には言えませんが,多くの企業における試用期間は解約権留保付の雇用契約が既に成立しており,本採用拒否は留保解約権の行使(解雇)に当たると考えられるものと思われます。


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試用期間とは何ですか?

2014-07-31 | 日記

試用期間とは何ですか?

 試用期間 には法律上の定義がなく,様々な意味に用いられますが,一般的には,正社員として採用された者の人間性や能力等を調査評価し,正社員としての適格性を判断するための期間をいいます。


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試用期間中の本採用拒否(解雇)

2014-07-31 | 日記

 解雇 はあらゆるステージで行われていますが,普通解雇 に関する紛争は,試用期間 中の本採用拒否(解雇)に関するものが特に多くなっています。
 試用期間中の本採用拒否(解雇)であれば本採用後の解雇よりも緩やかに行うことができるという知識を会社経営者が持っているせいか,解雇理由を証明するための客観的証拠がそろっていないにもかかわらず,当然,本採用拒否(解雇)することができるものと考えて,無防備なまま解雇するケースが多いというのも,試用期間中の本採用拒否(解雇)の特徴です。確かに,試用期間中の本採用拒否(解雇)は,当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実を理由とするものであれば,通常の解雇と比べて緩やかな基準で行うことができます。
 しかし,試用期間中の本採用拒否も労働契約成立後の解雇の一種である以上,本採用拒否が有効となるためには客観的に合理的な理由が必要となります。客観的に合理的な理由が必要ということは,会社経営者が主観的に本採用すべきではないと思っただけでは本採用拒否は有効とならず,裁判官からの目から見ても,本採用拒否されてもやむを得ないと考えられるだけの事実を証拠により証明できなければ,本採用拒否(解雇)は無効となってしまうということを意味します。客観的証拠がほとんど存在せず,会社経営者が「本採用拒否が妥当なことについては,上司も,同僚も,部下も,取引先もみんな知っており,証言してくれるから裁判にも勝てる。」と思い込んでいるような事案では,試用期間中の本採用拒否(解雇)に関する紛争で会社が苦戦することが多くなってしまいます。
 弁護士法人四谷麹町法律事務所(東京) は,試用期間中の本採用拒否(解雇)に関する紛争を数多く取り扱ってきました。会社経営者を悩ます試用期間中の本採用拒否(解雇)に関する紛争の対応,本採用拒否(解雇)のコンサルティングは,弁護士法人四谷麹町法律事務所(東京)にご相談下さい。


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飲食店において,実際に担当業務に従事している時間だけ残業代を支払う扱いにすることはできるますか?

2014-07-31 | 日記

飲食店において,接客担当のスタッフに対し,お客さんがいなかったり自分の担当業務が終わったりしたら休憩していて構わないが,お客さんが入店してきたら自分の担当業務に従事するよう指示している場合,実際に仕事をしていない時間は「休憩時間」(労基法34条)として扱い,実際に担当業務に従事している時間だけを労基法に基づく残業代(割増賃金)計算の基礎となる労働時間として扱うことはできますか。

 飲食店において,接客担当のスタッフに対し,お客さんがいなかったり自分の担当業務が終わったりしたら休憩していて構わないが,お客さんが入店してきたら自分の担当業務に従事するよう指示している場合は,実際に仕事をしていない時間も使用者から就労の要求があれば直ちに就労しうる態勢で待機している時間(手待時間)であり,労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間とはいえませんので,「休憩時間」(労基法34条)として扱うことはできず,実際に担当業務に従事している時間だけでなく手待時間を含めた時間全体が,労基法に基づく残業代 (割増賃金)計算の基礎となる労働時間となります。
 休憩時間と手待時間との関係については,「労基法34条所定の休憩時間とは,労働から離れることを保障されている時間をいうものであるところ,原告らと被告との間の雇用契約における右休憩時間の約定は,客が途切れた時などに適宜休憩してもよいというものにすぎず,現に客が来店した際には即時その業務に従事しなければならなかったことからすると,完全に労働から離れることを保障する旨の休憩時間について約定したものということができず,単に手待時間ともいうべき時間があることを休憩時間との名のもとに合意したにすぎないものというべきである。」としたすし処「杉」事件大阪地裁昭和56年3月24日判決が参考になります。


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飲食業で残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高いのはどうしてだと思いますか。

