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スシロー「天ぷら定食店」 new
その深い狙い 連載 15
和食の原点
この業態の何よりの価値は、揚げた
ての天ぷらを一つ一つスタッフが置
いてくれることだと思う。そもそも
これは高級和食店のスタイルであり、
高級なカウンターのすし店や天ぷら
店に行くと、大将が握ったすしや揚
げたての天ぷらができ次第どんどん
目の前に置かれていく。「できたて
が目の前に提供される」は高級店の
一つの体験価値。その体験価値を庶
民的なかたちにデフォルメしたのが
「天ぷら定食 あおぞら」だ。もとも
と握り立てを目の前に置いていくす
しを作り置きしてレーンで回してい
るのが回転ずし。その回転ずしチェ
ーンが、逆にオールドスタイルの提
供方法に回帰しているというわけだ。
天丼では「揚げたてを一つひとつ置
いていく」という体験価値を提供で
きない。だからこそ「天ぷら定食」
というスタイルに落ち着いたのだろ
う。
(次回に続く)
スシロー「天ぷら定食店」 new
その深い狙い 連載 14
あえて手間かかる天ぷら 何故
昨今、外食では揚げ物の需要が高
まっている。共働き家庭が増える
など家事にかける時間が減る中で
面倒な揚げ物は敬遠される。から
あげやトンカツがブームになり、
それらの専門店が賑わったのも無
関係ではないだろう。また、スシ
ローは海鮮の仕入れに強みがある。
揚げ物と海鮮、その両方を生かす
天ぷらに行きついたのだろう。
同様に天ぷらでチェーン展開する
ブランドと言えばロイヤルグルー
プの「てんや」があるが、こちら
は天丼というスタイルを取ってい
る。チェーン展開するには一つの
ボウルに盛り付ける天丼のほうが
やりやすそうだが、スシローがあ
えてひと手間かかる「天ぷら定食」
にしたのはなぜだろうか。
(次回に続く)
スシロー「天ぷら定食店」 new
その深い狙い 連載 13
さまざまな新業態に挑戦してきた
「スシロー」が主力業態のFOOD &
LIFE COMPANIESだが、これまでも
さまざまな新業態に挑戦してきた。
2017年にサブマリン戦略から始め
たすし居酒屋の「杉玉」は現在全
国に約90店舗。ほかM&Aで傘下
に収めた「京樽」「回転寿司みさ
き」も展開中だ。今はないが、か
つては「ツマミグイ」や「七海の
幸 鮨陽」といった業態を手掛けて
いたこともあった。今後も同社が
永続的に成長するためには、スシ
ローブランドのみに頼らずシナジ
ーがある新業態の開発は必須だが、
今回は同社が「天ぷら定食」とい
うアイテムに目を付けた理由を考
察したい。
(次回に続く)
スシロー「天ぷら定食店」 new
その深い狙い 連載 12
また食べたい
定食の価格は1100~2000円。1000
円を超えておりお手頃とは言えない
かもしれないが、こうしたクオリテ
ィの天ぷら定食がこの値段で食べら
れると思うと大満足だ。筆者の個人
的意見になるが、本当においしい食
事とは後からじわじわ思い出すもの
だと思う。テレビ番組の食レポでレ
ポーターが食べた瞬間に目を見開き
「おいしい!」と大げさに騒ぐアレ
ではなく、食べた翌日ふとした瞬間
に「昨日食べたあれ、おいしかった
なぁ」と思うようなもの。「天ぷら
定食 あおぞら」の食事はまさに翌
日に「また食べたい」と思い出すも
のだった。
(次回に続く)
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その深い狙い 連載 11
計算されたかき揚げ
あえてかき揚げ定番のタマネギを
使っていないのは「水分量が多い
から」とのことで、確かにサクサ
クの食感の中にやわらかいタマネ
ギが入ると食感が不揃いになりか
ねない。かなり計算されたかき揚
げだった。揚げ油が果たす役割も
大きい。キャノーラ油をベースに
「太香胡麻油」をブレンドしたと
いう揚げ油は油切れもよく、余計
な油が垂れていない。嫌な油っこ
さは皆無、もたれずにいくらでも
食べられそうな軽い食べ心地だっ
た。店内を見渡すと60代や70代以
上と思われる高齢者も一定数いた
が、この軽さであれば彼ら彼女ら
も抵抗なく食べられる仕上がりだ
と思った。
(次回に続く)
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その深い狙い 連載 10
天ぷらは軽い食べ心地
同店の天ぷらは、概して軽い食べ
心地が特徴だ。ネタに衣がぴった
りと付いているが、それでいて衣
付きが薄いのが素晴らしい。この
薄い衣の食感は「サクサク」とい
うより「シャリシャリ」というべ
きか。確かに噛んだ瞬間はクリス
ピーな感じがあるものの、口の中
ではかなく溶けていく感じ。たま
に食べているうちにネタから衣が
はがれてしまう天ぷらがあるが、
そうしたことは一切なかった。ネ
タと衣の一体感が生み出すおいし
さをしっかり堪能できる。特にそ
れがよく表現されているのが「謹
製かき揚げ」だ。具材はゴボウ、
ニンジン、サクラエビ。ゴボウと
ニンジンは細切りにされており衣
をまとう面積が大きくなるが、衣
は薄いので口に入れたときのバラ
ンスが絶妙だ。かき揚げにありが
ちなダマはない。
(次回に続く)
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その深い狙い 連載 9
海鮮素材の質の高さとこだわり
海鮮は素材の質の高さにこだわりを
感じた。例えば同店イチオシの「生
アジ」。巷ではアジフライがちょっ
としたブームになっているが、「アジ
フライを超えたい」と開発された品
だそう。一度も冷凍されずに店舗に
届いた生のアジを揚げているとのこ
と。大量の食材を安定的に供給しな
ければならないチェーン店では、こ
の商品の実現は物流や管理で大変な
はずだ。食べてみると、パサつきが
ちな冷凍モノとは一線を画すふんわ
りとした食感に驚いた。さすがスシ
ローの仕入れ力だ。それ以外のネタ
も、下ごしらえに手がかかっている
ものが多い印象。例えばサツマイモ
は揚げる前に火を通しているのか、
ペーストのようなやわらかさになっ
ておりサクッとした衣との食感のコ
ントラストが際立つ。
(次回に続く)
スシロー「天ぷら定食店」 new
その深い狙い 連載 8
チェーン店らしからぬサービス
提供時、スタッフが「トウモロコシの天
ぷらはとても甘いので、私の個人的なお
すすめは、まずは天つゆをつけずそのま
ま食べることです」と声をかけてくれた。
チェーン店らしからぬサービスだが、マ
ニュアルっぽくないことを言うべしとい
うマニュアルがあるのかもしれない。

エビ、生アジ、イカ、半熟たまご、ナス、サツマイモ、
トウモロコシの天ぷらにごはんと味噌汁が付く(筆者撮影)
(次回に続く)
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その深い狙い 連載 7
最初に野菜系次に海鮮系を提供
客席にはあらかじめ天ぷらを置くため
のバットが置かれていた。しばらくす
るとスタッフが再度やってきて、揚げ
たての天ぷらをトングでこちらのバッ
トに一つずつ移してくれた。最初に野
菜の天ぷら数品が提供され、さらにも
う一度、時間差で海鮮系がやってきた。
計 2 回のサーブで注文内容のすべてが
出揃った。

(筆者撮影)

(筆者撮影)
(次回に続く)
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その深い狙い 連載 6
天ぷらは揚げたてを後から
同店の最大の特徴は、天ぷらの提供方
法だ。注文するとほどなくしてごはん
と味噌汁、天つゆ、大根おろしがのっ
たおぼんが提供された。天ぷらの皿に
は、肝心の天ぷらがのってない! 心
の清い人にしか見えない天ぷらなのか
…!?と一瞬焦ったが、スタッフによ
ると天ぷらは後から揚げたてを持って
くるとのことだ。


(筆者撮影)
(次回に続く)
スシロー「天ぷら定食店」 new
その深い狙い 連載 5
海鮮がメインは必然
メニューは天ぷら定食6種類に、追加で
頼める単品とドリンクがあるのみ。1号
店ということもあってか余計なサイド
メニューはなく絞られたラインナップ
だ。天ぷらのネタは海鮮が中心であと
は野菜が少々。鶏天のような肉の天ぷ
らはないのも潔い。そもそもこの業態
はスシローで培った仕入れ力を生かす
ためのものなので、海鮮がメインにな
るのは必然と言えるだろう。

(筆者撮影)
(次回に続く)
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その深い狙い 連載 4
天ぷらの提供方法にこだわりアリ


(次回に続く)
スシロー「天ぷら定食店」 new
その深い狙い 連載 3
店内カウンター席がメイン

30分ほどで案内された。店内はカウ
ンター席がメインで、カウンター内
に揚げ場がある。スタッフが天ぷら
を揚げている様子が見えるオープン
な造りでロードサイドにしてはちょ
っと珍しい構造だ。もちろん広めの
テーブル席もあり、子どものいる家
族連れなどはそちらに案内されてい
た。
(次回に続く)
スシロー「天ぷら定食店」 new
その深い狙い 連載 2
野田市の国道16号のロードサイド店
場所は千葉県野田市の国道16号線沿
い。同じ通りには多くのチェーン店
が並ぶ。Googleマップで確認すると
以前は「天下一品」だったようだ。
最寄り駅は東武鉄道野田線の梅郷駅
になるが、そこから徒歩で向かうの
はあまり現実的ではない。車で行く
ことが前提となっている、いわゆる
「ロードサイド」だ。筆者が訪れた
のはオープンから3日目の12時半ご
ろ。土曜とあってか店内は賑わって
おり、ウェイティングができていた。
客層は小さな子ども連れの家族から
中高年まで老若男女、幅広い。

(次回に続く)