ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『暗黒街の弾痕』を観て

2017年05月10日 | 戦前・戦中映画(外国)
購入したままで、置きっぱなしの『暗黒街の弾痕』(フリッツ・ラング監督、1937年)を観てみた。

法律事務所の秘書をしているジョーは、結婚するのを姉から反対されている。
その相手のエディ・テイラーが出所し、出迎えるジョー。
二人は早速結婚し、新婚旅行に出かける。
しかし、行った先の宿屋の主人に、エディが前科者であると気付かれて宿から追い出されてしまう。

それに追い打ちをかけるように、エディは、トラック運転手として働き始めた運送会社からもクビにされる。
そのことを知らないジョーは、気に入った郊外の家を買う決心をし、引っ越しを始める。
エディはどうにかして職を見つけようと必死になるが、どこも前科者には冷たい。

雨の日。
現金輸送車が銀行に到着した時、毒ガスマスクの強盗に襲撃される。
翌日の新聞記事に、現場に落ちていた帽子にはエディの頭文字が入っていると出て・・・

刑務所を出たばかりのエディーは、将来に向かって希望に燃えている。
片や、新妻となったジョーも新生活に夢を馳せる。
祝福されるべきはずの二人。
しかし現実は、偏見のある人々が二人の思いを壊していく。

無実の罪でのエディーの投獄。
冤罪。
となれば、人間の心理状態は、他人に対してどのようになるのか。
真犯人が判明して、信頼している神父の説得にエディーはどう立ち向かったか。

世の中、世間は、このようにして善良な男女を、本当の犯罪者に駆りたてる。
そして、悲劇は邁進する。

エディーを演じる若き日のヘンリー・フォンダがいい。
ヘンリー・フォンダだから、普通の若者が状況しだいで凶悪犯になっていっても不思議でない、と思わせる説得力がある。

ネタは、ボニー&クライド。
実在のボニーとクライドは、『俺達に明日はない』(アーサー・ペン監督、1967年)のイメージが近いとすると、エディとジョーの本作は善人そのものである。
だから、作品としては別物と考えたほうがいいのではないか。
それでも、ナチの恐怖から亡命したドイツの巨匠ラングがアメリカでこれを作り、古典的名作だと言われれば、今観ても納得してしまう説得力は十分にある。
古典と名がつく作品は、後にできる作品を評価する基準を知るうえでも、やはり目にしておくべきだと再認識をした。

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