2014-07-31 | 日記

飲食業で残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高いのはどうしてだと思いますか。

 飲食業で残業代 (割増賃金)請求を受けるリスクが特に高い一番の理由は,飲食業では会社経営者が残業代(割増賃金)を支払わなければならないという意識が低いことにあると考えています。飲食業の経営者に残業代(割増賃金)を支払わない理由を聞いてみると,
 「飲食業だから。」
 「昔からそういうやり方でやってきて,問題になったことはない。」
 「飲食業で残業代なんて支払ったら,店がつぶれてしまう。」
 「それが嫌なら,転職した方がいい。」
といった程度の理由しかないことが多く,当然ですが,訴訟や労働審判 になれば,残業代(割増賃金)請求が認められることになります。上記のような認識を持っている飲食業の会社経営者は,これもまた自然なことですが,残業代(割増賃金)請求を受けると被害者意識を強く持つ傾向があり,そばにいて大変残念でいたたまれない気持ちにさせられます。
 2番目の理由としては,労働時間が長いため,残業代(割増賃金)の金額が高額になりがちな点が挙げられると思います。1日あたりの店舗の営業時間は8時間を超えるのが通常であり,仕込み作業が必要なこともあるため,少なくとも正社員については1日8時間を超えて労働させるケースが多くなっています。また,店舗物件の有効利用の観点から,店舗の休日が全くなかったり,週1日だけしかなかったりすることが多く,完全週休二日制で休日出勤無しのケースはむしろ珍しい部類に入ります。その結果,週40時間(特例措置対象事業場では週44時間)を超えて労働させることが多く,1日8時間超の残業代(時間外割増賃金)のみならず,週40時間(特例措置対象事業場では週44時間)超の残業代(時間外割増賃金)を支払わなければならなくなることは珍しくありません。
 定額(固定)残業代制度を採るなどして,一応の残業代(割増賃金)請求対策が採られている会社もありますが,定額(固定)残業代制度に対して裁判所の厳しい判断が相次いでいる現状に対する認識が甘く,制度設計や運用が雑で敗訴リスクが懸念されるケースが数多く見られます。


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給料日まで生活費がもたないからお金を貸して欲しいと言ってくる運転手にはどうすればいいでしょうか?

2014-07-31 | 日記

運送業を営む会社を経営していますが,給料日まで生活費がもたないからお金を貸して欲しいと言ってくる運転手にはどのように対応すればいいでしょうか。

 運送業を営む会社においては,給料日まで生活費がもたないからお金を貸して欲しいと言ってくる運転手は珍しくありません。従来,こういった運転手にお金を貸し付けて給料から天引きして返してもらうことが多かったようですが,会社経営者のために労働問題を扱っている弁護士の目から見てあまりお勧めできません。
 一般論として,「友達にはお金を貸してはいけない。」「友達にお金を貸したら,友達ではなくなってしまう。」と言われるのには,それなりの根拠があるのです。お金を貸したら利害が対立してしまっていい関係でいるのは難しくなり,残業代(割増賃金)請求等の紛争を誘発します。
 そもそも,お金を貸して欲しいと言って来る運転手は,お金にだらしなく,金銭面での信用がないのが通常です。通常であれば,家族にお金の工面を相談したり,銀行からキャッシングしたりすることができるはずですし,信販会社や消費者金融からキャッシングすることもできるはずです。消費者金融ですらお金を貸さない運転手に素人の会社がお金を貸したらどのような結末になるのかは,容易に予測することができます。
 退職するに当たり,貸したお金を返して欲しいと伝えたところ,借金を踏み倒す目的で残業代(割増賃金)請求を受けたというケースは珍しくありません。これでは,残業代(割増賃金)請求を誘発するためにわざわざお金を貸していたようなものです。
 法律的な話をすると,貸金の給料からの天引きは,賃金控除の労使協定を締結した上で,給料からの天引きによる返済を合意しておかなければなりません。私の知る限り,賃金控除の労使協定を締結している運送業を営む会社はごく一部に過ぎません。
 賃金控除の労使協定を締結せずに給料から天引きすることは労基法違反で無効ですし,天引きした金額を支払えと請求された場合には,貸金と相殺することもできず,いったんは支払わなければなりませんが,賃金を支払った後に貸金を返して欲しいと請求したとしても,無資力になっていれば回収することができません。多額の未払残業代(割増賃金)を支払わされたような場合には,会社からの支払を原資として貸金を返済してもらえることもありますが,このような結末を会社が望んでいたはずはありません。
 やはり,運転手に対してお金を貸すのは,できるだけ控えるべきだと思います。お金を貸してくれないなら会社を辞めて,他の会社に転職すると言われるかもしれませんが,転職されてしまったとしても,お金にだらしない運転手がいなくなってかえってすっきりしたと割り切るくらいの心構えが必要だと思います。
 どうしてもお金がなくて困っているというようだから何とか助けてあげたいというのであれば,給料日前に給料の一部を前倒しで支給することも考えられます。お金を貸すのではなく,給料を前払いするわけです。もちろん,上限金額は,1か月分の給料までです。1か月分の給料が上限では足りないというような話であれば,給料の前払いも,お金を貸すことも断るくらいがちょうどいいと思います。


