昔話で「金の斧、銀の斧」というのがある。
お爺さんが自分の斧を池に落としてしまって困っていると、池の神様が出てきてこういう。
「おまえの落とした斧はこれか?」と金の斧を見せる。
お爺さんは違うと応える。
「ではこっちか?」と今度は銀の斧を見せる。
それも違うと応える。
「なら、こっちか?」と古びた鉄の斧を見せる。
お爺さんは、それが自分の斧です、と応えるのだった。
昔はこういう正直さが美徳とされたが、最近はそうでもないらしい。
金の斧を手に入れるチャンスを逃しているじゃないか、ウソでもいいからチャンスを掴み、そこから成功への道を切り開かなくてはならない、と。
たとえば、長谷川豊という人。
この人は自身のブログで、よくこんなことを書いている。
「ホント日本人って、バカ正直で、お人よしで、マヌケな人ばかりだよな、海外では勝つためならなんでもやるのが常識なのに。
日本人くらいだよ、バカみたいに”ボクの落としたのは鉄の斧です”なんていってるのは」、と。
つまり、正直に「鉄の斧」と答えてしまう人は世渡りがヘタで不器用な人、そんなんじゃグローバルな競争には勝てないんだ、ということだ。
その意見はたぶん、正しい。
釈然としないけど。
もう不器用な生き方じゃダメなのだろうか。
そんな不器用な男を象徴する人物が亡くなった。
高倉健さんだ。
映画の役ではなく、本当の高倉健さんがどういう人物なのかは知らない。
芸能界という魑魅魍魎の世界を生きてきて、晩年まで主役を張るスターだったということは、けっこう器用に世を渡ってきたのだろう。
以前、僕は高倉健さんについて、こんなことを書いた。
その後、僕はいろいろ健さんの映画をレンタルで借りてみてきた。
唐獅子牡丹シリーズなど任侠ものから、八甲田山、鉄道員、それからここ最近の追悼番組で「南極物語」「あなたへ」「幸福の黄色いハンカチ」も見た。
「男の中の男」という健さんが見たいなら、定番は任侠ものだろう。
健さんが演じるのは「俺はロクデナシだからこんな生き方しかできねえ、だからマジメに頑張ってる堅気さんに迷惑をかけちゃいけねえ」という善玉ヤクザ。
で、悪いほうのヤクザにいじめられてる庶民が、健さんのところへ助けを求める。
いろいろすったもんだのあげく、健さんはたった一人で日本刀片手に適地に乗り込む。
全体的に健さんのセリフは少ない。
セリフではなく、しぐさや表情で語るのだ。
その点「幸せの黄色いハンカチ」ではちょっと違う健さんがいる。
いちおう主役は健さんということになっているが、どちらかというと武田鉄矢が主役で、北海道を舞台にした青春映画の雰囲気がある。
失恋の痛みから立ち直るため、新車で赤いファミリアを買い、一人で北海道までナンパ旅行にいく武田鉄也。
ここでひっかけたのが桃井かおりで、彼女もやはり失恋の痛みから立ち直っていない。
そこへムショから出てきたばかりの健さんと出会う。
その後、3人で旅を続けるのだが皆が皆、ちょっとカッコ悪いのだ。
健さんは珍しく饒舌で、過去の話を延々と語る。
妻は今も自分を待っていてくれてるのだろうか?
いざとなると怖気づく健さん。
それまでカッコつけてた健さんは、ここにきて突然小さくなり、武田鉄也と桃井かおりに励まされる。
僕は20年くらい前に一度この映画を見たことがあったのだが、そのときは対して何も思わなかった。
だが、昨晩これを見て、味わい深いいい作品だと思った。
このたび、高倉健さんが亡くなったことで、不器用な男の時代が終わった気がする。
これからは長谷川のいう賢い人間でなければならないのだろうか?
