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『明日カノ』最終巻言いたい放題・その4。

2024年03月22日 | 言いたい放題
【当たり前の期待を捨てるまで】

をのひなおさんの漫画『明日、私は誰かのカノジョ』の最終巻言いたい放題記事4回目です。

前回はこちら。
  ↓
・『明日カノ』最終巻言いたい放題・その3。

長年自分を苦しめてきた育児放棄系毒親・愛さんと決着をつけるために一緒に海へ行く承諾をした雪さん。

火傷痕をメイクで隠さずそのままに、大好きなミニスカートは選ばず、シンプルな長袖シャツにスキニーロング丈パンツスタイルという装いです。

ありのままってことだよねえ…。

決戦の舞台は江ノ島。

第3章のヒロイン・彩さんと一緒に来た場所ですね。

顔のコンプレックスに対等な気持ちで向き合い受け入れてくれた彩さんは、雪さんの大切な人。

「なんだ、自分と同じだったんだ」

という言葉をリナちゃんも彩さんも雪さんにかけますが、その心は全く違った…あれは初期だけど良い対比構造でしたよね。

しみじみ。

この場所をおそらく雪さんが選んだのは、彩さんとの絆に勇気をもらうためだったのかな…なんて私は友情を感じ取ってしまいました。

電車の中での親子ラインのやり取りがリアルでうわあ…でございます

「今日時間通りで大丈夫?」

と遅刻され・すっぽかされ慣れてる雪さんが連絡をし、それに愛さんがごめんちょっと遅れる~ごめんね~とヘラヘラ反省ゼロの返信をするという。

遅刻魔・すっぽかし魔ほんとうに嫌だよねえ…。

相手の時間=人生を不当に搾取してるのを当然だと思って…。

(自分の特性だって開き直る人が昨今増えましたが、軽度ADHDだと公表している勝間和代さんは

 「そもそも自分が待ち合わせにつくまでの時間を計算できてない、自分の特性を考慮してもっと多く時間をとって行動すれば遅刻しない」

 と言っていたぞ)

そんなラインのやりとりをした直後、雪さんは電車の中で見知らぬ幼女に見つめられ、静かに微笑みを返す。

この描写は

「私は幼い私を助けに行く」

という意味なのかなあと。

幼い女の子は可愛く髪を結ってもらい、おそらく隣にはお母さんがいて、欲しかったのに与えてもらえなかった当たり前のケアと愛の象徴でもあるかも。

愛のない母親の名前が愛さん…ほんっとに皮肉が効いた良い名前

さて、遅刻されて浜辺でやーっと落ち合えた親子。

相変わらず愛さんはヘラヘラ。

これは優愛のお父さんと同系統の嫌らしさだと思うので、をのさんのこだわりなんでしょう。

「お母さん 今日は来てくれたんだね」

と嫌味というか、被害を忘れてないよと言葉にしているのには全然気付かないし、隠さず出してきた火傷痕にはぎょっとするけど何も言わずにスルー。

ヘラヘラの悪。

そんな母親に雪さんの寂しい表情の、まあさり気ないけど切ないこと。

雪さんは泣けてきてしまいます。

それでも勇気を振り絞って愛さんに問いかけます。

「なんで私のこと捨てたの?」

弱々しく、頼りなげで、保護を求める幼い瞳。

あーそうだよね、親ってあまりに大きなぜったい権力者で、大きくなってもあの頃に心は戻ってしまうよね…と悲しくなる。

あとの展開は毒親あるある・皆さんの予想通り、優愛の父親ですでに示されていたとおりの反応です。

愛さんは面倒くさ、と隠さず雪さんを責める。

「今日はさあ、せっかく雪と楽しく過ごそうと思って来たのにぃ、そんなこと言わないでよ」

不機嫌でコントロールしようとしてるんですよね。

いつものやつ。

雪さんは一瞬絶望するけど、頑張って言葉を吐き出し続ける。

やられてきた被害を全部訴える。

子どもらしい弱く遠慮した言葉で。

もちろん、相手が話し合えるまともな相手ならそもそも全ての悲劇は起きないので、愛さんの反応はひどいものです。

「知らないよ!

