原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

白の間奏曲、ミヤマザクラ。

2009年06月09日 10時31分24秒 | 自然/動植物
道東の遅い春の足音もその速度を増し、初夏の香りが漂う五月の末頃、緑の森の中に真綿のような白い模様が見え始める。それは緑の中に隠れるように密やかにあった。直径1.5センチほどの小さな花弁で、葉の上にちりばめられるように咲く。この木は高さ10メートルを超すものが多く、葉の上に咲く花は下から眺めるとわずかしか見えない。密かに咲いているように見えるのはそのせいなのだ。触ると音楽が聞こえそうなさわやかな風情がある。



花の名前は「ミヤマザクラ」。別名をシロザクラという。深山桜の意味でもともと山奥にあった桜なのだろうが、わが町では五分も歩けば入れる軍馬山で、気軽にこの桜を見ることができる。正直なところ、軍馬山を散策するまで、この桜の存在すら私は知らなかった。私の無知はさておいて、なかなかに味わい深い桜である。
北海道に多いエゾヤマザクラが咲き始めるのは4月末の黄金週間の頃。だがこのミヤマザクラが花開くのはその約一カ月後。ちょうど今頃に満開となる。花の咲き方も違う。ミヤマザクラは、まず葉が姿を現わして、その後に花を開かせる。ソメイヨシノが葉より先に花が咲くのとは全く逆。ヤマザクラのように葉と花が一緒に咲くスタイルとも違っている。しかも色が真っ白。サクラは桜色という基準からも異なっている。まさに独特の個性を持った桜なのだ。
と、まあ、わずか一週間ほどで得た知識のすべてがこれである。



道東の野山の花々が顔を見せるのはこれからが本番。水芭蕉や鈴蘭、ユリ、ツツジなどが一斉に咲き始めるのが六月。一足早いサクラのシーズンから本格的な野山の花のシーズンへの橋渡し的な役目を、ミヤマザクラは持っているのではないだろうか。間奏曲となる純白の花弁を眺めながらの花見酒も、また一興なのである。

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2 コメント

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ああ、納得! (numapy)
2009-06-10 12:29:24
国道240を走ったときに、白い花が咲いてました。
まさか、ナシの花じゃないよなあ、と思ってたんですが
写真を拝見すると、どうやらあれが「ミヤマザクラ」と思われます。納得しました。しっかし、無知だなあ、オイラも。
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他にも白い花が、 (原野人)
2009-06-10 13:48:48
今更、言うまでもないのですが、実はこの花をつい最近まで別の花と混同していました。よく似た花弁をもった「エゾノコリンゴ」です。よく見ると葉が違い、木の幹も違うのですが、花弁はそっくりなんです。今度、この花を紹介します。小さな林檎を実につけるそうです。夏を楽しみにしています。この木の方が実は数が多いので、私はすっかり勘違いしていました。おろかです。
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