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ドナルド・キーン 「二つの母国に生きて」

2016年06月16日 | 読書
  ドナルド・キーン 朝日文庫

ドナルド・キーンの名を知らない人はいないでしょう。
1922年ニューヨーク生まれなので現在94歳です。

1941年から日本語を学びはじめ、戦中は必要に応じた日本語の勉強、戦後は文学、歴史など本格的な日本研究を続け、2011年に日本国籍を取得した傑出した日本文学研究者です。

約30年前に書かれたエッセイをまとめたものです。
なぜ、どのように日本研究をしてきたのか、どのような人々と交流があったのかが詳しく述べられています。

読めば読むほど、氏の文学、芸術、自然、生活のすべてに対して神業ともいえる研究の深さが分かります。
「古事記」から昭和の文学まで、あらゆる書物を翻訳し、能、歌舞伎、狂言は自ら演じるほどに造詣が深いのです。

「わが友 三島由紀夫」「戦争犯罪を裁くことの意味」「刑死した人たちの声」「訳しがたいもの」「日本のマスコミ」「桜」などなどの項を興味深く読みました。

印象に残ったのは、氏が二つの母国として、日米を一方の側からでなく、公平たらんとして慎重に言葉を選び苦渋の中で書いていることです。

日本への情熱や愛情があるのは当然ですが、氏の誠実な人間性にとても惹かれました。
日本人が気づかなかった日本人を、温かい光を当てながら鏡に映すように見せてもらったような気がしました。

素晴らしい知識人を日本人として迎えることができたことを、嬉しく誇りに思いました。

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