知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した、いい論文を見つけた。
その論文は、柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)である。
その論稿を、分割してずっと紹介している。
その第20回目。
知的障がい者の公職選挙参加について、「滝乃川学園」では先進的な取り組みを行っている。
それが次のとおりである。
*************************************************
【引用始め】
柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より
Ⅳ.意思決定支援についての課題
3.公職選挙参加への意思決定支援
改正障害者基本法には28条「選挙等における配慮」が新設された。
わが国最初の知的障害者施設「滝乃川学園」では、
公職選挙に当たって知的障害者が自ら候補者を選んで投票するために、
選挙管理委員会と合意して、1970年代から次の様な取組を行ってきた。
① 公職選挙のたびに、候補者が施設内で知的障害者向けに演説を行う。
市長候補者は全員、市議会候補者も多数参加する。
都議会や国会議員候補者は同政党市議会議員が紹介する事が多い。
食べ物の好みなど質問は自由で、
聴衆は候補者の答え方や態度を重視するようである。
職員が自分の支持政党を表明することは禁止されている。
② 市内に住民票のある人は、行きたくない人を除いて、
重度の知的障害者も含めて全員が投票所に行く。
③ 投票所では、書ける人は自分で投票する。
④ 書けない人には市職員2名が立ち会う。
選挙公報を開いて、選ぶ候補者を本人に指さししてもらう。
広報を閉じ、もう一度開いて同様に指さしを求める。
2回とも同じ候補者を指させば、
立会人がその候補者名を代理記入して投票する。
誰も指さない時や、2回目に別の候補者を指す時には、
代理人が白紙を投票する(この投票方式を「指さし投票」という)。
この選挙権行使方法は、すでに40年近くも継続している。
最近では市内の他施設からも知的障害者が演説会に参加している。
改善の余地はあろうが、普及が望まれる。
【引用終わり】
*****************************************************
以上、「滝乃川学園」みたいに公職選挙においてこうした「意思決定支援」を実施しているところが他にあるのだろうか。
それも40年も前から行っている。
選挙管理委員会公認のもとに行われている。
選挙に行きたいという人は全員参加できる。
候補者氏名が書けなければ、指さしによって代理記入できる方法まで認められている。
候補者が施設内で演説できるようにしている。
そうしたことも認めてもらっているのだろう。
こうした手続きは簡単でなかったはずだ。
知的障がい者にも、選挙権を行使することの意義を、関係者に理解させたのはすごい。
かなりねばり強く必要性を訴えたに違いない。
こうした対応はまだまだ例外的である。
それが当たり前に行われることを訴えていく必要がある。
(ケー)
その論文は、柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)である。
その論稿を、分割してずっと紹介している。
その第20回目。
知的障がい者の公職選挙参加について、「滝乃川学園」では先進的な取り組みを行っている。
それが次のとおりである。
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【引用始め】
柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より
Ⅳ.意思決定支援についての課題
3.公職選挙参加への意思決定支援
改正障害者基本法には28条「選挙等における配慮」が新設された。
わが国最初の知的障害者施設「滝乃川学園」では、
公職選挙に当たって知的障害者が自ら候補者を選んで投票するために、
選挙管理委員会と合意して、1970年代から次の様な取組を行ってきた。
① 公職選挙のたびに、候補者が施設内で知的障害者向けに演説を行う。
市長候補者は全員、市議会候補者も多数参加する。
都議会や国会議員候補者は同政党市議会議員が紹介する事が多い。
食べ物の好みなど質問は自由で、
聴衆は候補者の答え方や態度を重視するようである。
職員が自分の支持政党を表明することは禁止されている。
② 市内に住民票のある人は、行きたくない人を除いて、
重度の知的障害者も含めて全員が投票所に行く。
③ 投票所では、書ける人は自分で投票する。
④ 書けない人には市職員2名が立ち会う。
選挙公報を開いて、選ぶ候補者を本人に指さししてもらう。
広報を閉じ、もう一度開いて同様に指さしを求める。
2回とも同じ候補者を指させば、
立会人がその候補者名を代理記入して投票する。
誰も指さない時や、2回目に別の候補者を指す時には、
代理人が白紙を投票する(この投票方式を「指さし投票」という)。
この選挙権行使方法は、すでに40年近くも継続している。
最近では市内の他施設からも知的障害者が演説会に参加している。
改善の余地はあろうが、普及が望まれる。
【引用終わり】
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以上、「滝乃川学園」みたいに公職選挙においてこうした「意思決定支援」を実施しているところが他にあるのだろうか。
それも40年も前から行っている。
選挙管理委員会公認のもとに行われている。
選挙に行きたいという人は全員参加できる。
候補者氏名が書けなければ、指さしによって代理記入できる方法まで認められている。
候補者が施設内で演説できるようにしている。
そうしたことも認めてもらっているのだろう。
こうした手続きは簡単でなかったはずだ。
知的障がい者にも、選挙権を行使することの意義を、関係者に理解させたのはすごい。
かなりねばり強く必要性を訴えたに違いない。
こうした対応はまだまだ例外的である。
それが当たり前に行われることを訴えていく必要がある。
(ケー)