知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した、いい論文を見つけた。
その論文は、柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)である。
その論稿を、分割してずっと紹介している。
その第21回目。
成年被後見人には選挙権・被選挙権が認められていない。
選挙権回復を求めて裁判所に提訴している。
そのことが、次に述べられている。
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【引用始め】
柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より
Ⅳ.意思決定支援についての課題
4.成年被後見人の選挙権裁判
わが国の公職選挙法では、
成年被後見人の選挙権・被選挙権が認めてられていない。
2011年2月に、
成年被後見人となったために選挙権を剥奪された知的障害のある女性が、
選挙権回復を求めて東京地方裁判所に提訴した。
その後、埼玉・札幌・京都の各地方裁判所にも、
同様の提訴が行われた。
これは知的障害者の権利に関わる重要な裁判である。
【引用終わり】
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以下は、後見選挙権訴訟弁護団の見解である。
全日本手をつなぐ育成会が、組織ぐるみで運動している内容でもある。
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【引用始め】
全日本手をつなぐ育成会権利擁護委員会委員・弁護士 関哉直人
「公職選挙法改正を求めて・・・後見選挙権訴訟弁護団から」(全日本手をつなぐ育成会刊「手をつなぐ」2011年4月号,No.662号,p.19)
選挙権をめぐる裁判としては、
在外邦人の選挙権を制限する法律を違憲とした2005年の最高裁判決が、
「選挙権の制限は原則許されず、やむを得ない事由がなければ制限できない」としています。
後見制度と選挙権を結びつける公職選挙法には「やむを得ない事由」は見出せません。 財産管理を主たる目的とする後見制度では、
選挙の能力は想定されていません。
また、後見制度は権利擁護のための制度であり、
その利用が権利侵害を犯すこと自体が制度の欠陥といえます。
そもそも選挙権は、能力によって制限されるものでしょうか。
国民一人ひとりに等しく与えられたもので、
行使するかどうかの自由が与えられているものではないでしょうか。
むしろ障害があるから制限するのではなく、
一人でも選挙権を行使できるような、
合理的配慮の保障を考えるべきではないでしょうか。
裁判では、育成会の運動と並行して、
成年被後見人の選挙権を制限する法律の改正を求めていきます。
【引用終わり】
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さらに、育成会の運動に弾みをつけるためにも、一致団結した取り組みをしていかなければならない。
以下のような育成会としての願いを社会に訴えることである。
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【引用始め】
「成年被後見人の選挙権剥奪と育成会運動」
全日本手をつなぐ育成会刊「手をつなぐ」2011年12月号、p.25
成年後見制度の大事なポイントは、本人の権利擁護のための制度だということです。
本来、障害のある人などの権利を守るための制度が、逆に本人の大切な権利を奪ってしまっているのです。
こうした矛盾により社会の一員として認められてこなかった人たちの痛みやつらさに、私たち親は鈍感であったのかもしれません。
権利に対して遠慮がちだったかもしれません。
この問題に取り組むことは、知的障害のある人があたりまえに持っている人権について考える機会になるはずです。
裁判という形で声をあげている方々、そして選挙権を奪われたままの数多くの方々のためにも、早期解決を目指さなければなりません。
【引用終わり】
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被後見人となった知的障がい者に対して、選挙するのは無理だからといって選挙権を与えない今の制度は権利侵害もはなはだしい。
適切な「意思決定支援」があれば、選挙権を行使できるはずだ。
知的障がい者が自ら生活向上の施策改善にかかわる上でも選挙権の行使は必要である。
「私たち抜きで私たちのことを決めないで」というピープルファースト運動を推進する上でも、この選挙権回復は大切である。
(ケー)
その論文は、柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)である。
その論稿を、分割してずっと紹介している。
その第21回目。
成年被後見人には選挙権・被選挙権が認められていない。
選挙権回復を求めて裁判所に提訴している。
そのことが、次に述べられている。
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【引用始め】
柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より
Ⅳ.意思決定支援についての課題
4.成年被後見人の選挙権裁判
わが国の公職選挙法では、
成年被後見人の選挙権・被選挙権が認めてられていない。
2011年2月に、
成年被後見人となったために選挙権を剥奪された知的障害のある女性が、
選挙権回復を求めて東京地方裁判所に提訴した。
その後、埼玉・札幌・京都の各地方裁判所にも、
同様の提訴が行われた。
これは知的障害者の権利に関わる重要な裁判である。
【引用終わり】
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以下は、後見選挙権訴訟弁護団の見解である。
全日本手をつなぐ育成会が、組織ぐるみで運動している内容でもある。
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【引用始め】
全日本手をつなぐ育成会権利擁護委員会委員・弁護士 関哉直人
「公職選挙法改正を求めて・・・後見選挙権訴訟弁護団から」(全日本手をつなぐ育成会刊「手をつなぐ」2011年4月号,No.662号,p.19)
選挙権をめぐる裁判としては、
在外邦人の選挙権を制限する法律を違憲とした2005年の最高裁判決が、
「選挙権の制限は原則許されず、やむを得ない事由がなければ制限できない」としています。
後見制度と選挙権を結びつける公職選挙法には「やむを得ない事由」は見出せません。 財産管理を主たる目的とする後見制度では、
選挙の能力は想定されていません。
また、後見制度は権利擁護のための制度であり、
その利用が権利侵害を犯すこと自体が制度の欠陥といえます。
そもそも選挙権は、能力によって制限されるものでしょうか。
国民一人ひとりに等しく与えられたもので、
行使するかどうかの自由が与えられているものではないでしょうか。
むしろ障害があるから制限するのではなく、
一人でも選挙権を行使できるような、
合理的配慮の保障を考えるべきではないでしょうか。
裁判では、育成会の運動と並行して、
成年被後見人の選挙権を制限する法律の改正を求めていきます。
【引用終わり】
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さらに、育成会の運動に弾みをつけるためにも、一致団結した取り組みをしていかなければならない。
以下のような育成会としての願いを社会に訴えることである。
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【引用始め】
「成年被後見人の選挙権剥奪と育成会運動」
全日本手をつなぐ育成会刊「手をつなぐ」2011年12月号、p.25
成年後見制度の大事なポイントは、本人の権利擁護のための制度だということです。
本来、障害のある人などの権利を守るための制度が、逆に本人の大切な権利を奪ってしまっているのです。
こうした矛盾により社会の一員として認められてこなかった人たちの痛みやつらさに、私たち親は鈍感であったのかもしれません。
権利に対して遠慮がちだったかもしれません。
この問題に取り組むことは、知的障害のある人があたりまえに持っている人権について考える機会になるはずです。
裁判という形で声をあげている方々、そして選挙権を奪われたままの数多くの方々のためにも、早期解決を目指さなければなりません。
【引用終わり】
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被後見人となった知的障がい者に対して、選挙するのは無理だからといって選挙権を与えない今の制度は権利侵害もはなはだしい。
適切な「意思決定支援」があれば、選挙権を行使できるはずだ。
知的障がい者が自ら生活向上の施策改善にかかわる上でも選挙権の行使は必要である。
「私たち抜きで私たちのことを決めないで」というピープルファースト運動を推進する上でも、この選挙権回復は大切である。
(ケー)