弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログです。

労基署に相談してからした解雇と裁判の勝敗

2011-12-30 | 日記
Q189 労基署に相談してから解雇を行えば,裁判にも勝てますよね?

 自社の社員を解雇するに当たり,解雇手続について労基署に相談をしてから,解雇する会社があります。
 誰にも相談せずに解雇するよりはいいことだと思いますが,労基署(行政機関)は,裁判になった場合,民事上,解雇が有効となるかどうかまで決めてくれるわけではありません。
 解雇の有効性を判断する最終的な権限があるのは,裁判所(司法機関)だけですから,労基署に相談してから解雇を行ったとしても,直ちに裁判にも勝てることにはなりません。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平成23年12月26日付け基発1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準」

2011-12-30 | 日記
Q188 心理的負荷による精神障害が労災認定されるかどうかは,行政レベルでは何を基準に判断されるのですか?

 心理的負荷による精神障害が労災認定されるかどうかは,行政レベルでは,平成23年12月26日付け基発1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準」により判断されます。
 従来,心理的負荷による精神障害に関し,業務上外の認定に使用されてきた平成11年9月14日付け基発第544号「心理的負荷による精神障害の業務上外に係る判断指針」は,上記通達の施行に伴い,廃止されました。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『シンジケート・ローン契約書作成マニュアル』

2011-12-30 | 日記
一弁の労働法制委員会の委員である横山直樹弁護士(渥美坂井法律事務所・外国共同事業)が,『シンジケート・ローン契約書作成マニュアル』(中央経済社)の執筆に関わったとのことで,同書を1冊,寄贈していただきました。
非常に充実した内容となっていますので,シンジケート・ローン契約書の内容を検討する際は,同書を参考にすることをお勧めします。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四谷麹町法律事務所ウェブサイト 事務所案内ページ映像改訂

2011-12-30 | 日記
四谷麹町法律事務所ウェブサイト事務所案内ページの映像を改訂しました。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四谷麹町法律事務所ウェブサイト 事務所案内ページ映像改訂

2011-12-30 | 日記
四谷麹町法律事務所ウェブサイト事務所案内ページの映像を改訂しました。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四谷麹町法律事務所ウェブサイト トップページ映像改訂

2011-12-30 | 日記
四谷麹町法律事務所ウェブサイトトップページの映像を改訂しました。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雇止めを争われないようにするための注意点

2011-12-30 | 日記
Q40 雇止めを争われないようにするための注意点を教えて下さい。

 雇止めを争われないようにするためには,最低限,「期間の定めのある労働契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない」と判断されないように契約更新手続を書面で厳格に行うようにしておく必要があります。
 その上で,期間雇用労働者が契約更新に合理的期待を抱くことがないよう,正社員と期間雇用労働者とを明確に区別した労務管理を行うべきでしょう。
 実質無期の事案とか,契約更新に合理的期待があるような事案については,雇止めに細心の注意が必要となりますので,弁護士相談しながら雇止めを行うことをお勧めします。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『問題社員に対する法的対応の実務』 名古屋開催 2012年1月20日(金)午後1時30分~午後5時

2011-12-29 | 日記
2012年1月20日(金)午後1時30分~午後5時,『問題社員に対する法的対応の実務』を名古屋で開催します。

弁護士 藤田 進太郎


No.S12025 マネジメント&マーケティング戦略特別セミナー

【大反響セミナー名古屋開催決定!】

問題社員に対する法的対応の実務

~訴訟を見据えた問題社員対応のケーススタディ~

セミナー要項
開催日時 2012年1月20日(金)午後1時30分~午後5時
会場 プライムセントラルタワー名古屋
愛知県名古屋市西区名駅2-27-8
(052)563-0758
受講料 1名につき 31,500円(税込)
同一団体より複数ご参加の場合、2人目以降 26,250円(税込)
備考:

