弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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休憩時間の自由利用に制限を加えることはできますか。

2015-04-23 | 日記

休憩時間の自由利用に制限を加えることはできますか。


 使用者は,労働者に対し,休憩時間を自由に利用させなければなりません(労基法34条3項)。
 ただし,休憩時間の自由利用も絶対的なものではなく,事業場の規律保持上必要な制限を加えることは休憩の目的を損なわない限り差し支えありません(昭和22年9月13日基発第17号)。休憩時間中の外出について所属長の許可を受けさせることも,事業場内において自由に休息し得る場合には,必ずしも違法にはなりません(昭和23年10月30日基発第1575号)。
 使用者の事業所等の管理権に基づく労働者に対する行動規制は,休憩時間中のものであっても,管理権の合理的な行使として是認され得る範囲内にある限り,有効なものとして拘束力を有することになります(米軍立川基地事件最高裁昭和49年11月29日第三小法廷判決)。
 目黒電報電話局事件最高裁昭和52年12月13日第三小法廷判決も,「一般に、雇用契約に基づき使用者の指揮命令、監督のもとに労務を提供する従業員は、休憩時間中は、労基法三四条三項により、使用者の指揮命令権の拘束を離れ、この時間を自由に利用することができ、もとよりこの時間をビラ配り等のために利用することも自由であつて、使用者が従業員の休憩時間の自由利用を妨げれば労基法三四条三項違反の問題を生じ、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることも許されないことは、当然である。しかしながら、休憩時間の自由利用といつてもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。また、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない。」としています。


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交代で休憩時間を取らせることはできますか。

2015-04-23 | 日記

交代で休憩時間を取らせることはできますか。


 休憩時間は事業場ごとに,一斉に与えなければならないとされており(労基法34条2項本文),原則として,労働者に対し,交代で休憩時間を与えることは認められません。
 ただし,運送事業,販売・理容の事業,金融・保険・広告の事業,映画・演劇・興業の事業,郵便・電信・電話の事業,保健衛生の事業,旅館・飲食店・娯楽場の事業,官公署等においては適用が除外されており,一斉に休憩を与える必要はありません。
 その他の事業でも,労使協定を締結すれば(届出は不要),休憩時間を一斉に与える必要はなくなり,交代で休憩時間を与えることもできるようになります(労基法34条2項ただし書き)。


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「休憩時間」(労基法34条)は,まとめて与えなければなりませんか。

2015-04-23 | 日記

「休憩時間」(労基法34条)は,まとめて与えなければなりませんか。


 「休憩時間」(労基法34条)をまとめて与えなければならないという規制はなく,例えば,1日8時間を超えて労働させる場合であっても,45分と15分に分割して与えることもできます。


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休憩時間を与える位置について労基法上の規制がありますか。

2015-04-23 | 日記

休憩時間を与える位置について労基法上の規制がありますか。


 休憩時間は,「労働時間の途中」に与えなければなりません(労基法34条1項)。例えば,9時勤務開始,12時~13時の1時間が休憩時間,18時勤務終了といったように,労働時間の途中に与える必要があります。
 9時~10時に休憩時間を取らせたことにして,10時勤務開始,18時勤務終了ということにはできませんし,9時勤務開始,17時勤務終了,17時~18時休憩時間とすることもできません。
 もっとも,労働時間の途中に与えさえすれば,休憩時間の位置は問われません。 例えば,9時勤務開始で休憩時間を与えないまま17時まで8時間続けて働かせ,その後,1時間の休憩時間を取らせてから,さらに2時間働かせたような場合であっても,労基法34条違反とはなりません。


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社員との合意により,6時間を超えて働かせる場合に休憩時間をなしにすることはできますか。

2015-04-23 | 日記

社員との合意により,6時間を超えて働かせる場合に休憩時間をなしにすることはできますか。


 6時間を超えて働かせる場合に休憩時間を与えることは労基法34条により使用者に義務づけられていますので,6時間を超えて働かせる場合に休憩時間をなしにする旨社員と合意したとしても当該合意は無効となり,労基法34条で定められた労働条件が適用されることになります(労基法13条)。
 したがって,6時間を超えて働かせる場合に休憩時間をなしにすることはできません。