健さんは亡くなっても彼が残した映画はこれからも存在し続けるわけで、それは不器用で正直な人間の居場所も残されていることだと思いたい。
お爺さんが自分の斧を池に落としてしまって困っていると、池の神様が出てきてこういう。
「おまえの落とした斧はこれか?」と金の斧を見せる。
お爺さんは違うと応える。
「ではこっちか?」と今度は銀の斧を見せる。
それも違うと応える。
「なら、こっちか?」と古びた鉄の斧を見せる。
お爺さんは、それが自分の斧です、と応えるのだった。
昔はこういう正直さが美徳とされたが、最近はそうでもないらしい。
金の斧を手に入れるチャンスを逃しているじゃないか、ウソでもいいからチャンスを掴み、そこから成功への道を切り開かなくてはならない、と。
たとえば、長谷川豊という人。
この人は自身のブログで、よくこんなことを書いている。
「ホント日本人って、バカ正直で、お人よしで、マヌケな人ばかりだよな、海外では勝つためならなんでもやるのが常識なのに。
日本人くらいだよ、バカみたいに”ボクの落としたのは鉄の斧です”なんていってるのは」、と。
つまり、正直に「鉄の斧」と答えてしまう人は世渡りがヘタで不器用な人、そんなんじゃグローバルな競争には勝てないんだ、ということだ。
その意見はたぶん、正しい。
釈然としないけど。
もう不器用な生き方じゃダメなのだろうか。
そんな不器用な男を象徴する人物が亡くなった。
高倉健さんだ。
映画の役ではなく、本当の高倉健さんがどういう人物なのかは知らない。
芸能界という魑魅魍魎の世界を生きてきて、晩年まで主役を張るスターだったということは、けっこう器用に世を渡ってきたのだろう。
以前、僕は高倉健さんについて、こんなことを書いた。
その後、僕はいろいろ健さんの映画をレンタルで借りてみてきた。
唐獅子牡丹シリーズなど任侠ものから、八甲田山、鉄道員、それからここ最近の追悼番組で「南極物語」「あなたへ」「幸福の黄色いハンカチ」も見た。
「男の中の男」という健さんが見たいなら、定番は任侠ものだろう。
健さんが演じるのは「俺はロクデナシだからこんな生き方しかできねえ、だからマジメに頑張ってる堅気さんに迷惑をかけちゃいけねえ」という善玉ヤクザ。
で、悪いほうのヤクザにいじめられてる庶民が、健さんのところへ助けを求める。
いろいろすったもんだのあげく、健さんはたった一人で日本刀片手に適地に乗り込む。
全体的に健さんのセリフは少ない。
セリフではなく、しぐさや表情で語るのだ。
その点「幸せの黄色いハンカチ」ではちょっと違う健さんがいる。
いちおう主役は健さんということになっているが、どちらかというと武田鉄矢が主役で、北海道を舞台にした青春映画の雰囲気がある。
失恋の痛みから立ち直るため、新車で赤いファミリアを買い、一人で北海道までナンパ旅行にいく武田鉄也。
ここでひっかけたのが桃井かおりで、彼女もやはり失恋の痛みから立ち直っていない。
そこへムショから出てきたばかりの健さんと出会う。
その後、3人で旅を続けるのだが皆が皆、ちょっとカッコ悪いのだ。
健さんは珍しく饒舌で、過去の話を延々と語る。
妻は今も自分を待っていてくれてるのだろうか?
いざとなると怖気づく健さん。
それまでカッコつけてた健さんは、ここにきて突然小さくなり、武田鉄也と桃井かおりに励まされる。
僕は20年くらい前に一度この映画を見たことがあったのだが、そのときは対して何も思わなかった。
だが、昨晩これを見て、味わい深いいい作品だと思った。
このたび、高倉健さんが亡くなったことで、不器用な男の時代が終わった気がする。
これからは長谷川のいう賢い人間でなければならないのだろうか?