 なんなのもう その火傷の痕もわざと見せつけるみたいに あてつけのつもり!?」

ひどいね…老いた肉体に幼い精神が入って、権力構造で逆らえない者を攻撃するって本当に最低。

話が通じないとわかっているけど、雪さんは言葉を続ける。

「私はずっと生き辛かった

 伯父さん夫婦は実の子でもない私を育ててくれて感謝もしてるけど、埋められない寂しさがあった

 本当のお母さんがいるのに気にかけてすらもらえない

 今のお母さんに気まぐれで中途半端に優しくされたって意味ない

 昔に戻ってちゃんと一から私を愛してよ!」


もちろん返しはこれ

「そんなことできるわけないじゃん!」

鬱陶しそうないやらしい表情がキツイ。

「一番大事にしてくれるはずのお母さんがぶったり捨てたりしたから、そんなことされる自分って一体なんなんだろうって、自分の価値がわからない。

 人付き合いもうまくいかない、他人がずっと怖くて私なんかとは別の世界に生きてるように思う。

 そういう思い込みで大事な人のこと切り捨てたりした。
 
 私が自分に価値を感じないから、私なんかとの関係断ち切ったって相手は対して傷つけないだろうって…。

 でもきっと違った」


リナちゃんと太陽くんの縁を思い浮かべています。

翼くんがいなかったらリナのことずっと無視してたって言ってたもんね…。

辛い告白に愛さんは引き続き醜い表情で攻撃する。

「人のせいにしないで!

 うじうじしてんのはあんたのせい!

 火傷だって自分で勝手にお湯被ったんじゃん!(←あんたと遺伝子上の父親が育児放棄したからです)

 あたしなんか大学出てないのに!

 勝手に大学行って学費要求してきて金金卑しいと思わないわけ!?

 綺麗な顔に産んでやったんだから感謝してよね!」

うん…顔と金なんだよねえ、愛さんの判断基準。

そしてそれ以前の依存対象が男…まあ日本らしい洗脳の結果なんだろうけど。

あ、ここで愛さんの仕事はホステスさんだと明かされます。

だからタクシー移動してまとまった金も持っていたのね。

ホステスさんの仕事は向いているんだな。

さあ、ここからクライマックス。

「私だって 全部お母さんのせいにしてる自分も

 お母さんのことも 大っ嫌いだよ!!」


うう、なんて辛い言葉。

泣き叫んで訴えます。

「信頼関係なんか私達の中にあるわけない、あなたは私を捨てて何もしてくれなかったんだから。

 謝罪すらしてくれないなら、学費くらいでしか気持ちを量れない。

 大学は育ててくれた伯父さん達に顔向け出来るように、お母さんがそんなんだから、あの親の子どもだって言われないように頑張ってきたんだ!!」


雪さん…やっぱりそうだったのか…。

「やりたいことも夢もない」

と言っていたのに奨学金=借金背負ってまで大学に出たのは学歴身に着けてお金をまっとうに稼ぐためだったんですね。

「あの親」

という言葉に自分への攻撃を感じ取った愛さんは昔のように雪さんをぶった。

ヘラヘラでかわせなくなったら言葉の暴力、それもきかなかったら暴力、全くもってありふれたムカつくパターン。

その仕打ちに雪さんはまた傷つけられ、涙がさらに溢れたけれど力を振り絞って愛さんを全身で押し倒します。

さりげないけどこの倒し方がリアルだなーって私は共感しちゃった。

怖い・強い・でかい相手には全体重かけるしかない。

この場合は物理的じゃなく精神的なものだけど。

愛さんの返しは昔と変わらず…。

「何すんの!