重点講義内容
<東京開催セミナー(2011年8月開催)参加者の意見・感想(抜粋)>
 ・実際の問題に直面した内容の解決策が見つかりました。
 ・各社の質問に関する対処の仕方が例題として参考になります。
 ・法律的な見方(判断基準)について学ぶことができた。
 ・事例(判例)や基本的な考え方をきちんと押さえることができました。
 ・具体的ケース(事例)を交えての説明が良かった。
 ・事前提出した質問書の対応が理解できた。
 ・裁判になった際の裁判所の考え方がわかりました。
 ・詳細に事例が纏まっており、事例も多いため。
 ・身近な事例に沿った内容が多かった。

四谷麹町法律事務所 所長弁護士藤田 進太郎 (ふじた しんたろう)氏
 近年、問題社員に悩まされている経営者・人事労務担当者が増加しており、問題社員にどう対応するかが、重要な課題となっています。
 しかし、問題社員に対して十分な指導をしないまま放置したり、解雇の有効性を十分に検討しないまま解雇したり、残業代を基本給と区別して支払っていなかったり、長時間労働を放置したりしているなど、問題社員対策が不十分な会社がまだまだ多く、無防備な状態のまま、訴訟を提起されるなどして多額の解決金の支払を余儀なくされて初めて、
問題社員対策
を検討し始める会社経営者が多いというのが実情です。
 問題社員に対する具体的対応は、法律論だけで答えを出せるものではなく、奥の深いところがありますが、基本的な法律論を理解し、訴訟になったらどのような結果になるのかということを見据えた上で問題社員対応をすることは必要不可欠です。
 本講演では、まずは、実務上、問題となりやすい事例に対する法的対応のケーススタディを解説して問題社員に対する法的対応の基礎を理解していただいた上で、受講者からの質問に回答する形で、現在、受講者が悩んでいる事案の解決の役に立てるよう、できる限りの情報提供をしていきたいと考えています。

<1>講義:問題社員に対する法的対応のケーススタディ【基礎編】
 1.勤務態度が悪い。
 2.仕事の能力が低い。
 3.上司が注意するとパワハラだと言って、指導に従わない。
 4.転勤を拒否する。
 5.就業時間外に社外で刑事事件を起こした。
 6.精神疾患を発症して欠勤を繰り返す。
 7.行方不明になって連絡が取れない。
 8.一方的に退職届を提出して出社しなくなり、仕事の引継ぎをしない。
 9.勝手に残業して、残業代を請求してくる。
10.社外の合同労組に加入した。 など

<2>Q&A:「このようなケースはどうしたらいい?」【応用編】
実際に発生した事例を受講者からいただき、その一つ一つに時間の許す限り丁寧に講師が回答いたします。心強い対応の引き出しを増やすことのできる生の講座です。

●ご記入いただきました質問内容は、会社名等の情報は非公開とし十分な配慮
  を行いますのでご安心ください。
  情報は当セミナー内でのみ利用させていただきます。
●質問は、なるべく事前にお送りください。お申込いただいた後、質問用紙をお送り
  いたします。
●講演当日も質問を受付いたしますが、質問数が多く回答時間が足りない場合は、
  事前に質問を提出していただいた受講者からの質問に対し、優先的に回答して
  いく予定ですのでご了承下さい。


講師プロフィール
藤田 進太郎(ふじた しんたろう)氏
東京大学法学部卒業。四谷麹町法律事務所所長弁護士
。日本弁護士連合会労働法制委員会委員・事務局員・労働審判PTメンバー。第一東京弁護士会労働法制委員会委員・労働契約法制部会副部会長。東京三会労働訴訟等協議会委員。経営法曹会議会員。労働問題・問題社員の対応(使用者側専門)が中心業務。





  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

解雇が強行法規違反で無効になる場合

2011-12-29 | 日記
Q187 解雇が強行法規違反で無効になる場合には,どのようなものがありますか?

