弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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「③報酬の労務対価性」の有無を判断する際には,どのような事情を考慮する必要がありますか。

2015-07-30 | 日記

「③報酬の労務対価性」の有無を判断する際には,どのような事情を考慮する必要がありますか。


 以下のような事情がある場合に,報酬の労務対価性が肯定的に解されるものと考えるのが一般的です。ただし,これらの事情がない場合でも直ちに報酬の労務対価性が否定されるものではありません(『労使関係法研究会報告書』)。

○報酬の労務対価性
 ・ 相手方の労務供給者に対する評価に応じた報奨金等,仕事の完成に対する報酬とは異なる要素が加味されている。
 ・ 時間外手当や休日手当に類するものが支払われている。
 ・ 報酬が業務量や時間に基づいて算出されている(ただし,出来高給であっても直ちに報酬の労務対価性は否定されない。)。
○報酬の性格
 ・ 一定額の支払いが保証されている。
 ・ 報酬が一定期日に,定期的に支払われている。



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「②契約内容の一方的・定型的決定」の有無を判断する際には,どのような事情を考慮する必要がありますか。

2015-07-30 | 日記

「②契約内容の一方的・定型的決定」の有無を判断する際には,どのような事情を考慮する必要がありますか。


 以下のような事情がある場合に,契約内容の一方的・定型的決定が肯定的に解されるものと考えるのが一般的です。ただし,これらの事情がない場合でも直ちに契約内容の一方的・定型的決定が否定されるものではありません(『労使関係法研究会報告書』)。

○一方的な労働条件の決定
 ・ 契約締結や更新の際に,労務供給者が相手方と個別に交渉して,労働条件等の契約内容に変更を加える余地が実際にない(ただし,労働時間などに変更を加える余地があっても,それが労働条件のごく一部に限られる場合は契約内容の一方的・定型的決定が否定されるわけではない。)。
 ・ 労働条件の中核である報酬について,算出基準,算出方法を相手方が決定している。
○定型的な契約様式の使用
 ・ 相手方と労務供給者との契約に,定型的な契約書式が用いられている。



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「①事業組織への組み入れ」の有無を判断する際には,どのような事情を考慮する必要がありますか。

2015-07-30 | 日記

「①事業組織への組み入れ」の有無を判断する際には,どのような事情を考慮する必要がありますか。


 以下のような事情がある場合に,事業組織への組み入れが肯定的に解されるものと考えるのが一般的です。ただし,これらの事情がない場合でも直ちに事業組織への組み入れが否定されるものではありません(『労使関係法研究会報告書』)。

○契約の目的
 ・ 契約の形式にかかわらず,相手方と労務供給者の契約が,労働力を確保する目的で締結されている。
○組織への組み入れの状況
 ・ 業務の遂行の量的ないし質的な面において不可欠ないし枢要な役割を果たす労働力として組織内に位置付けられている(ただし,当該労務供給者が集団として存在していなくても,事業組織への組み入れが否定されるわけではない。)。
 ・ 評価制度や研修制度を設ける,業務地域や業務日を割り振るなど,相手方が労務供給者を管理している。
 ・ 人手が不足したときは他の事業者にも委託するが,通常は労務供給者のみに委託している。
○第三者に対する表示
 ・ 相手方の名称が記載された制服の着用,名刺,身分証の携行等が求められているなど,第三者に対して相手方が労務供給者を自己の組織の一部として扱っている。
○専属性
 ・ 相手方から受託している業務に類する業務を,契約上他の相手方から受託することができない。
 ・ 相手方から受託している業務に類する業務を他の相手方から受託することについて,契約上設定された権利義務としては制約がないが,当事者の認識や契約の実際の運用上は制約があり困難である。
 ・ 相手方から受託している業務に類する業務について,他の相手方との契約関係が全く又はほとんど存在しない。



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労組法上の「労働者」に該当するかどうかは,どのような基準で判断すればよろしいでしょうか。

2015-07-30 | 日記

労組法上の「労働者」に該当するかどうかは,どのような基準で判断すればよろしいでしょうか。


 労組法上の「労働者」に該当するかどうかは,以下の判断要素を用いて総合的に判断すべきものです。基本的判断要素の一部が充たされない場合でも直ちに労働者性が否定されないこと,各要素を単独に見た場合にそれ自体で直ちに労働者性を肯定されるとまではいえなくとも他の要素と合わせて総合判断することにより労働者性を肯定される場合もあることに留意する必要があります。各判断要素の具体的検討にあたっては,契約の形式のみにとらわれるのではなく,当事者の認識や契約の実際の運用を重視して判断する必要があります(『労使関係法研究会報告書』)。