 これ高かったのに!」

バッグらしい。

昔リップ雪さんが壊しちゃって暴力振るった時と同じです。

ああ、変わらない。

何も変わらず話も通じない、知ってたよ、きっと雪さんはこう思ったんじゃないかな。

リナちゃんにもらった勇気を思い出して、どこかで期待してたから踏ん切りがつかなかったと思ってから、新しく自分の言葉で最後にこう告げます。

「私は 私自身の意思で 今度は 私が

 お母さんのことを捨てる

 私お母さんに期待しすぎてたんだ

 私が欲しかったものを

 お母さんが与えてくれることは 

 この先もきっと無いから

 もう 諦める」


…。

これだ、ほんっとにこれだよ。

雪さんは期待を捨てられなかった。

期待するのは当たり前だよ、たった一人の親なんだもん(遺伝子の父親が誰なのかも雪さんは教えられてない、多分)。

愛されたいよね…大切にされたいよね…。

雪さんたったの20年ちょいしか生きていないんだし…。

でも諦めるしかない、だって相手こいつなんだもの。

捨てられた愛さんは自分が下に扱われたと感じたのかまた激昂して

「あたしがいなければあんたも一人なんだからね!!」

と去る背中に叫ぶ。

そしてあてつけに人に連絡取って

「自分はこんなに愛されてる、お前なんかと違うんだ」

と雪さんにマウント取り。

幼くて痛くて辛いったら。

おそらくブロックしてた自分を好いてる男…お客さんなんだろうなあ。

雪さんは振り向かない。

凛と背筋を伸ばしてゆっくりと去ります。

その表情は傷ついて、涙を流していても。

これが彼女の選んだ決着。

雪さん、お疲れ様。

本当に本当によく頑張られました…。

ううう。

クライマックスはここまで。

次回は結末のその後!

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『明日カノ』最終巻言いたい放題・その3。

2024年03月21日 | 言いたい放題
【明日カノ最終章で描かれていた世代連鎖】

をのひなおさんの漫画『明日、私は誰かのカノジョ』の最終巻言いたい放題記事3回目です。

前回はこちら。
  ↓
・『明日カノ』最終巻言いたい放題・その2。

1回目の時書いていなかった、明日カノ最終章=雪さん編第二章。に描かれていた世代連鎖についてサラッと私が思ったことを書いておきます。

親から子ども、子どもから孫、複数の世代に渡って同じような問題が繰り返されることを世代連鎖と呼ぶんだけど、これはたいてい毒親・虐待・依存症の問題と共に語られていて、よく言われる

「親が親なら子も子」

「虐待は繰り返す」

というあの意地悪な言葉なんか最たるもの。

実際の研究や統計データから

「遺伝ではなく、その後の環境」

と言われているらしいのでヒヤッとした方は安心してほしいです。

「自分も毒親に似てる気がする、どうしよう、あんな奴になったら」

と心優しき毒親育ちは皆思うもの。

私はいつもそれに対して

「毒親エピソード検索してみて、血のつながりもない、知るわけもない、縁もゆかりもない赤の他人のはずなのにどうしてみんな同じヤバイことするんだろうって思うから。

 あれは遺伝じゃなくて人間のよくある悪しき慣習だと私は考えるなあ」

と答える。

それは最初に強く主張しておきたい。

とはいえ…遺伝ではなく、

「自分が見たこと・されてきたことを模倣しやすい」

点は見逃せない。


依存症患者に苦しめられてきた家族が、たいてい子どもが、

「自分はぜったい親のようにはならない」

と思いながらも自分も同じ依存症になるか(アルコール依存症が有名だが、家庭内暴力など依存がある)、子ども時代そうしていたように依存症の人と結婚して同じようにずーっと世話をして振り回されているってよくある話。

(詳しく知りたい人はクラウディア・ブラックの『私は親のようにならないー嗜癖問題とその子どもたちへの影響』を読んでみて)

この問題は宿命でも現在でもなく、単純に慣れ親しんだもの・知っているものを人間はやりやすい、ってことなのだ。

雪さんと太陽くんがあんなに重い合いながらも傷つけあって悲しい別れを選び、寂しいのに別れてホッとするのは作中描かれている通り

「これでもう捨てられるかもって怯えないですむ」

「やっと嫉妬して疑わずにすむ」

に違いないんだけど、幸せじゃない状況に慣れすぎていて不幸な方が慣れてて心地よい、安心するという精神状態にされているからなのです。

雪さんの語った

「幸福が麻薬なら不幸も麻薬、不幸に心地よさすら感じる」

というアレです。

(私は雪さんのいう麻薬みたいな幸福って幸福じゃなくてただの刺激だとずっと考えているけどね。

 幸福依存症じゃなくて刺激依存症。

 幸福ってもっと穏やかで健やかなものだ)