 解雇が強行法規違反で無効になる場合には,以下のような規定に違反した場合が挙げられます。
① 国籍,信条又は社会的身分による差別的取扱いの禁止(労基法3条)
② 公民権行使を理由とする解雇の禁止(労基法7条)
③ 業務上の負傷・疾病の休業期間等,産前産後休業期間等の解雇制限(労基法19条)
④ 性別を理由とする差別的取扱いの禁止(男女雇用機会均等法6条4号)
⑤ 婚姻,妊娠,出産,産前産後休業を理由する不利益取扱いの禁止(男女雇用機会均等法9条)
⑥ 育児休業,介護休業,子の看護休暇,所定外労働の制限,時間外労働の制限,深夜業の制限,所定労働時間の短縮措置の申出等を理由とする不利益取扱いの禁止(育児介護休業法10条,16条,16条の4,16条の9,18条の2,20条の2,23条の2)
⑦ 通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止(パートタイム労働法8条)
⑧ 都道府県労働局長に対し個別労働関係紛争解決の援助を求めたこと,あっせんを申請したことを理由とする不利益取扱いの禁止(個別労働関係紛争解決促進法4条,5条)
⑨ 公益通報したことを理由とする解雇の無効(公益通報者保護法3条)
⑩ 不当労働行為の禁止(労働組合法7条)

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雇止めが争われるリスクが高いのはどのような場合か?

2011-12-29 | 日記
Q38 雇止めが争われるリスクが高いのはどのような場合ですか?

 やはり,家計補助的な有期労働ではなく,正社員等同様,一家の大黒柱的に有期労働に従事していたような場合が挙げられると思います。
 そのような立場で雇止めにあって仕事がなくなったら,生活できなくなってしまいますから,反発が強くなるのはやむを得ないところです。

 その他,契約が何回も更新されて長期間にわたり正社員と同様の基幹的業務に従事しているような場合も,リスクが比較的高くなります。
 有期労働契約の労働者が,たいていの正社員よりも勤続年数が長く,正社員よりもできがいい,役に立つということもありますが,そのような労働者については,正社員類似の配慮が必要になると思います。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

有期労働契約期間満了で辞めてもらう場合は簡単に辞めてもらうことができるか?

2011-12-29 | 日記
Q37 有期労働契約期間満了で辞めてもらう場合は,解雇とは違いますから,簡単に辞めてもらうことができますよね?

 有期労働契約の期間が満了した場合は,契約終了となるのが原則です。
 しかし,有期労働契約期間が満了した場合であっても,
① 期間の定めのある労働契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在している場合(東芝柳町工場事件最高裁第一小法廷昭和49年7月22日判決)
② 労働者においてその期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合(日立メディコ事件最高裁第一小法廷昭和61年12月4日判決)
には,解雇権濫用法理(労働契約法16条)が類推適用され,当該労働契約の雇止め(更新拒絶)は,客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときには許されないことになります。
 したがって,有期労働契約期間満了で辞めてもらう場合であっても,①②のような場合には雇止めが争われることがあり,簡単に辞めてもらうことができるとは限りません。
 もっとも,正社員と比較して,有期労働契約の労働者は,長期雇用に対する期待が低いことが多いので,正社員と比べれば,すんなり辞めてもらえることが多い実情にはあります。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

配転命令を拒否した正社員の懲戒解雇

2011-12-29 | 日記
Q34 配転命令を拒否した正社員を懲戒解雇することができますか?

 転勤命令自体が無効の場合は,転勤命令拒否を理由とする懲戒解雇は認められません。
 有効な転勤命令を正社員が拒否した場合は重大な業務命令違反となるため,通常は懲戒解雇の合理的理由があるといえますが,解雇の仕方によっては懲戒解雇が無効とされることがあります。
 焦りは禁物です。
 まずは,社員が転勤に伴う利害得失を考慮して合理的な決断をするのに必要な情報を提供するなどの必要な手順を尽くす必要があります。
 有効な配転命令に従わないことを理由とする懲戒解雇が無効とされた事例では,懲戒解雇が性急に過ぎることが問題とされることが多くなっています。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

配転命令が権利の濫用になる場合

2011-12-29 | 日記
Q33 配転命令が権利の濫用になるのはどのような場合ですか?

