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代表弁護士ご挨拶 弁護士法人四谷麹町法律事務所

2013-03-25 | 日記
代表弁護士ご挨拶

 あなたは労使紛争の当事者になったことがありますか?
 労使紛争の当事者になったことがあるとすれば,それがいかに大きな苦痛となり得るかが実感を持って理解できることと思います。

 会社の売上が低迷する中,社長が一生懸命頑張って社員の給料を支払うためのお金を確保しても,その大変さを理解できる社員は多くありません。
 会社はお金を持っていて,働きさえしていれば,給料日には給料が自分の預金口座に振り込まれて預金が増えるのが当然という感覚の社員が多いのではないでしょうか。
 私自身,勤務弁護士の時は給料日には必ず給料が私の預金口座に振り込まれて預金残高が増えていたものが,自分で事務所を開業してみると,給料日には社員に給料を支払わなければならず,私の事業用預金口座の残高が減るのを見て,経営者にとって給料日はお金が減る日なのだということを,初めて実感を持って理解することができました。
 また,個人事業主や中小企業のオーナー社長は,事業にかかる経費と比較して売上が不足すれば,何百時間働いても,事実上,1円の収入にもならないということになりかねず,それどころか,経営者の個人財産からお金を出して,不足する金額を穴埋めしなければならないこともあるのですから,会社の業績が悪化した結果,収入が減ることはあっても,個人資産を事業継続のために持ち出すことのない一般社員とでは,随分,負担の重さが違うのだということも,よく理解できました。
 このような話は,理屈は簡単で,当たり前のことなのですが,誰でも実感を持って理解できるかというと,なかなか難しいものがあります。
 会社勤めをしている友達に,給料日には会社の預金残高が減るという話をしてみたところ,「そのとおりかもしれないけど,その分,会社はお客さんからお金が入ってきて儲かっているんだから。」という答えが返ってきたことがあります。
 確かに,「お金が入ってきて儲かっている」のであればいいのですが,経営者にとっては,実際にお金が入ってくるかどうかが問題なわけです。
 今,売上が上がっていても,将来,どうなるかは誰にも分かりませんし,下手をすると個人資産を事業につぎ込まなければならなくなることもあるのですから,経営者はいつまで経っても気を緩めることはできません。
 実は,私も,勤務弁護士のときは,理屈では雇う側の大変さを理解していても,その理解には共感が伴っていませんでした。
 所長は実際に仕事をこなしている自分よりたくさんの収入があってうらやましいというくらいの感覚だったというのが正直なところで,雇われている人たちのために頑張ってくれてありがとうございます,などと本気で思ったことがあるかというと,一度もありませんでした。
 自分が経営者の立場になってみて初めて,経営者の大変さを,実感を持って理解することができるようになったのです。

 立場が違えば,感じ方・考え方も違ってきます。
 労使紛争でお互いが感情的になりがちなのは,自分の大変さを相手が理解してくれないことに対する苛立ちのようなものが根底にあるからではないでしょうか。
 労使とも,自分ばかりが不当に我慢させられている,譲歩させられていると感じているわけです。
 このような苛立ちを緩和し,冷静に話し合うことができるようにするためには,労使双方,相手のことを思いやる想像力が必要だと思います。
 社員の置かれた状況を鮮明に想像することができ,社員を思いやることのできる優れた会社であれば,会社を思いやる想像力を持った優れた社員との間で労使紛争が生じるリスクは極めて低くなることでしょう。
 仮に,一部の問題社員との間で労使紛争が生じたとしても,大部分の優れた社員は会社の味方になってくれるでしょうし,裁判に勝てる可能性も高くなります。

 私は,あなたの会社に,労使双方が相手の立場に対して思いやりの気持ちを持ち,強い信頼関係で結ばれている会社になって欲しいと考えています。
 そのためのお手伝いをさせていただけるのであれば,あなたの会社のために全力を尽くすことをお約束します。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

経歴・所属等
•東京大学法学部卒業
•弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士
•労働問題の予防解決(使用者側専門)が中心業務
•第一東京弁護士会会員
•日本弁護士連合会労働法制委員会委員・事務局員・労働審判PTメンバー
•第一東京弁護士会労働法制委員会委員・労働契約法部会副部会長
•東京三会労働訴訟等協議会委員
•経営法曹会議会員
•全国倒産処理弁護士ネットワーク会員