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休日なしで長時間働いてお金を稼ぎたいと言ってくる運転手にはどのように対応すればいいでしょ

2014-07-31 | 日記

運送業を営む会社を経営していますが,休日なしで長時間働いてお金を稼ぎたいと言ってくる運転手にはどのように対応すればいいでしょうか。

 運送業を営む会社を経営していると,休まずにもっと働いてお金を稼ぎたい,働かせてくれなければ辞めて他の会社に転職する,などと言って来る運転手がいることに気づくことと思います。
 たくさん働きたいという意欲は素晴らしいのかもしれませんが,使用者には運転手の健康に配慮する義務(労契法5条)がありますので,本人が望んでいるからといって,恒常的な長時間労働を容認するわけにはいきません。ある程度までであれば,多めに運転させても構いませんが,度を超して働きたいという希望を押し通そうとする運転手については,断固として長時間労働を拒絶する必要があります。その結果,転職してしまうかもしれませんが,やむを得ない選択と腹をくくるべきでしょう。
 なお,時間外割増賃金は1日8時間を超えて働かせたときだけ支払うものではなく,週40時間を超えて働かせた場合にも支払う必要がありますので,週6日以上働かせた場合には朝から残業(時間外労働)扱いになり時間外割増賃金の支払が必要となる可能性があります。また,休日を定めなかった場合であっても,7日続けて働かせた場合には,7日目の日は法定休日として取り扱われることになりますので,休日割増賃金を支払う必要があります。残業代 (割増賃金)請求対策という観点からも,恒常的な長時間労働を抑制する必要があるところです。


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運送業を営む会社における労働時間管理のポイントを教えて下さい。

2014-07-31 | 日記

運送業を営む会社における労働時間管理のポイントを教えて下さい。

 運送業を営む会社の特徴は,トラック運転手が事業場を離れて運転業務に従事する時間が長いため,出社時刻と退社時刻の確認を除けば,現認による勤務状況の確認が事実上不可能な点にあります。したがって,出社時刻と退社時刻の確認をして運転日報等に記録させるのは当然ですが,経営者の目の届かない客先や路上での勤務状況,労働時間の把握が重要となってきます。
 特に問題となりやすいのは休憩時間の把握です。一般的には,運転手本人に運転日報等に休憩時間を記載させて把握するのが現実的対応と思われますが,運転手は,出社時刻と退社時刻については運転日報等に記録してくれるのが通常なのですが,休憩時間については運転日報等への記録を怠る傾向にあります。おそらく,出社時刻と退社時刻さえ明らかにできれば,自分の勤怠,労働時間の始期と終期が分かることから,休憩時間をいちいち書き込むモチベーションが働かないからだと思われます。
 しかし,運転手に必要な休憩を与えることは使用者の義務であり,所定の休憩を取得できていない場合には,休憩を取得することができるよう配慮しなければなりません。また,一般に労働時間はその日の出社時刻から退社時刻の間の拘束時間から休憩時間を差し引いて計算されますので,休憩時間を的確に把握できなければ労働時間を的確に把握することもできません。労働時間の把握は使用者の義務ですので,運転手が労働時間なんて興味がない,どうでもいいと言っていても,使用者は労働時間を把握しなければなりません。残業代(割増賃金)請求訴訟においては,休憩時間を取っていたにもかかわらず,「休憩時間はほとんど取ることができていなかった。」と主張されることも珍しくはありません。会社経営者は,運転手本人が望んでいるかどうかにかかわらず,休憩時間を運転日報等にしっかり記載させ,休憩時間や労働時間の管理をしていく必要があります。
 具体的には,
 ① 運転日報等に何時から何時までどの場所(現場等)で休憩時間を取得したのかを記載する欄を設けた上で
 ② 休憩時間をしっかり記録するよう粘り強く指導していく
ことになります。
 ①については,簡単にできることですので,運転日報等に休憩時間の記載欄がない場合は,すぐにでも運転日報等の雛形を作り直しましょう。
 ②については,根気の勝負であり,会社経営者が注意指導を億劫がっていたのでは,いつの間にか運転手が休憩時間を記録しなくなってしまうことになりかねません。


