弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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派遣労働者の減少

2011-09-17 | 日記
平成22年度に派遣労働者として働いた人は,前年度比11.6%減の延べ約267万人だったようです。
規制強化が予定されているということもあり,合理的な選択でしょう。
使い勝手が悪い制度の利用が縮小していくのは,自然の流れです。

企業が安心して人を雇うことのできる制度を整備しないと,雇用が拡大するのは景気がいいときだけで,それ以外の時期はどんどん雇用が失われていくことになってしまいます。
企業が日本で事業を営み,雇用を拡大することに,外国と比較してどのようなメリットがあるのか,日本政府は,しっかりアピールできるようにしておかなければならないのだと思います。

弁護士 藤田 進太郎

付加金(労基法114条)

2011-09-13 | 日記
Q82 付加金とは,どういうものですか?

 使用者が,
① 解雇予告手当(労基法20条)
② 休業手当(労基法26条)
③ 割増賃金(労基法37条)
④ 年次有給休暇取得時の賃金(労基法39条7項)
のいずれかの支払を怠り,労働者から訴訟を提起された場合に,裁判所はこれらの未払金に加え,これと同一額の付加金の支払を命じることができるとされています(労基法114条)。

 割増賃金(残業代)請求訴訟においても,付加金の請求もなされるのが通常で,例えば,未払の割増賃金の額が300万円の場合,さらに最大300万円の付加金の支払(合計600万円の支払)が判決で命じられる可能性があるということになります。
 使用者が割増賃金の支払を怠っている場合は,たいていは同額の付加金の支払も命じられることになりますが,付加金の支払を命じるかどうかは裁判所の裁量に委ねられており,全く付加金の支払が命じられないこともないわけではありませんし,未払割増賃金の50%相当額の付加金の支払が命じられるといったこともあります。
 私が使用者側代理人を務めた東京地方裁判所民事第19部平成22年(ワ)第41466号賃金請求事件において,平成23年9月9日に言い渡された判決(伊良原恵吾裁判官)でも,「原告は,・・・本件割増賃金について労基法114条本文に基づき付加金の請求をしているところ,同条は『裁判所は・・・付加金の支払を命ずることができる。』と規定しているにとどまるのであるから,裁判所は,諸般の事情を考慮し,付加金を命ずることが不相当であると判断した場合にはこれを命じないことができ,また,これを命ずる場合であっても裁量により減額することができるものと解するのが相当である。」とされています。
 したがって,使用者としては,付加金の支払を命じるのが相当でない事情があるのであれば,その事情を主張立証しておくべきことになります。

 なお,付加金の請求は,違反のあったときから2年以内にしなければならないとされていますが(労基法114条),この期間はいわゆる除斥期間であって時効期間ではないと考えられており,労働者が付加金の支払を受けるためには,2年以内に請求の「訴え」を提起する必要があります。

弁護士 藤田 進太郎

退職後における割増賃金の遅延利息の利率

2011-09-11 | 日記
Q81 割増賃金の遅延利息の利率は,退職後は年14.6%という高い利率になるというのは本当ですか?

 割増賃金(残業代)などの賃金(退職手当を除く。)の支払を怠った場合,退職後の期間の遅延利息は年14.6%という高い利率になる可能性があります(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項・同施行令1条)。
 厚生労働省令で定める事由に該当する場合には,その事由の存する期間については上記規定の適用はありませんが(賃金の支払の確保等に関する法律6条2項),従来は当該事由に該当するかどうかについて裁判で争点になることはそれほど多くなかったようです。
 しかし,会社側としては,厚生労働省令で定める事由に該当する可能性があるような事案であれば,しっかり主張すべきではないでしょうか。
 特に,「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っていること。」(賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号)に該当する場合は,それなりにあるように思えます。

 私が使用者側代理人を務めた東京地方裁判所民事第19部平成22年(ワ)第41466号賃金請求事件において,平成23年9月9日に言い渡された判決(伊良原恵吾裁判官)では,賃確法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」の存在について以下のとおり緩やかに判断されており,当該事案における未払割増賃金に対する遅延損害金の利率も,商事法定利率(年6分)によるべきものとされています。

 そもそも賃確法6条1項の趣旨は,退職労働者に対して支払うべき賃金(退職手当を除く。)を支払わない事業主に対して,高率の遅延利息の支払義務を課すことにより,民事的な側面から賃金の確保を促進し,かつ,事前に賃金未払が生ずることを防止しようとする点にあるが,ただ,それは,あくまで金銭を目的とする債務の不履行に係る損害賠償について規定した民法419条1項本文の利率(民法404条又は商法514条に規定する年5分又は年6分である。)に関する特則を定めたものにとどまる。
 以上によると上記(1)の賃確法6条2項,同法施行規則6条は,遅延利息の利率に関する例外的規定である同法6条1項の適用を外し,実質的に原則的利率(民法404条又は商法514条)へ戻すための要件を定めたものであると解することができ,そうだとすると賃確法施行規則6条所定の各除外事由の内容を限定的に解しなければならない理由はなく,むしろ上記原則的利率との間に大きな隔たりがあること及び賃確法施行規則6条5号が除外事由の一つとして「その他前各号に掲げる事由に準ずる事由」を定め,その適用範囲を拡げていることにかんがみると,同条所定の除外事由については,これを柔軟かつ緩やかに解するのが同法6条2項及び同施行規則6条の趣旨に適うものというべきである。
 このように考えるならば,賃確法6条2項,同法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」には,裁判所又は労働委員会において,事業主が,確実かつ合理的な根拠資料が存する場合だけでなく,必ずしも合理的な理由がないとはいえない理由に基づき賃金の全部又は一部の存否を争っている場合も含まれているものと解するのが相当である。

弁護士 藤田 進太郎

「合理的な理由」(賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号)

2011-09-11 | 日記
Q176 「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っていること。」(賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号)にいう「合理的な理由」があるといえるためには,どの程度の理由があることが必要なのですか?

 賃金(退職手当を除く。)の支払を怠った場合,退職後の期間の遅延利息は年14.6%という高い利率になる可能性があります(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項・同施行令1条)が,「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っていること。」(賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号)などの厚生労働省令で定める事由に該当する場合には,その事由の存する期間については上記規定の適用はありません(賃金の支払の確保等に関する法律6条2項)。
 では,「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っていること。」(賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号)にいう「合理的な理由」があるといえるためには,どの程度の理由があることが必要なのでしょうか。

 私見では,年14.6%という高い利率を定める賃金の支払の確保等に関する法律6条1項・同施行令1条は,民法又は商法の定める原則的な利率の特則であり,例外的にのみ適用されるべき利率ですから,原則的利率に戻すための要件を定めた賃確法施行規則6条所定の各除外事由該当性は限定的に解すべきではなく,緩やかに要件該当性を認めるべきであると考えています。
① 原則 年6%(年5%)
② ①の例外 年14.6%
③ ②の例外=「原則」である①の利率 年6%(年5%)
 ③が②の例外であることを強調すれば,③が認められるための要件は厳格に考えるべきこととなるのかもしれませんが,③は利率を「原則」である①に戻す規定なのですから,③が認められるための要件は緩やかに考えるべきこととなります。
 私が使用者側代理人を務めた東京地方裁判所民事第19部平成22年(ワ)第41466号賃金請求事件において,平成23年9月9日に言い渡された判決(伊良原恵吾裁判官)では,賃確法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」の存在について以下のとおり緩やかに判断されており,当該事案における未払割増賃金に対する遅延損害金の利率も,商事法定利率(年6分)によるべきものとされています。

 そもそも賃確法6条1項の趣旨は,退職労働者に対して支払うべき賃金(退職手当を除く。)を支払わない事業主に対して,高率の遅延利息の支払義務を課すことにより,民事的な側面から賃金の確保を促進し,かつ,事前に賃金未払が生ずることを防止しようとする点にあるが,ただ,それは,あくまで金銭を目的とする債務の不履行に係る損害賠償について規定した民法419条1項本文の利率(民法404条又は商法514条に規定する年5分又は年6分である。)に関する特則を定めたものにとどまる。
 以上によると上記(1)の賃確法6条2項,同法施行規則6条は,遅延利息の利率に関する例外的規定である同法6条1項の適用を外し,実質的に原則的利率(民法404条又は商法514条)へ戻すための要件を定めたものであると解することができ,そうだとすると賃確法施行規則6条所定の各除外事由の内容を限定的に解しなければならない理由はなく,むしろ上記原則的利率との間に大きな隔たりがあること及び賃確法施行規則6条5号が除外事由の一つとして「その他前各号に掲げる事由に準ずる事由」を定め,その適用範囲を拡げていることにかんがみると,同条所定の除外事由については,これを柔軟かつ緩やかに解するのが同法6条2項及び同施行規則6条の趣旨に適うものというべきである。
 このように考えるならば,賃確法6条2項,同法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」には,裁判所又は労働委員会において,事業主が,確実かつ合理的な根拠資料が存する場合だけでなく,必ずしも合理的な理由がないとはいえない理由に基づき賃金の全部又は一部の存否を争っている場合も含まれているものと解するのが相当である。

弁護士 藤田 進太郎

『問題社員対応の実務』 ~近年,増加傾向にある各種トラブルの具体的検討~

2011-09-06 | 日記
今日の午後は,永田町の全国町村会館で,『問題社員対応の実務』と題したセミナーの講師をしてきました。
多くの方々にご出席いただき,感謝しています。
来週は,「ホテルコンソルト新大阪」で,同じセミナーを開催します。
できる限り,お役に立てる情報提供をしていきたいと考えています。

弁護士 藤田 進太郎

〈目 次〉
1 勤務態度が悪い。
2 仕事の能力が低い。
3 注意するとパワハラだと言って,指導に従わない。
4 会社に無断でアルバイトをする。
5 取引先から個人的にリベートを取得したり,虚偽の出張旅費を申告したりして,会社に損害を与える。
6 転勤を拒否する。
7 社内研修,勉強会,合宿研修への参加を拒否する。
8 就業時間外に社外で飲酒運転,痴漢,傷害事件等の刑事事件を起こして逮捕された。
9 行方不明になってしまい,社宅に本人の家財道具等を残したまま,長期間連絡が取れない。
10 精神疾患を発症して欠勤を繰り返し,出社しても仕事がまともにできない。
11 採用内定取消しに応じない。
12 試用期間中の本採用拒否(解雇)なのに,解雇は無効だと主張して,職場復帰を求めてくる。
13 退職勧奨したところ,解雇してくれと言い出す。
14 退職届提出日から退職日までの間,年休を取得してしまい,引継ぎをしない。
15 退職届を提出したのに,後になってから退職の撤回を求めてくる。
16 期間雇用者を契約期間満了で雇止めしたところ,雇止めは無効だと主張してくる。
17 賃金が残業代込みの金額である旨,納得して入社したにもかかわらず,割増賃金の請求をしてくる。
18 勝手に朝早く出社したり,夜遅くまで残業したりして,割増賃金の請求をしてくる。
19 トラブルの多い社員が定年退職後の再雇用を求めてくる。
20 社外の合同労組に加入して団体交渉を求めてきたり,会社オフィスの前でビラ配りしたりする。

勤務態度が悪い。

2011-09-02 | 日記
Q3 勤務態度が悪い。

 勤務態度の悪さは,基本的には注意,指導,教育して改善させるべき問題です。
 口頭で注意,指導,教育しても改善しない場合は,書面で注意,指導,教育することになります。
 書面を交付するのは大げさでやりにくいというのであれば,まずは電子メール等を利用することから始めてもよいでしょう。
 書面で注意,指導,教育しても改善しない場合は,懲戒処分を検討することになります。

 解雇は最後の手段です。
 十分な注意,指導,教育をしないままいきなり解雇した場合は,無効とされることが多くなります。
 解雇が有効とされるためには,就業規則の普通解雇事由又は懲戒解雇事由に該当し,解雇権濫用(労働契約法16条)とされないことが必要です。
 解雇事由に該当する場合であっても,解雇権濫用として解雇が無効とされることが多いことに注意して下さい。
 普通解雇の場合は,職場から排除しなければならないほど社員としての適格性がないといえるのかが,懲戒解雇の場合は,職場から排除しなければならないほど職場秩序を阻害したのかが問題となります。
 注意,指導,教育して,勤務態度の悪さを改善させることができるのであれば,注意,指導,教育して改善させればいいのですから,解雇の有効性を判断する際にも,改善が期待できないくらい勤務態度が悪いと評価できるかが問題となります。
 注意,指導,教育して改善の機会を与えることもせずに,勝手に,改善の見込みがないと思い込んで解雇するのは危険です。
 まずは,実際に,注意,指導,教育して改善の機会を与え,改善の見込みがないかどうかを確かめたことの証拠を残しておく必要があります。
 口頭で注意,指導,教育しても改まらない場合には,書面で注意,指導,教育し,記録に残しておくべきと考えます。
 書面等の客観的証拠がないと,訴訟になった場合は,「注意,指導,教育されたことはありません。」と主張されるのが通常です。
 また,書面で注意,指導,教育することにより,口頭での注意,指導,教育よりもより強く改善を促しているというメッセージにもなります。
 懲戒処分や事前の警告が解雇の前提要件というわけではありませんが,解雇は,原則として,戒告,譴責,減給,降格処分等の懲戒処分をし,改善しなければ解雇する可能性がある旨の警告をしてからにすることが望ましいところです。

弁護士 藤田 進太郎