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休憩時間の長さに関する労基法上の規制を教えて下さい。

2015-04-23 | 日記

休憩時間の長さに関する労基法上の規制を教えて下さい。


 休憩時間の下限に関し,労基法上,1日の労働時間が6時間までであれば休憩時間を与えることは要求されていませんが,1日の労働時間が6時間を超え8時間までの場合は45分以上の休憩時間を,1日の労働時間が8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を与える必要があります(労基法34条1項)。
 他方,休憩時間の上限については労基法上,規制されていません。


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実作業に従事する可能性がほとんどない場合であっても,労基法上の労働時間に当たるのでしょうか?

2015-04-23 | 日記

休憩時間内に必要に応じて実作業に従事するよう指示した場合,実作業に従事する可能性がほとんどない場合であっても,労基法上の労働時間に当たることになるのでしょうか。


 大星ビル管理事件最高裁平成14年2月28日第一小法廷判決が,「上告人らは,本件仮眠時間中,労働契約に基づく義務として,仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられているのであり,実作業への従事がその必要が生じた場合に限られるとしても,その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがなされていないと認めることができるような事情も存しないから,本件仮眠時間は全体として労働からの解放が保障されているとはいえず,労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができる。」としていることからすれば,休憩時間内に必要に応じて実作業に従事するよう指示した場合であっても,「実作業への従事がその必要が生じた場合に限られ,その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがなされていないと認めることができるような事情がある場合」には,労働からの解放が保障されているといえ,労働契約上の役務の提供が義務付けられていないと評価することができるものと考えられます。
 したがって,設問中の「実作業に従事する可能性がほとんどない場合」が,「実作業への従事がその必要が生じた場合に限られ,その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがなされていないと認めることができるような事情がある場合」と評価できるような場合には,労基法上の労働時間には当たらないと考えられます。


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労基法に基づく残業代計算の基礎となる労働時間から除外される「休憩時間」とはどのような時間ですか?

2015-04-23 | 日記

労基法に基づく残業代(割増賃金)計算の基礎となる労働時間から除外される「休憩時間」とは,どのような時間のことをいいますか。


 行政解釈では,「休憩時間」(労基法34条)の意義に関し,「休憩時間とは単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって,その他の拘束時間は労働時間として取扱うこと。」(昭和22年9月13日基発17号)とされており,「休憩時間」といえるためには「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」である必要があるものと考えられています。
 また,大星ビル管理事件最高裁平成14年2月28日第一小法廷判決が,実作業に従事していない仮眠時間の労働時間性に関し,「労基法32条の労働時間(以下「労基法上の労働時間」という。)とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,実作業に従事していない仮眠時間(以下「不活動仮眠時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは,労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである」「そして,不活動仮眠時間において,労働者が実作業に従事していないというだけでは,使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって,不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして,当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。」と判示していることからすると,最高裁は,当該時間に労働者が労働からの解放が保障されていて初めて「休憩時間」といえ,当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,「休憩時間」ではなく労基法上の労働時間であると捉えているものと考えられます。
 現実に作業に従事してはいないが,使用者から就労の要求があれば直ちに就労しうる態勢で待機している時間(手待時間)は,労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間とはいえませんので,「休憩時間」(労基法34条)ではなく労基法上の労働時間と評価されることになります。


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合宿研修の時間は,労基法上の労働時間に該当しますか。

2015-04-23 | 日記

合宿研修の時間は,労基法上の労働時間に該当しますか。


 合宿研修は,業務命令により参加が命じられたり,合宿研修に参加しないと何らかの不利益を課されたり,合宿研修に参加しないと業務遂行に必要な知識技能が習得できず,業務に具体的な支障が生じるような場合は,特段の事情のない限り,使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるため,合宿研修に要した時間は,食事時間等の休憩時間や睡眠時間を除き,労基法上の労働時間に該当します。
 研修カリキュラムに組み込まれていない討論等の時間は,業務命令により参加が命じられておらず,参加しなくても不利益が課されず,討論等に参加しなくても業務に具体的な支障が生じない等,本当の意味での自由参加であれば労基法上の労働時間ではありません。
 しかし,自由参加と言いながらも,参加しない場合には何らかの不利益が課される場合や,討論等に参加しないと業務遂行に必要な知識技能が習得できず,業務に具体的な支障が生じるような場合には,使用者の指揮命令下に置かれているものと評価することができますので,労基法上の労働時間となります。