太陽くんが

「こんなに嫌なのに、母親と同じに嫉妬して狂って愛する人を苦しめてる」

と母親のコピーみたいな思考・行動をするのは、それをされて学習してしまっているからなのだ。

慣れってすごく怖いのだ。

洗脳されているしね、愛は壊れるものだ、傷つけるものだと。

作中明言されていないけど、きっと太陽母は夫に浮気されたんだよね…それで狂ってる。

雪さんと愛さん(母親。シッチィ)は全然似ていないようで

「大切だと思った人はぜったい自分を捨てる」

という言葉をリンクさせてましたし、雪さん自身が

「私も母親と同じように逃げてる。

 あの人の行動をなぞっている」

とわかっているので、愛さんの

「向き合わずに・話し合わずに・逃げる」

をやられすぎて学んでコピーしちゃっているのね。

でも…こういう状況には『ハリー・ポッター』でダンブルドア先生が主人公・ハリーに優しく語ったこの言葉を贈りたい。

「どれだけ似ているかじゃない、どれだけ違うかだ」

人間似てるところなんかいっぱいある。

それを数えだしたら病んでしまうから、どれだけ自分は違うかに意識をうつした方が良いと思うから。

【成熟しない心は肉体を朽ちさせる】

雪さんの底つきからの勇気の芽生えの後、もちろんクライマックスとなる愛さんとの対決へ。

その前に前章のヒロイン・江美さんと愛さんのつながりが描写されます。

愛さんの地元時代の友達が江美さんだったのよね。

十数年ぶりの再会らしいよ、江美さん・幸子さんと。

東京(中目黒かな?)のカフェレストランでの3人同好会です。

江美さん・幸子さんの清らかな美に対して愛さんの全ての汚らしい&ねちっこいこと。

当然のように遅刻、バカそうな子どもっぽい話し方と表情、溢れ出るマウント精神など、少ないページにこれでもか!と嫌らしさを匂わせる…。

持っているバッグもブランドもので、ここだけじゃなく毎回タクシー乗るのでほんっとうにお金がないわけじゃないんだよね。

1円も引き取られてからの雪さんに援助してこなかったんでしょ?

辛い。

いつものガビガビ赤リップで愛さんはこうつぶやく。

「皆変わんないなぁ」

江美さん・幸子さんのことなんだけど、これは

「変わってないのお前だけだよ」

という強烈に皮肉がきいた描写なのです。

江美さんの成長も変わらない清らかさも読者はわかっているし、幸子さんだってあんなに綺麗に家を整えて家族の世話を頑張って、すごくすごくちゃんと成熟してるのにね。

ある年齢から…早い人は18才とかから、肉体年齢に対してあまりに精神年齢が追いついていないと人はとても老いて美から遠い容姿になる、と私はずっと思ってるんだけど。

愛さんはまさにだなあ。

ちなみにそんな私の自論にある大先輩レディーが

「いい年した大人の幼さって、自我なんですよ。

 わがまま、身の程知らず、傲慢、幼稚。

 そんな自我は停止…停止はすなわち死、でしょう。

 老いは死に近い様だから、そりゃー老けますよ」


と考察してくれたことがあって雷打たれたね

まさに!と。

(詳しく書いた過去記事はコチラ。
  ↓
 ・自我=停止=死。

きついわあ。

さて、大切な友達である二人に愛さんはマウント感をにおわせながら

「娘と来週海に行くんだぁ」

と話す。

そう、決戦はすぐそこなのだ…。

長く書いちゃったので今回はここまで。

読んでくださってありがとうございます

続き書きました!
  ↓
・『明日カノ』最終巻言いたい放題・その4。

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『明日カノ』最終巻言いたい放題・その2。

2024年03月20日 | 言いたい放題
【愛し合った時間は無駄じゃない】

をのひなおさんの漫画『明日、私は誰かのカノジョ』の最終巻言いたい放題記事2回目です。

前回はこちら。
  ↓
・『明日カノ』最終巻言いたい放題・その1。

愛さん(雪の実母)が彼氏から振られている頃、雪さんは仕事から帰ってきて疲れきっていました。

お客さんが買ってくれた食べ物(百、とあるから千疋屋のイメージかな?果物屋さんの)を冷蔵庫に入れなきゃ…とヨロヨロ這っていって開けると…。

そこには太陽くんがここで料理を振舞ってくれた時に

「またすぐ作りにくるから」

としまってあった残りの食材が…傷んで食べられない状態になってそのままそこにありました。

あの時の幸せな思い出が一気によみがえってきて、雪さんははらはらと泣き出してしまいます。

幸せだったのに。

好きだったのに。

もうあの時には戻れない。

こんな時でさえ雪さんは自分を冷静に分析してしまいます。

「自分で関係を切っておいて泣くんじゃ世話ない…」

「皆みたいに自分は普通じゃない。

 皆みたいにちゃんとしなきゃと顔色うかがって欲しいものも欲しいと思わず言いたいことを我慢していきてきた。

 そしたら自分の気持ちが何もわからなくなった。

 やりたいことも好きなものも、なりたい自分もわからない。

 こんな自分に生きている価値があるのか?

