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広告にめがくらんだ new
Amazon 連載 8
広告収入はサイドビジネス
――と書かれています。ここに広告収
入を事業目的とすることは書かれてい
ません。あくまでもサイドビジネスな
のです。
リテールメディアは確かにAmazonに
おける重要な収益源となりました。し
かし、それが本業の価値を毀損するよ
うでは本末転倒です。Amazonは今一
度、自社のミッションを見つめ直す時
期に来ているのではないでしょうか。
短期的な広告収入と引き換えに、長期
的な顧客と任天堂のような優良なブラ
ンドパートナーの信頼を失うことの代
償は計り知れません。任天堂との一件
は、その警鐘と捉えるべきでしょう。
真の「顧客第一主義」とは、広告主で
はなく、購入者の利益を最優先するこ
とに他なりません。
(次回最終回です)
広告にめがくらんだ new
Amazon 連載 7
戻れるか
Amazonの公式サイトには今も次のよ
うに書かれています。
Amazonは4つの理念を指針としていま
す。お客様を起点にすること、創造へ
の情熱、優れた運営へのこだわり、
そして長期的な発想です。Amazonは、
地球上で最もお客様を大切にする企業、
そして地球上で最高の雇用主となり、
地球上で最も安全な職場を提供するこ
とを目指しています。
この言葉の後に、それを実現するサ
ービスとして、
カスタマーレビュー、1-Click注文、パ
ーソナライズされたおすすめ商品機能、
Amazonプライム、フルフィルメント
by Amazon(FBA)、アマゾン ウェブ
サービス(AWS)、Kindle ダイレクト
・パブリッシング、Kindle、Career
Choice、Fire タブレット、Fire TV、
Amazon Echo、Alexa、Just Walk Out
technology、Amazon Studios、The
Climate Pledgeなどは、Amazonが先
駆けて提供している商品やサービス、
取り組みです。
(次回に続く)
広告にめがくらんだ new
Amazon 連載 6
購買体験全体が劣化
Amazonにおける偽物や粗悪品の問題
は年々深刻化しています。高額な広告
料を支払えるセラーは、たとえ品質に
問題があっても簡単には排除されない
という不信感が広がっています。検索
結果の上位は広告枠で占められ、顧客
は本当に良い商品を見つけることが困
難になっています。レビューの信頼性
も揺らぎ、購買体験全体が劣化してい
るのです。
世界のリテールメディア広告市場の急
成長をAmazonが牽(けん)引してい
ることは間違いありません。しかし、
広告収入という甘い蜜に引き寄せられ、
ECプラットフォームとしての根幹が揺
らいでいる現状は、長期的な企業価値
を毀損する可能性があります。
かつてAmazonの成功を支えてきたのは、
豊富な品ぞろえと信頼できる購買体験
でした。任天堂のような一流ブランド
が離反する事態は、この問題の深刻さ
を物語っています。
(次回に続く)
広告にめがくらんだ new
Amazon 連載 5
ECプラットフォームとして最も基
本的な商慣行が疎かになる可能性
米国のeコマース市場の約40%を支配
するAmazonは、実際の購買データに
基づく精緻な広告ターゲティングが可
能で、これが他のプラットフォームに
はない強みとなっています。
しかし、その代償として何を失ってい
るのでしょうか。
任天堂の一件が示唆するのは、広告料
を支払うサードパーティセラーを優遇
するあまり、品質管理や価格統制とい
ったECプラットフォームとして最も基
本的な商慣行が疎かになっている可能
性です。
(次回に続く)
広告にめがくらんだ new
Amazon 連載 4
深刻なジレンマももたらす
なお、日本のリテールメディア広告市
場は4692億円(2024年。前年比125%
成長)です。EC事業者が4142億円、店
舗事業中心の小売業が550億円という
内訳です。 楽天などの大手ECプラット
フォームを除くと、まだまだサイドビ
ジネスとして成立するかどうかも不明
な規模感です。しかしながら、いずれ
売上高のなかで一定の無視できない規