主な講師担当セミナー・講演・著作等

『日本航空事件・東京地裁平成23年10月31日判決』(経営法曹第176号)
『実務コンメンタール 労働基準法・労働契約法』(編集協力者,労務行政研究所編)
『改正労働契約法の詳解』(共著,第一東京弁護士会労働法制委員会編,労働調査会)
『中小企業における労働問題の実務』(東京司法書士会,企業法務研修会,平成25年1月21日)
『Q&A職場のメンタルヘルス -企業の責任と留意点-』(共著,三協法規出版)
『労務管理における労働法上のグレーゾーンとその対応』(全国青年社会保険労務士連絡協議会,特定非営利活動法人個別労使紛争処理センター,平成24年12月7日)
『解雇・退職の法律実務』(新社会システム総合研究所,東京会場,平成24年11月20日)
『社会保険労務士の紛争解決手続代理業務を行うのに必要な学識及び実務能力に関する研修』ゼミナール講師(東京,平成24年11月9日・10日・17日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成24年10月4日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成24年9月28日)
『問題社員への法的対応の実務』(経営調査会,平成24年9月26日)
『日本航空事件東京地裁平成23年10月31日判決』(経営法曹会議,判例研究会,平成24年7月14日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,札幌会場,平成24年6月26日)
『有期労働法制が実務に与える影響』(『労働経済春秋』2012|Vol.7,労働調査会)
『現代型問題社員を部下に持った場合の対処法~ケーススタディとQ&A』(長野県経営者協会,第50期長期管理者研修講座,平成24年6月22日)
『労働時間に関する法規制と適正な労働時間管理』(第一東京弁護士会・春期法律実務研修専門講座,平成24年5月11日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,福岡会場,平成24年4月17日)
『高年齢者雇用安定法と企業の対応』(共著,第一東京弁護士会労働法制委員会編,労働調査会)
『実例 労働審判(第12回) 社会保険料に関する調停条項』(中央労働時報第1143号,2012年3月号)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成24年3月8日)
『労使の信頼を高めて 労使紛争の当事者にならないためのセミナー』(商工会議所中野支部,平成24年3月7日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成24年2月29日)
『健康診断実施と事後措置にまつわる法的問題と企業の対応』(『ビジネスガイド』2012年3月号№744)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,名古屋会場,平成24年1月20日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,大阪会場,平成23年10月31日)
日韓弁護士交流会・国際シンポジウム『日本と韓国における非正規雇用の実態と法的問題』日本側パネリスト(韓国外国語大学法学専門大学院・ソウル弁護士協会コミュニティ主催,平成23年9月23日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成23年9月16日)
『マクドの失敗を活かせ!新聞販売店,労使トラブル新時代の対策』(京都新聞販売連合会京都府滋賀県支部主催,パートナーシステム,平成23年9月13日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成23年9月6日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,東京会場,平成23年8月30日)
『社員教育の労働時間管理Q&A』(みずほ総合研究所『BUSINESS TOPICS』2011/5)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成23年4月14日)
『改訂版 最新実務労働災害』(共著,三協法規出版)
『労働審判を申し立てられた場合の具体的対処方法』(企業研究会,東京会場,平成22年9月8日)
『もし,自分が気仙沼で教師をしていたら,子供達に何を伝えたいか?』(気仙沼ロータリークラブ創立50周年記念式典,平成22年6月13日)
『文書提出等をめぐる判例の分析と展開』(共著,経済法令研究会)
『明日から使える労働法実務講座』(共同講演,第一東京弁護士会若手会員スキルアップ研修,平成21年11月20日)
『採用時の法律知識』(第373回証券懇話会月例会,平成21年10月27日)
『他人事ではないマクドナルド判決 経営者が知っておくべき労務,雇用の急所』(横浜南法人会経営研修会,平成21年2月24日)
『今,気をつけたい 中小企業の法律問題』(東京商工会議所練馬支部,平成21年3月13日)
『労働法基礎講座』(ニッキン)
『管理職のための労働契約法労働基準法の実務』(共著,第一東京弁護士会労働法制委員会編,清文社)

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『実務コンメンタール 労働基準法 労働契約法』

2013-03-23 | 日記
峰隆之先生,北岡大介先生が中心となって編集に協力した『実務コンメンタール 労働基準法 労働契約法』が,労務行政研究所から発売されました。
労働事件を扱ってる方にはお勧めの一冊です。
(私もほんの少しだけですが,編集に関与しています。)

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弁護士 藤田 進太郎

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藤田 進太郎の著書(アマゾンで買えるもの)

2013-03-16 | 日記
藤田進太郎の著書は,アマゾンでも購入することができます。
ずいぶん便利な時代になったものです。

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弁護士 藤田 進太郎

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"Tribal Leadership "

2013-03-14 | 日記
"Tribal Leadership"は,無料でダウンロードできる英語のオーディオブックです。
英語がある程度聞き取れる方にはお勧めです。
なお,このオーディオブックが無料なのは,これを気に入った人には,有料講座を購入してもらいたいという狙いがあるようです。
このオーディオブック自体は,本当に無料でした。
お試しのサンプルのような扱いですが,内容が非常に充実しています。

"Tribal Leadership"について,東京で一緒に研究できる仲間が欲しいと思っています。
誰か一緒に研究会を運営してくれないでしょうか?

