谷沢健一のニューアマチュアリズム

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遠い五輪野球の金メダル(その1)

2008-08-24 | プロとアマ
 NPBから全選手を選抜して編成した星野ジャパンこと五輪野球代表チームの試合は終わった。開戦前は「闘将名将、星野」とか「最高最善のメンバー」とか賛辞と期待一色だったファンの声も、今日からは手のひらを返して、批判の嵐が吹きすさぶだろう。
 8月13日から始まった予選リーグの初戦はキューバ。ベンチの映像を見ていると、スタッフも選手も重圧にがんじがらめだと感じざるをえなかった。「メダルは一番いい色(金メダル)しかいらない」という類の星野発言に示されるように、おそらく、指揮官の一挙一動が陰に陽に緊張過剰の心身の膠着を、全員に生みだしてしまうという素地があったにちがいない。
 とにかく、初戦から決勝リーグまで心身ともに相手を圧倒できるだけの力と結束を維持できたのか。強い興奮が100%以上の力を発揮させることもあり、その時の充実感は競技スポーツの経験者なら誰でも知っている。同時に、チームが普段とあまりにも異質な空間になると、心と体のバランスを失うことも多い。それが、テレビ観戦をしている私にも伝わってきた。
 韓国、キューバ、米国にしても同じ強い緊張現象が起きていた。兵役免除のかかっている(軍役の知らない私たちにはピンと来ない)韓国、帰国後の経済的処遇に天地の差が生じる(貧富差を知らない私たちにはピンと来ない)キューバ、メジャー昇格やドラフトのかかっている(私たちにも少しはわかる)米国は、緊張の質が異なる。一人一人が明日から人生が変わるのである。結果として、かかっているものの重さの順がメダルの順位になった。
 一方、日本にかかっているのは初の金メダルという名誉である。その名誉は、自分が金メダルチームの一員になるというワン・オブ・ゼムの名誉にすぎない。人生が変わるとしたら、星野監督であり、金メダル獲得によって、WBC代表監督就任が確実になり、長嶋ジャパン(五輪)と王ジャパン(WBC)両方の後継者としての地位が確立する。この温度差は大きい。

5 コメント

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北京五輪野球 (松田太蔵)
2008-08-25 18:10:59
星野監督の仲良しコーチスタッフで勝負に勝てるとは思わなかった。人気取りだけで監督を選ぶのも、どうかと思う。長島監督のときと同じではないか。
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Unknown (Unknown)
2008-08-26 01:32:07
いつも勉強になります
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手の平返し?? (藤本某。)
2008-08-26 20:19:12
星野ジャパンについては強い憤りを覚えます。采配についても勝利への執着が見えなかったし、懐疑的な采配も多かった。
また手の平返し、と言う表現をされていますが、星野ジャパンの組閣がなされた時から多くのプロ野球ファンは疑問を感じていたのも事実です。手の平返しの一言で一蹴するのはいかがかと思われます。慣用句的なモノの捉え方ではないでしょうか。
またあの試合運びでは手の平も返したくなります。サッカーの日本代表ならば、まだ痛烈で苛烈な批判があった事でしょう。
決して谷沢氏への批判ではありません。
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Unknown (Unknown)
2008-08-27 02:08:37
本当いい記事です。
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Unknown (中日ファン歴30年)
2008-08-27 06:13:15
今回のことに関しては、まったくおっしゃる通りで、監督も、彼に任せた球界も、さんざん煽ったマスコミも、それに乗せられた私たちファンも、もっと大所高所から、野球というもの、五輪というものについての思慮が足りなかったのだと思います。

ところで、このブログは時々読ませていただいていますが、谷沢さんってこれ全部ご自分で書かれているのですか?いや、大学の客員教授をなさっている方に対するにしては、あまりに失礼な言い方ですね。でも、プロ野球出身の方でこれほどブログの内容の重厚な方は珍しいですし、まして多忙の合間でありましょうに、なかなか格調の高い文章ばかり。ひょっとしたらブログ担当の専属スタッフでもいらっしゃるのかな、とふと思ってしまった次第です。
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