模になる企業においては、Amazonと
同じジレンマが発生する可能性があり
ます。利益率の高い広告事業の成長は
Amazonを潤しました。しかしながら、
深刻なジレンマももたらしています。
もともとECプラットフォームとして「
地球上で最も顧客中心の企業」を標榜
してきた同社にとって、広告収入への
依存度が高まることは、その理念との
深刻な矛盾を生み出しています。
(次回に続く)
広告にめがくらんだ new
Amazon 連載 3
リテールメディア広告市場では75.2%
Amazonがいかにリテールメディア広
告市場を支配しているかを数字で見て
みましょう。
2023年の米国リテールメディア広告市
場では75.2%という圧倒的なシェアを
占め、2位のWalmart Connectの10倍の
規模を誇っています。まさにAmazon一
強です。
2025年のリテールメディア広告収入は
693億ドル(約1兆400億円)に達する見
込みです。わずか4年前の290億ドルから
2倍以上に成長したことになります。こ
の数字は、Amazonにとって広告事業が
もはや「サイドビジネス」ではなく、
収益の柱となっていることを示します。
一方、競合のWalmartの広告事業収入は
2024年度で約34億ドルにとどまり、そ
の差は歴然としています。
(次回に続く)
広告にめがくらんだ new
Amazon 連載 2
断絶が存在した
転売屋であるサードパーティセラー
が東南アジアなど他地域で安価に仕
入れた本物の任天堂製品を、物価が
高い米国のAmazon上で任天堂の希
望小売価格を無視して販売していた
ことにあります。メーカーが各市場
に合わせて緻密に構築したグローバ
ルな価格戦略を根底から覆し、ブラ
ンドイメージと正規販売網の利益を
損なうものです。両社は報道を否定
していますが、Switch 2がWalmart、
Target、Best Buyなど米国の主要小
売店で正式な発売日から抽選や先着
順で販売される中、Amazonだけが
1カ月以上も取り残され、7月8日に
ようやく「招待制」という名の厳格
な管理下での販売を余儀なくされま
した。この事実は、両社の間に深刻
な断絶があったことを雄弁に物語っ
ています。この一件が浮き彫りにし
た、Amazonが抱える深刻な構造的
問題を解説します。
(次回に続く)
広告にめがくらんだ new
Amazon 新連載 Ⅰ
任天堂Amazonへの供給停止
2025年6月、任天堂の新型ゲーム機
「Switch 2」が発売されました。発売
後わずか4日間で世界販売350万台と
大人気です。
しかし、この成功の裏で、世界最大
のネット通販であるAmazon米国サ
イトでは、正規の価格でその本体を
手にすることができませんでした。
この異例の事態は、単なる品薄や
流通の混乱では説明がつきません。
Bloomberg誌の報道によると、任天
堂は、東南アジアから安価に仕入れ
た製品を米国で転売するサードパー
ティセラーをAmazonが野放しにし
ていることに業を煮やし、同社への
製品供給を停止したとのことです。
問題の本質は、単なる高額転売と
は異なります。
郡司昇 ITmedia
(今回新連載です)
ディズニーともコラボ 中國 new
雑貨のIP戦略 最終回 11
日本の小売業の最高のお手本
長期的には、独自IPの開発も重要
です。MINISOはすでに「PENPEN
」や「Dundun Chicken」といった
オリジナルIPを育成しており、将
来的には100の中国発IPを世界に送
り出すことを目指しています。IPの
「利用者」からIPの「創造者」への
転換を狙っているのでしょう。
国内市場が縮小しつづける日本の小
売業にとって、海外進出は大きな課
題です。MINISOのIP戦略は、言語
や文化の壁を越えて生活者と感情的
なつながりを築く手法として、日本
企業にとって大いに参考になると考
えます。ローカルな強みを生かしな
がら、グローバルに通用する感情価
値を提供できるかどうかが、今後の
成否を分けることになるのです。
(今回最終回です)
ディズニーともコラボ 中國 new
雑貨のIP戦略 連載 10
IPとの連携による商品開発が注目
次に、商品カテゴリーの戦略的な組
み合わせです。
必需品で集客し、感情訴求商品で収
