谷沢健一のニューアマチュアリズム

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2008年の12の? カープ(その2)

2008-03-04 | プロ野球への独白
 それにしても、TSS局(テレビ新広島)の皆さんの心籠もる気遣いには頭の下がるほどだった。同道している岡田スポーツ部部長も紹介していただいた。
 谷沢「広島の新球場完成は来年ですか」
 岡田氏「そうです。新幹線口にできますが、市の中心地ではありませんからね。人の導線の変化は読めません」
 神田氏「新幹線からは球場は良く見えますよ。センターの方向をオープンにして球場全体がプラットフォームからも全望できる設計でして」
 谷沢「新球場からは野村謙二郎監督かな」
 神田氏「そうだと思いますよ」
 こんな話をしているところへ球団広報から「ブルペンでピッチング練習が始まります」と知らされると、すぐに神田氏は「若手の前田健太君を見てください。佐々岡の18番を譲り受けたんですよ」と言う。
 早速ブルペンに走った。先発陣の大竹寛投手、青木高広投手に並んで、182cm・70kgのやや細身の前田投手の投球が始まった。ネット越しの捕手後方で北別府氏と拝見した。
 私「ストレート系は伸びのあるボールを放るね」
 北別府氏「ストレートの回転はいいですよ。ただしスライダーをひねって曲げ過ぎですね。ストレートの握りをずらして擦るように投げれんとね、コーナーの出し入れはできません」
 この一世を風靡した200勝投手は、前田君が100球余り投げ込んだ後、呼んでアドバイスを送ることを忘れなかった。それを直立不動して傾聴している18番が、今シーズンのカープのカギ束の一本を握っている。
 カープは、「○○がカギだ」などとは言えない。死命を制するカギが何本もあるのだ。まさにカギ束である。その1本でもブラッシュアップせずに錆を落とせなかったら、おそらく他のカギへ錆がうつっていくだろう。それだけ人材が手薄になったのだ。いみじくも「?」はカギの形をしている。2008年のカープの?は、全選手が昨年より1本でも多く適時打を打てるか、全選手が1点でも少なく失点をくい止められるか、である。人任せでは、真っ直ぐで一途なカープというチームは奈落へ向かってカーブしていくだろう。

2008年の12の? カープ(その1)

2008-03-04 | プロ野球への独白
 ゴールデンイーグルスの項で書いたように、長谷部君の投球振りを確認させて貰ってすぐに本島に戻った。小原格さんがデスク業務で東京に帰り、翌日は高田黄門様と沖縄市の広島キャンプへ赴いた。
 早朝からの雨でグランドが使えず、野手は室内での打ち込みとなった。黒田投手のドジャース入りと新井選手の阪神移籍でマスメディアには目玉が見つけにくい。本部席もガランとして球団職員も皆無であった。誰もいないマウンド。静寂の空間に置かれた打撃ゲージ。
 そんな空気を一掃したのは、テレビ新広島の神田アナだった。彼は部屋に入って来るなり、「谷沢さん、よくいらっしゃいました!」と彼らしい澄んだ明るい声を発する。「いやいや、カンちゃんこそ父の葬儀の折には遠い所まで足を運んでいただいて。ほんとうに有難うございました」
 わざわざ広島から千葉にまで弔問に来てくれたのである。「こういう人の思いを大切にしなければ」とつくづく感じ入ったのだった。悲哀の時に慰安を与えてくれる人、有頂天の時に叱咤してくれる人を、ともに悲しむ人やともに喜ぶ人以上に大切にしなければならない。
 神田氏とはプロ野球ニュースは勿論のこと、G戦の中継では達川氏とコンビを組ませてもらい、神田氏の地元一色の話術に引き込まれて、いつの間にか広島サイドに立つ自分に困り果てる場面もあった。達川氏がカープ側なのだから、私はジャイアンツ側に回らねばならないのだが、熱い思いを柔らかい言葉でくるんだ神田アナの絶妙の語りには、抗すすべもなかった。