 人生ってあと何十年もあるのに、こうやってどん底に落ちて這い上がってまた落ちてなんて、苦しすぎる。

 何も考えなくなって自分も消えてしまえたら良いのに」


悲しい悲しい胸のうちです…。

(言葉はそのままではないので、ぜひ漫画を読んで本物を確認してね!)

信じてみようと思ったら母親に裏切られて、もう傷つきたくなくて、太陽くんをあんな風に切り捨ててしまった。

後悔するような涙がとても痛い。

悲しい別れを鮮明に思い出した後に、楽しかった記憶幸せな気持ちもまたよみがえっていきます。

愛は消えてなくなるわけじゃないよね…。

あ、母親の愛さんじゃないよ、太陽くんとの愛だからねもちろん(笑)。

マスカラ溶けるまで泣き続け、スマホで二人の大切な映画『ヴィオレッタ』の監督(ヒロインのモデル)が

「子ども時代を奪われた。

 母親に損害賠償を請求」

したというニュース(これは実話です)を見て、また自分と同じように毒母に苦しめられた仲間の生き様を見て小さく自分に言い聞かせます。

かつての自分が思って口にした言葉を。

「私も… あの主人公みたいに

 ちゃんと嫌って言い続けたいって そう思うよ…」


愛、共感できる仲間、そして頑張ってきた自分自身の歴史。

それらがどん底にいる雪さんを励ましてくれている。

静かだけど心には大きく作用してるエピソードなんですよね…。

っていう美しい娘の涙と成長の後に、例の愛さんが彼氏に振られる場面がきて、

「あたしには可愛い娘がいるんだかんね!!!」

と雪さんのラインブロックを解除するという(笑)。

コメント欄ドン引きでしたよね。

「何も悪くない娘をブロックってシッチィ(愛さんの愛称)ヤバイ!!」

「なんでそんなことしたの!」

「そして恥じなくブロック解除すんの?!!」

と。

いやー、頭おかしい人にふつうの思考回路を求めちゃダメよ皆様。

話が通じる相手だったらこんな悲劇にそもそもなってないんだわ…と私は当時思っていた記憶。

【怒りを取り戻す=心を取り戻すということ】

はい、恥知らずな愛さんは雪さんに電話(ライン通話)をかける。

着信通知を見た雪さんは固まってしまいます。

静かな冷たい怒りが、体を凍らせてしまうのでしょうね。

「本当は、お母さんにやられてきたこと全てに私は怒っていたし、今怒ってるんだ」

冷静です。

でも青い炎の方が赤い炎よりもずっと熱いように、これは計り知れない怒りだ。

「親に蔑ろ(ないがしろ)にされてるって 自分で認めてしまったら

 本当に私は価値がない人間なんだと

 思い知らされるようで出来なかったけど

 本当は傷ついてたし ずっと怒ってたんだ…」


この怒りを取り戻すって私はすごくすごくすごーく大切なことだと思っていて。

雪さんが怒ってくれてとても嬉しかったです。

日本はネガティブ感情を悪く扱いすぎだし、特に女性の怒りは罪悪のごとく扱われます。

(男性の怒りは男らしい~って受容させようとするくせにね)