益性を高めるという仕組みは、多く
の業態で応用可能です。また、店舗
をただの販売場所ではなく、体験と
発見の場として設計し、ソーシャル
メディアでの拡散も意識した空間づ
くりも重要な視点です。
特に注目すべきは、IPとの連携によ
る商品開発です。
MINISOは単なる「ロゴ貼り付け」に
とどまらず、IPの物語性やキャラクタ
ーの個性を尊重した見た目が良く、
楽しく、実用的な商品を開発してい
ます。日本にも多くの魅力的なIPが
ありますが、それを日常の雑貨に展
開することで「楽しさ」を溶け込ま
せる可能性はまだまだ開拓の余地が
あります。
(次回最終回です)
ディズニーともコラボ 中國 new
雑貨のIP戦略 連載 9
日本の小売業が学ぶべき要素
MINISOのIP戦略には、日本の小売業
が学ぶべき要素が数多くあります。
まず、ブランドアイデンティティーの
明確化です。
自社の強みを再定義し、生活者との
感情的なつながりを構築できるスト
ーリーを持つことの重要性です。
(次回に続く)
ディズニーともコラボ 中國 new
雑貨のIP戦略 連載 8
海外の成長が牽引役
中国国内市場と海外市場の業績を比
較すると、海外が成長の牽引役であ
ることが明らかです。2024年度、中
国本土における収益は前年比10.9%
増だったのに対し、海外市場の収益
は41.9%増でした。2021年から2024
年にかけての海外収益の年平均成長
率は40%を超えています。
海外では中国国内よりも平均販売価
格が高いため、収益性も高くなって
います。この収益性の高い海外市場
へのシフトが、グループ全体の利益
率を押し上げる主要因です。
国内需要が縮小し、物価が世界的に
見て安くなっている日本の小売業が
学ぶべき大きなポイントです。
(次回に続く)
ディズニーともコラボ 中國 new
雑貨のIP戦略 連載 7
「必需品+選択的消費」
「興味主導の消費」は「必需品+選
択的消費」に分解できます。
日用必需品と、IPテーマの「非必需
品」を同じ買い物かごに入れること
で、顧客単価と全体の収益性を向上
させる狙いです。低価格の必需品で
集客し、店内で感情に訴えかけるIP
商品によって高単価商品をアップセ
ルする仕組みです。
MINISOの2024年度の収益は前年比
22.8%増の約170億人民元(約3400
億円。1人民元=20円計算)に達し、
粗利益率は過去最高の44.9%を記録
しました。CFOはこれをIP戦略と海
外市場の好業績によるものだと明言
しています。
(次回に続く)
ディズニーともコラボ 中國 new
雑貨のIP戦略 連載 6
「興味主導の消費」を提唱
MINISOの創業者である葉国富氏は
「興味主導の消費」という概念を提
唱しており、これが、同社のIP戦略
の根幹をなしています。未来の消費
は単なる機能的ニーズを満たすだけ
でなく、消費者の感情的ニーズや自
己表現欲求を満たすことによって動
かされるという考え方です。IPは、
特にZ世代との「感情的なつながり」
を築くための強力な媒体となり、商
品を購入する客を、ブランドと関係
性を築くユーザーへと転換させるこ
とを目指しています。現在、MINIS
Oは、ハリー・ポッターやディズニ
ー、サンリオ、バービー、ポケモン
など、150以上の世界的に著名なIP
と提携しています。IP商品の世界売
り上げは100億人民元を超え、年間
1万点以上の新IP商品が発売されて
います。
(次回に続く)
ディズニーともコラボ 中國 new
雑貨のIP戦略 連載 5
グローバルポップカルチャに転換
MINISOの成功の背景には、根本的な
ブランドアイデンティティーの大転
換があります。創業当初は日本人デ
ザイナーとの共同設立という位置付
けで「日本のデザイナーブランド」
を前面に押し出していましたが、20
22年8月には「誤ったブランドポジ
ショニング」について公式に謝罪し、
自社を「誇り高き中国ブランド」で
あると宣言しました。この転換は、「
国籍」というアイデンティティーから、
ディズニーやサンリオといった国境を
越えて普遍的に理解されるグローバル
なポップカルチャーに置き換えるとい
う戦略転換でした。2023年に正式発表
された「世界をリードするIPデザイン
リテールグループになる」という新た