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弁護士 藤田 進太郎




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『改正労働契約法の詳解』

2013-03-14 | 日記
『改正労働契約法の詳解』は,安西愈先生,木下潮音先生のほか,私も執筆者の一人です。
みなさん,買って下さいね。

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弁護士 藤田 進太郎

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労働審判の訴訟への移行

2013-03-06 | 日記
Q103 調停がまとまらない場合には労働審判が行われ,労働審判に対して異議を申し立てた場合には,自動的に訴訟に移行することが重要なのはどうしてですか?


 この点も,労働審判を民事調停と比較して考えると分かりやすいでしょう。

 民事調停で調停不成立の場合には何らの判断もなされないまま調停手続が終了してしまいます。
 民事調停が不成立になった場合,自動的には訴訟に移行しませんので,訴訟で争う場合には別途訴訟提起が必要となります。
 何らの判断もなされていない状態で別途訴訟を提起する負担は重いこともあり,そのまま紛争が立ち消えになることも珍しくありません。

 他方,労働審判手続で調停がまとまらなければ,たいていは調停案とほぼ同内容の労働審判が出され,労働審判に対して当事者いずれかが異議を申し立てれば自動的に訴訟に移行することになりますので,必ず訴訟対応が必要となります。
 さらに何か月も訴訟を続ける価値がある事案でなければ,調停案や労働審判の内容に多少不満があっても,労働審判手続内で話をまとめてしまった方が合理的なケースが多いところです。

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権利義務関係を踏まえた調停が試みられることの重要性

2013-03-06 | 日記
Q102 裁判官(労働審判官)1名と労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名により権利義務関係を踏まえた調停が試みられることが重要なのはどうしてですか?


 この点は,労働審判を民事調停と比較して考えると分かりやすいでしょう。

 民事調停を利用した場合,裁判官が調停期日の全ての時間に同席するとは限らず,ほとんどの時間は裁判官は調停の場に同席せず,調停が成立することになったとき等,わずかな時間しか調停の場に現れないということも珍しくありません。
 必ずしも労働問題の専門的な知識経験を有するとはいえない調停委員が,調停をまとめることばかりに熱心になってしまい,権利義務関係を十分に踏まえずに,言うことを聞きやすそうな当事者の説得にかかることもあります。
 当然のことですが,権利義務を踏まえた調停を行わないと,調停が不調に終わった場合に訴訟を提起した場合,調停委員から言われていたのとは異なる結論となる可能性が高くなってしまいます。

 他方,労働審判手続では,裁判官(労働審判官)1名が,常時,期日に同席しており,労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名とともに,権利義務関係を踏まえた調停を行うため,調停内容は合理的なもの(社内で説明がつきやすいもの,労働者が納得しやすいもの)となりやすくなります。
 また,調停をまとめず,労働審判に対し異議が出して訴訟で争っても,労働審判は裁判官(労働審判官)1名と労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名により権利義務関係を踏まえて出されたものですから,労働審判の内容よりも自分に大幅に有利に解決する見込みが大きい事案はそれほど多くはありません。

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労働審判手続の特徴

2013-03-05 | 日記
Q100 労働審判手続の特徴として,どのような点が特に重要と考えていますか?


 労働審判手続の特徴はどれも重要なものですが,私が特に注目しているのは,
① 迅速な解決が予定されていること
② 裁判官(労働審判官)1名と労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名により権利義務関係を踏まえた調停が試みられること
③ 調停がまとまらない場合には労働審判が行われ,労働審判に対して異議を申し立てた場合には,自動的に訴訟に移行すること
の3点です。

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「当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合」の対処法

2013-03-04 | 日記
Q97 事業場外みなしの適用がある営業社員について,「当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合」(労基法38条の2第1項但書)には,どのように対処するのがお勧めですか?


 事業場外みなしの適用がある営業社員について,「当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合」(労基法38条の2第1項但書),当該業務に関しては,「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」労働したものとみなされます。
 「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」とは,通常の状態でその業務を遂行するために客観的に必要とされる時間のことであり,平均的にみれば当該業務の遂行にどの程度の時間が必要かにより,当該時間を判断することになります。

 「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」が何時間かは,事前に決めておかないと後から争いになりますので,労使協定(労基法38条の2第2項)により,その時間を定めておくべきでしょう。
 その結果,例えば,所定労働時間が1日8時間の事業場において,「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」が1日11時間と定められた場合は,1日3時間分の残業代(割増賃金)を支払う必要があることになります。

