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問題社員の相談|弁護士法人四谷麹町法律事務所

2014-02-15 | 日記

問題社員

 あなたは,会社のことを想ってくれていて,真面目に働いている社員が,問題社員のせいでやる気をなくしてしまったり,不本意ながら会社を辞めざるを得なくなったりするのを放置することができますか?問題社員のせいで職場環境が悪化することを防止し,会社のことを想ってくれている真面目で有能な社員一人一人が安心して自己のキャリアを積み上げていくことができるようにするために,会社経営者として何をすることができると考えていますか?
 近年,問題社員の言動に会社経営者が悩まされるケースが増加しており,弁護士法人四谷麹町法律事務所には問題社員対応の相談が数多く寄せられています。現在の日本において会社経営者が自分の会社を守るためには,問題社員対策が必要不可欠となっていると言っても過言ではないでしょう。 
 弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士藤田進太郎は,数多くの問題社員セミナーで講師を務めており,問題社員対策には特に力を入れています。会社経営者を悩ます問題社員の対策・解雇退職勧奨残業代請求等の対応・対処方法は,弁護士法人四谷麹町法律事務所(東京)にご相談下さい。

弁護士法人四谷麹町法律事務所


代表弁護士 藤田 進太郎

協調性がない。

遅刻や無断欠勤が多い。

勤務態度が悪い。

派手な化粧・露出度の高い服装で出社する。 

注意するとパワハラだと言って指導に従わない。

社内研修・勉強会・合宿研修への参加を拒否する。

転勤を拒否する。

ソーシャルメディアに社内情報を書き込む。

虚偽の内部告発をして会社の名誉・信用を毀損する。

営業秘密を漏洩する。 

金銭を着服・横領したり出張旅費や通勤手当を不正取得したりする。

業務上のミスを繰り返して会社に損害を与える。

会社に無断でアルバイトをする。

就業時間外に社外で飲酒運転・痴漢・傷害事件等の刑事事件を起こす。

仕事の能力が低い。

管理職なのに部下を管理できない。

精神疾患を発症して欠勤や休職を繰り返す。

精神疾患の発症を長時間労働や上司のパワハラ・セクハラのせいにする。

(1) 長時間労働や上司のパワハラ・セクハラが原因として精神疾患を発症した場合の効果  長時間労働や上司のパワハラ・セクハラが原因となって労働者が精神疾患を発症した場合,当該精神疾患の発症は労災となります。  精神疾患の… 続きを読む


退職届提出と同時に年休取得を申請し引継ぎをしない。

 労働者がその有する休暇日数の範囲内で,具体的な休暇の始期と終期を特定して時季指定をしたときは,適法な時季変更権の行使がない限り,年次有給休暇が成立し,当該労働日における就労義務が消滅します。  年休取得に使用者の承認は… 続きを読む


社宅に家財道具等を残したまま行方不明になる。

1 社員の行方を捜す努力  まずは,電話,電子メール,社宅訪問,家族・身元保証人等への問い合わせ等により,社員の行方を捜す努力をして下さい。  警察に行方不明者届を提出する場合は,親族が提出するのが通常と思われますが,勤… 続きを読む


社員を引き抜いて同業他社に転職する。

 在職中は,労働契約上の誠実義務として,同業他社に勤務したり,自ら同業他社を経営したりすることは当然禁止されますが,退職後は,競業避止特約がある場合に限り,合理的な範囲内においてのみ競業が禁止されることになります。  特… 続きを読む


退職勧奨に応じて退職届を提出したのに退職の効力を争う。

1 退職勧奨の法的性格  退職勧奨とは,一般に,使用者が労働者に対し合意退職の申込みを促す行為(申込みの誘引)をいいます。退職勧奨が申込の誘因と評価できる場合には,労働者が退職勧奨に応じて退職を申し込み,使用者が労働者の… 続きを読む


退職勧奨しても退職しない。

1 退職勧奨の法的性格  退職勧奨の法的性格については様々な見解がありますが,裁判実務においては,使用者が労働者に対し合意退職の申込みを促す行為(申込みの誘引)と評価されるのが通常です。したがって,労働者が退職勧奨に応じ… 続きを読む


退職勧奨したところ解雇してくれと言い出す。

1 経営者を挑発して解雇させ,多額の金銭を獲得してから転職しようと考える社員  最近では,経営者を挑発して解雇させ,多額の金銭を獲得してから転職しようと考える社員が増えています。退職勧奨した社員から解雇してくれと言われた… 続きを読む


試用期間中の社員なのに本採用拒否(解雇)を争う。

1 試用期間とは  試用期間には法律上の定義がなく,様々な意味に用いられますが,一般的には,正社員として採用された者の人間性や能力等を調査評価し,正社員としての適格性を判断するための期間をいいます。 2 本採用拒否の法的… 続きを読む


採用内定取消に応じない。

 採用内定の法的性格は一様ではありませんが,採用内定により(始期付解約権留保付)労働契約が成立することが多いものと思われます。  採用内定により労働契約が成立している以上,採用内定取消の法的性質は解雇であり,解雇権濫用法… 続きを読む


不採用通知に抗議する。

(1) 採用の自由  憲法22条,29条は,財産権の行使,営業その他広く経済活動の自由を基本的人権として保障しており,使用者は経済活動の一環として契約締結の自由を有していますので,自己の営業のために労働者を雇用するにあた… 続きを読む


契約期間が満了したのに契約が終了していないと言い張る。

(1) 労契法19条  有期労働契約は,契約期間が満了すれば,契約は当然に終了するのが原則です。  しかし,労契法19条の要件を満たす場合は,使用者は,従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で有期労働契約… 続きを読む


トラブルの多い社員が定年退職後の再雇用を求めてくる。

(1) 高年齢者雇用確保措置の概要  高年法9条1項は,65歳未満の定年の定めをしている事業主に対し,その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため,  ① 定年の引上げ  ② 継続雇用制度(現に雇用してい… 続きを読む


勝手に残業して残業代を請求する。

(1) 不必要に残業をする社員への対応  不必要に残業をする社員に対しては,注意指導して,改めさせる必要があります。  長時間労働は,残業代(割増賃金)請求の問題にとどまるものではなく,過労死,過労自殺,うつ病等の問題に… 続きを読む


残業代込みの給料という約束で入社したのに残業代を請求する。

(1) 残業代は支払わない旨の合意の有効性  残業代(割増賃金)の支払は労基法37条で義務付けられているところ,労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,労基法で定める基準に達しない労働条件を定める部分につ… 続きを読む


管理職なのに残業代を請求する。

(1) 管理職≠「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)  管理職であっても,労基法上の労働者である以上,原則として労基法37条の適用があり,週40時間,1日8時間を超えて労働させた場合,法定休日に労働させた場合… 続きを読む


賃金減額に応じない。

1 賃金減額の方法  賃金減額の方法としては,①労働協約,②就業規則の変更,③個別同意によることが考えられます。 2 労働協約による賃金減額  労働組合との間で賃金に関する労働協約を締結した場合,それが組合員にとって有利… 続きを読む


有期契約労働者が正社員と同じ待遇を要求する。

(1) 問題の所在  有期契約労働者の労働条件は個別労働契約又は就業規則等により決定されるものであり,正社員と同じ待遇を要求することは認められないのが原則です。  しかし,有期契約労働者が正社員と同じ仕事に従事し,同じ責… 続きを読む


再雇用後の賃金が定年退職前よりも下がることにクレームをつける。

(1) 再雇用後の賃金水準に対する規制  高年法上,継続雇用後の賃金等の労働条件については特別の定めがなく,年金支給開始年齢の65歳への引上げに伴う安定した雇用機会の確保という同法の目的,パート労働法8条,労契法20条,… 続きを読む


解雇した社員が合同労組に加入して団体交渉を要求する。

(1) 団交応諾義務  解雇された社員であっても,解雇そのものまたはそれに関連する退職条件等が団体交渉の対象となっている場合には,労働組合法第7条第2号の「雇用する労働者」に含まれるため,解雇された社員が加入した労働組合… 続きを読む


合同労組に加入して会社オフィス前や社長自宅前で街宣活動をする。

 三井倉庫港運事件最高裁第一小法廷平成元年12月14日判決が,「ユニオン・ショップ協定のうち,締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが,他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成… 続きを読む


営業社員が営業中に仕事をサボる。

1 営業中に営業社員が仕事をサボっている情報を入手した場合の対応  営業中に営業社員が仕事をサボっている情報を入手した場合,まずは当該営業社員がいつどこでどのようにサボっていたのかといった事実関係をできるだけ整理します。… 続きを読む


言われたことしか仕事をしない(指示待ち人間)。

1 「指示待ち人間」とは  今から30年以上前の1981年にも,言われたことはこなすが言われるまでは何もしない新入社員を表現する造語として,「指示待ち世代」「指示待ち族」といった言葉が流行したことがあります。当時から30… 続きを読む


ソーシャルメディアに問題映像を投稿する。

1 ソーシャルメディアへの問題映像の投稿を防止するための事前対応  ソーシャルメディア上の情報は拡散しやすいため,元の問題映像の投稿を削除しても,ソーシャルメディア上の情報を完全に消去することはできなくなることがあります… 続きを読む


部下に過大なノルマを課したり仕事を干したりする。

1 過大なノルマの問題点  部下に対し一定のノルマを課すこと自体は合理的なことであり,上司にしてみれば,ノルマを達成できるだけの高い能力とやる気のある社員だけ残ればいいという発想なのかもしれません。  しかし,とても達成… 続きを読む

飲み会で部下に飲酒を強要する。

1 飲酒強要の問題点  上司と部下が酒食を共にすることは,普段の仕事とは違った打ち解けた雰囲気での親密なコミュニケーションを促し,円滑な人間関係の形成に資する面がありますが,体質上,お酒を全く飲めない人もいますし,お酒が… 続きを読む

解雇していないのに出社しなくなった社員が解雇されたと主張する。

1 退職届を提出させることの重要性  社員が口頭で会社を辞めると言って出て行ってしまったような場合,退職届等の客観的証拠がないと口頭での合意退職が成立したと会社が主張しても認められず,解雇したと認定されたり,合意退職も成… 続きを読む

ホウレンソウ(報・連・相)ができない。

1  ホウレンソウ(報・連・相)の重要性  いわゆるホウレンソウ(報・連・相)は,「報告・連絡・相談」の略語です。一般的には,部下が仕事を遂行する上で上司との間で取る必要のあるコミュニケーションの手段を表す言葉として,ホ… 続きを読む

 


