ポケットの中で映画を温めて

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『トリとロキタ』を観て

2023年04月01日 | 2020年代映画(外国)
『トリとロキタ』(ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟、2022年)を観てきた。

ベナン出身のトリとカメルーン出身のロキタ。
ふたりはアフリカからベルギーへたどり着く途中で出会い、強い友情の絆で結ばれていた。
ロキタは、すでにビザが発行されているトリの姉と偽り、ビザを取得しようとしていた。

トリとロキタはイタリア料理店の客に向けてカラオケを歌って小銭を稼いでいる。
しかし、それは表向きで、実はシェフのベティムが仕切るドラッグの運び屋をしている。
今日もベティムに指示され、ドラックを客のもとへと運ぶ。
警察に目をつけられたり、常に危険と隣り合わせだ。
ときに理不尽な要求もされる。それでも受け入れるしかない。
人としての尊厳を踏みにじられる日々だが、トリとロキタは支え合いながら生活していた。

ある日、ベルギーへの密航を斡旋した仲介業者から、祖国の母親へ送金する金を奪われて落胆するロキタ。
夢は、誰にも邪魔されずに祖国に仕送りをして、ふたりでアパートを借りて暮らすこと。
一刻も早く、ビザを手に入れてヘルパーとして働こうと、偽造ビザを手に入れるためにロキタはベティムが提案する孤独で危険な仕事を引き受けていく・・・
(パンフレットより抜粋)

アフリカ中央部西側の国から不法移民としてベルギーにやって来た少年、少女のふたり。
ビザを取得するためにロキタは、トキを弟として姉弟ぶり、努力するが一向に認可されない。
だから、まともな仕事に就けず違法行為をしながらしか食べていけない。
映画は、背景となる社会性はぼかしながら、ふたりの現実そのものを切り取っていく。
その手法はさすがダルデンヌ兄弟であると唸らせるし、シロウトでありながら主役ふたりの生き生きとした姿が素晴らしい。
そして、深い友情の絆。その深さは、そうでなければ社会から潰されてしまう、という危うさも漂わせる。

それに加えてサスペンスの要素も十分に加味しながら、一気に最後まで見せる。

ダルデンヌ兄弟が意図すること、そのことは観る者すべてに明白に伝わってくる。
何もベルギーに限ったことではない、世界は、無数の子ども達にこのような負の世界を背負わせているのではないか。
そのような訴えがみえてくる。
この作品は久々にみる近年にない傑作だと感じた。

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