(1)基本的判断要素
 ① 事業組織への組み入れ
  労務供給者が相手方の業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているか。
 ② 契約内容の一方的・定型的決定
  契約の締結の態様から、労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか。
 ③ 報酬の労務対価性
  労務供給者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格を有するか。

(2)補充的判断要素
 ④ 業務の依頼に応ずべき関係
  労務供給者が相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にあるか。
 ⑤ 広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束
  労務供給者が、相手方の指揮監督の下に労務の供給を行っていると広い意味で解することができるか、労務の提供にあたり日時や場所について一定の拘束を受けているか。

(3)消極的判断要素
 ⑥ 顕著な事業者性
  労務供給者が、恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者と見られるか。



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近時の中労委は,労働者派遣における派遣先事業主の使用者性をどのように捉えていますか。

2015-07-30 | 日記

近時の中労委は,労働者派遣における派遣先事業主の使用者性をどのように捉えていますか。


 近時の中労委は,労働者派遣法に基づく派遣先事業主の使用者性に関し,労働者派遣法は,明文の規定は設けていないものの,同法上の枠組みに従って行われる労働者派遣の派遣先事業主については,当該派遣労働者(その属する労働組合)との関係において労組法7条の使用者に該当しないことを原則として立法されたと解するのが相当であるとしています。
 もっとも,原則に対する例外として,例えば,
 ① 労働者派遣が,労働者派遣法の枠組み又は労働者派遣契約で定められた基本的事項を逸脱して行われている場合
 ② 労働者派遣法上,派遣労働者の労働条件や雇用について,一定の責任を負わされたり,義務を課されたりしている場合
については,労働条件や雇用に関する団体交渉 等を保障する労組法の趣旨にかんがみ,労組法第7条の使用者性を判断するための一般的な法理のうち,雇用主以外の場合に関する法理(②③)に従い,当該派遣先事業主に労組法7条の使用者性を認める余地があると解するのが相当であるとしています。



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近時の中労委は,不当労働行為について定めた労組法7条の「使用者」の範囲をどのように捉えていますか

2015-07-30 | 日記

近時の中労委は,不当労働行為について定めた労組法7条の「使用者」の範囲をどのように捉えていますか。


 近時の中労委は,不当労働行為について定めた労組法7条の「使用者」の範囲に関し,ショーワ事件平成24年9月19日決定において下記「労組法第7条の使用者性を判断するための一般的な法理」を示しました。以後の事件でも同様の立場を取っていますので,「労組法第7条の使用者性を判断するための一般的な法理」は中労委の確定した見解となっているものと思われます。
 中労委により労組法7条の「使用者」に該当する者として例示されているもののうち,①②は朝日放送事件最高裁平成7年2月28日第三小法廷判決の判断と共通しています。③は,朝日放送事件最高裁平成7年2月28日第三小法廷判決では触れられていません。おそらく,クボタ事件東京地裁平成23年3月17日判決の見解を取り入れたものと思われます。

【労組法第7条の使用者性を判断するための一般的な法理】
 労組法7条は,労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進するために,労働者が自主的に労働組合を組織し,使用者と労働者の関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉 をすること,その他の団体行動を行うことを助成しようとする労組法の理念に反する使用者の一定の行為を禁止するものであるから,同条にいう「使用者」は,「同法が上記のように助成しようとする団体交渉を中心とした集団的労使関係の一方当事者としての使用者」を意味し,
 ① 労働契約上の雇用主
が基本的にこれに該当するものの,必ずしも同雇用主に限定されるものではなく,雇用主以外の者であっても,例えば,
 ② 当該労働者の基本的な労働条件等に対して,雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者
 ③ 当該労働者との間に,近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者
もまた雇用主と同視できる者であり,労組法7条の「使用者」と解すべきである。



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不当労働行為について定めた労組法7条の「使用者」の範囲を教えて下さい。

2015-07-30 | 日記

不当労働行為について定めた労組法7条の「使用者」の範囲を教えて下さい。


 朝日放送事件最高裁平成7年2月28日第三小法廷判決は,一般に使用者とは「労働契約上の雇用主」をいうとしつつ,労組法7条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除,是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることにかんがみ,「雇用主以外の事業主であっても,雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ,その労働者の基本的な労働条件等について,雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配,決定することができる地位にある場合には,その限りにおいて,右事業主は同条の『使用者』に当たるものと解するのが相当である。」と判示しています。
 したがって,一般的には労働契約の一方当事者である使用者が労組法7条の「使用者」に該当することになりますが,雇用主以外の事業主であっても,雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ,その労働者の基本的な労働条件等について,雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配,決定することができる地位にある場合には,当該労働条件等との関係に限っては,労組法7条の「使用者」に該当することになります。



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不当労働行為(労組法7条)の種類には,どのようなものがありますか。

2015-07-30 | 日記

不当労働行為(労組法7条)の種類には,どのようなものがありますか。


 不当労働行為(労組法7条)の種類には,以下のようなものがあります。
 ① 組合員であることを理由とする解雇 その他の不利益取扱い(1号)
 ② 正当な理由のない団体交渉 の拒否(2号)
 ③ 労働組合の運営等に対する支配介入及び経費援助(3号)
 ④ 労働委員会への申立て等を理由とする不利益取扱い(4号)



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合同労組(ユニオン)との団体交渉に臨む際の注意点を教えて下さい。

2015-07-30 | 日記

合同労組(ユニオン)との団体交渉に臨む際の注意点を教えて下さい。


 合同労組(ユニオン)と争えばいいというものではありませんが,譲歩すれば解決するというものでもありません。当該合同労組の性格,客観的事実関係等を正確に把握し,事案に応じた対応が必要となります。
 弁護士等の専門家がついていないと,不当労働行為ではない言動まで不当労働行為と言われて萎縮し,交渉が不利になることがあります。



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団体交渉の近年の傾向について教えて下さい。

2015-07-30 | 日記

団体交渉の近年の傾向について教えて下さい。


 団体交渉 の近年の傾向としては,社外の合同労組(ユニオン)との団体交渉が増えていることが挙げられると思います。



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労働事件において民事調停はどのように利用されていますか。

2015-07-28 | 日記

労働事件において民事調停はどのように利用されていますか。


 民事調停では話合いによる解決がなされます。
 労働事件において民事調停は,弁護士が代理人についていない事案,請求金額が少額な事案,法的権利があるとは言いにくい事案等に利用されています。
 東京簡易裁判所では,労働問題についての知識経験が豊富な調停委員による労働調停が試みられており,良好な成果を上げているようですので,将来的には労働調停が全国の簡易裁判所にも広まっていくかもしれません。



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労働事件における仮処分の概要を教えて下さい。

2015-07-28 | 日記

労働事件における仮処分の概要を教えて下さい。


 仮処分とは,訴訟における本案判決を待てない保全の必要性がある事案において,被保全権利の疎明がある場合に認められる裁判所の暫定的な処分をいいます。仮処分が認められるためには,
 ① 被保全権利の存在
 ② 保全の必要性
が必要となります。
 労働事件における仮処分の代表例は,解雇 事案における賃金仮払仮処分です。これが認められると,訴訟で決着がついていない時点で一定額の仮払金の支払が命じられることになります。
 使用者側が仮処分を利用することは多くありませんが,労働組合の街宣活動の差止の仮処分等を申し立てることがあります。



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少額訴訟を提起された場合,会社はどのような対応をすればよろしいでしょうか。

2015-07-28 | 日記

少額訴訟を提起された場合,会社はどのような対応をすればよろしいでしょうか。


 少額訴訟を提起された場合の会社側の対応 としては,早期にざっくりと解決したい場合は少額訴訟に応じて判断してもらえば足ります。
 請求金額が少額であっても時間をかけて丁寧に審理してもらいたい場合は,答弁書の提出と共に事件を通常の訴訟手続に移行させる申出をする必要があります。



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少額訴訟とはどのようなものですか。

2015-07-28 | 日記

少額訴訟とはどのようなものですか。


 少額訴訟 とは,証拠調べの対象が即時に取り調べることができるものに限られ,原則として1回の口頭弁論で審理を完了し,判決も口頭弁論終結後直ちに行われる簡易な訴訟手続です。少額訴訟は,60万円以内の金銭請求事件の場合のみ利用することができます。手続が簡易なため,労働事件においては本人訴訟で利用されることが多くなっています。



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弁護士を訴訟代理人に立てて労働訴訟を提起してきた事案の特徴を教えて下さい。

2015-07-28 | 日記

弁護士を訴訟代理人に立てて労働訴訟を提起してきた事案の特徴を教えて下さい。


 近年では,早期に解決金を取得して労使紛争を解決することを希望する労働者は,労働審判 を利用するのが通常です。本人訴訟であれば,労働審判がどのようなものかよく分からないため,訴訟を提起してきた可能性がありますが,弁護士が訴訟代理人についている場合は,労働審判ではなく訴訟を選択したことにそれなりの意味がある可能性が高いものと思われます。
 弁護士を訴訟代理人に立てて労働訴訟を提起してきた事案は,労働者が早期解決よりも自己の要求を認めてもらうことを重視しているケースが多い傾向にあり,早期の金銭解決の難易度が比較的高めの事案が多くなります。



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