ホウレンソウ(報・連・相)ができない。

2014-02-15 | 日記

ホウレンソウ(報・連・相)ができない。

1  ホウレンソウ(報・連・相)の重要性
 いわゆるホウレンソウ(報・連・相)は,「報告・連絡・相談」の略語です。一般的には,部下が仕事を遂行する上で上司との間で取る必要のあるコミュニケーションの手段を表す言葉として,ホウレンソウ(報・連・相)が用いられることが多いようです。
 報・連・相が適切に行われれば,仕事の進捗状況や会社の問題点についての情報を共有することができるようになります。その結果,個々の社員としてではなく,組織として問題点に対処することができますので,リスクを管理したり,仕事を効率的に処理したりしやすくなります。
 逆に,報・連・相が適切に行われていない組織においては,問題点が上司等に伝わらない結果,十分なリスク管理ができずに会社が大きな損害を被ることになりかねません。また,仕事の処理能力が不十分な社員が孤立した状態で仕事をすることになりがちのため,仕事の効率が悪くなったり,成果が上がりにくくなったりしやすくなります。
 現在,報・連・相が適切に行われることの重要性は,ますます高まっているといえるでしょう。
2  適切な報・連・相とは
 もっとも,部下が上司に対して報・連・相すべき対象を吟味せずに何でも報・連・相すればいいというものではありませんし,効率的に報・連・相ができるよう工夫する必要もあります。何でも報・連・相しなければならないとしたのではあまりに業務効率が悪くなりますし,部下が自主的に判断して仕事を進める能力が鍛えられにくくなってしまいます。また,報・連・相の仕方について工夫しないと,部下が上司に報・連・相したいことがうまく伝わらなかったり,余計な時間がかかってしまったりしがちになります。
 何を報・連・相すべきかは,ケース・バイ・ケースの判断が求められることが多いですが,上司から部下に対して何らかの指標を示してやらないと,適切な報・連・相ができるかどうかは,部下個人の資質により大きく左右されてしまいます。上司と部下でよくコミュニケーションを取って認識を共有し,何を報・連・相すべきなのかについて部下が判断しやすくなるよう努力すべきでしょう。例えば,部下からの報・連・相を待つだけでなく,定期的に報・連・相のための時間を取り,部下が報・連・相しやすくするといった工夫も考えられます。
 可能であれば,必ず報・連・相すべき事項や,どのような方法で報・連・相すべきかについてのルールを整備しておきたいところです。また,報・連・相に用いる書式を作成し,効率的に報・連・相できるようにするといった工夫も考えられます。
 一般論としては,会社にとって都合の悪い情報ほど,直ちに報・連・相する必要性が高くなります。会社にとって大きな問題とならないような情報であれば,定期的に直属の上司に対して報・連・相するようにさせれば足りますが,会社にとって大きな問題となりそうな悪い情報の場合は,緊急に上司ひいては経営者が把握できるようにしておく必要があります。
 部下の上司に対する報・連・相の具体的なやり方について少しお話ししますと,まずは結論を簡潔に伝えた上で,具体的経過等の説明を行った方が,上司は情報を把握しやすいのが通常です。「事実」と「意見」を明確に区別して報告等を行うことも重要で,自分の意見や感想をあたかも客観的事実であるかのように報告すると,上司が正確な判断をすることができなくなってしまいます。単純な内容のものや急いで報告しなければならないことはまずは口頭で報告すべきですし,重要で記録に残しておく必要性が高いものや複雑で書面に記載しないと分かりにくいものは,口頭で説明するだけでなく,できる限り書面も作成して説明する必要があります。電子メールは有用なツールですが,頼りすぎるとコミュニケーション不足に陥るなどして,かえって効率が悪くなることがありますので,重要なものや緊急のものについては,対面又は電話での報・連・相と併せて電子メールを利用すべきでしょう。
3  報・連・相ができない社員の対処法
 上司と部下でよくコミュニケーションを取って認識を共有する努力をしていれば,部下が最低限の報・連・相もできないということは,仕事に不慣れな新入社員のケースでもない限り,そう多くはありません。部下が報・連・相しようとしない場合,まずは上司である自己の言動が,部下の報・連・相を抑制させる結果になっていないか,よく考えてみるべきでしょう。部下が当然,報・連・相すべきときに報・連・相したのに対し,上司として当然行うべき対応を怠ることが度重なれば,部下も上司に対して報・連・相しなくなります。
 部下が報・連・相できない場合,上司が当該部下とよくコミュニケーションを取って,報・連・相すべき事項について繰り返し指導教育する必要があります。それでもなお,部下が報・連・相しない場合には,部下に報・連・相する意思がないのか,いくら教育しても理解できない程度の能力しか有していないのかを見極める必要があります。
 部下に報・連・相する意思がない場合は,厳重注意書を交付したり,懲戒処分に処したりして対応します。懲戒処分を繰り返しても態度が改まらない場合は,退職勧奨や解雇も検討せざるを得ないでしょう。
 部下の理解能力不足が原因の場合は対応が少々やっかいです。本人は精一杯,報・連・相しようとしてもする能力がないわけですから,賞与等の査定において低く評価することはできても,懲戒処分に処することはできません。また,裁判所は,一般的には,地位や能力を特定して高い賃金で採用した場合を除き,能力不足を理由とした正社員の解雇をなかなか認めない傾向にありますので,本人が退職に同意しない限り,辞めさせることも困難なケースが多いというのが実情です。
 後になってから言っても仕方がないことかもしれませんが,部下の理解能力不足については採用の段階でチェックすることができたはずです。筆記試験の成績が悪かったり,会話の受け答えがちぐはぐな応募者を採用しないようにすれば,極端に理解能力が不足した社員を採用せずに済むのではないかと思います。縁故採用の場合は理解能力のチェックが甘くなりがちですが,最低限の能力があるかどうかについてはチェックしないと,大きな問題を抱えることになりかねません。仮に,採用時には理解能力不足を見抜けなかったとしても,試用期間満了時までには理解能力不足を把握して本採用拒否できるようにしておきたいところです。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎


講演・著作等|弁護士 藤田進太郎

2014-02-15 | 日記

講演・著作等

『「問題社員」対応で中小企業の社長・社労士が陥りやすい問題点丸わかりセミナー』(日本法令,東京会場,平成26年2月15日)
『労働時間管理Q&A100問』(共著,三協法規出版)
『社会保険労務士の紛争解決手続代理業務を行うのに必要な学識及び実務能力に関する研修』ゼミナール講師(東京,平成25年11月15日・16日・23日)
『基礎研修 初めての労働審判』(第一東京弁護士会,平成25年11月18日)
『解雇・残業代トラブルの防ぎ方と対応法』(賃金管理研究所,第238回賃金管理研究会,平成25年11月5日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成25年10月4日)
『労働問題~問題社員の対処法Q&A~」(神奈川県司法書士会平成25年度第6回会員研修会,平成25年9月27日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成25年9月25日)
『飲食店経営者のための労働問題相談セミナー』(平成25年9月24日)
『中小企業における労働問題の実務 ~メンタルヘルスの視点を踏まえて~』(東京司法書士会平成25年度企業法務研修会第1回,平成25年9月4日)
『パワハラと業務命令の境界線』(第411回証券懇話会月例会,平成25年7月26日)
『あんしんビジネス相談所 トラブルの多い社員を解雇することはできる?』(あんしんLife vol.494)
『会社経営者のための労働問題相談サイト』開設(平成25年7月1日)
『改正高年齢者雇用安定法の実務上の留意点』(労政時報第3844号)
『日本航空事件・東京地裁平成23年10月31日判決』(経営法曹第176号)
『実務コンメンタール 労働基準法・労働契約法』(編集協力者,労務行政研究所編)
『改正労働契約法の詳解』(共著,第一東京弁護士会労働法制委員会編,労働調査会)
『中小企業における労働問題の実務』(東京司法書士会,企業法務研修会,平成25年1月21日)
『Q&A職場のメンタルヘルス -企業の責任と留意点-』(共著,三協法規出版)
『労務管理における労働法上のグレーゾーンとその対応』(全国青年社会保険労務士連絡協議会,特定非営利活動法人個別労使紛争処理センター,平成24年12月7日)
『解雇・退職の法律実務』(新社会システム総合研究所,東京会場,平成24年11月20日)
『社会保険労務士の紛争解決手続代理業務を行うのに必要な学識及び実務能力に関する研修』ゼミナール講師(東京,平成24年11月9日・10日・17日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成24年10月4日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成24年9月28日)
『問題社員への法的対応の実務』(経営調査会,平成24年9月26日)
『日本航空事件東京地裁平成23年10月31日判決』(経営法曹会議,判例研究会,平成24年7月14日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,札幌会場,平成24年6月26日)
『有期労働法制が実務に与える影響』(『労働経済春秋』2012|Vol.7,労働調査会)
『現代型問題社員を部下に持った場合の対処法~ケーススタディとQ&A』(長野県経営者協会,第50期長期管理者研修講座,平成24年6月22日)
『労働時間に関する法規制と適正な労働時間管理』(第一東京弁護士会・春期法律実務研修専門講座,平成24年5月11日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,福岡会場,平成24年4月17日)
『高年齢者雇用安定法と企業の対応』(共著,第一東京弁護士会労働法制委員会編,労働調査会)
『実例 労働審判(第12回) 社会保険料に関する調停条項』(中央労働時報第1143号,2012年3月号)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成24年3月8日)
『労使の信頼を高めて 労使紛争の当事者にならないためのセミナー』(商工会議所中野支部,平成24年3月7日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成24年2月29日)
『健康診断実施と事後措置にまつわる法的問題と企業の対応』(『ビジネスガイド』2012年3月号№744)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,名古屋会場,平成24年1月20日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,大阪会場,平成23年10月31日)
日韓弁護士交流会・国際シンポジウム『日本と韓国における非正規雇用の実態と法的問題』日本側パネリスト(韓国外国語大学法学専門大学院・ソウル弁護士協会コミュニティ主催,平成23年9月23日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成23年9月16日)
『マクドの失敗を活かせ!新聞販売店,労使トラブル新時代の対策』(京都新聞販売連合会京都府滋賀県支部主催,パートナーシステム,平成23年9月13日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成23年9月6日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,東京会場,平成23年8月30日)
『社員教育の労働時間管理Q&A』(みずほ総合研究所『BUSINESS TOPICS』2011/5)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成23年4月14日)
『改訂版 最新実務労働災害』(共著,三協法規出版)
『労働審判を申し立てられた場合の具体的対処方法』(企業研究会,東京会場,平成22年9月8日)
『もし,自分が気仙沼で教師をしていたら,子供達に何を伝えたいか?』(気仙沼ロータリークラブ創立50周年記念式典,平成22年6月13日)
『文書提出等をめぐる判例の分析と展開』(共著,経済法令研究会)
『明日から使える労働法実務講座』(共同講演,第一東京弁護士会若手会員スキルアップ研修,平成21年11月20日)
『採用時の法律知識』(第373回証券懇話会月例会,平成21年10月27日)
『他人事ではないマクドナルド判決 経営者が知っておくべき労務,雇用の急所』(横浜南法人会経営研修会,平成21年2月24日)
『今,気をつけたい 中小企業の法律問題』(東京商工会議所練馬支部,平成21年3月13日)
『労働法基礎講座』(ニッキン)
『管理職のための労働契約法労働基準法の実務』(共著,第一東京弁護士会労働法制委員会編,清文社)

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代表弁護士 藤田進太郎|弁護士法人四谷麹町法律事務所

2014-02-15 | 日記

代表弁護士

経歴・所属等

profile_fujita代表弁護士 藤田進太郎

東京大学法学部卒業
第一東京弁護士会会員
日本弁護士連合会労働法制委員会委員・事務局員
労働審判PTメンバー
第一東京弁護士会労働法制委員会委員・労働契約法部会副部会長
東京三会労働訴訟等協議会委員
経営法曹会議会員
全国倒産処理弁護士ネットワーク会員