 1日3時間分の残業代は,残業代以外の基本給等の賃金とは金額を明確に分けて,それが残業代だと客観的に分かる形で支給するようにして下さい。
 残業代が残業代以外の基本給等の賃金とは金額を明確に分けて支給するようにさえしておけば,万が一,事業場外みなしの適用が否定されたとしても,残業代の支払自体はなされていることに変わりはないのですから,残業代に不足が生じる場合に不足額についてのみ追加で支払えば足りることになります。
 例えば,事業場外みなしの適用が否定された場合で,1日4時間残業していたと認定されたとしても,3時間分の残業代は基本給等の賃金とは金額を明確に分けて支給済みですから,1時間分の残業代を追加で支払えば足りることになりますので,会社のダメージはそれ程大きくはありません。
 残業代請求に対するリスク管理としては,事業場外みなしの適用があるかどうかよりも,実態に適合した金額の残業代が残業代以外の基本給等の賃金とは金額を明確に分けて支給されているかどうかの方が,重要とさえいえると思います。

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営業社員と残業代

2013-03-04 | 日記
Q96 営業社員であれば残業代を支払わなくてもいいのですよね?


 営業社員も労基法上の労働者ですから,1日8時間,週40時間を超えて労働させた場合,深夜(22時~5時)に労働させた場合,1週1休の法定休日(労基法35条)に労働させた場合には,原則として労基法37条所定の残業代(時間外割増賃金,深夜割増賃金,休日割増賃金)を支払う必要があります。
 事業場外労働時間のみなし制(労基法38条の2)が適用され,所定労働時間労働したものとみなされれば,結果として時間外労働がなかったことになり,時間外割増賃金の支払を免れることもありますが,営業社員であれば事業場外みなしが適用されるとは限りません。
 また,業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては,当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされますので(労基法38条の2第1項ただし書き),事業上外みなし制が適用される場合であっても,業務を遂行するためには通常1日8時間を超えて労働することが必要となる場合においては,1日8時間を超えた時間については残業代(時間外割増賃金)の支払が必要となります。

 事業場外みなし制が適用されるためには,当該営業社員が事業場外で業務に従事しただけでなく,「労働時間を算定し難いとき」に該当する必要があります。
 事業場外で業務に従事する場合であっても,使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合は労働時間の算定が可能なため,事業場外みなしの適用はありません。
 解釈例規(昭和63年1月1日基発第1号・婦発第1号)では,以下のような場合には事業場外みなしの適用はないとされています。
① 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で,そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
② 事業場外で業務に従事するが,無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
③ 事業場において,訪問先,帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち,事業場外で指示どおりに業務に従事し,その後事業場にもどる場合

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管理監督者該当性に関する従来の一般的な判断基準とは異なる立場

2013-03-04 | 日記
Q95 管理監督者該当性に関する従来の一般的な判断基準とは異なる立場にはどのようなものがありますか?


 管理監督者該当性に関する従来の一般的な判断基準とは異なる立場としては,『労働法 第十版』(菅野和夫著)340頁の以下の見解が有力です。
 「近年の裁判例をみると,管理監督者の定義に関する上記の行政解釈のうち,『経営者と一体の立場にある者』,『事業主の経営に関する決定に参画し』については,これを企業全体の運営への関与を要すると誤解しているきらいがあった。企業の経営者は管理職者に企業組織の部分ごとの管理を分担させつつ,それらを連携統合しているのであって,担当する組織部分について経営者の分身として経営者に代わって管理を行う立場にあることが『経営者と一体の立場』であると考えるべきである。そして,当該組織部分が企業にとって重要な組織単位であれば,その管理を通して経営に参画することが『経営に関する決定に参画し』にあたるとみるべきである。最近の裁判例では,このような見地から判断基準をより明確化する試みも行われている。」

 一般的な判断基準とは違う判断基準を用いて管理監督者を判断した裁判例としては,ゲートウェイ21事件東京地裁平成20年9月30日判決,プレゼンス事件東京地裁平成21年2月9日判決,東和システム事件東京地裁平成21年3月9日判決などがあります(いずれも管理監督者該当性を否定)。
 3件とも東京地裁民事11部の村越啓悦裁判官(当時)1人の書いた判決です。
 これらの判決は,「管理監督者とは,労働条件の決定その他労務管理につき,経営者と一体的な立場にあるものをいい,名称にとらわれず,実態に即して判断すべきであると解される(昭和22年9月13日発基第17号等)。」とした上で,具体的には,以下の①②③④の要件を満たすことが必要であると判断しています。
① 職務内容が,少なくともある部門全体の統括的な立場にあること
② 部下に対する労務管理上の決定権等につき,一定の裁量権を有しており,部下に対する人事考課,機密事項に接していること
③ 管理職手当等の特別手当が支給され,待遇において,時間外手当が支給されないことを十分に補っていること
④ 自己の出退勤について,自ら決定し得る権限があること

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弁護士 藤田 進太郎

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