 使用者による配転命令は,
① 業務上の必要性が存しない場合
② 不当な動機・目的をもってなされたものである場合
③ 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき
等,特段の事情のある場合でない限り権利の濫用にならないと考えられています(東亜ペイント事件最高裁第二小法廷昭和61年7月14日判決)。

 ①業務上の必要性については,東亜ペイント事件最高裁判決が,「右の業務上の必要性についても,当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく,労働力の適正配置,業務の能率増進,労働者の能力開発,勤務意欲の高揚,業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは,業務上の必要性の存在を肯定すべきである。」と判示していることもあり,企業経営上意味のある配転であれば,存在が肯定されることになります。
 退職勧奨したところ退職を断られ,転勤を命じたような場合に,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令だから,②不当な動機・目的をもってなされた転勤命令として権利の濫用となり,無効となると主張されることが多いですから,このような場合は,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令ではないと説明できるようにしておく必要があります。
 社員の配偶者が仕事を辞めない限り単身赴任となり,配偶者や子供と別居を余儀なくされるとか,通勤時間が長くなるとか,多少の経済的負担が生じるといった程度では,③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとはいえません。
 ③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるか否かを判断する際は,単身赴任手当や家族と会うための交通費の支給,社宅の提供,保育介護問題への配慮,配偶者の就職の斡旋等の配慮がなされているか等も考慮されることになります。

 ③に関し,就業場所の変更を伴う配置転換について子の養育又は家族の介護の状況に配慮する義務があること(育児介護休業法26条)には,注意が必要です。
 育児,介護の問題ついては,本人の言い分を特によく聞き,転勤命令を出すかどうか慎重に判断する必要があります。
 本人の言い分をよく聞かずに一方的に転勤を命じ,本人から育児,介護の問題を理由として転勤命令撤回の要求がなされた場合に転勤命令撤回の可否を全く検討していないなど,育児,介護の問題に対する配慮がなされていない場合は,転勤命令が無効とされるリスクが高まることになります。
 裁判例の動向からすると,特に,家族が健康上の問題を抱えている場合や,家族の介護が必要な場合の転勤については,労働者の不利益の程度について慎重に検討した方が無難と思われます。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

転勤を拒否する。

2011-12-29 | 日記
Q7 転勤を拒否する。

 まずは,転勤を拒否する事情を聴取し,転勤拒否にもっともな理由があるのかどうかを確認する必要があります。
 転勤が困難な事情を社員が述べている場合は,より具体的な事情を聴取するとともに裏付け資料の提出を求めるなどして対応することになります。

 個人の家庭内の事情は調査が容易ではないため,社員の転勤拒否に理由があるかどうかの調査には,ある程度の時間がかかることは覚悟する必要があります。
 認められる要望かどうかは別にして,本人の言い分はよく聞くことが重要です。
 転勤が困難な事情を社員が言い出す時期が遅くなった場合であっても,無視してはいけません。
 本人の言い分を聞くことすらせずに転勤を強要したり,転勤命令違反を理由に解雇したりすると,トラブルになりやすくなります。
 本人の言い分を聞く努力を尽くした結果,転勤拒否にもっともな理由がないとの判断に至った場合は,再度,転勤に応じるよう説得し,それでも転勤に応じない場合は,懲戒解雇等の処分を検討せざるを得ないことになります。

 事前の労務管理としては,就業規則に転勤命令権限についての規定を置き,入社時の誓約書で転勤等に応じること,就業規則を遵守すること等を誓約させておくべきでしょう。
 社員から,勤務地限定の合意があると主張されることがありますが,勤務地が複数ある会社の正社員については,勤務地限定の合意はなかなか認定されません。
 平成11年1月29日基発45号では,労働条件通知書の「就業の場所」欄には,「雇入れ直後のものを記載することで足りる」とされており,「就業の場所」欄に特定の事業場が記載されていたとしても,勤務地限定の合意があることにはなりません。
 ただし,それが雇入れ直後の就業場所に過ぎないことや支店への転勤もあり得ることをよく説明しておくことが望ましいです。