健さんは亡くなっても彼が残した映画はこれからも存在し続けるわけで、それは不器用で正直な人間の居場所も残されていることだと思いたい。
健さん、私も名前はもちろん知っていますが、
生き様については、先日のNHKの仕事の流儀で
特集されて少しわかった程度です。
不器用という人は、本当に馬鹿正直な人もいるが、
昇進のため、金のため、愛のため?には器用になれそうな
気はするが、やはり自分に納得出来ないといった人もいる
でしょうね。
サラリーマンよりアーティストはその傾向があるような気もしますが。。。
ところで、日本シリーズで阪神の西岡が守備妨害ギリギリの
ところで走塁を試みたが、結果は守備妨害となったシーン
が話題になりましたが、
私もルールの範囲でのギリギリは結構やります(笑)。
ただ、ルールを破ってまで手に入れることは、
ルールを守っている人がいることが実現の前提なので、
その人が器用だとか、賢いだとかというとそういう次元
の問題ではないので、やりません。。(爆)
そういえば先週NHKで高倉健の番組やってましたね。
僕は2年前に高倉健のことをブログで書いてから、いろいろレンタルで映画作品を借りてみました。
不器用な生き方、というのは、映画やドラマではちょっとカッコいいように描かれますが、実際にはそんなことはないと思います。
職人気質な人など、今の世の中では生きにくいでしょうね。
ルールの範囲内でのギリギリはOKではないでしょうか。
ニュースキャスターの長谷川豊のブログで、韓国でのバドミントンの試合で自国に有利なように風が吹いていた、との件があります。
http://blog.livedoor.jp/hasegawa_yutaka/archives/40384169.html
それについて、「世界的には普通のこと、勝負なんだし」と書いてます。
これ、高倉健さん演じる「男の世界」じゃ、「自分が弱いから負けた。それだけのこと」というでしょうね。
いや、もう何回も観てる映画だけど、
泣けてしょうがなかったですね、健さんの演技はもちろんだけど、
今回観て思ったのは倍賞千恵子、桃井かおりの演技が凄くいいこと。武田鉄矢の演技はいまいちだなぁ(^^ゞ
山田洋次監督のカメラワークも抜群で、ほんとに名画だと思いました。
黄色いハンカチが風に舞うシーンでの紺碧な空の青さが印象的でした。
昭和の香りがする本当にいい映画でしたね。昨今は、SFX等に頼った技術よりの映画ばかりで自分は辟易してるのですが、こういう登場人物の内面を描く映画がもっと出てきて欲しいと思いますね。
By KOSS
KOSSさんは「幸せの黄色いハンカチ」、何度も観られてましたか。
僕は今回2回目なのですが、前回はまだまだ若造だったことと、真剣に見てなかったこともあって、普通程度だったのですが、今回みていい映画だと思いました。
この撮影時の健さんの年齢に近づいてきたからでしょうか。
この映画に出てくる昭和の風景は実にリアルで味がありますよね。
走ってるクルマもそうですし、食堂や旅館なんかも、ノスタルジーを感じます。
この映画の中心となる4人は、それぞれ過去を背負っていて、それがふとしたしぐさに滲み出ているところがいいです。
この映画の前に遺作となった「あなたへ」も観ましたが、こちらは僕にはまだちょっと早い作品でした。
内容はわかりますし、気持ちもわからないわけではないのですが、もっと年齢を重ねてからのほうが味がわかるように思いました。
先週、母のとこへ行ったら南極物語がかかっていて、珍しく母がテレビに釘付けになっていました。
残念ながら家事があり、後半しか見ていないのですが、感動しました。
任侠ものの映画はこの前、ニュースで流れていて知りました。
敵方へ乗り込んで行ってバッサバッサと切っていくシーン、迫真の演技ですよね。
寡黙で自分を出さない。
昭和男の男性像と言えますね。
カインさんのお母さんの年代だと、高倉健さんはヒーローでしょうね。
戦前までのヒーローといえば、軍人だったり政治家だったりしましたが、戦後の混乱期を過ぎて、新しい庶民のヒーローが求められていたところに登場したのが、健さんだったんだと思います。
映画だと、悪事を重ねるヤクザは、裏で大企業や政治家とつるんでたりするんです。
そんなヤツらに切り込んでいく健さんは、まさに庶民の味方であり、まばゆい光を放っていたのでしょう。
昨晩、喫茶店で読んだ週刊誌に健さんのことが載ってましたが、実際の彼は映画ほど寡黙ではなく、話好きで、イタズラ好きで、チョコレート好きで、女好きでもあったようです。
ただ、礼儀正しさとか、仕事に対する真剣な態度は、あのイメージのままだったようです。