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資格試験の受験時間,受験準備のための勉強時間は,労基法上の労働時間に該当しますか。

2015-04-23 | 日記

資格試験の受験時間,受験準備のための勉強時間,講習会参加の時間は,労基法上の労働時間に該当しますか。


 一定の資格保持者が必要となった等の理由から,会社が,社員に対し,業務命令で資格試験の受験,受験勉強,講習会への参加等をさせた場合や,参加しないと何らかの不利益を課されるような場合は,これらに要した時間は,会社の指揮命令下に置かれた時間と評価できますので,労基法上の労働時間に該当します。
 他方,会社が資格取得を奨励しており,何らかの支援措置を採っていたとしても,会社がそれを強制しておらず,資格試験の受験等をしなくても不利益が課されないような場合は,受験等に要した時間は会社の指揮命令下に置かれた時間と評価することができませんので,労働時間には該当しません。
 また,会社が一定の資格を取得した社員を労働条件面で優遇しているような場合も,資格を取得していない社員を不利益に取り扱っているわけではありませんので,資格試験の受験,受験勉強,講習会への参加等に要した時間は,労基法上の労働時間には該当しません。


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「自由参加」の社内研修や勉強会の時間は,労基法上の労働時間に該当しないですよね。

2015-04-08 | 日記

「自由参加」の社内研修や勉強会の時間は,労基法上の労働時間に該当しないですよね。


 純然たる自由参加で,社員が参加しなくても何の不利益も課されず,業務に具体的な支障が生じないような場合は,研修等に要した時間は労働時間には該当しません。
 しかし,「自由参加」と言いながら,参加しないと賃金や人事考課等で不利益を受けたり,社員研修等に参加しないと業務に必要不可欠な知識を習得できない等,業務に具体的な支障が生じたりするような場合は,参加を余儀なくされたと評価されるため,使用者の指揮命令下に置かれているものと評価することができ,原則として労基法上の労働時間に該当することになります。


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研修に参加しないことにより本人の業務に具体的な支障が生ずるか否かが問題とされているのはなぜか

2015-04-08 | 日記

研修等の労働時間性を判断するにあたり,「教育・研修の内容と業務との関連性が強く,それに参加しないことにより本人の業務に具体的な支障が生ずるか否か」が問題とされているのはどうしてですか。


 研修等の内容が業務遂行上必要な知識技能の習得を目的としており,研修等に参加しないと業務遂行自体が不可能または困難になるような場合は,業務遂行のためには研修等に参加するほかありませんから実質的にみて出席の義務付けがあると評価することができるのに対し,研修等に参加しなくても業務遂行に格段の支障は生じないような場合には,実質的にみて出席の義務付けがあるとまでは評価することができないからです。
 私の個人的な感覚では,研修等の内容が業務遂行上必要な知識技能の習得を目的としており,研修等に参加しないと業務遂行自体が不可能または困難になるような場合は,研修等への参加それ自体が労働契約で予定された労務の提供(業務の遂行)であり,使用者の指揮命令下に置かれているものと評価することができますので,それに要する時間は労基法上及び労働契約上の労働時間に該当するように思えます。
 他方,研修等に参加しなくても業務遂行に格段の支障は生じないような場合には,当該研修等は福利厚生のようなものに過ぎず,研修等への参加は必ずしも労働契約で予定された労務の提供と評価することはできませんから,直ちに使用者の指揮命令下に置かれているものと評価することはできず,研修等に要する時間が労働時間と評価されるのは,使用者により明示又は黙示に参加を命じられた場合に限られるように思えます。


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研修等の労働時間性で「就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無」が問題となるのはどうしてですか。

2015-04-08 | 日記

研修等の労働時間性を判断するにあたり,「就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無」が問題となるのはどうしてですか。


 名目上は自由参加とされていても,研修等に出席しないと就業規則の上の制裁が課される等の不利益取扱いがなされるのであれば,社員が不利益取扱いを回避するためには研修等に参加するほかなく,不利益の程度によっては業務命令で参加を義務付けたのと変わらない結果になり,使用者の指揮命令下に置かれているものと評価することができますので,当該研修等に要した時間は労働時間と評価されるからです。


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就業時間外の研修,講習,自主活動等の時間について,残業代を支払う必要があるかどうかの判断基準

2015-04-08 | 日記

就業時間外に行われる研修,講習,自主活動等の時間について,残業代を支払う必要があるかどうかは,どのような基準で判断すればいいのですか。


 まず,
 ① 就業規則や労働契約において,就業時間外に行われる研修,講習,自主活動等の時間について,残業代 を支払う旨定められているなどして,残業代を支払うことが労働契約の内容となっている場合
には,当然,残業代を支払う必要があります。
 このような定めがない場合であっても,
 ② 就業時間外に行われる研修,講習,自主活動等の時間が,労基法上の労働時間に該当する場合
には,1日8時間,週40時間(特例措置対象事業場では週44時間)を超える労働時間については,残業代(時間外割増賃金)を支払う必要があります(労基法37条1項)。
 問題は,研修等の時間が労基法上の労働時間に該当するかどうかですが,その判断基準については,「労働者が使用者の実施する教育,研修に参加する時間を労働時間とみるべきか否かについては,就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無や,教育・研修の内容と業務との関連性が強く,それに参加しないことにより本人の業務に具体的な支障が生ずるか否か等の観点から,実質的にみて出席の強制があるか否かにより判断すべきものである。」(厚生労働省労働基準局編集『平成22年版 労働基準法 上』)と考えるのが一般的です。


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健康診断に要する時間は労基法上の労働時間に該当しますか。

2015-04-08 | 日記

健康診断に要する時間は労基法上の労働時間に該当しますか。


 一般健康診断(安衛法66条1項)に関し,昭和47年9月18日基発第602号は,「健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払については,労働者一般に対して行われるいわゆる一般健康診断は,一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり,業務遂行との関連において行われるものではないので,その受診のために要した時間については,当然には事業者の負担すべきものではなく,労使協議して定めるべきものであるが,労働者の健康の確保は,事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると,その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと。」としています。
 同通達は,一般健康診断は,労働者の一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり,業務遂行との関連において行われるものではないため,一般健康診断を受診しなくても本人の業務に具体的な支障が生じないことから,実質的に受診の義務付けがないものとして,その受診に要した時間の賃金を使用者が「当然には」負担する義務がないとしているものと考えられ,一般健康診断に要する時間が労基法上の労働時間には該当していないという理解を前提としているものと考えられます。同通達の理解を前提とすれば,一般健康診断に要する時間を労基法上の労働時間と考える必要はないことになります。
 もっとも,懲戒処分の威嚇の下,業務命令により一般健康診断の受診を命じたような場合は,労働者が一般健康診断の受診を使用者から義務付けられたと言わざるを得ず,労基法上の労働時間に該当するとも考えられます。結局,一般健康診断に要する時間が労基法上の労働時間に該当するかどうかは,事案ごとに判断していくほかないものと思われます。
 特殊健康診断(安衛法66条2項)に関し,昭和47年9月18日基発第602号は,「特定の有害な業務に従事する労働者について行われる健康診断,いわゆる特殊健康診断は,事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり,それは所定労働時間内に行われるのを原則とすること。また,特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので当該健康診断が時間外に行われた場合には,当然割増賃金を支払わなければならないものであること。」としており,特殊健康診断に要する時間を労基法上の労働時間と捉えているように読めます。
 特殊健康診断は,事業の遂行との関連性が強く,特殊健康診断を受診しなければ本人の業務に具体的な支障が生じることになりますので,業務命令により受診を命じたか否かにかかわらず,受診の義務付けがあるものとして,特殊健康診断の受診時間は労基法上の労働時間と評価できるケースが多いのではないかと思います。
 労働者が,事業者が行う健康診断の受診を希望せず,他の医師等の行う健康診断を受診した場合(安衛法66条5項ただし書き)は,労働者は事業者の指揮監督下に置かれていないのが通常と考えられ,その受診時間は労基法上の労働時間には該当しないものと考えられます。


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