な目標は、過去の論争を乗り越えて新
しいブランド物語を構築することに成
功したのです。
(次回に続く)
ディズニーともコラボ 中國 new
雑貨のIP戦略 連載 4
コンテンツ活用する取り組みの最高峰
この店舗を見て、1カ月ほどのポップア
ップショップをディズニーが納得する
クオリティーで出店できるMINISOの力
に驚きました。店舗をコンテンツ活用
する取り組みの最高峰だと思います。
映画の公開に合わせることは、ディズ
ニーにとっても宣伝効果が大きく、MI
NISOにとっては最もSNSで話題になり
やすいタイミングということで絶妙な
マーケティングです。
(次回に続く)
ディズニーともコラボ 中國 new
雑貨のIP戦略 連載 3
SNS映えを狙ったMINISOの戦略
筆者が訪れたシンガポール最大のショ
ッピングセンター「VivoCity」では、
ディズニー映画『リロ&スティッチ』
に登場するキャラクター「スティッチ
」をテーマにしたMINISOのポップア
ップストア「Stitch Fluffy Pop-up」が
開催されていました。映画の公開時期
に合わせた展開で、約1カ月限定とい
う短期出店ながら、店舗全体が“フォ
トスポット”としてデザインされてお
り、SNS映えを狙ったMINISOの戦略
が端的に表れていました。
ディズニーともコラボ 中國 new
雑貨のIP戦略 連載 2
相乗効果が鍵
MINISOは収益の90%がオフライン店
舗から生まれるため、店舗をソーシ
ャルメディアでのエンゲージメント
を生むランドマークとして設計する
ことが重要だと認識しています。
店舗での体験はブランドロイヤルテ
ィーを高める一方で、ソーシャルメ
ディアでのエンゲージメントはブラ
ンド認知度と来店客数を増加させま
す。オフラインとオンラインのチャ
ネルを組み合わせることによる相乗
効果が、ここで鍵となるのです。
この戦略を実現するため、さまざま
な店舗フォーマットを導入していま
す。これには、没入型でシナリオに
基づいたIP(※)コレクションスト
ア「MINISO LAND」や、Z世代をタ
ーゲットにした「MINISO FRIENDS」
などが含まれます。
(次回に続く)
※印IP:知的財産
ディズニーともコラボ 中國 new
雑貨のIP戦略 新連載 Ⅰ
「MINISO」(メイソウ)から学ぶ
以前も本連載で取り上げた、中国発の
雑貨チェーン「MINISO」(メイソウ)
が、世界各地で急速に存在感を高めて
います。
日本のユニクロに似た看板と、無印良
品とDAISOを組み合わせたような店舗
や商品デザインからスタートしたMIN
ISO。現在はブランドアイデンティティ
ーを大きく変化させ、グローバルに受
け入れられる戦略で、Z世代を始めとし
た多くの人々の心をつかんだ。
MINISOは、6月に筆者が視察に行った
シンガポールでも、さまざまなショッ
ピングセンターや空港にテナントとし
て出店していました。
MINISOを見ていると、店舗そのものを
「コンテンツ」であり、マーケティング
資産だと捉える巧みな戦略が浮かび上
がってきます。MINISOの戦略から、日
本の小売業はどのようなことが学び取
れるのか、解説していきます。
郡司昇 ITmedia
(今回新連載です)
「雪塩」サンド大ヒット 調味 new
料から菓子事業に 最終回 16
余裕のあるうちに次の勝負
「私たちは次々にシリーズ商品を
投入し、面で売っています。決し
て雪塩さんどだけで勝負している
わけではありません。ただ、雪塩
さんどという主力商品があるおか
げで、裾野が広がっているのは確
かです。そこを逃さず、2番手、3
番手を投入しています」
この戦略を、西里社長は相撲に例
える。土俵際まで行った時に初め
て頑張るのではなく、まだ余裕が
ある段階で次の勝負を仕掛け、複
数の主力商品を育てることが重要
だというのだ。その多角的な戦略
が奏功し、2025年3月期の売上高
は51億7000万円、営業利益率は3
4.5%という、同社初の驚異的な数
字を達成する見込みだ。上述した
ように、2024年には社名もパラダ
イスプランから宮古島の雪塩へと
変更し、新たなステージに向けて
歩みを進めている。
(今回最終回です)
「雪塩」サンド大ヒット 調味 new
料から菓子事業に 連載 15