講演・著作等

『「問題社員」対応で中小企業の社長・社労士が陥りやすい問題点丸わかりセミナー』(日本法令,東京会場,平成26年2月15日)
『労働時間管理Q&A100問』(共著,三協法規出版)
『社会保険労務士の紛争解決手続代理業務を行うのに必要な学識及び実務能力に関する研修』ゼミナール講師(東京,平成25年11月15日・16日・23日)
『基礎研修 初めての労働審判』(第一東京弁護士会,平成25年11月18日)
『解雇・残業代トラブルの防ぎ方と対応法』(賃金管理研究所,第238回賃金管理研究会,平成25年11月5日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成25年10月4日)
『労働問題~問題社員の対処法Q&A~」(神奈川県司法書士会平成25年度第6回会員研修会,平成25年9月27日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成25年9月25日)
『飲食店経営者のための労働問題相談セミナー』(平成25年9月24日)
『中小企業における労働問題の実務 ~メンタルヘルスの視点を踏まえて~』(東京司法書士会平成25年度企業法務研修会第1回,平成25年9月4日)
『パワハラと業務命令の境界線』(第411回証券懇話会月例会,平成25年7月26日)
『あんしんビジネス相談所 トラブルの多い社員を解雇することはできる?』(あんしんLife vol.494)
『会社経営者のための労働問題相談サイト』開設(平成25年7月1日)
『改正高年齢者雇用安定法の実務上の留意点』(労政時報第3844号)
『日本航空事件・東京地裁平成23年10月31日判決』(経営法曹第176号)
『実務コンメンタール 労働基準法・労働契約法』(編集協力者,労務行政研究所編)
『改正労働契約法の詳解』(共著,第一東京弁護士会労働法制委員会編,労働調査会)
『中小企業における労働問題の実務』(東京司法書士会,企業法務研修会,平成25年1月21日)
『Q&A職場のメンタルヘルス -企業の責任と留意点-』(共著,三協法規出版)
『労務管理における労働法上のグレーゾーンとその対応』(全国青年社会保険労務士連絡協議会,特定非営利活動法人個別労使紛争処理センター,平成24年12月7日)
『解雇・退職の法律実務』(新社会システム総合研究所,東京会場,平成24年11月20日)
『社会保険労務士の紛争解決手続代理業務を行うのに必要な学識及び実務能力に関する研修』ゼミナール講師(東京,平成24年11月9日・10日・17日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成24年10月4日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成24年9月28日)
『問題社員への法的対応の実務』(経営調査会,平成24年9月26日)
『日本航空事件東京地裁平成23年10月31日判決』(経営法曹会議,判例研究会,平成24年7月14日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,札幌会場,平成24年6月26日)
『有期労働法制が実務に与える影響』(『労働経済春秋』2012|Vol.7,労働調査会)
『現代型問題社員を部下に持った場合の対処法~ケーススタディとQ&A』(長野県経営者協会,第50期長期管理者研修講座,平成24年6月22日)
『労働時間に関する法規制と適正な労働時間管理』(第一東京弁護士会・春期法律実務研修専門講座,平成24年5月11日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,福岡会場,平成24年4月17日)
『高年齢者雇用安定法と企業の対応』(共著,第一東京弁護士会労働法制委員会編,労働調査会)
『実例 労働審判(第12回) 社会保険料に関する調停条項』(中央労働時報第1143号,2012年3月号)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成24年3月8日)
『労使の信頼を高めて 労使紛争の当事者にならないためのセミナー』(商工会議所中野支部,平成24年3月7日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成24年2月29日)
『健康診断実施と事後措置にまつわる法的問題と企業の対応』(『ビジネスガイド』2012年3月号№744)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,名古屋会場,平成24年1月20日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,大阪会場,平成23年10月31日)
日韓弁護士交流会・国際シンポジウム『日本と韓国における非正規雇用の実態と法的問題』日本側パネリスト(韓国外国語大学法学専門大学院・ソウル弁護士協会コミュニティ主催,平成23年9月23日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成23年9月16日)
『マクドの失敗を活かせ!新聞販売店,労使トラブル新時代の対策』(京都新聞販売連合会京都府滋賀県支部主催,パートナーシステム,平成23年9月13日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成23年9月6日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,東京会場,平成23年8月30日)
『社員教育の労働時間管理Q&A』(みずほ総合研究所『BUSINESS TOPICS』2011/5)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成23年4月14日)
『改訂版 最新実務労働災害』(共著,三協法規出版)
『労働審判を申し立てられた場合の具体的対処方法』(企業研究会,東京会場,平成22年9月8日)
『もし,自分が気仙沼で教師をしていたら,子供達に何を伝えたいか?』(気仙沼ロータリークラブ創立50周年記念式典,平成22年6月13日)
『文書提出等をめぐる判例の分析と展開』(共著,経済法令研究会)
『明日から使える労働法実務講座』(共同講演,第一東京弁護士会若手会員スキルアップ研修,平成21年11月20日)
『採用時の法律知識』(第373回証券懇話会月例会,平成21年10月27日)
『他人事ではないマクドナルド判決 経営者が知っておくべき労務,雇用の急所』(横浜南法人会経営研修会,平成21年2月24日)
『今,気をつけたい 中小企業の法律問題』(東京商工会議所練馬支部,平成21年3月13日)
『労働法基礎講座』(ニッキン)
『管理職のための労働契約法労働基準法の実務』(共著,第一東京弁護士会労働法制委員会編,清文社)

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精神疾患を発症して欠勤や休職を繰り返す。

2014-02-15 | 日記

精神疾患を発症して欠勤や休職を繰り返す。

1 精神疾患発症が疑われる社員の基本的対応
 まずは,業務により精神疾患が悪化することがないよう配慮する必要があります。会社は社員に対し安全配慮義務を負っているのですから,社員が精神疾患を発症していることが疑われるのであれば,それを前提とした配慮が必要であり,本人が就労を希望していたとしても,漫然と放置してはいけません。精神疾患を発症していることを知りながらそのまま勤務を継続させた結果,症状を悪化させた場合は,本人にとって不幸な結果であることに疑いはありませんし,会社も安全配慮義務違反を問われて損害賠償義務を負うことになりかねません。
 所定労働時間内の通常業務であれば問題なく行える程度の症状である場合は,時間外労働や出張等,負担の重い業務を免除する等して対処すれば足ります。長期間にわたって所定労働時間の勤務さえできない場合は,原則として,私傷病に関する休職制度がある場合は休職を検討し,私傷病に関する休職制度がない場合は普通解雇を検討することになります。
 私傷病に関する休職制度普通解雇を猶予する趣旨の制度であり,必ずしも就業規則に規定しなければならない制度ではありません。休職制度を設けずに,私傷病を発症して働けなくなった社員にはいったん退職してもらい,私傷病が治癒したら再就職を認めるといった制度設計も考えられます。
2 精神疾患の発症が強く疑われるにもかかわらず精神疾患の発症を否定する社員の対応
 精神疾患の発症が強く疑われる社員が出社してきたものの,労働契約の債務の本旨に従った労務提供ができない場合は,就労を拒絶して帰宅させ,欠勤扱いにすれば足ります。
 労働契約の債務の本旨に従った労務提供ができるかどうかは,職種や業務内容を特定して労働契約が締結された場合は当該職種等についてのみ検討すれば足りるケースが多いですが,職種や業務内容を特定せずに労働契約が締結されている場合は,現に就業を命じた業務について労務の提供が十分にできないとしても,当該社員が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供ができ,かつ,本人がその労務の提供を申し出ているのであれば,債務の本旨に従った履行の提供があると評価されるため(片山組事件最高裁第一小法廷平成10年4月9日判決),当該社員が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供ができ,かつ,本人がその労務の提供を申し出ているのであれば,当該業務についても検討する必要があります。
 労働契約の債務の本旨に従った労務提供があるかどうかを判断するにあたっては,専門医の診断・意見を参考にします。本人が提出した主治医の診断書の内容に疑問があるような場合であっても,専門医の診断を軽視することはできません。主治医への面談を求めて診断内容の信用性をチェックしたり,精神疾患に関し専門的知識経験を有する産業医の意見を聴いたりして,病状を確認する必要があります。
 精神疾患の発症が疑われるため,会社が医師を指定して受診を命じたところ,本人が指定医への受診を拒絶した場合は,労働契約の債務の本旨に従った労務提供がないものとして労務の提供を拒絶し,欠勤扱いとすることができることもあります。
 精神疾患の発症が疑われる社員が精神疾患の発症や休職事由の存在を否定している場合には,休職事由の存在を立証できるだけの診断書等の証拠をそろえてから休職命令を出すことになります。
 労働契約の本旨に従った労務提供ができる程度にまで精神疾患が改善しないまま休職期間が満了すると退職という重大な法的効果が発生することになるので,休職命令発令時及び休職期間満了直前の時期に,何年の何月何日までに労働契約の本旨に従った労務提供ができる程度にまで精神疾患が改善しなければ退職扱いとなるのか通知すべきでしょう。
3 精神疾患を発症して出社と欠勤を繰り返す社員の対応
 精神疾患を発症した社員が出社と欠勤を繰り返したような場合であっても休職させることができるようにしておく必要があります。例えば,一定期間の欠勤を休職の要件としつつ,「欠勤の中断期間が30日未満の場合は,前後の欠勤期間を通算し,連続しているものとみなす。」等の通算規定を置いたり,「精神の疾患により,労務の提供が困難なとき。」等を休職事由として,一定期間の欠勤を休職の要件から外し,再度,長期間の欠勤が必要とするような規定にはしないようにしておくことになります。
 出社と欠勤を繰り返されても,真面目に働いている社員が不公平感を抱いたり,会社の負担が重くなったりしないようにして会社の活力を維持するためには,欠勤日を無給とし,傷病手当金の受給で対応するのが効果的です。出社と欠勤を繰り返す社員の対応に困っている会社は,欠勤期間についても賃金が支払われていることが多い印象です。
 私傷病に関する休職制度があるにもかかわらず,精神疾患を発症したため労働契約の債務の本旨に従った労務提供ができないことを理由としていきなり普通解雇するのは,休職させても回復の見込みが客観的に乏しいといった内容の専門医の診断又は意見があるような場合でない限り,解雇権を濫用したものとして解雇が無効(労契法16条)と判断されるリスクが高いものと思われます。
4 精神疾患を発症した社員が休職を希望している場合の対応
 精神疾患を発症した社員が休職を希望している場合は,休職申請書を提出させてから,休職命令を出すとよいでしょう。休職申請書を提出させてから休職命令を出すことにより,休職命令の有効性が争われるリスクが低くなります。
 「合意」により休職させる場合は,休職期間(どれだけの期間が経過すれば退職扱いになるのか。)についても合意して下さい。通常,就業規則に規定されている休職期間は,休職命令による休職に関する規定であり,合意休職に関する規定ではないため,合意により休職させた場合,何年の何月何日に休職期間が満了するのか争いになることがあります。原則どおり,本人から休職申請書を提出させた上で,休職「命令」を出すのが簡明と思われます。
5 復職の可否の判断基準
 復職の可否は,休職期間満了日までに,労働契約の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善しているか否かより判断するのが原則です。ただし,診断書等の客観的証拠により,間もない時期に労働契約の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善していると認定できる場合には,休職期間満了により退職扱いにするかどうかを慎重に判断する必要があります。休職期間満了時までに精神疾患が治癒せず,休職期間満了時には不完全な労務提供しかできなかったとしても,直ちに退職扱いにすることができないとする裁判例もあります。
 職種が限定されている場合は,「限定された当該職種」について労働契約の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善しているか否かを検討すれば足りるとする見解が多いところです。
 通常の正社員のように,職種や業務内容を特定せずに労働契約が締結されている場合も,「現に就業を命じられた特定の業務」について,労働契約の債務の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善しているか否かを検討するのが原則ですが,労働者が,現に就業を命じられた特定の業務について,労務の提供が十全にはできないとしても,その能力,経験,地位,当該企業の規模,業種,当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして「当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務」について労務の提供を申し出ているならば,当該業務について,労働契約の債務の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善しているか否かを検討する必要があります(片山組事件最高裁第一小法廷平成10年4月9日判決参照)。
 復職の可否を判断するにあたっては,専門医の診断・意見を参考にして下さい。本人が提出した主治医の診断書の内容に疑問があるような場合であっても,専門医の診断を軽視することはできません。主治医への面談を求めて診断内容の信用性をチェックしたり,精神疾患に関し専門的知識経験を有する産業医の意見を聴いたりして,病状を確認して下さい。
 主治医の診断に疑問がある場合に,会社が医師を指定して受診を命じたところ,本人が指定医への受診を拒絶した場合は,休職期間満了時までに,労働契約の本旨に従った労務提供ができる程度にまで精神疾患が改善していないものとして取り扱って復職を認めず,退職扱いとすることができることもあります。
 休職命令の発令,休職期間の延長等に関し,同じような立場にある社員の扱いを異にした場合,紛争になりやすく,敗訴リスクも高まるので,休職制度の運用は公平・平等に行うように心がけて下さい。
6 休職と復職を繰り返す社員の対応
 復職後間もない時期(復職後6か月以内等)に休職した場合には,休職期間を通算する(休職期間を残存期間とする)等の規定を置いて対処するのが通常です。そのような規定がない場合は,普通解雇を検討せざるを得ませんが,有効性が争われるリスクが高いところです。
 休職と復職を繰り返されても,真面目に働いている社員が不公平感を抱いたり,会社の負担が重くなったりしないようにして会社の活力を維持するためには,休職期間を無給とし,傷病手当金の受給で対応するのが効果的です。休職と復職を繰り返す社員の対応に困っている会社は,休職期間についても賃金が支払われていることが多い印象です。
7 業務に起因する精神疾患の発症と休職期間満了退職
 休職期間満了間近な時点で,休職期間満了日までに労働契約の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善する見込みが乏しい場合などに,私傷病休職期間中の正社員から,精神疾患の発症の原因が長時間労働,セクハラ,パワハラ等の業務に起因するものだから,私傷病を理由とした休職命令は休職事由を欠き無効だとか,療養するため休業する期間及びその後30日間は原則として休職期間満了による退職の効果も生じない(労基法19条1項類推)と主張されることがあります。いずれの法律構成によっても,精神疾患の発症に業務起因性が認められる場合には,原則として休職期間満了の効力は生じないことになります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎


試用期間中の社員なのに本採用拒否(解雇)を争う。

2014-02-15 | 日記

試用期間中の社員なのに本採用拒否(解雇)を争う。

1 試用期間とは
 試用期間には法律上の定義がなく,様々な意味に用いられますが,一般的には,正社員として採用された者の人間性や能力等を調査評価し,正社員としての適格性を判断するための期間をいいます。
2 本採用拒否の法的性格
 三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決は,同事件控訴審判決が「右雇用契約を解約権留保付の雇用契約と認め,右の本採用拒否は雇入れ後における解雇にあたる」と判断したことを「是認し得ないものではない。」とした上で,「被上告人に対する本採用の拒否は留保解約権の行使,すなわち雇入れ後における解雇にあたり,これを通常の雇入れの拒否の場合と同視することはできない。」と判示しています。
3 本採用拒否(解雇)の有効性の判断基準
 試用期間中の社員の本採用拒否は,本採用後の解雇と比べて,使用者が持つ裁量の範囲は広いと考えられており,三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決も,試用期間における留保解約権に基づく解雇(本採用拒否)は,通常の解雇と全く同一に論じることはできず,通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものと判示しています。
 しかし,同最高裁判決は,他方で,試用者の本採用拒否は,「解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」とも判示しており,客観的に合理的な理由がなければ本採用拒否ができないことは通常の解雇と変わりはありませんので,本採用拒否されてもやむを得ない事情を証拠により立証できなければ本採用拒否(解雇)することはできないことに変わりはありません。
 客観的に合理的な理由が必要ということは,使用者が主観的に本採用するに値する人物ではないと判断したというだけでは足りず,客観的に見て,本採用拒否せざるを得ない事情が存在することを証拠により証明することができるようにしておく必要があることを意味します。
  本採用拒否(解雇)の有効性が緩やかに判断される
 ≠本採用拒否(解雇)に客観的に合理的な理由が不要
 ≠本採用拒否(解雇)に客観的に合理的な理由があることを証明するための客観的証拠が不要
 抽象的に勤務態度が悪いとか,能力が低いとか言ってみたところで,あまり意味がなく,具体的に,何月何日に,どこで,誰が,どのように,何をしたのかといった事実を客観的証拠により認定できるようにしておく必要があります。客観的証拠確保の方法としては,例えば,試用期間中の社員は,毎日,日報に反省点等を記載させることとし,指導担当者がコメントする等といった方法も考えられます。
4 「解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」
 三菱樹脂事件最高裁大法廷判決は,「解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」を以下のように言い換えて説明しています。
 「換言すれば,企業者が,採用決定後における調査の結果により,または試用中の勤務状態等により,当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において,そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが,上記解約権留保の趣旨,目的に徴して,客観的に相当であると認められる場合には,さきに留保した解約権を行使することができるが,その程度に至らない場合には,これを行使することはできないと解すべきである。」
 緩やかな基準で認められる試用期間中の本採用拒否(解雇)は,「当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実」を理由とする本採用拒否に限られます。採用当初から知り得た事実を理由とする解雇は,解約権留保の趣旨,目的の範囲外なので,留保された解約権の行使としては認められません。採用面接時に知り得た事実を理由とする本採用拒否は緩やかな基準では判断されず,通常の解雇の基準で判断されることになります。
5 解雇予告義務(労基法20条)
 解雇予告義務(労基法20条)の適用がないのは,就労開始から14日目までであり,14日を超えて就労した場合は,試用期間中であっても,解雇予告又は解雇予告手当の支払が必要となります(労基法21条但書)。
 試用期間の残存期間が30日を切ってから本採用拒否(解雇)を通知する場合は,所定の解雇予告手当を支払う等する必要があります。試用期間満了ぎりぎりで本採用拒否(解雇)し,解雇予告手当も支払わないでいると,解雇の効力が生じるのはその30日後になってしまうため,試用期間中の解雇(本採用拒否)ではなく,試用期間経過後の通常の解雇と評価されるリスクが生じることになります。
 なお,就労開始から14日目までなら自由に解雇できると誤解されていることがありますが,就労開始から14日以内の試用期間中の者に解雇予告義務の適用がないこと(労基法21条)を誤解したのが原因ではないかと思われます。むしろ,勤務開始間もない時期の本採用拒否(解雇)は,「解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」であることを証明するに足りるだけの証拠が不十分なことが多いため,解雇権を濫用したものとして無効となる可能性が高いところです。
6 能力不足を理由とした本採用拒否
 長期雇用を予定した新卒社員については,採用後に教育していくことが予定されていますので,余程のことがない限り,能力不足を理由とした本採用拒否(解雇)は難しい傾向にあります。
 高い能力があることを前提に高給で中途採用された社員や,地位が特定され高給で中途採用された社員の場合は,比較的本採用拒否が有効となりやすい傾向にあります。
 中途採用者あっても,高い能力があることを前提としておらず,地位を特定されて採用されたわけでもなく,賃金が高額なわけでもないような場合は,能力不足を理由とした本採用拒否は必ずしも容易ではありません。
7 試用期間満了前(試用期間途中)の本採用拒否
 試用期間満了前(試用期間途中)であっても,社員として不適格であることが判明し,解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合であれば,本採用拒否することができます。
 ただし,試用期間満了前(試用期間途中)に本採用拒否(解雇)することを正当化するだけの客観的に合理的な理由を立証することができるのか,社会通念上相当として是認されるのかについてはよく検討する必要があります。
8 有期契約労働者の試用期間
 有期労働契約の中途解除を規定した民法628条は「やむを得ない事由」があるときに契約期間中の解除を認めていますが,労契法17条1項は,使用者は,有期労働契約について,やむを得ない事由がある場合でなければ,使用者は契約期間満了までの間に労働者を解雇できない旨規定しています。労契法17条1項は強行法規なので,有期労働契約の当事者が民法628条の「やむを得ない事由」がない場合であっても契約期間満了までの間に労働者を解雇できる旨合意したり,就業規則に規定して周知させたとしても,同条項に違反するため無効となり,使用者は民法628条の「やむを得ない事由」がなければ契約期間中に解雇することができません。
 このため,例えば,契約期間1年の有期労働契約者について3か月の試用期間を設けた場合,試用期間中であっても「やむを得ない事由」がなければ本採用拒否(解雇)できないものと考えられます。3か月の試用期間を設けることにより,「やむを得ない事由」の解釈がやや緩やかになる可能性はないわけではありませんが,大幅に緩やかに解釈してもらうことは期待できないものと思われます。有期契約労働者についても試用期間を設けることはできるものの,その法的効果は極めて限定されると考えるべきでしょう。
 では,どうすればいいのかという話になりますが,有期契約労働者には試用期間を設けず,例えば,最初の契約期間を3か月に設定するなどして対処すれば足ります。正社員とは明確に区別された雇用管理を行うという観点からも,有期契約労働者にまで試用期間を設けることはお勧めしません。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎


解雇していないのに出社しなくなった社員が解雇されたと主張する。

2014-02-15 | 日記

解雇していないのに出社しなくなった社員が解雇されたと主張する。

1 退職届を提出させることの重要性
 社員が口頭で会社を辞めると言って出て行ってしまったような場合,退職届等の客観的証拠がないと口頭での合意退職が成立したと会社が主張しても認められず,解雇したと認定されたり,合意退職も成立しておらず解雇もされていないから労働契約は存続していると認定されたりすることがあります。
 退職の申出があった場合は口頭で退職を承諾するだけでなく,退職届を提出させて退職の申出があったことの証拠を残しておいて下さい。印鑑を持ち合わせていない場合は,退職届に署名したものを提出させれば足ります。後から印鑑を持参させて面前で押印もさせることができればベターです。
 出社しなくなった社員が退職届を提出しない場合には,電話,電子メール,郵便等を用いて,
 ① 退職する意思があるのであれば退職届を提出すること
 ② 退職する意思がないのであれば出勤すること
を要求して下さい。放置したままにしておくのはリスクが高いです。特に,解雇通知書や解雇理由証明書を交付するよう要求してきたら要注意です。
2 解雇されたという話に持って行きたい労働者側の意図
 使用者から解雇されていないにもかかわらず,解雇されたという話に持って行きたい労働者側の意図は,主に以下のものが考えられます。
 ① 失業手当の受給条件を良くしたい。
 ② 解雇予告手当を請求したい。
 ③ 解雇無効を主張して,働かずにバックペイ又は解決金を取得したい。
3 失業手当の受給条件
 労働者が自己都合で会社を辞めた場合は,会社都合の場合と比較して,失業手当の支給開始が3か月遅れるなど,失業手当の受給条件が悪くなってしまうのが原則です。労働者の中には,会社から解雇されたことにして,失業手当の受給条件を良くしようとする者もいます。
 なお,退職勧奨により退職した者は「特定受給資格者」(雇用保険法23条1項)に該当するため(雇用保険法23条2項2号),会社都合の解雇等の場合と同様の扱いとなり,給付制限もありません。退職勧奨による退職であっても退職届を出してしまうと失業手当の受給条件が不利になると誤解されていることがあります。
4 解雇予告手当の請求
 平均賃金30日分の解雇予告手当(労基法20条1項)を取得したくて即時解雇されたと主張する労働者が散見されます。
5 解雇無効を前提とした賃金請求
 解雇の無効を前提として,解雇日以降の賃金請求がなされた場合に会社が負担する可能性がある金額は,高額になることがあります。
 単純化して説明しますと,月給30万の社員を解雇したところ,解雇の効力が争われ,2年後に判決で解雇が無効と判断された場合は,既発生の未払賃金元本だけで,30万円×24か月=720万円の支払義務を負うことになります。
 解雇が無効と判断された場合,実際には全く仕事をしていない社員に対し,毎月の賃金を支払わなければならないことを理解しておく必要があります。
6 解雇が無効と判断された場合に解雇期間中の賃金として使用者が負担しなければならない金額
 解雇が無効と判断された場合に解雇期間中の賃金として使用者が負担しなければならない金額は,当該社員が解雇されなかったならば労働契約上確実に支給されたであろう賃金の合計額です。基本給や毎月定額で支払われている手当のほとんどは支払わなければなりません。
ア 通勤手当
 実費補償的な性質を有する場合は,通勤手当について負担する必要はありません。
イ 残業代
 時間外・休日・深夜に勤務して初めて発生するものなので,通常は負担する必要がありません。ただし,一定の残業代が確実に支給されたと考えられる場合には,支払を命じられる可能性があります。
ウ 賞与
 支給金額が確定できない場合は,解雇が無効と判断されても支払を命じられません。支給金額が確定できる場合は,確定できる金額について支払が命じられることがあります。一定額の賞与を支給する労使慣行が成立していたという主張は,なかなか認められません。
エ 解雇された社員に解雇期間中の中間収入(他社で働いて得た収入)がある場合
 解雇期間中の中間収入(他社で働いて得た収入)が副業収入のようなものであって解雇がなくても取得できた(自社の収入と両立する)といった特段の事情がない限り,
 ① 月例賃金のうち平均賃金の60%(労基法26条)を超える部分(平均賃金額の40%)
 ② 平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(賞与等)の全額
が控除の対象となります(米軍山田部隊事件最高裁第二小法廷昭和37年7月20日判決,あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決,いずみ福祉会事件最高裁第三小法廷平成18年3月28日判決)。控除しうる中間収入はその発生期間が賃金の支給対象期間と時期的に対応していることが必要であり,時期が異なる期間内に得た収入を控除することは許されません(あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決)。
 解雇期間中に失業手当を受給していたとしても,失業手当額は控除してもらえません。
オ 源泉徴収すべき所得税,地方税,社会保険料
 判決で支払を命じられるのは,源泉徴収すべき所得税,地方税,社会保険料を控除する前の賃金額ですが,実際の賃金支払の際にはこれらを控除して支払うことになります。
カ 仮払金
 仮処分で賃金相当額の仮払が命じられ,仮払をしていたとしても,判決では仮払金を考慮しない賃金額の支払が命じられます。賃金の支払を命じる判決が確定した場合は,既払の仮払金の充当について,代理人間で調整する必要があります。
7 無断録音
 解雇していないのに出社しなくなった社員が解雇されたと主張するような事案では,退職に関するやり取りは,無断録音されていることが多く,録音記録が訴訟で証拠として提出された場合は,証拠として認められてしまいます。
 解雇されたことにしたい労働者は,会話を無断録音しながら「解雇」と言わせようと誘導しようとすることが多いので,不自然に「解雇」と言わせたがっている様子が窺われる場合には無断録音を疑うとともに,慎重に対応する必要があります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎


退職勧奨に応じて退職届を提出したのに退職の効力を争う。

2014-02-15 | 日記

退職勧奨に応じて退職届を提出したのに退職の効力を争う。

1 退職勧奨の法的性格
 退職勧奨とは,一般に,使用者が労働者に対し合意退職の申込みを促す行為(申込みの誘引)をいいます。退職勧奨が申込の誘因と評価できる場合には,労働者が退職勧奨に応じて退職を申し込み,使用者が労働者の退職を承諾した時点で退職の合意が成立することになります。
 退職勧奨を合意退職の申込と評価できる場合もあり,この場合には労働者が退職届を提出するなどして退職を承諾した時点で合意退職が成立することになりますが,労働者側が退職の効力を争っている場合には,裁判所は,労働者に有利に解釈し,合意退職の成立時期を遅らせる傾向にあります。
2 退職の申込みの撤回
 退職勧奨が申込の誘因と評価された場合には,退職勧奨を受けた労働者が退職届を提出して合意退職を申し込んだとしても,社員の退職に関する決裁権限のある人事部長や経営者が退職を承諾するまでの間は退職の合意が成立していません。社員の退職に関する決裁権限のある人事部長や経営者が退職を承諾するまでの間は,信義則に反するような特段の事情がない限り,合意退職の申込みの撤回が認められます。
 退職を早期に確定したい場合は,退職届の提出を受け次第速やかに退職を承諾する旨の決済を得て退職届受理通知を交付するなどして,退職を承諾する旨の意思表示を早期に行うようにして下さい。退職を認める旨の決済が内部的になされただけで,退職届を提出した社員に通知していない時点では,承諾の意思表示がなされておらず合意退職が成立していないと評価される可能性が高いものと思われます。
3 錯誤・強迫・心裡留保等
 退職届を提出した社員から,錯誤(民法95条),強迫(民法96条),心裡留保(民法93条)等が主張されることもありますが,退職届が提出されていれば,合意退職の効力が否定されるリスクはそれほど高くはありません。
 錯誤無効,強迫取消が認められる典型的事例は,「このままだと懲戒解雇は避けられず,懲戒解雇だと退職金は出ない。ただ,退職届を提出するのであれば,温情で受理し,退職金も支給する。」等と社員に告知して退職届を提出させたところ,実際には懲戒解雇できるような事案ではなかったことが後から判明したようなケースです。有効に解雇できるような事案でない限り,退職勧奨するにあたり,「解雇」という言葉は使うべきではありません。
 退職するつもりはないのに,反省していることを示す意図で退職届を提出したことを会社側が知ることができたような場合は,心裡留保(民法93条)により,退職は無効となることがあります。
4 無断録音
 退職勧奨のやり取りは,無断録音されていることが多く,録音記録が訴訟で証拠として提出された場合は,証拠として認められてしまうのが通常です。退職勧奨を行う場合は,感情的にならないよう普段以上に心掛け,無断録音されていても不都合がないようにして下さい。
5 慰謝料請求
 退職勧奨を行うことは,不当労働行為に該当する場合や,不当な差別に該当する場合などを除き,労働者の任意の意思を尊重し,社会通念上相当と認められる範囲内で行われる限りにおいて違法性を有するものではありません。その説得のための手段,方法がその範囲を逸脱するような場合には違法性を有し,使用者は当該労働者に対し,不法行為等に基づく損害賠償義務を負うことがあります。
 退職勧奨の各担当者が,自分の行っている退職勧奨のやり取りは全て無断録音されていて,訴訟になった場合は全てのやり取りが裁判官にも上司にも社長にも明らかになってしまうことを覚悟した上で退職勧奨を行えば,よほど退職勧奨に向いていない担当者でない限り,違法となるような退職勧奨を行うことはないのではないかと思います。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎


退職勧奨したところ解雇してくれと言い出す。

2014-02-15 | 日記

退職勧奨したところ解雇してくれと言い出す。

1 経営者を挑発して解雇させ,多額の金銭を獲得してから転職しようと考える社員
 最近では,経営者を挑発して解雇させ,多額の金銭を獲得してから転職しようと考える社員が増えています。退職勧奨した社員から解雇してくれと言われたからといって,安易に解雇すべきではありません。後日,解雇が無効であることを前提として,多額の賃金請求を受けるリスクがあります。解雇するようしきりに催促し,解雇理由証明書を交付するよう要求してきたら要注意です。
 当該社員が退職することに同意しているのであれば,解雇するのではなく,退職届を提出させるか,合意退職書に署名押印させて下さい。
2 退職勧奨と失業手当の受給条件
 「事業主から退職するよう勧奨を受けたこと。」(雇用保険法施行規則36条9号)を理由として離職した者は「特定受給資格者」(雇用保険法23条1項)に該当するため(雇用保険法23条2項2号),退職勧奨による退職は会社都合の解雇等の場合と同様の扱いとなり,失業手当の給付制限等に関し労働者が不利益を受けることにはなりません。つまり,失業手当の受給条件を良くするために解雇する必要はないのです。退職届を出してしまうと,失業手当の受給条件が不利になると誤解されている場合には,丁寧に説明し,誤解を解くよう努力して下さい。
 なお,助成金との関係でも,会社都合の解雇をしたのと同様の取り扱いとなることには注意が必要です。
3 解雇予告手当の請求
 即時解雇した場合,解雇予告手当の請求を受けることがありますが,解雇予告手当の請求は解雇の効力を争わないことを前提とした請求ですし,解雇予告手当は平均賃金の30日分を支払えば足りるので(労基法20条1項),そのリスクは限定されます。
4 解雇無効を前提とした賃金請求
 解雇の無効を前提として,解雇日以降の賃金請求がなされた場合に会社が負担する可能性がある金額は,高額になることがあります。単純化して説明すると,月給30万の社員を解雇したところ,解雇の効力が争われ,2年後に判決で解雇が無効と判断された場合は,既発生の未払賃金元本だけで,30万円×24か月=720万円の支払義務を負うことになります。解雇が無効と判断された場合,実際には全く仕事をしていない社員に対し,毎月の賃金を支払わなければならないことを理解しておく必要があります。
5 無断録音
 退職勧奨,解雇のやり取りは,無断録音されていることが多く,録音記録が訴訟で証拠として提出された場合は,証拠として認められてしまいます。退職勧奨,解雇を行う場合は,感情的にならないよう普段以上に心掛け,無断録音されていても不都合がないようにして下さい。
 退職勧奨は,やり過ぎると不法行為になることがありますが,自分の発言が無断録音されて上司や社長や裁判官や弁護士に聞かれても差し支えないと考えられる言動であれば,不法行為が成立するようなことは滅多にありません。
6 解雇してくれと言われて解雇したところ解雇の効力が争われ,解雇が無効と判断されるリスクが高い場合の対処
 解雇してくれと言われて解雇したところ解雇の効力が争われ,解雇が無効と判断されるリスクが高いような場合は,解雇を撤回し,就労を命じる必要がある場合もあります。この場合,解雇日の翌日から解雇撤回後に就労を命じた初日の前日までの解雇期間に対する賃金の支払義務を負うことになりますが,出社を命じた初日以降については出社しない限り賃金支払義務を負わないのが原則です。
 解雇を撤回して就労を命じた場合,実際に戻ってくるのは4人~5人に1人程度という印象です。解雇期間中の賃金請求をする目的で形式的に復職を求める体裁を取り繕う社員が多いですが,要望どおり解雇を撤回して就労命令を出してみると,いろいろ理由を付けて,実際には復職して来ないことが多いというのが実情です。労働組合の支援があるような場合でない限り,復職は難しいケースが多いのではないかと思います。
7 ありのままの解雇理由を伝えることの重要性
 勤務態度が悪い社員,能力が著しく低い社員を退職勧奨したところ,解雇して欲しいと言われ,本当の理由を告げて解雇すると本人が傷つくからといった理由で,解雇理由を「事業の縮小その他やむを得ない事由」等による会社都合の解雇(整理解雇)とする事案が散見されます。このような事案で解雇の効力が争われた場合,整理解雇の有効要件を満たさないのが通常であり,ほぼ間違いなく整理解雇は無効と判断されることになります。
 解雇が避けられないような場合は,ありのままの解雇理由を伝えるようにして下さい。無用の気遣いをして,ありのままの解雇理由を伝えられないと,裏目の結果となることが多くなります。
8 解雇が無効と判断された場合に,解雇期間中の賃金として使用者が負担しなければならない金額
 解雇が無効と判断された場合に,解雇期間中の賃金として使用者が負担しなければならない金額は,当該社員が解雇されなかったならば労働契約上確実に支給されたであろう賃金の合計額です。解雇当時の基本給等を基礎に算定されますが,各種手当,賞与を含めるか,解雇期間中の中間収入を控除するか,所得税等を控除するか等が問題となります。
 通勤手当が実費保障的な性質を有する場合は,通勤手当について負担する必要はありません。
 残業代は,時間外・休日・深夜に勤務して初めて発生するものであることから,通常は負担する必要がありません。ただし,一定の残業代が確実に支給されたと考えられる場合には,残業代についても支払を命じられる可能性があります。
 賞与の支給金額が確定できない場合は,解雇が無効と判断されても,支払を命じられませんが,支給金額が確定できる場合は,賞与についても支払が命じられることがあります。
 解雇された社員に解雇期間中の中間収入(他の事業上で働いて得た収入)がある場合は,その収入があったのと同時期の解雇期間中の賃金のうち,同時期の平均賃金の6割(労基法26条)を超える部分についてのみ控除の対象となります(米軍山田部隊事件最高裁第二小法廷昭和37年7月20日判決,あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決)。中間収入の額が平均賃金額の4割を超える場合には、更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(賞与等)の全額を対象として利益額を控除することが許されます(あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決,いずみ福祉会事件最高裁第三小法廷平成18年3月28日判決)。
 賃金から源泉徴収すべき所得税,控除すべき社会保険料については,これらを控除する前の賃金額の支払が命じられ,実際の賃金支払の際,所得税等を控除することになります。
 仮処分で賃金相当額の仮払が命じられ,仮払をしていたとしても,判決では仮払金を差し引いてもらえません。賃金の支払を命じる判決が確定した場合は,労働者代理人と連絡を取って,既払の仮払金の充当について調整する必要があります。
 他方,賃金請求が認められなかった場合は,仮払金の返還を求めることになりますが,労働者が無資力となっていて,回収が困難なケースもあります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎


退職勧奨しても退職しない。

2014-02-14 | 日記

退職勧奨しても退職しない。

1 退職勧奨の法的性格
 退職勧奨の法的性格については様々な見解がありますが,裁判実務においては,使用者が労働者に対し合意退職の申込みを促す行為(申込みの誘引)と評価されるのが通常です。したがって,労働者が退職勧奨に応じて退職を申し込み,使用者が労働者の退職を承諾した時点で退職の合意が成立することになります。
2 退職勧奨の担当者
 退職勧奨を行うにあたっては,担当者の選定が極めて重要となります。 退職勧奨が紛争の契機となることが多いこともあり,相手の気持ちを理解する能力を持っている,コミュニケーション能力の高い社員に退職勧奨を担当させるのが望ましいところです。
 退職勧奨を受ける社員と仲の悪い上司が退職勧奨を行うとトラブルが多いので,できるだけ避けて下さい。同じようなケースであっても,退職勧奨の担当者が誰かにより,紛争が全く起きなかったり,紛争が多発したりします。
3 解雇の準備と退職勧奨
 解雇の要件を充たしていなくても退職勧奨を行うことができますが,有効に解雇できる可能性が高い事案であればあるほど,退職勧奨に応じてもらえる可能性が高くなります。原則として,退職勧奨に先立ち,問題点を記録に残し,十分な注意指導,教育を行い,懲戒処分を積み重ねるなどして,解雇する際と同じような準備をしておくべきでしょう。
4 退職勧奨と無断録音
 退職勧奨のやり取りは,無断録音されていることが多く,録音記録が訴訟で証拠として提出された場合は,証拠として認められてしまいますので,退職勧奨を行う場合は,感情的にならないよう普段以上に心掛け,無断録音されていても不都合がないようにして下さい。
5 退職勧奨と失業手当の受給条件
 「事業主から退職するよう勧奨を受けたこと。」(雇用保険法施行規則36条9号)を理由として離職した者は「特定受給資格者」(雇用保険法23条1項)に該当するため(雇用保険法23条2項2号),退職勧奨による退職は会社都合の解雇等の場合と同様の扱いとなり,失業手当の給付制限等の点で労働者が不利益を受けることにはなりません。したがって,失業手当の受給条件を良くするために解雇する必要はありません。退職届を出してしまうと失業手当の受給条件が不利になると誤解されていることがありますので,丁寧に説明し,誤解を解くよう努力して下さい。
 なお,助成金との関係でも,会社都合の解雇をしたのと同様の取り扱いとなることには注意が必要です。
6 退職勧奨と退職届
 退職届等の客観的証拠がないと,口頭での合意退職が成立したと会社が主張しても認められず,解雇したと認定されたり,職場復帰の受入れを余儀なくされたりすることがあります。退職の申出があった場合は漫然と放置せず,退職届を提出させて証拠を残しておいて下さい。印鑑を持ち合わせていない場合は,差し当たり,署名したものを提出させ,押印は,後から印鑑を持参させて面前でさせれば足ります。
7 退職届の撤回
 退職勧奨を受けた労働者が退職届を提出して合意退職を申し込んだとしても,社員の退職に関する決裁権限のある人事部長や経営者が退職を承諾するまでの間は退職の合意が成立しておらず,労働者は信義則に反するような特段の事情がない限り合意退職の申込みを撤回することができます。退職勧奨に応じた労働者から退職届の提出があったら,退職を承認する権限のある上司が速やかに退職承認通知書を作成して当該労働者に交付して下さい。退職承認通知書は事前に写しを取って保管しておくとよいでしょう。
8 錯誤無効・強迫取消等
 錯誤(民法95条),強迫(民法96条)等を理由として,合意退職の効力が争われることがありますが,退職届が提出されていれば,合意退職の効力が否定されるケースはそれほど多くはありません。
 錯誤,強迫の主張が認められ,退職の効力が否定される典型的事例は,「このままだと懲戒解雇は避けられず,懲戒解雇だと退職金は出ない。ただ,退職届を提出するのであれば,温情で受理し,退職金も支給する。」等と社員に告知して退職届を提出させたところ,実際には懲戒解雇できる事案であることを主張立証できなかったケースです。
 解雇できるような事案であれば,退職勧奨に応じなければ解雇すると伝えても構いませんが,有効に解雇ができるだけの証拠がそろっている事案でないのであれば,退職勧奨するにあたり「解雇」という言葉は使うべきではありません。退職勧奨のやり取りは無断録音されていることが多いということを思い起こして下さい。
9 退職勧奨と不法行為
 退職勧奨を行うことは,不当労働行為に該当する場合や,不当な差別に該当する場合などを除き,労働者の任意の意思を尊重し,社会通念上相当と認められる範囲内で行われる限りにおいて違法性を有するものではありませんが,その説得のための手段,方法がその範囲を逸脱するような場合には違法性を有し,使用者は当該労働者に対し,不法行為等に基づく損害賠償義務を負うことになります。
 一般的には,退職勧奨のやり取りが無断録音されていて,自分の言動が社長,上司,裁判官等に知られてしまう覚悟で退職勧奨を行えば,よほど退職勧奨に向いていない担当者でない限り,不法行為が成立するような退職勧奨は行わないのではないかという印象です。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎


失業手当の受給条件と解雇

2014-02-14 | 日記

退職勧奨したところ,失業手当の受給条件を良くするために解雇して欲しいと言われたのですが,解雇しないといけないでしょうか?

 「事業主から退職するよう勧奨を受けたこと。」(雇用保険法施行規則36条9号)を理由として離職した者は,「特定受給資格者」(雇用保険法23条1項)に該当するため(雇用保険法23条2項2号),退職勧奨による退職は会社都合の解雇等の場合と同様の扱いとなり,労働者が失業手当を受給する上で不利益を受けることにはなりません。したがって,失業手当の受給条件を良くするために解雇する必要はありません。退職届を出してしまうと失業手当受給との関係で自己都合退職として取り扱われ,失業手当の受給条件が不利になると誤解されていることがありますので,丁寧に説明し,誤解を解くよう努力して下さい。
 ただし,退職勧奨による退職は,助成金との関係でも,会社都合の解雇をしたのと同様の取り扱いとなることには注意が必要です。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎


金銭を着服・横領したり出張旅費や通勤手当を不正取得したりする。

2014-02-14 | 日記

金銭を着服・横領したり出張旅費や通勤手当を不正取得したりする。

1 事情聴取
 金銭の不正取得が疑われる場合,本人の説明なしでは不正行為がなされたかどうかが分かりにくいことも多いため,まずは本人からよく事情聴取して下さい。事情聴取に当たっては,事情聴取書をまとめてから本人に署名させたり,事情説明書を提出させたりして,証拠を確保します。
 事情説明書等には,問題となる「具体的事実」を記載させることが重要です。本人提出の事情説明書等に「いかなる処分にも従います。」と書いてあったとしても,問題となる具体的事実が記載されておらず,具体的事実を立証できないのであれば,懲戒処分や解雇は無効となるリスクが高くなります。
 本人が提出した事情説明書等に説明が不十分な点や虚偽の事実や不合理な弁解があったとしても,突き返して書き直させようとしたりせず,そのまま受領し,追加の説明を求めるようにして下さい。せっかく提出した書面を突き返したばかりに,必要な証拠が不足して,訴訟活動が不利になることがあります。虚偽の事実や不合理な弁解が記載されている書面を確保することにより,本人の言い分をありのまま聴取していることや,本人が不合理な弁解をしていること等の証明もしやすくなります。
2 配置転換
 当該業務に従事する適格性が疑われる事情があれば,配置転換を検討します。賃金額が減額されない配置転換であれば,明らかに嫌がらせ目的と評価できるようなものでない限り,無効にはなりません。
 管理職を外れて役職手当が支給されなくなることなどにより,賃金額が減額される場合には,降格等の配置転換に同意する旨の書面を提出させるとよいでしょう。同意書を提出した場合には,懲戒処分の程度を検討する際にプラスの情状として考慮することになります。
 同意書を提出しない場合には,事実を十分に調査し,証拠により客観的に認定できる不正行為の内容・程度・情状に応じた配置転換,懲戒処分,解雇等を粛々と行うほかありません。
3 懲戒処分
 不正があったことが証拠により客観的に認定できる場合は,不正行為の内容・程度・情状に応じた懲戒処分を行います。不正が疑われるだけで,証拠により客観的に不正行為が認定できない場合は,懲戒処分を行うことはできません。
 懲戒処分の程度を決定するに当たっては,故意に金銭を不正取得したのか,単なる計算ミス等の過失に過ぎないのかの区別が重要な考慮要素となります。社員が故意に金銭を不正取得したことが判明した場合は,懲戒解雇することも十分検討に値します。ただし,不正取得した金銭の額,会社の実質的な損害額,懲戒歴の有無,それまでの会社に対する貢献度,反省の程度等によっては,より軽い処分にとどめるのが適切な場合もあります。過失に過ぎない場合は重い処分をすることはできないケースがほとんどなので,注意指導,始末書の提出,軽めの懲戒処分などにより対処することになります。
4 自主退職を申し出られた場合の対応
 本人が自主退職を申し出た場合に,懲戒解雇・諭旨解雇等の退職の効力を伴う懲戒処分をせずに自主退職を認めるかどうかは,
 ① 重い懲戒処分をして職場秩序を維持回復させる必要性
だけでなく,
 ② 自主退職を認めた方が紛争になりにくいこと
 ③ 懲戒解雇・諭旨解雇等の退職の効力を伴う重い懲戒処分をした場合は紛争になりやすく,訴訟で懲戒処分が有効と判断されるためのハードルが高いこと
 ④ 懲戒解雇に伴い退職金を不支給とした場合は紛争になりやすく,訴訟においては懲戒解雇が有効であっても,退職金の一部の支給が命じられることが多いこと
等も考慮して,冷静に判断して下さい。
5 退職勧奨する際の注意点
 「このままだと懲戒解雇は避けられず,懲戒解雇だと退職金は出ない。懲戒解雇となれば,再就職にも悪影響があるだろう。退職届を提出するのであれば,温情で受理し,退職金も支給する。」等と社員に告知して退職届を提出させたところ,実際には懲戒解雇できるような事案ではなかったことが後から判明したようなケースは,錯誤(民法95条),強迫(民法96条)等の主張が認められ,退職が無効となったり,取り消されたりするリスクが高いところです。
 懲戒解雇できる事案でもないのに,懲戒解雇の威嚇の下,不当に自主退職に追い込んだと評価されないようにして下さい。退職勧奨のやり取りは,無断録音されていることが多いということにも留意して下して下さい。
6 不正取得した金銭の返還方法
 不正に取得した出張旅費等の金銭は,「書面」で返還を約束させ,会社名義の預金口座に振り込ませるか現金で現実に支払わせるのが望ましいところです。賃金から天引きすると,賃金全額払いの原則(労基法24条1項)に違反するものとして,天引き額の支払を余儀なくされることがあります。
 賃金減額により実質的に不正取得された金銭を回収する方法は,賃金減額の有効性に問題が生じることがありますし,退職されてしまった場合には回収が困難となるといった問題もありますので,正攻法とはいえません。
7 身元保証人に対する損害賠償請求
 社員に対し損害賠償請求できる場合であっても,身元保証人に対し同額の損害賠償請求できるとは限りません。裁判所は,身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき社員の監督に関する会社の過失の有無,身元保証人が身元保証をなすに至った事由及びこれをなすに当たり用いた注意の程度,社員の任務又は身上の変化その他一切の事情を斟酌するものとされており(身元保証に関する法律5条),賠償額が減額される可能性があります。

