谷沢健一のニューアマチュアリズム

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2008年の12の? バファローズとホークス(その4)

2008-03-01 | プロ野球への独白
 今後、外国人選手だけでなく日本人選手であっても、代理人との交渉に際しては、従来の慣行で安易に行わず、プロ野球協約に照合しながら慎重に行うこと、これが今回の教訓だが、それよりも、マネーゲームに走っているのはジャイアンツだけでないという印象を球界の内外に広く与えたことは、残念至極であり、暗澹(あんたん)たる思いが心に沈澱してしまう。
 そこで、最も懸念されるのは、バファローズ側の遺恨である。これが開幕後の対戦に、例えば投手起用などに露骨に表れるとしたら、長いペナントレース全体の選手起用や試合運びなどに大きな狂いが生じかねない。それが、今年のバファローズの「?」である。
 そして、かりにそうなった時、バファローズのファンとは違って、ボルテージの高いホークスのファンが黙っていないだろう。監督・コーチの試合の采配や選手の実戦に影響を与えないわけがない。それがホークスの今年の「?」である。
 そうなった時、唯一、ほくそ笑むのは、入場料収入の算盤を弾いている者たちである。遺恨試合とメディアがはやし立て、観客動員数が増えることまで、事前に計算している者が幕の裏側のどこかにいるとしたら、ただただ敬服するしかないのかもしれない。

2008年の12の? バファローズとホークス(その3)

2008-03-01 | プロ野球への独白
 私も、バファローズ側にシンパシーを強く感じ、ますますこの問題をきちんと考えなければと思った。それで、いろいろ取材をし、あれこれ考えてみた。それらを整理すると、
1.バファローズは、従来通りのやり方でパウエル側と交渉した。
2.それは、これまで慣行として球界で(とくにパリーグでは)認められてきている。
3.パウエル側は、これまで近鉄ーオリックスー巨人と契約交渉をして入団してきて、1と2を十分に理解している。
4.プロ野球協約に照らし合わせると、ホークスの契約書は正当である。
が判断条件になる事実である。
 それだけを基に、一連の流れを推測してみると、
5.バファローズのやり方には付け入る隙があると考えた者(または者たち)がおり、それがパウエル側の代理人か、ホークス球団の誰かかである。
6.ホークスとパウエル側の代理人のいずれかが、バファローズを上回る契約条件を相手に提示し、契約が交わされた。
7.パウエル側は、もしバファローズが異を唱えてプロ野球機構やパリーグの裁定によってホークス入りが不可能になったら、「年俸など、稼げるはずだった報酬の損害賠償を請求して、バファローズやNBLに訴訟を起こす」また「米国の選手会に訴え出て、日米間の問題として提起する」と、事情聴取などで明言した。
8.ホークスもプロ野球協約に加えて、パウエル側の〈脅しあるいは交渉技術〉を知って、強気だった。
9.小池会長はバファローズに同情しながらも、〈脅しあるいは交渉技術〉への対処法が思いつかず、ホークス入団を認める「強い勧告」を提示した。
10.根来コミッショナー代行は、小池勧告でも、訴訟を起こされればパウエル側が勝訴すると判断し、いったん小池勧告を無にして、「強い要望」を提示した。
11.根来代行の言う「パウエルの同意」とは暗に〈脅しあるいは交渉技術〉への敗北を意味する。
12.この根来要望の真意によって、バファローズは涙を呑むしかなかった。
というふうに考えてくると、根来代行の「両球団、選手にどういう問題があったかを求めても、解決にはならない。追及する気はない」という言葉の含意が理解できるし、「問題があると思ったことは、実行委員会で言う」という「問題」は、従来の慣行の問題点及びプロ野球協約の問題点を意味するだろう。

2008年の12の? バファローズとホークス(その2)