一本足打法からの脱却
菓子事業にかじを切った際に西里
社長が意識したのは、「一本足打
法」からの脱却だった。沖縄の菓
子メーカーの中には、1つのヒッ
ト商品に依存する企業が少なくな
い。しかし、西里社長はそれを危
険視している。
「ちんすこうや紅いもタルトは人
気ですが、それぞれの会社は一本
足打法で、その次の商品がありま
せん。そうした状況を、他山の石
として見ていました」
その考え方から、雪塩さんどに続
くシリーズ商品として「雪塩ふぃ
なん」(フィナンシェ)や「雪塩ぱ
りん」(ゴーフレット)などを手掛
け、2025年夏にはこれまで限定販
売だった「雪塩らんぐ」(ラングド
シャ)もレギュラー化していくと
いう。さらに「雪塩ザクザク」と
名付けたポテトスナックも、新た
に発売したばかりだ。
(次回最終回です)
「雪塩」サンド大ヒット 調味 new
料から菓子事業に 連載 14
ブランドの視認性と認知度高める
もう1つは、2024年に那覇の中心
街である国際通りを、雪塩ブルー
に染める施策だ。
「国際通りを雪塩ブルーでジャック
するべく、商品を買っていない方
にも紙袋を配るようにしました。
そういった仕掛けや仕込みが、か
なり効いていると思います。今で
も飛行機に乗る時は、何人が袋を
持っているのか数えてしまいます」
こうしたビジュアル戦略は、紙袋
という観光客にとっての実用的な
価値と、広告効果という2つの側面
で成功を収めている。デザイナー
のアイデアと西里社長の決断力が、
ブランドの視認性と認知度を高め
ることに貢献しているのだ。
(次回に続く)
「雪塩」サンド大ヒット 調味 new
料から菓子事業に 連載 13
「雪塩さんどDEダンス」の企画
「紙袋も、売り場の展開も、商品
開発も、すべてブルーの色調で統
一しています。それにより、お客
さまには同じシリーズのお菓子と
して認知していただいています」
雪塩さんどでは、これまで実施し
てこなかった革新的なマーケティ
ング戦略も展開した。その1つが、
動画でのプロモーションだ。
「ただCMを作るのではなく、CM
に合わせて踊ってみたらおもしろ
いだろうと思い、『雪塩さんどDE
ダンス』という参加型の企画も実
施しました。このように、販売促
進のために、かなり新しいことに
取り組みました」と話す。
(次回に続く)
「雪塩」サンド大ヒット 調味 new
料から菓子事業に 連載 12
強烈な「雪塩ブルー」が相乗効果
雪塩さんどの成功には、ブランディ
ング戦略も大きく貢献している。特
徴的なのは、「雪塩ブルー」と呼ば
れる鮮やかな青のパッケージデザイ
ンだ。今でこそ定着したものの、デ
ザイナーから最初にデザイン案が上
がってきた時は、西里社長も腰を抜
かしたという。 「青は食べ物がおい
しそうに見えない色なので、お菓子
のイメージと結び付きづらいんです」
そのため、最初は社内でも「鮮やか
すぎるのでは」と賛否両論があった
という。しかし、この目を引くブル
ーのパッケージを前面に押し出した
ブランディングが、シリーズ商品全
体の相乗効果を生み出した。
(次回に続く)
「雪塩」サンド大ヒット 調味 new
料から菓子事業に 連載 11
国際通り本店の開店で人気爆発
しかし、「良い商品なので、コロナが
明ければ売れるだろう」と信じた。
そして、コロナ禍を乗り切ったタイ
ミングで、販売戦略を変えていった。
「引き合いが増えてきたので、卸売り
を始めました。2022年は、ドン・キ
ホーテのような、大量に仕入れて専
用コーナーを作ってくれる店舗で限
定的に販売していましたが、2023年
から本格的に販路を広げていきまし
た」また、コロナ禍で塩の専門店を
いくつか閉じるとともに、一部を業
態転換した。その1つが2023年10月
に開業した「雪塩さんど 国際通り本
店」だ。この専門ショップの開設が、
雪塩さんどの人気爆発のきっかけと
なった。現在は宮古空港や石垣島に
も雪塩さんどのショップを設けてい
る。
(次回に続く)
「雪塩」サンド大ヒット 調味 new
料から菓子事業に 連載 10
大勝負に 新型コロナで赤字に
そして2020年、大きな勝負に出よ
うとした矢先に、新型コロナウイ
ルスの感染拡大が起きた。
「商品の売れ行きは好調だったので、
2020年の夏に勝負をかけようとした
