「心のバリアフリー化」を図るための研究報告書が発行された。
次のタイトル書である。
心のバリアフリー化に関する促進・啓発事業企画実行委員会 委員長 坂巻 熙(さかまき ひろむ)編「平成22年度心のバリアフリー化に関する促進・啓発事業」平成24(2012)年2月29日刊(社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会)
本誌の「第2章 座談会 心のバリアフリーに関するアンケート調査をめぐって」(p.63~p.107)から興味深い発言を引用する。
その第5回目。
阿部一彦氏(東北福祉大学総合福祉学部教授)は、東日本大震災の一般避難所を障がい者が自主退去した問題を、以下のように発言(p.77~p.78)している。
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【引用始め】(p.77~p.78)
阿部:
まず、ジロジロみる視線についてです。
日本障害フォーラム(JDF)の支援センターの支援員が一般避難所に行ったところ、障害がある人はほとんどいません。
結局は物理的なバリアというのも確かにある。
それよりも、心のバリア、意識上のバリアのために一般避難所を自主退去せざるを得なかった障害者の方々が数多くいた。
まだまだ障害の理解が進んでいない。
そして、意識上のバリアがあるということを如実に物語っている。
震災に関することでは、そのようなことが言える。
もう一つ、今、仮設住宅に住まわれている方が多い。
仮設住宅は、仙台市ではプレハブの仮設は1,500戸。
8,000戸以上は、実は見なし住宅と言って、民間住宅の借り上げ。
家賃補助をうけて仮設に住んでいる。
一般避難所に暮らしにくさを感じて、自主退去した方々はアパートを借りた方々です。
一般のアパートに住んでいるとつながりようがない。
その結果として、心のバリア、意識上のバリアを感じて孤立してしまう。
閉じこもってしまうことが、とても心配。
阪神淡路大震災では、合わせて900人ぐらいの方々が孤独死している。
今まさに心のバリア、意識上のバリアの問題をきちんと踏まえながら、被災地における支援活動を行う必要がある。
【引用終わり】
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東日本大震災においても、心のバリアが立ちはだかって、一般避難所から自主退去せざるを得なかった。
さらに今後は、見なし住宅で生活する障がい者が孤独死する心配を抱えている。
見なし住宅に住む障がい者にとって、心のバリアを乗りこえて周りの人たちと積極的につながることが難しい。
こうした課題解決のあり方は、急を要する。
関係者による良策が待たれる。
(ケー)