2008-03-01 | プロ野球への独白
 私は宮崎3球団の後、急遽予定を変えることにした。フジTVスタッフから「変更はいいですが、飛行機代はこちらでは支出できませんよ」と念を押されたが、パウエル問題は、プロ野球界の病巣の表れだと思ったので、宮古島へ飛ぶことにした。すぐに関西TVの田中バファローズ担当に頼んで、同球団広報の小浜氏に連絡してもらい、中村勝広球団本部長の所在を確認した。手慣れたお二方の連絡手配は速かった。
 宮古空港に下りると、中村氏と顔を合わせた。「いろいろ大変なのに、スケジュールに割り込ませてくれてありがう」と礼を言うと、「パウエルとホークスにはもう怒りが爆発しそうですよ。あとで行きますから、球場でゆっくりうちのチームを見ていてください」と互いに短い挨拶を交わし、私はキャンプ取材へ、中村氏は宮内義彦オーナーの出迎えに、それぞれ向かった。
 しばらくして、中村氏が球場に戻ってこられ、球団本部の部屋に招き入れられた。私が大学3年の時、中村氏は一押しの有望新人として野球部に入部してきて、2年間、いっしょにプレーした仲である。だが、そういう同窓という関係を抜きにしても、私は彼の憤激に大いに共感するところがあった。
 宮内オーナーが好天気を運んできたのか、すっかりと晴れ上がった離島の球場で、すぐに紅白戦が始まるので、中村氏は出ていき、私は井箟重慶球団アドバイザーと2人きりになった。
 井箟氏は、今は関西国際大教授としてスポーツマネジメントなどを教えている。井箟教授曰く「プロ球団は、内向きの経営にしか目が行かず、アマチュアのクラブ組織を支援する意識が足りません。クラブ野球を応援すれば、明らかに底辺が拡大するのだからね」
 米国コスモ石油副社長だったが、公募に応じてオリックス常務に転身し、10年間球団代表を務めた井箟氏は、故仰木氏を監督に迎えて、イチロー、田口、長谷川といった大リーガーを輩出する球団を創り上げた。日米野球関係史に特筆されるようになるはずの人物である。
 その井箟氏にパウエル問題を尋ねてみた。「君のような人たちにお聞きしたいくらいだよ」と言って、バファローズの手続きは正当であること、ホークスには重い道義的な責任があること、パウエル側に代理人が2人いて彼らに疎通がないこと、コミッショナーの裁定に日米の野球関係者が注目していること等々、滔々(とうとう)と語ってくれた。

2008年の12の? バファローズとホークス(その1)

2008-03-01 | プロ野球への独白
 9日のキッズな(絆)フェスタの後、10、11日はYBCの練習に明け暮れて、12日に宮崎へ飛び、3チームを巡回した。ライオンズ(南郷町)、ホークス(生目の杜)、ジャイアンツ(宮崎県営)である。
 ホークスでは、パウエル問題について王監督に単刀直入に質問してみた。いつも王さんは、触れてほしくないような問題でも率直に自分の心情を話してくれる(それはたぶん私に対してだけではないだろう)。前日の「パウエルはSBに決定!」という報道に、私は内心でいささか問題があると思ったので、敢えて尋ねてみたのである。
 王監督曰く「(パウエル投手の)出場停止期間が長すぎるよ。せめて開幕から1カ月だからな。あの江川でさえも1カ月だったからな」
 プロ野球界の大きな汚点である「空白の一日」を引き合いに出すのは王さんらしい。あの時、ダーティ一色だった江川投手を王さんは強く忌避し、チームの一員とは認めぬかのような言動が続いたとスポーツ紙などが報道した。
 ともあれ、小池パリーグ会長の裁定(3カ月)に対して不都合極まりないという不満の口調だった。エース斉藤投手の長期離脱が手痛いから、ガトームソン・ニコースキー以上の外国人投手の加入だけでも望外の喜びだろうが、それ以上を求めているようだ。
 王監督は、もともと組織運営という仕事に関心の薄い人である。だから、ホークス球団運営の実務にもほとんど関わっていないと思われる。ただ、GMという肩書きを持てば、他球団から見れば、運営実務のトップの1人としてパウエル獲得に積極的だとみなされても仕方がない。このままでは、王さんまでダーティに思われかねないのだ。