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弁護士 藤田進太郎


転勤を拒否する。

2014-02-14 | 日記

転勤を拒否する。

1 転勤を拒否された場合に最初にすべきこと
 転勤を拒否する社員がいる場合は,まずは転勤を拒否する事情を聴取し,転勤拒否にもっともな理由があるのかどうかを確認します。
 転勤が困難な事情を社員が述べている場合は,より具体的な事情を聴取するとともに裏付け資料の提出を求めるなどして対応して下さい。認められる要望かどうかは別にして,本人の言い分はよく聞くことが重要です。
 本人の言い分を聞く努力を尽くした結果,転勤拒否にもっともな理由がないとの判断に至った場合は,転勤命令に応じるよう説得するのが原則です。
 それでも転勤命令に応じない場合は,懲戒解雇等の処分を検討せざるを得ませんが,懲戒解雇等の処分が有効となる前提として,転勤命令が有効である必要があります。
2 転勤命令の有効性
 転勤命令が有効というためには,
 ① 使用者に転勤命令権限があり
 ② 転勤命令が権利の濫用にならないこと
が必要です。
3 転勤命令権限
 就業規則に転勤命令権限についての規定を置いて周知させておけば,通常は①転勤命令権限があるといえます。併せて,入社時の誓約書で転勤等に応じること,就業規則を遵守すること等を誓約させておくことが望ましいところです。
 社員から,勤務地限定の合意があるから転勤命令に応じる義務はないと主張されることがありますが,勤務地が複数ある会社の正社員については,勤務地限定の合意はなかなか認定されません。他方,パート,アルバイトについては,勤務地限定の合意が存在することが多いところです。
 平成11年1月29日基発45号では,労働条件通知書の「就業の場所」欄には,「雇入れ直後のものを記載することで足りる」とされており,「就業の場所」欄に特定の事業場が記載されていたとしても,直ちに勤務地限定の合意があることにはなりません。ただし,それが雇入れ直後の就業場所に過ぎないことや支店への転勤もあり得ることをよく説明しておくことが望ましいところです。
4 転勤命令が権利の濫用にならないか
 ①使用者に転勤命令権限の存在が認定されると,次に,②転勤命令が権利の濫用にならないかどうかが問題となります。正社員については,通常は転勤命令権限が認められるため,②転勤命令が権利の濫用にならないかどうかが主要な争点になることが多いところです。
 使用者による転勤命令は,
 ① 業務上の必要性が存しない場合
 ② 不当な動機・目的をもってなされたものである場合
 ③ 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき
等,特段の事情のある場合でない限り権利の濫用になりません(東亜ペイント事件最高裁第二小法廷昭和61年7月14日判決)。
5 ①業務上の必要性
 東亜ペイント事件最高裁判決が,「右の業務上の必要性についても,当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく,労働力の適正配置,業務の能率増進,労働者の能力開発,勤務意欲の高揚,業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは,業務上の必要性の存在を肯定すべきである。」と判示していることもあり,企業経営上意味のある転勤であれば通常は①業務上の必要性が肯定されます。
 ただし,①業務上の必要性の程度は,②③の要件を満たすかどうかにも影響するため,①業務上の必要性が高いことの主張立証はしっかり行う必要があります。
6 ②不当な動機・目的
 退職勧奨したところ退職を断られ転勤を命じたような場合や,労働組合の幹部に転勤を命じた場合に,問題にされることが多い印象です。
 ①転勤させる必要性が高ければ,②不当な動機・目的がないと言いやすくなるので,②不当な動機・目的がないといえるようにするためにも,①業務上の必要性を説明できるようにしておくことが重要です。
7 ③通常甘受すべき程度を著しく超える不利益
 まずは,単なる不利益の有無が問題となるのではなく,「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」の有無が問題となることに留意して下さい。
 社員の配偶者が仕事を辞めない限り単身赴任となり,配偶者や子供と別居を余儀なくされるとか,通勤時間が長くなるとか,多少の経済的負担が生じるといった程度では,③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとはいえません。
 単身赴任手当や家族と会うための交通費の支給,社宅の提供,保育介護問題への配慮,配偶者の就職の斡旋等の配慮は必須のものではありませんが,③通常甘受すべき程度を著しく超える不利益の有無を判断するにあたっては,転勤を命じられた社員の不利益を緩和する措置が取られているかどうかといった点も考慮されます。
 就業場所の変更を伴う配置転換については,子の養育又は家族の介護の状況に配慮する義務があること(育児介護休業法26条)には注意が必要です。育児,介護の問題ついては,本人の言い分を特によく聞き,転勤命令を出すかどうか慎重に判断することをお勧めします。
 本人の言い分をよく聞かずに一方的に転勤を命じ,本人から育児,介護の問題を理由として転勤命令撤回の要求がなされた場合に転勤命令撤回の可否を全く検討していないなど,育児,介護の問題に対する配慮がなされていない場合は,③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとして,転勤命令が無効とされるリスクが高まります。
 裁判例の動向からすると,特に,家族が健康上の問題を抱えている場合や,介護が必要な場合の転勤については,慎重に検討したほうが無難な印象があります。
8 転勤命令違反を理由とした懲戒解雇の有効性
 転勤命令自体が無効の場合は,転勤命令拒否を理由とする懲戒解雇は認められません。
 有効な転勤命令を正社員が拒否した場合は重大な業務命令違反となるため,懲戒解雇は懲戒権の濫用(労契法15条)とはならず有効と判断されることが多いですが,拙速に懲戒解雇を行った場合は懲戒権を濫用したものとして無効と判断されることがあります。
 社員が転勤に伴う利害得失を考慮して合理的な決断をするのに必要な情報を提供する等して転勤命令に従うよう説得する努力を尽くし,転勤命令に従う見込みが乏しいことを確認してから,懲戒解雇すべきでしょう。

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弁護士 藤田進太郎


部下に過大なノルマを課したり仕事を干したりする。

2014-02-14 | 日記

部下に過大なノルマを課したり仕事を干したりする。

1 過大なノルマの問題点
 部下に対し一定のノルマを課すこと自体は合理的なことであり,上司にしてみれば,ノルマを達成できるだけの高い能力とやる気のある社員だけ残ればいいという発想なのかもしれません。
 しかし,とても達成できないような過大なノルマを部下に課すことに経営上の合理性はなく,部下のモチベーションが上がらず営業成績を高めることができない結果となったり,せっかく費用をかけて採用し育成した部下が次から次に辞めてしまったりする可能性が高くなります。これは,効率的な会社運営のみならず,部下のキャリア形成にとっても大きなマイナスとなります。
 また,ノルマを達成するために恒常的な長時間労働に従事していた部下が精神疾患や脳・心臓疾患を発症した場合には,業務と疾患発症との間の相当因果関係(業務起因性)が肯定されて労災となり,さらには会社が安全配慮義務違反や使用者責任を問われて損害賠償請求を受ける可能性もあります。
 部下の社員が自腹で商品を買い取らないとノルマを達成することができないような場合は,「自爆営業」を強要するブラック企業といった悪評が立てられて企業イメージが悪化し,顧客の獲得や新規採用活動に支障を来すことになりかねません。
 さらに,過大なノルマを達成するために営業社員が長時間労働を余儀なくされれば,当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる(労基法38条の2第1項ただし書)と評価されて,事業場外労働みなし労働時間制を採用している場合であっても,時間外割増賃金の支払が必要となる可能性が高くなります。
 会社の利益のためにも,部下の利益のためにも,ノルマは適正な水準にする必要があるのです。
2 仕事を干すことの問題点
 上司が自分の意に沿わない部下の仕事を干すことを会社として容認することができないのは言うまでもありません。会社は管理職の私物ではありません。管理職が合理的理由なく自分の意に沿わない部下の仕事を干すことは権限逸脱行為であり,これを放置していたのでは,一体,誰の会社なのか分からなくなってしまいます。最悪の場合,部下は,会社に残ろうと思えば,会社の利益のために働くのではなく,上司の意に沿った形で働くことを優先することになりかねません。また,部下の仕事を干すことは,当該部下のキャリア形成を阻害することにもなります。
 当該措置に合理的理由がないのであれば不法行為が成立し,会社も安全配慮義務違反や使用者責任を問われて損害賠償義務を負う可能性があります。
3 会社の具体的対処方法
 特定の管理職の部下の離職率が高いなどの問題がある場合には,当該管理職から十分に事情を聴取する必要があります。管理職の機嫌を損ねることを恐れて,事情聴取を躊躇してはいけません。
 過度のノルマを課しているのではないかという点については,ノルマの達成率,ノルマとして設定した数値の具体的根拠,離職率が高い理由,離職率を下げる方法として考えられること等を,意に沿わない部下の仕事を干しているのではないかという点については,当該部下に与えている仕事の内容・量,その具体的理由等を聴取することになります。当該管理職の説明に不合理な点が見つかった場合には,注意指導してその是正を促します。
 併せて,部下の社員からも,ノルマの達成率,業務遂行のため通常必要となる労働時間,自爆営業の有無,離職率が高い理由,離職率を下げる方法として考えられること,上司である管理職が意に沿わない部下の仕事を干しているのかどうか等を聴取し,当該管理職の説明が部下の社員の説明と整合性があるか等をチェックします。
 本件のような問題は,部下の社員からの申告がなければ問題の存在自体把握できず,対応が遅れることになりかねませんので,社内の相談窓口や社外の弁護士窓口を設置するとともに,社員が安心して相談できる雰囲気を作っておくとよいでしょう。
 注意指導した結果,管理職の言動が大きな問題はない程度に改善された場合には,通常の注意指導教育をその後も継続していけば足りるでしょう。
 管理職のしていたことが悪質な場合は懲戒処分に処することも考えられますが,会社が当該管理職を放置していて十分な注意指導教育をしてこなかったというような経緯がある場合には,重い懲戒処分は懲戒権濫用により無効(労契法15条)となる可能性がありますので,懲戒処分に処するにしても軽めのものにとどめるべきことが多いのではないかと思います。
 当該管理職の理解不足,マネジメント能力不足が原因で注意指導しても当該管理職の言動が改まらない場合は,十分に注意指導するだけでなく,管理職研修を受けさせるなどして教育していきます。いくら注意指導教育しても問題点を理解できないようであれば,管理職としての適格性が欠如していると考えられますので,人事権を行使して管理職から外すなどの措置が必要となります。入社当初から管理職として地位を特定して高給で採用したような場合は,人事権を行使して管理職から外し,他の職位に降格するあるいは異動するという対応では地位を特定して採用した意味がなくなりますので,退職勧奨や解雇で対処することを検討してもよいかもしれません。
 注意指導しても当該管理職の言動が改まらない原因が当該管理職の思い上がりによるものであり,「現場に口を出さないで下さい。」等と言って,経営者に対しても反抗的・挑戦的態度をとり続けるような場合は,懲戒処分に処するとともに,人事権を行使して管理職から外すなどの措置が必要となります。それでも態度が改まらない場合は,その都度,懲戒処分に処してから退職勧奨又は解雇を検討することになります。入社当初から管理職として地位を特定して高給で採用したような場合は,上記のように退職勧奨や解雇での対応を中心に検討する必要もあるでしょう。
 部下の営業社員に対し,とても達成できないような過大なノルマを課したり,自分の意に沿わない部下の仕事を干したりする管理職がいる会社は,経営者が当該管理職に特定の部門を任せきりにして,十分なチェック機能を果たしていないことが多い印象があります。確かに,経営者が何もしなくても特定の人物が特定の部門をうまく取り仕切ってくれるのであれば,経営者としては楽かもしれませんが,経営者として当然行うべき職務を怠っていると言わざるを得ません。「いちいち管理せずに,現場のことは現場の自主性に任せた方がうまく行く。」等と言って,特定の管理職に特定の部門を任せきりにしていたところ,管理職の縄張り意識とか自分のお陰で会社が儲かっているという意識が強くなり,経営者の言うことを聞かなくなったり,情報を経営者に隠したり,顧客に対し経営者の悪口を言ったり,横領等の不正行為を行ったり,新入社員に仕事を教えず何人も虐めて辞めさせてしまったりして困っているといった相談を受けることは珍しくありません。
 本問のような管理職が出てこないようにするためには,会社経営者が管理職をしっかり監督し,問題があれば丁寧に注意指導して改めさせることが必要不可欠です。経営者は,新入社員が仕事を教えてもらうことができないまま上司に虐められて何人も辞めさせられてしまうといった事態にならないようにする責任を負っているのだという意識を強く持つ必要があります。
4  部下の具体的対処方法
 上司である管理職本人と話し合って問題が解決するのであればそれにこしたことはありませんが,過大なノルマを課したり自分の意に沿わない部下の仕事を干すような上司ですから,自分のしていることは間違っていないと考えている可能性が高く,部下が上司と話し合って問題を解決しようとしても自分の立場が悪くなるだけで不毛な結果に終わってしまうことが予想されます。
 信頼できる他の上司,役員がいるのであれば相談してみてもいいですが,相談できる他の上司等がおらず,下手に誰かに相談すると自分が相談したことがばれて社内の立場が悪くなるような場合は慎重に行動せざるを得ません。会社に相談窓口があるのであれば,まずは相談窓口に相談してみるのが通常かと思いますが,相談できる他の上司等もおらず相談窓口もない場合は,立場を同じくする社員同士で話し合いながら,転職を含めた対応を検討していくほかないものと思われます。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎


勤務態度が悪い。

2014-02-14 | 日記

勤務態度が悪い。

1 注意指導
 当たり前の話のように聞こえるかもしれませんが,勤務態度が悪い社員は,注意指導してそのような勤務態度は許されないのだということを理解させる必要があります。訴訟や労働審判になって弁護士に相談するような事例では,当然行うべき注意指導がなされていないことが多い印象があります。
 勤務態度が悪い社員を放置することにより,他の社員のやる気がそがれたり,新入社員がいじめられたり,仕事を十分に教えてもらえなかったりして,退職してしまったりすることがありますし,金品の横領,手当等の不正受給の温床にもなります。
 長年にわたって勤務態度の悪い社員を放置してきた職場において,新任の上司があるべき勤務態度に是正しようとして反発を買い,トラブルになることが多いところです。勤務態度が悪くても長年放置され,態度の悪さが年々悪化してきた社員の態度を改めさせるのは難易度が高く,解雇・退職の問題に発展することも多いですので,勤務態度の悪さが悪化する前に,対処する必要があります。こういった社員は,時間をかけて根気強く注意指導していく必要があり,注意指導しても従おうとしないからといって,放置してはいけません。
 上司が注意指導しても成果が上がりにくく,嫌な思いをすることが多いこともあり,勤務態度が悪い社員を放置したままにする上司が多いことも多いことを念頭に置いて,管理職の教育,評価を行っていく必要があります。
 勤務態度の悪さの程度が甚だしい社員については,直属の上司1人に任せきりにせず,組織として対応する必要があります。
 口頭で注意指導しても勤務態度の悪さが改まらない場合は,将来の懲戒処分,退職勧奨,解雇,訴訟活動を見据えて,書面で注意指導します。書面で注意指導することにより,本人の改善をより強く促すことになりますし,訴訟や労働審判になった場合,勤務態度の悪さを改めるよう注意指導した証拠を確保することもできます。
 当事務所に相談にいらっしゃった会社経営者から「自分の勤務態度が悪いことや何度も注意指導されてきたことは,本人が一番よく分かっているはずです。」との説明を受けることが多いですが,訴訟や労働審判では,労働者側から,自分の勤務態度は悪くないし,注意指導を受けたことは(ほとんど)ないと主張がなされるのがむしろ通常です。口頭で注意指導しただけで,書面等の客観的な証拠が残っていない場合,当該社員の勤務態度の悪さが甚だしいことや十分に注意指導してきたことを立証するのが困難となってしまいます。
 「上司も,部下も,同僚も,取引先もみんな,彼(女)の勤務態度が悪いことを知っていますし,法廷で証言してくれると言っています。」という話をお聞きすることも多いですが,一般的には,紛争が表面化してから作成された上司・同僚・部下の陳述書や法廷での証言はあまり証拠価値が高くありません。取引先の社員に訴訟で証人になるよう頼むことは,それ自体ハードルが高いことが多いです。「彼(女)の勤務態度が悪い」という点では関係者の意見が一致していたとしても,何月何日の何時頃,どこで何をしたから勤務態度が悪いと評価することができるのかといった具体的事実を聞いても,具体的日時場所等を説明できないことは珍しくありません。勤務態度が悪いことを基礎付ける具体的事実を説明できないと証拠価値が高く評価されにくくなります。
 電子メールを送信して改善を促しつつ注意指導した証拠を確保することも考えられますが,メールでの注意指導は,口頭での注意指導を十分に行うことが前提です。面と向かっては何も言わずにメールだけで注意指導した場合,コミュニケーションが不足して誤解が生じやすいため注意指導の効果が上がらず,かえってパワハラであるなどと反発を受けることも珍しくありません。
2 懲戒処分
 書面で注意指導しても勤務態度の悪さが改まらない場合は,懲戒処分を検討することになります。まずは,譴責,減給といった軽い懲戒処分を行い,それでも改善しない場合には,出勤停止,降格処分と次第に重い処分をしていきます。
 懲戒処分に処すると職場の雰囲気が悪くなるなどと言って,懲戒処分を行わずに辞めてもらおうとする会社経営者もいますが,懲戒処分もせずにいきなり解雇したのではよほど悪質な事情がある場合でない限り,解雇は無効となってしまうリスクが高いところです。そもそも,勤務態度が悪い社員に対して注意指導や懲戒処分ができないようでは,組織として十分に機能しているとはいえません。必要な注意指導や懲戒処分を行い,職場の秩序を維持するのは,会社経営者の責任です。
3 退職勧奨
 勤務態度の悪さの程度が甚だしく,十分に注意指導し,懲戒処分に処しても勤務態度の悪さが改まらず,改善の見込みが乏しい場合には,会社を辞めてもらうほかありませんので,退職勧奨や解雇を検討することになります。十分に注意指導し,繰り返し懲戒処分を行っており,解雇が有効となりそうな事案では,解雇するまでもなく,退職勧奨に応じてもらえることが多いところです。
 他方,勤務態度の悪さの程度がそれほどでもなく,十分な注意指導や懲戒処分がなされていない等の理由から解雇が有効とはなりそうもない事案,誠実に勤務する意欲が低かったり能力が低い等の理由から転職が容易ではない社員の事案,本人の実力に見合わない適正水準を超えた金額の賃金が支給されていて転職すればほぼ間違いなく当該社員の収入が減ることが予想される事案等では,退職届を提出させる難易度が高くなります。
4 解雇
 勤務態度の悪さの程度が甚だしく,十分に注意指導し,懲戒処分に処しても勤務態度の悪さが改まらず,改善の見込みが低い場合には,退職勧奨と平行して解雇を検討することになります。
 普通解雇・懲戒解雇が有効となるかどうかを判断するにあたっては,
 ① 就業規則の普通解雇事由,懲戒解雇事由に該当するか
 ② 解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権の濫用(労契法15条)に当たらないか
 ③ 解雇予告義務(労基法20条)を遵守しているか
 ④ 解雇が制限されている場合に該当しないか
等を検討する必要があります。
 解雇が有効となるためには,単に就業規則の普通解雇事由や懲戒解雇事由に該当するだけでなく,②客観的に合理的な理由が必要であり,社会通念上相当なものである必要もあります。
 解雇に客観的に合理的な理由がない場合は,②解雇権又は懲戒権を濫用したものとして無効となってしまいますし,そもそも①普通解雇事由,懲戒解雇事由に該当しない可能性もあります。
 解雇に客観的に合理的な理由があるというためには,労働契約を終了させなければならないほど勤務態度の悪さの程度が甚だしく,業務の遂行や企業秩序の維持に重大な支障が生じていることが必要です。
 解雇が社会通念上相当であるというためには,労働者の情状(反省の態度,過去の勤務態度・処分歴,年齢・家族構成等),他の労働者の処分との均衡,使用者側の対応・落ち度等に照らして,解雇がやむを得ないと評価できることが必要です。
 勤務態度が悪い社員の解雇の有効性を判断するにあたっては,勤務態度の悪さが業務に与える悪影響の程度,態様,頻度,過失によるものか悪意・故意によるものか,勤務態度が悪い理由,謝罪・反省の有無,勤務態度の悪さを是正するために会社が講じていた措置の有無・内容,平素の勤務成績,他の社員に対する処分内容・過去の事例との均衡等が考慮されます。
 注意指導や懲戒処分で勤務態度の悪さが改善されるのであれば,注意指導や懲戒処分により是正すれば足りるのですから,解雇権濫用・懲戒権濫用の有無を判断するにあたっても,注意指導や懲戒処分をしても勤務態度の悪さは改善される見込みが乏しく職場から排除するほかないことを立証できるだけの客観的証拠があるかどうかが問題となります。客観的証拠が不足しているのに,勤務態度の悪さは改善されないと判断して十分な注意指導や懲戒処分を行わずに解雇しているケースが散見されます。解雇を正当化できるだけの客観的証拠がある場合を除き,実際に注意指導や懲戒処分を行って改善の機会を与え,職場から排除しなければならないほど勤務態度の悪さの程度が甚だしく,注意指導や懲戒処分では改善される見込みが乏しいことを確かめてから,解雇に踏み切るべきでしょう。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

弁護士 藤田進太郎