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運送業を営む会社において見逃しがちな残業代(割増賃金)の趣旨を有する賃金を教えて下さい。

2014-07-31 | 日記

運送業を営む会社において見逃しがちな残業代(割増賃金)の趣旨を有する賃金を教えて下さい。

 運送業を営む会社においては,基本給は1日当たりいくらといった日当の形で支払われるのが通常です。
 休日労働の対価として「日当」が支払われた場合には,「日当」は通常の労働日の賃金ではありませんので,これを控除して未払残業代(割増賃金)額を算定する必要があります。
 「月給25万円」といった通常の月給制を念頭に置いていると見逃しがちな点ですので,ご注意下さい。


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運送業を営む会社において,配送手当,長距離手当等の手当は,残業代の支払いとして認められますか?

2014-07-31 | 日記

運送業を営む会社において,配送手当,長距離手当,業務手当,特別手当等の手当の支払は,残業代(割増賃金)の支払として認められますか。

 運送業を営む会社においては,日当のほか,配送手当,長距離手当,業務手当,特別手当等の手当が支払われていることがあります。これらの手当の支払は,残業代 (割増賃金)の支払として認められるのでしょうか。
 まず,配送手当,長距離手当,業務手当,特別手当といった名称の手当は,その日本語の意味を考えた場合,直ちに残業代の支払と評価することはできません。これらの手当が残業代の支払と評価されるためには,最低限,賃金規程にその旨明記して周知させておくか,労働条件通知書等に明記して就職時に運転手に交付しておくなどが必要となります。「口頭で説明した。」では,勝負になりません。
 これらの手当が残業代(割増賃金)の趣旨で支払われていることが客観的証拠からは読み取れない場合は,新たに同意書,確認書等を作成したり賃金規程を変更したりして,これらの手当が残業代(割増賃金)の趣旨で支給されるものであることを明確にする必要があります。
 もっとも,配送手当,長距離手当,業務手当,特別手当といった名称の手当を残業代(割増賃金)の趣旨で支払う旨の規定があったとしても,裁判では,実質的には残業代(割増賃金)の支払として認められないと判断されるリスクが残ることは否めません。「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった名称であれば,実質的にも残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当と認めてもらいやすくなりますので,残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当は,できる限り「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった名称で支給すべきと考えます。


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運送業を営む会社において,残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当を支給する際の注意点を教えて下さい

2014-07-31 | 日記

運送業を営む会社において,残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当を支給する際の注意点を教えて下さい。