 転勤命令の有効性の判断基準ですが,使用者による配転命令は,
① 業務上の必要性が存しない場合
② 不当な動機・目的をもってなされたものである場合
③ 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき
等,特段の事情のある場合でない限り権利の濫用になりません(東亜ペイント事件最高裁第二小法廷昭和61年7月14日判決)。

 ①業務上の必要性については,東亜ペイント事件最高裁判決が,「右の業務上の必要性についても,当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく,労働力の適正配置,業務の能率増進,労働者の能力開発,勤務意欲の高揚,業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは,業務上の必要性の存在を肯定すべきである。」と判示していることもあり,企業経営上意味のある配転であれば,存在が肯定されることになります。
 退職勧奨したところ退職を断られ,転勤を命じたような場合に,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令だから,②不当な動機・目的をもってなされた転勤命令として権利の濫用となり,無効となると主張されることが多いですから,このような場合は,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令ではないと説明できるようにしておく必要があります。
 社員の配偶者が仕事を辞めない限り単身赴任となり,配偶者や子供と別居を余儀なくされるとか,通勤時間が長くなるとか,多少の経済的負担が生じるといった程度では,③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとはいえません。
 ③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるか否かを判断する際は,単身赴任手当や家族と会うための交通費の支給,社宅の提供,保育介護問題への配慮,配偶者の就職の斡旋等の配慮がなされているか等も考慮されることになります。

 ③に関し,就業場所の変更を伴う配置転換について子の養育又は家族の介護の状況に配慮する義務があること(育児介護休業法26条)には,注意が必要です。
 育児,介護の問題ついては,本人の言い分を特によく聞き,転勤命令を出すかどうか慎重に判断する必要があります。
 本人の言い分をよく聞かずに一方的に転勤を命じ,本人から育児,介護の問題を理由として転勤命令撤回の要求がなされた場合に転勤命令撤回の可否を全く検討していないなど,育児,介護の問題に対する配慮がなされていない場合は,転勤命令が無効とされるリスクが高まることになります。
 裁判例の動向からすると,特に,家族が健康上の問題を抱えている場合や,家族の介護が必要な場合の転勤については,労働者の不利益の程度について慎重に検討した方が無難と思われます。

 転勤命令自体が無効の場合は,転勤命令拒否を理由とする懲戒解雇は認められません。
 有効な転勤命令を正社員が拒否した場合は重大な業務命令違反となるため,通常は懲戒解雇の合理的理由があるといえますが,解雇の仕方によっては懲戒解雇が無効とされることがあります。
 焦りは禁物です。
 まずは,社員が転勤に伴う利害得失を考慮して合理的な決断をするのに必要な情報を提供するなどの必要な手順を尽くす必要があります。
 有効な配転命令に従わないことを理由とする懲戒解雇が無効とされた事例では,懲戒解雇が性急に過ぎることが問題とされることが多くなっています。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

労働条件通知書の「就業の場所」欄

2011-12-27 | 日記
Q32 労働条件通知書の「就業の場所」欄には,どこまで書く必要があるのですか?

 平成11年1月29日基発45号では,労働条件通知書の「就業の場所」欄には,「雇入れ直後のものを記載することで足りる」とされていますので,原則として最初の勤務場所を書けば足ります。
 ただし,転勤が問題となってから,雇入れ直後の就業場所の記載があることを理由に勤務地限定の合意があったと主張する労働者もいますので,単に雇入れ直後の就業場所を記載するだけではなく,それが雇入れ直後の就業場所に過ぎないことや支店への転勤もあり得ることを明記しておいてもいいかもしれません。
 上記通達では「将来の就業場所や従事させる業務を併せ網羅的に明示することは差し支えない」とも述べられています。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする