自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

思い出の記――ICU

2009年06月10日 | Weblog
(以前の徒然想には書いたが、この自遊想には書いていないみたいなので書くことにする。) 
 僕が入ったICUの記憶は全くないんです。ですから思い出の記というのはおかしいのですが。13年前の今日の深夜、僕の意識がなくなった。ほぼ「正気」に戻ったのは、それから約10日後である。「ほぼ」、「約」である。正気も括弧付きである。後から知らされたところによると、0時半頃、机に向かって座っている椅子から横の書棚に倒れかけている僕が家人に発見され、救急車でICUに運ばれ、そこで1週間治療を受け、その後別の病院へ運ばれた。合計39日間で退院した。
 脳梗塞。僕の場合は毛細血管が一度に27本詰まっていたそうだ。毛細血管だから手術が出来ず、点滴・投薬によって次第に回復していった。15分、発見、治療が遅れていたら、命をとりとめても障害が残ったそうだ。悪運強く、何の後遺症もなく(と思っているのだが)、今に至っている。今日が僕の命日になっていても不思議ではなかった。
 闘病したという気持ちは全くないのだが、ICUに居た時、幻覚(医学的には「せん妄」)を見た。当時まだカルト教団の残党が世間を騒がしていたせいか、ICUが宗教団体に乗っ取られていると思い込み、24時間監視体制のICUを朝方逃げ出したそうだ。病院近くのバス停で捕獲されたそうだ。その後、安定剤を注射されたせいか?奇妙な幻覚にとらわれた。現実であれば決して見ることのできない高層位置で人が遠ざかっていく光景とか、言葉では表現し難い光景を幾つか「見た」。ICUには7日間居たそうだ。
 命に別状がないとのことで、別の総合病院に運ばれた(この記憶はない)。せん妄を見たという事で運ばれた先は精神科。意識を曲がりなりにも取り戻したのは、その精神科の医師の白衣を見た時である。それから、たぶん1~2日後、医師によるテストを受けた。長谷川式テストとか言うのだそうで、医師が僕の目の前に腕時計とペンとコインを置き、すぐに紙で隠し、何があるかを僕に言わせるテスト。確かコインとしか言えなかった。次、「100から7を引くと?」 93。「93から7を引くと?」 これが出来なかった。言えなかった、出来なかったからと言って、何もオカシイとは思わなかった。
 点滴・投薬が功を奏して、次第に普通の意識に戻った。英語の本を読んでいるところに医師の回診があって、話しかけてくれる医師に「ちょっとこれ読んでみる?」とフザケタ事をやらかした。
 退院後もその医師とは古くからの友人であるかのように時々会っていた。あれから13年、歳月は矢のように過ぎた。ちょっと心残りなのは、この病院体験のために様々な仕事を断念せざるを得なかったことである。が、命あってのものだね、ではある。

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