でも、自分の人生振り返ってみても

「やめろ!」

「ふざけんな!」

って怒ることで危機から逃れられること・大事なことに気付いて人生を好転させたこと・いっぱいある。

奪われた心を取り戻す時にまず感じられるのは怒りだもの。

正当(=正しく理にかなっている)な怒りはとても大事なんです。

ここから雪さんは心を取り戻すのだ。

そして、ここすごくいい描写で大好きなんだけど、雪さんは大切な人達との思い出がわーっとよみがえっていくんですね。

翼くん、彩さん、太陽くん、リナ、留奈ちゃん。

「皆のおかげで築いてきた、ここに自分がいてもいいんだという気持ちも母親にゼロにされる。

 私のために皆がかけてくれた大切な言葉も全部響かなくなる」

いやー恋と友情を差別化せず、シンプルに大切な絆と描いているのが画期的。

昔の少女漫画じゃこうはいかないよねえ…かといって同性の絆だけを持ち上げるでもなく…素敵だわー。

そして最初期の伏線回収の言葉がこちら。

「幸福が麻薬なら 不幸だって麻薬だ

 辛い辛いと言いながら 現状を変えずに日々を過ごすのは

 幸せになるために頑張るよりずっと楽 心地よさすら感じる

 でも」!!!!


これはをのさん(作者)がずーっと実体験から口にしていた考えを落とし込んだ言葉で素晴らしい。

そうだよね、本当にそう。

でももう、やめたい。

自分がやめるしかない。

雪さんは気付いたのね…頑張ってきた過去の自分のおかげ、皆のおかげ、そしてそれを選んだ今の自分のおかげ…。

というわけで、愛さんのヘラヘラ連絡を取り、

「海に行こうよ」

の誘いを静かな笑顔で雪さんは受ける。

変わるために。

幸せになるために頑張ると決めたから。

…。

ってので今回はここまで。

いやー短い話なのに濃い良い話だからついつい語ってしまいますわ。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます

続き書きました!
  ↓
・『明日カノ』最終巻言いたい放題・その3。

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『明日カノ』最終巻言いたい放題・その1。

2024年03月19日 | 言いたい放題
【完結おめでとうございます!】

をのひなおさんの大人気漫画『明日、私は誰かのカノジョ』が無事に完結し、電子コミックと紙コミックが発売されました。

いやー、おめでとうございます

20年前くらいになっちゃうかもしれないけど、ここまで普段漫画を読まない層にも読まれた作品は矢沢あいさんの『NANA』以来かもと私は思いました。

『明日カノ』を描いている間にをのさんは20代から30代になられたそうで、

「読み返すと描いていた時と全く違う気持ちになることもあった」

と。

それが成長なのだろうなあ…しみじみ。

たしかこの作品はをのさんのデビュー作でもあり、最初はかなり荒削りの構成や作りこみが私には目につきました。

雪さん編最初期(ソータくんとの物語)からリナちゃん編はまさしくそう。

ただ

「この気持ちは本当だ」

という最大の魅力は当時もあったよね。

彩さん編もその域を出ませんが、リアルさを追求してクオリティを大幅アップ・かつ新しい読者層に広く刺さったのが萌ちゃん編。

チャンスを実力でつかみ、ものにしたのが素晴らしいですよね

(萌ちゃん編は長く言いたい放題記事を書かせていただきました。
   ↓
 ・萌ちゃん編『明日カノ』言いたい放題・その1。

「最初にしっかりとゴールや設定を決めておかないと描けない」

とおっしゃる漫画家さんはたくさんいて、もしかするとをのさんもそうなのかなーと思ったのが、結局リナちゃん・彩さんの二人を深く描けなかったところ。

特にリナ。

苗字も歴史もわからなかったよ…。

なんで最終巻であんなにリナが成長したのかも描かれませんでしたしね。

私はリナちゃんがけっこう好きなので寂しい…けれど仕方ない。

とにもかくにも、完結おめでとうございます。

連載中は本当に何度もをのさん体調を崩されていたので、しっかり休んで体を治してほしいです。

では、ラスト『明日カノ』言いたい放題、書かせていただきます!

当たり前ですがネタバレしかしていないので、ネタバレ嫌な方はこの記事じゃなくて単行本を読んでくださいませ

【好きなのに…太陽くんとの縁を断ち切る】

最終巻のオープニングは、毒母に初めて反抗できてテンションおかしいことになってる彼氏=太陽くんと、毒母を信じてみようと思ったのにあっさり裏切られてズタズタに傷ついてしまった彼女=雪さんが