んです。ただ、ここで一気に攻めよ
うと思った時に、コロナが……。大
量の在庫を余らせて、大変な思いを
しました」ECなどでさばこうとした
ものの、限度があった。会社の業績
も赤字に転落した。
(次回に続く)
「雪塩」サンド大ヒット 調味 new
料から菓子事業に 連載 9
発売後、じわじわと人気を集める
わじわと人気を集めていった。当
時は直営店のみでの販売だったが、
気が付くとリピーターが増えてい
た。その頃の様子を、西里社長は
こう語る。
「発売直後は目立ちませんでしたが、
感触は良かったんです。そして、あ
る時からぐんぐん伸びました。特に
プロモーションしたわけでもないの
に、リピート買いが好調でした」西
里社長は、雪塩さんどの売れ方が、
2005年に発売したヒット商品「雪塩
ちんすこう」と似ていると感じてい
た。順調な滑り出しとなった雪塩さ
んどは、発売から約1年後には強い
手応えを感じるまでに成長していた。
(次回に続く)
「雪塩」サンド大ヒット 調味 new
料から菓子事業に 連載 8
食べなければわからない
雪塩さんどの開発には半年以上の
歳月をかけ、毎週のように試食。
具材を入れてみたり、食感を変え
てみたり、味を変えてみたりと、
工夫を重ねた。最終的なジャッジ
をするのは、西里社長自身だった。
「ゴーサインを出すには、当然食
べないとダメ。セブン-イレブン
の鈴木(敏文元会長兼CEO)さん
の話ではないですが、やはり食べ
なければ分からない。最終判断は、
他人に任せてはいけないと思って
います」
この哲学と徹底が、雪塩さんどを
はじめとする同社のヒット商品を
支えている。
(次回に続く)
「雪塩」サンド大ヒット 調味 new
料から菓子事業に 連載 7
余韻を塩で切るイメージ
では、雪塩サンドはどのような着想
から生まれたのだろうか。
サンドというアイデア自体は、以前
から菓子事業で協業していた寿製菓
(鳥取県米子市)からの提案だった。
しかし、味に関しては、西里社長の
こだわりが強く反映された。
「私たちが作る菓子には“理想の味”が
あります。ボリュームがあり、濃厚
かつリッチな味わいを持たせつつも、
後味はすっきりと切れのいい感じに。
一般的にリッチな味というのはすご
く余韻が残るのですが、それを塩で
切るイメージです」
そうした理想型があり、そこから逆
算して味を組み立てていったという。
「『売れるためには、こういう味でな
ければならない』というイメージが、
私たちにはある。その味に近くなる
と、売れるんです」と力を込める。
(次回に続く)
「雪塩」サンド大ヒット 調味 new
料から菓子事業に 連載 6
菓子事業の目玉として開発
「お菓子なら万国共通で、おいしけ
れば売れる。キャッチーなパッケ
ージで販売し、味が本当に納得いく
ものだったらいけるはず」
こうして同社は、菓子メーカーとし
ての新たな一面を強化する方向へと
かじを切ったのである。
もともと菓子も製造・販売していた
ものの、主力はあくまでも調味料と
しての雪塩だった。その中で、菓子
事業をブラッシュアップし、その目
玉として開発したのが、雪塩さんど
だった。
(次回に続く)
「雪塩」サンド大ヒット 調味 new
料から菓子事業に 連載 5
言葉がいらない商品・サービス
実は、雪塩さんどが誕生した背景
にあったのは、こうした既存ビジ
ネスの行き詰まり感だった。西里
社長は、「時代の変化とともに、
自宅で料理する人が減りました。
また、塩の専門店というのは、塩
の魅力を言語化してお客さまに伝
え、興味を持ってもらうというプ
ロセスが必要なため、日本人によ
る、日本人のための、日本のサー
ビスだったのです」と、当時の状
況を振り返る。
日本における塩のマーケット縮小
に加えて、海外からの観光客の増
加が新たな課題として浮かび上が
ってきた。
「せっかく塩の楽しさ、おもしろ
さを言語化して体系化していった
のに、言葉が通じない、食文化が
違う、そもそも興味を持ってない
というお客さんが増えていきまし
た」
試行錯誤の末、西里社長が行き着
いた答えが、「言葉がいらない商
品・サービス」開発の必要性だっ
た。
(次回に続く)
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