自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

辻井伸行さん(20)

2009年06月09日 | Weblog
 生まれながらに全盲の辻井伸行さん(20歳)が、7日、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した。快挙と言う他はない。このコンクールの特徴の一つは、このコンクール用に作曲された曲を2週間前(?)に渡され、コンクールで弾くこと。未だ聴いていないので定かなことは言えないが、見事にこなしたことは想像に難くない。優勝したのだから。
 ご両親などのサポートがあればこそ、と感謝の辞を述べていた。佐渡裕にその才能を高く評価されたことも彼の支えになったことであろう。天賦の才に恵まれていることは間違いのないところだが、それにしても、生まれながらに全盲の彼の努力は僕の想像を絶する。
 そして新聞報道によると、お客さんが「障害者というより、一人のピアニストとして聴いてくれた」と話した。頭が下がる。これからの活躍が注目の的になる。
 全盲のピアニストということで先輩の梯剛之さんが思い出される。ショパンコンクールでは緊張のせいで惜しくも入賞を逃したが、ワルシャワ市民賞という特別賞を得た。彼のショパンこそが本場の庶民に受け入れられたのだ。
 二人のピアノ技法の相違点の一つは、梯さんが手首の上下運動を殆どしないのに対して、辻井さんは腕も体も充分に使って実に豪快である、という点にある。おそらく二人の性格と努力の仕方によるものと思われる。梯さんはスランプに陥ったとき、コルトーのレコードを聴いて新境地を開いた。若い辻井さんにもスランプが見舞うかも知れないが、乗り越える力を確実に持っている。今までの辛苦が支えになるはずだ。もしかしたら彼にはスランプなんぞ無関係かも知れない。

2 コメント

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快挙ですなあ。 (歌加留多)
2009-06-10 15:41:51
同じ日本人として誇らしい気分になります。辻井さんの話で連想されるのはかの大チェンバロ奏者、ヘルムート・ヴァルヒャ。ヴァルヒャは生まれついての盲人ではなく、10代のころに視力を失った。点字楽譜は読めず、バッハの平均律など、夫人(だったと思う)が各声部をひとつづつ弾いて聞かせ、それを彼は暗譜して組み合わせ、覚えたのだそうだ。辻井さんがどのように新曲を短期間で学ばれたのか、想像の域を超えているが、ご家族の熱い援助のたまものであろうと、頭が下がる思いだ。
しかし、今後辻井氏を「全盲のピアニスト」と呼ぶのは避けたい。そういうレッテルをはるのは辻井氏に失礼であると思う。全盲であろうがなかろうが彼は優秀な演奏家であり、その優秀な演奏家がたまたま全盲だった、ということなのだ。ヴァルヒャのレコードを聴くとき、彼が全盲であったことを誰が考えるだろうか。
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はじめまして。 (理方)
2009-06-10 17:01:07
歌歌留多さん、はじめまして。
よくお出でくださいました。

歌歌留多さんがおっしゃるように、辻井さんを「全盲のピアニスト」と呼ぶのは不謹慎です。全盲ゆえに優勝したからではないからです。全盲ゆえに賛辞を受けたからではないからです。
ヴァルヒャのことに思いが行きませんでした。思い出させて頂き、お礼申し上げます。
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