「お互いの心に向き合う余裕がないゆえに、傷つけ合って別れる」

という悲しい場面。

二人共ちゃんと好き合っているのに、心がボロボロすぎて・思考回路を捻じ曲げられすぎて全然上手くいかない…。

こういう悲しい擦れ違い・傷つけ合いって人生でうんざりするほどあるね…

二人共頭では自分のことを客観視できるのに、実際大切な人を前にすると傷ついた本心がわーっと出てきてしまってうまくいかない。

いやーもう、雪さんも太陽くんも本当に賢い良い子でね…。

太陽くんは

「嫉妬して疑うのに疲れてた。

 これでやっと疑わずに済む」

と、雪さんは

「これでやっと捨てられるかもって怯えずに済む」

と悲しい別れをそれぞれ冷静に分析しているのがとても悲しい。

相手のせいじゃない、自分のせいだって二人共わかってるんですよね。

毒親に傷つけられて心をめちゃくちゃにされた被害者なのに。

かなしい(かなしい)。

まあでも。

『明日カノ』の男性キャラの中で突出して魅力的に描かれていますよね、太陽くんは。

ものすごく良い子。

女性キャラは魅力的に描く一方で男性キャラは残虐性・幼稚性を感じる描かれ方が多かったので(男性→女性への仕打ちならそれはけしてリアリティーのないものではないし)、太陽くんもそういった面を強調されるかと思ったら

「雪さん(女の子)と同じように苦しみ、もがき、一生懸命生きている健気な人」

に描いている。

それがすごく作者からの愛に思えて、をのさん男性キャラにも愛がすごく感じられるようになったなーと私はジーンときました。

【リナの成長はどこから?】

太陽くんと別れた雪さんは、いつの間にやら内定も決まったらしくレンタル彼女のバイトに逃避するようになります。

抜群の自己プロデュースぶりに磨きをかけ、

「理想のカノジョになりきって、言ってほしそうな言葉を返して、代わる代わるそれを演じて、ああ楽だな、何も心が動かされない」

と仕事を入れまくります。

「楽だ楽だ」

というわりに仕事を終えて家に帰ると疲れきっていて、どんどん家が荒れていくのが実にわかりやすい逃避依存行為なんだと示唆されている。

ワーカーホリック=仕事中毒だねえ

1ヶ月後にリナちゃんに太陽くんとの別れを報告し、なんでなんでと聞かれても言葉を返せない雪さんにリナはサインを感じ取り深追いせず、かつちゃーんと思いやりの心で包みながら話してくれる。

「いつでもリナは雪の味方だよ」

という愛を込めながら。

…すごく美しい友愛だし、リナちゃんの成長は素晴らしいけど、何由来でこの成長ですか?(笑)

をのさんが意識していたかはわからないけど、当初のリナって愛さん=雪実母。に重なるようなキャラ作りだったんですよ。

ルックスが良いけれど男性依存症で、気分の浮き沈みで平気で雪さんを雑に扱うという。

男がいれば大してより付かず、寂しい時にだけ雪さんに全力ケアを当然のように求めて。

男が寄ってきたら何も考えず雪さんを捨ててそっちへ行って、全部やったこと忘れちゃう。

誕生日ディナーに雪さんが決まっていた仕事を正之さんに直々にお願いしてまで延期してもらって、店を予約しケーキまで頼んでちゃんと待っていたのにパパ活買○男といたすためにすっぽかしたじゃないですか

ちなみに幼げな甘い話し方もリナと愛さんはそっくり。

こういう女性に振り回されるのに雪さんは慣れちゃってる…という伏線回収になると思ったんだけどなあ。

主人公雪さんに対して正ヒロインの扱いを受けて貫き通したキャラクター・リナ。

もったいない…でも描けないなら仕方ないのか。

【愛さん、彼氏に振られる】

似たようなリナちゃんがいつの間にやら健やかで思いやり溢れる素晴らしいレディーに成長していたのに対して、雪母=愛さんは何も変わらず。

雪さんとの約束をすっぽかしラインブロック(!!)する理由になった復縁彼氏に相変わらず夢中です。

男性依存症なんだよなー。

いるいる、こういう人いる

ちなみに時系列でいうと、江美さん&幸子さんとのプチ同窓会の直前になります。

愛さん…友達にならふつうに感じよく振舞える人なんだろうなあ。

家族・恋人にだけ激ヤバになる人は男女ともたくさんいるから…。

ルンルンでデートしていたのに、彼氏は心ここにあらず、いかにもな無表情。

これを女性でありながら読み取れない愛さんて。

「喫茶店入ろう、話がしたい」

とうながされ…。

予想通り振られたご様子。

(をのさんは細かい描写あんまりしない)