 運送業を営む会社において,残業代 (割増賃金)の趣旨を有する手当を支給する際の注意点は,大きく分けて
 ① 残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当であることを明確にすること
 ② 残業代(割増賃金)とそれ以外の賃金とを明確に判別できるようにすること
の2つです。
 まず,①についてですが,当該手当が残業代(割増賃金)の趣旨を有することが明確でない名目となっている場合,当該手当の支払が残業代(割増賃金)の支払として認められない可能性が高くなります。残業代(割増賃金)には見えないような名目の手当を支給しながら,残業代(割増賃金)請求を受けたとたんそれは残業代(割増賃金)だと主張しても,なかなか認められません。
 「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった一見して残業代(割増賃金)であることが明らかな名目の手当を支給している場合には,それが残業代(割増賃金)ではないといった主張は滅多に出てきません。問題となるのは,「業務手当」「特別手当」「配送手当」「長距離手当」といった残業代(割増賃金)であるとは読み取れない名目の手当を支給している場合です。当該手当の全額が残業代(割増賃金)の趣旨を有することが労働条件通知書に明記してあったり,賃金規程に明記されて周知されていたりすれば,労働審判等になってもそれなりに戦えますが,そうでない限り,苦しい戦いを余儀なくされることになります。
 「業務手当」「特別手当」「配送手当」「長距離手当」といった名称の手当を残業代(割増賃金)の趣旨で支払う旨の規定があったとしても,裁判では,実質的には残業代(割増賃金)の支払として認められないと判断されるリスクが残ることは否めません。「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった名称であれば,実質的にも残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当と認めてもらいやすくなりますので,残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当は,できる限り「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった一見して残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当であることが分かる名目で支給すべきと考えます。
 次に,②についてですが,通常の労働時間・労働日の賃金と残業代(割増賃金)に当たる賃金を判別できるようにしておかないと,残業代(割増賃金)の支払があったとは認められません。例えば,単に,残業代(割増賃金)込みの賃金である旨合意しただけでは,残業代(割増賃金)の支払があったとは認められません。
 「業務手当には30時間分の時間外手当を含む。」といった定めも,通常の労働時間・労働日の賃金と残業代(時間外割増賃金)に当たる賃金を判別するためには方程式を使って計算する必要がありますので,リスクが高いものと思われます。残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当は,基本給や何らかの手当に含むという形で支給するのではなく,項目を明確に分けて金額を明示して定めるとともに,給料日には給与明細書に金額を分けて明示して給与を支給すべきと考えます。
 まずは,残業代(割増賃金)に相当する金額が何円なのか,残業代(割増賃金)の金額についてははっきりさせて下さい。その上で,当該手当が実質的にも残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨を有する手当であることを明確にするために,その金額が何時間分の時間外割増賃金,深夜割増賃金,休日割増賃金なのかを追加で明記するのであれば,より望ましいと考えられます。


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運送業を営む会社が残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高いのはどうしてだと思いますか。

2014-07-31 | 日記

運送業を営む会社が残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高いのはどうしてだと思いますか。

 運送業の運転手は従来,自営業者意識が濃厚な傾向があり,運転手のそういった傾向に対応して,運送業の会社経営者は残業代 (割増賃金)を支払わなければならないという意識が希薄な傾向にありました。運送業では,給料が「1日現場に行って来たら1万○○○○円」といった形で定められている会社が多く,労働者というよりは個人事業主に近い形で労務管理がなされている傾向にあります。昔からそのやり方で問題なくやってきたわけですから,多額の残業代請求を受けて大きな損失を被らない限り,なかなか制度を変更しようとはしません。簡単に言えば,脇が甘いわけです。残業代(割増賃金)請求を受けると強い被害者意識を持つ会社経営者が多い傾向にあるのも運送業の特徴です。
 他方で,最近では残業代(割増賃金)に関するトラック運転手の意識が急速に変わってきています。おそらく,「○○さんは,弁護士に頼んで○○○万円も残業代を払ってもらったらしい。」などと,トラック運転手同士で情報交換しているうちに,自分も残業代(割増賃金)が欲しくなるトラック運転手が増えてきたものと思われます。運送業では,長距離運転があったり,手待時間が長くなったりしていることが多いことなどから,労働時間が長くなりがちで,残業代(割増賃金)も多額になる傾向にあります。少額の残業代(割増賃金)しか取れないのであれば会社と争っても仕方ありませんが,何百万円といった多額の金銭を取得できるのであれば,会社経営者との関係が悪化したとしても残業代(割増賃金)を取得できた方がいいと考えるトラック運転手が増えるのもやむを得ないところがあります。何しろ労基法で認められた正当な権利を行使しているだけなのですから,「残業代を払わないできた会社が悪い。」と自分を納得させることができますので,良心の呵責も大きくはありません。
 運送業で残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高い一番の理由は,運送業の会社経営者が残業代(割増賃金)を支払わなければならないという意識が希薄な傾向にあるのに対し,残業代(割増賃金)を請求すれば多額の残業代(割増賃金)を取得できることを知って残業代(割増賃金)を請求する意欲が高まっているトラック運転手の意識のギャップにあると考えています。実態と形式にギャップがある状態は,残業代(割増賃金)請求の格好のターゲットとなります。残業代(割増賃金)を請求する運転手の立場からすれば,ガードを固めた会社と戦うのは大変ですが,脇が甘い会社であれば,大して難しいことをしなくても簡単に残業代(割増賃金)を取得できてしまいます。
 個人事業主に近い実態があるにもかかわらず,形式的には労基法上の労働者に該当することが多いことから,そのギャップを突かれて多額の残業代(割増賃金)の支払を余儀なくされているというのが実情に合致していると思います。


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