山形県手をつなぐ育成会 日々徒然なること

育成会の事、関係ないことも勝手につぶやきます

「くちづけ」劇団山形第75回公演=グループホームの悲劇

2011年11月21日 | 舞台
 劇団山形第75回公演「くちづけ」作/宅間孝行、演出/平野礼子
 11月19日(土)夜午後6時30分、山形中央公民館ホール(アズ七日町)

 上記公演を観る。
 知的障がい者が生活するグループホームがテーマ。
 演劇でこういうテーマを扱うんだと、まずは感心。
 障がい者の深刻な問題をよくここまで一般にもわかりやすく舞台化してくれたことに、関係者の一人として感謝することしきり。
 笑いのオブラートに包みながら、真実をえぐり出す。
 舞台が始まると引き込まれる。
 グループホームの日常がよく描きこまれている。
 「うーやん」(宇都宮くん)35歳。知的障害のある人。両親がいない。身よりは妹の智子一人。智子が毎週土曜日面会に来ることを楽しみにしている。うーやんは妹が結婚することを聞いて納得できない。しかし、妹は最終的に結婚できないことになってしまう。障がい者の兄がいるせい。妹の智子は、うーやんをひきとり二人暮らしすることを決断する。
 頼朝くんの家族は、1年以上グループホーム利用料を支払ってない。グループホーム「ひまわり荘」は経営的にひっ迫している。そのため、頼朝くんはは家に戻されることになる。頼朝くんが家に戻っても家族からはのけ者にされるだろうと、みんな心配している。
 知的障がいのあるマコは漫画家愛情いっぽんの一人娘。いっぽんの妻はマコの産後に亡くなりマコをずっと一人で育ててきた。愛情いっぽんは、マコを連れてグループホーム「ひまわり荘」の住み込み人となる。
 マコは過去に見知らぬ男から性的いたずらされて、男性に対してはとてもこわがって近づかない。しかし、「ひまわり荘」の人たちにはこわがるそぶりがない。父のいっぽんはそれをとても喜ぶ。うーやんはマコに恋心をもち、マコもそれを嫌がらない。
 愛情いっぽんとマコに平安がもたらされると思ったのも長続きしない。
 愛情いっぽんは肝臓ガンで余命3か月。マコの将来を考えて施設に入所させるのだが、結局マコはそこを嫌がって戻ってきてしまう。
 グループホーム「ひまわり荘」は経営が難しいこともあって、閉鎖。
 愛情いっぽんは、マコをこのまま残して死ねない。マコの首をしめてしまう。
 マコのことば、ゆっくりした口調で、「いっぽんといつまでもいっしょだよ。いっぽんのことだいすき」。もの悲しく響く。
 ♪「グッバイラブ」のバックミュージックが心に響く。

 うーやん「片山賢司」、マコ「平野礼子」、愛情いっぽん「五十嵐康博」、袴田さん「安部信子」好演。

 障がい者を取り巻く普遍的な問題が取り上げられている。
 障がい者に対する差別、障害者年金の不正使用、障がい者が加害者になったり被害者になることの問題、障がい者がホームレス生活に陥ってしまうこと、障害者のいる兄弟姉妹の問題、グループホーム経営の難しさ、障がい者にとって親亡き後の問題、といったことが具体的エピソードをまじえて展開される。

 グループホーム「ひまわり荘」にかかわる人たちの多くは、心優しき人たち。それがせめてもの慰め。しかし、現実の過酷さが悲劇を生み出す。
 
 育成会の会員には是非観てもらいたかった。
 再演があると良い。
 本当だと、こうした内容ということがわかっていたら、育成会の人たちに声かけたのになあ。

 東京セレソンデラックスが初演した『くちづけ』の舞台、DVD化されている。
 再放送される。
 2011年12月6日(火)14:00~16:30 WOWOWにて
 舞台で観るのとは相当に違うと思うが雰囲気伝わるはず。
 ぜひ、WOWOWで。