マスカラが溶けるほどボロ泣きして

「あたしよりただ若いだけの女を選ぶわけ

 男なんて結局 最後にはあたしを捨てるんだ」

ですって。

このリアルで美しくない激昂の表情、白髪っぽく入れられる髪の白いライン、リップメイクしてるのに全主要女性キャラの中でたった一人黒く(赤かな?)ガビガビに描かれる唇…。

おそらく

「汚らしい女」

として描いてこれなのだろうなあ。

おっそろし…。

年が近い江美さんは少しシワってるだけで雪さんと同じように綺麗だし、幸子さんだって可愛いのになあ。

さあ愛さんはどうする?

そして同じ頃雪さんは…。

次回に続きます。

続き書きました!
  ↓
・『明日カノ』最終巻言いたい放題・その2。

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ネクタイに並べるのはスカーフかもしれない。

2024年03月08日 | 言いたい放題
【男性装は重要だった】

ロシアの女帝・エカチェリーナ2世は知性、忍耐、そして性豪=底なしの体力!という三柱を持っていた人だと思う。

同時代…少し先輩世代の偉大な女帝であるマリア・テレジアもあのマリー・アントワネットを含む16人!!!の子どもを立派に妊娠出産しているし、体力はとても大事だったのでしょう。

ちなみに私は、マリア・テレジアお母さまの美貌と知性をもっとも受け継いだと言われるマリア・カロリーナ・ダズブルゴが当初の予定通りにフランスに嫁いでいたなら歴史は変わっていたかもしれない…という逸話が好きだ。

実際どうなったかはわからないけどね。

(それにしてもマリー・アントワネットもオーストリアでの名前はマリアだし、マリアさまがいっぱいですな)

話を戻して、類稀なる知性を持っていた女帝エカチェリーナ。

彼女は衣装の力をよくわかっていて、特にここぞ!という時に男性装をして部下の士気を高めていたと伝承されている。

皇帝の座につく時に男性の軍服(しかなかったのだろうが)を着ていたのは有名なお話。

賢い彼女が外さず活用するくらいファッションの力は偉大なのですね。

【どんなに大変でも殿方はネクタイを手放さない】

フォーマルという意味では女性装も男性装も伝統の型が決まっているけれど、実はビジネスにおける女性装フォーマルって歴史が浅いから、これが正解!ってわかりづらい気がします。

多分そうだよね、服飾の歴史考えても…専門家なら違うのかな?

最近、ビジネス女性装において重要なのはネクタイに対応する強烈なアピールがないこと、と分析している方がいらっしゃった。

それを聞いて

「へえ!」

と思ったんですよね。

たしかに、この高温多湿の日本で

「ネクタイは辛い」

と言いつつ長年殿方がネクタイを手放さないのも、あれにしかない素晴らしい魅力があるのかもしれない…って急に連想できてしまって。

ビジネス女性装の魅力として語られがちな身体にフィットするラインやらハイヒールと美脚って、

「ビジネス装としてじゃなくてセクシーだね!って思っての魅力って意味でしょう?

だもんね…。

そういえばないよね、ビジネス女性装のネクタイ、あるいはそれと対をなせるような強力な存在。

スーツとネクタイの色はとても大事だって言うものなあ…。

【私はスカーフだと思うんだよなあ】

っていうね、興味深い指摘から色々考えて私は

「ネクタイと対をなせそうなセクシーではない魅力を持ってるのって、スカーフじゃない?」

と思った。

スカーフを全面出しできるのは女性装ならではな気がする。

もしかして調べたら差別的な歴史があるのかもしれないけど…。

CAさんも銀行員さんも携帯ショップの女性スタッフさんも、スカーフがポイントになる制服って素敵だと私は感じます

女性装にもっとネクタイを!でも良いし、スカーフ大活用!でも良いから、なんかね、あの目を引くかっこよさがあるといいよね。

セクシーやキュートといった女体としての装飾じゃない魅力ポイントになってほしい。

たかが衣装、されど衣装。

衣装は歴史すら変えるわけだから、一個人の人生なんてもっと劇的に変えちゃう気がします。

あー、スカーフ欲しくなってきた(笑)。







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