この文章を記している最中に、韓国の優勝が決まった。土壇場で、1点リードの韓国はストライクゾーンにクレームをつけた捕手が退場宣告を受け、一死満塁の大ピンチ。それを見事に凌いで悲願の金メダルを獲得した。
アマチュアの五輪経験者たちが口を揃えて言うのは、「アマの試合はもちろんだが、とくに国際試合では、審判にクレームをつけるのは下の下だ。プロの感覚で審判に文句を言ったら、試合後の審判たちのミーティングで槍玉に挙げられるだろう」ということだ。韓国もそれを知っていたろうが、最終試合で堪忍袋の緒を切ってしまった。
日本は、監督自らがずいぶん早く緒を切ってしまい、危うく退場になりかけた。審判に不信感を与えたことも敗因の一つだろう。また、捕球直後にミットを少しでもずらせば、ほとんどボールにとられるのも、アマの国際試合では常識だ。五輪強化費を使って「世界中からデータを集めた」と豪語したのだから、阿部・里崎・矢野の捕手陣に審判対策が伝授されていただろうが、捕手たちは実行していただろうか。ストライクゾーンに文句をつける前に(プロ意識丸出しでアマを見下す前に)、郷に入って郷に従っていただろうか。(じつは、これは私自身の自戒でもある。)
それにしても、監督にすべてを負わせすぎではないか。○○ジャパンなどと表現される事態がおかしいのである。最高の権限をもつ組織のトップと、現場で総指揮を執るチームのトップとの間に、それなりの緊張感がなければ、必ず偏向と堕落が生じる。当人にそのつもりがまったくなくても生じるのは、歴史が教えている。
そもそもJOC(日本オリンピック委員会)に加盟しているのは、BJF(全日本アマチュア野球連盟)である。これは、便宜上創設されたもので、実質的には、JABA(日本野球連盟)とJCBA(日本学生野球協会)である。これまでは、BJFが五輪代表監督を選んできた。永くアマ野球を支えた長船JCBA事務局長が、長嶋ジャパンを生みだし、星野ジャパンにつなげて昨年亡くなった。その直前に雑談する機会があったとき、私に「金メダルをとる最後のチャンスだから、五輪チームをアマからプロへ渡したのだ」と悔しさと期待とが入り交じった微妙な表情で語った。今回の結果を長船さんはどう天国で見守っていたか。五輪野球にプロを加えること自体、問題ではなかったのか。
8月15日の朝日新聞で、作家の重松清氏が書いている。「星野ジャパンには、もちろんメダルを期待したい。でも、それ以上に「野球の魅力を世界の子どもたちに伝える」という大きな使命があるんじゃないか。(中略)グラウンドを見てごらん。野球っていうスポーツ、面白いだろう?」
日本の子どもたち、世界の子どもたちに野球の面白さ・楽しさを伝えることを怠っている限りは、再び五輪で野球を見ることはないだろう。そして、ついに野球は世界スポーツにはならないだろう。21世紀の野球人(責任ある立場の野球人)を名乗る資格のあるのは、それを知っている者ではないだろうか。
アマチュアの五輪経験者たちが口を揃えて言うのは、「アマの試合はもちろんだが、とくに国際試合では、審判にクレームをつけるのは下の下だ。プロの感覚で審判に文句を言ったら、試合後の審判たちのミーティングで槍玉に挙げられるだろう」ということだ。韓国もそれを知っていたろうが、最終試合で堪忍袋の緒を切ってしまった。
日本は、監督自らがずいぶん早く緒を切ってしまい、危うく退場になりかけた。審判に不信感を与えたことも敗因の一つだろう。また、捕球直後にミットを少しでもずらせば、ほとんどボールにとられるのも、アマの国際試合では常識だ。五輪強化費を使って「世界中からデータを集めた」と豪語したのだから、阿部・里崎・矢野の捕手陣に審判対策が伝授されていただろうが、捕手たちは実行していただろうか。ストライクゾーンに文句をつける前に(プロ意識丸出しでアマを見下す前に)、郷に入って郷に従っていただろうか。(じつは、これは私自身の自戒でもある。)
それにしても、監督にすべてを負わせすぎではないか。○○ジャパンなどと表現される事態がおかしいのである。最高の権限をもつ組織のトップと、現場で総指揮を執るチームのトップとの間に、それなりの緊張感がなければ、必ず偏向と堕落が生じる。当人にそのつもりがまったくなくても生じるのは、歴史が教えている。
そもそもJOC(日本オリンピック委員会)に加盟しているのは、BJF(全日本アマチュア野球連盟)である。これは、便宜上創設されたもので、実質的には、JABA(日本野球連盟)とJCBA(日本学生野球協会)である。これまでは、BJFが五輪代表監督を選んできた。永くアマ野球を支えた長船JCBA事務局長が、長嶋ジャパンを生みだし、星野ジャパンにつなげて昨年亡くなった。その直前に雑談する機会があったとき、私に「金メダルをとる最後のチャンスだから、五輪チームをアマからプロへ渡したのだ」と悔しさと期待とが入り交じった微妙な表情で語った。今回の結果を長船さんはどう天国で見守っていたか。五輪野球にプロを加えること自体、問題ではなかったのか。
8月15日の朝日新聞で、作家の重松清氏が書いている。「星野ジャパンには、もちろんメダルを期待したい。でも、それ以上に「野球の魅力を世界の子どもたちに伝える」という大きな使命があるんじゃないか。(中略)グラウンドを見てごらん。野球っていうスポーツ、面白いだろう?」
日本の子どもたち、世界の子どもたちに野球の面白さ・楽しさを伝えることを怠っている限りは、再び五輪で野球を見ることはないだろう。そして、ついに野球は世界スポーツにはならないだろう。21世紀の野球人(責任ある立場の野球人)を名乗る資格のあるのは、それを知っている者ではないだろうか。
期待していた以上の北京五輪評でもあり、冷静に世界の野球、そして五輪を分析しています。
しかし、メダルが取れなかったのは残念です。