今回の旅行で印象に残ってることのひとつ。
アムステルダムの中心にダム広場というのがある。
曇り空。僕はベンチに座ってパンにハムとチーズを挟んでハイネケンで流し込んでいた。まだ朝の10時だけど、べつにいいのだ。
するとダム広場にダースベイダーがいた。ただ何もしないでミカン箱のような台の上に立っていた。
最初は気づかなかった。しかしあれはどう見てもダースベイダーだ。
何が起こるのだろう? ダースベイダーの大道芸なんて見たことないから、わくわくした。しかし、10分、20分、30分、なにも起こらない。
時たま、ダースベイダーのマスクをとって、とっちゃうのかよ!マスクの中を点検し(何が気になるんだ)また被る。なにもしない。フォースを出すわけでもなく、ジャグリングをするわけでもなく。
午前中だったので、観光客もそれほどいない。
ダム広場には僕とダースベイダー、それから鳩。鐘の音も時たま無情に響く。不思議な時間が流れる。
ようやく観光客の一行がやってきて、ダースベイダーを写真に撮る。すると、観光客は、足下のバケツにコインを入れる。なるほど。撮影→投げ銭。
んー。いいのだろうか、こんな簡単なことで。なにせ、やつは本物のダースベイダーではないのだ。みんなだまされるな。
僕の心の声が伝わったのか、観光客も馬鹿ではない、一瞥して去っていく人が大半だ。
イスラム教の女子グループが近づいていく。一緒に写真を撮ってくれませんか、と。イスラム女子は例の黒い衣装を着ている。目だけ出して。ダースベイダーの周りできゃぴきゃぴした黒い頭巾の女の子。もはやどっちがどっちなのかよくわからない。
しばらくすると、ダム広場に新たな展開が生じる。
ダースベイダーのすぐ近くに、新キャラがやってきたのだ。それは全身緑色のラメで覆われたド派手な男だ。手には三つ叉の槍を持っている。米米クラブのジェームス小野田のコスプレを想像してもらえればわかるだろうか。どうもモチーフは、神話に出てくるアポロンのようだ。
ダースベイダーと同じように、ミカン箱に立ち、写真を撮ったものに金を要求する。
なぜアポロン? あまりの唐突な世界観の変化に僕は度肝を抜かれる。アポロンとダースベイダー。もしかしたら2人は友達で、これからようやくなにかのショーが始まるのかもしれない。
もちろん、始まらない。二人とも、なにもしない。微妙な距離を保ち立っている。
写真を撮った観光客に、投げ銭を要求するだけだ。しかしいかんせん、アポロンは派手だ。ダースベイダーは有名かもしれないが、存在感では負けている。日が昇るにつれ、観光客が集まりだし、アポロンの方に人が集まってくる。
こうなってくると、僕としてはダースベイダーを応援したくなる。1時間も前からそこにいるのだ。新参者に食わす飯はない。
ついに僕も立ち上がり、桜としてダースベイダーの近くに行って、注意が集まるようにしてみる。ダースベイダーはやる気がないのか、マスクが蒸れるのか、すぐにマスクをとる。普通のオランダ人のおっさんの顔がそのたびに現れる。それだけはやめてほしい。マスクを取って点検している間は、注意がこないように僕も離れる。なんだかもう面倒くさい。
さらにこのあと、グラディエイターが現れ、ダム広場は、ますます混沌を深めていく。
この旅で、僕はいくつもの芝居を見たのだけど、うーん、案外この3人のこのなにもしないというショーが、一番記憶に残っている。
アムステルダムの中心にダム広場というのがある。
曇り空。僕はベンチに座ってパンにハムとチーズを挟んでハイネケンで流し込んでいた。まだ朝の10時だけど、べつにいいのだ。
するとダム広場にダースベイダーがいた。ただ何もしないでミカン箱のような台の上に立っていた。
最初は気づかなかった。しかしあれはどう見てもダースベイダーだ。
何が起こるのだろう? ダースベイダーの大道芸なんて見たことないから、わくわくした。しかし、10分、20分、30分、なにも起こらない。
時たま、ダースベイダーのマスクをとって、とっちゃうのかよ!マスクの中を点検し(何が気になるんだ)また被る。なにもしない。フォースを出すわけでもなく、ジャグリングをするわけでもなく。
午前中だったので、観光客もそれほどいない。
ダム広場には僕とダースベイダー、それから鳩。鐘の音も時たま無情に響く。不思議な時間が流れる。
ようやく観光客の一行がやってきて、ダースベイダーを写真に撮る。すると、観光客は、足下のバケツにコインを入れる。なるほど。撮影→投げ銭。
んー。いいのだろうか、こんな簡単なことで。なにせ、やつは本物のダースベイダーではないのだ。みんなだまされるな。
僕の心の声が伝わったのか、観光客も馬鹿ではない、一瞥して去っていく人が大半だ。
イスラム教の女子グループが近づいていく。一緒に写真を撮ってくれませんか、と。イスラム女子は例の黒い衣装を着ている。目だけ出して。ダースベイダーの周りできゃぴきゃぴした黒い頭巾の女の子。もはやどっちがどっちなのかよくわからない。
しばらくすると、ダム広場に新たな展開が生じる。
ダースベイダーのすぐ近くに、新キャラがやってきたのだ。それは全身緑色のラメで覆われたド派手な男だ。手には三つ叉の槍を持っている。米米クラブのジェームス小野田のコスプレを想像してもらえればわかるだろうか。どうもモチーフは、神話に出てくるアポロンのようだ。
ダースベイダーと同じように、ミカン箱に立ち、写真を撮ったものに金を要求する。
なぜアポロン? あまりの唐突な世界観の変化に僕は度肝を抜かれる。アポロンとダースベイダー。もしかしたら2人は友達で、これからようやくなにかのショーが始まるのかもしれない。
もちろん、始まらない。二人とも、なにもしない。微妙な距離を保ち立っている。
写真を撮った観光客に、投げ銭を要求するだけだ。しかしいかんせん、アポロンは派手だ。ダースベイダーは有名かもしれないが、存在感では負けている。日が昇るにつれ、観光客が集まりだし、アポロンの方に人が集まってくる。
こうなってくると、僕としてはダースベイダーを応援したくなる。1時間も前からそこにいるのだ。新参者に食わす飯はない。
ついに僕も立ち上がり、桜としてダースベイダーの近くに行って、注意が集まるようにしてみる。ダースベイダーはやる気がないのか、マスクが蒸れるのか、すぐにマスクをとる。普通のオランダ人のおっさんの顔がそのたびに現れる。それだけはやめてほしい。マスクを取って点検している間は、注意がこないように僕も離れる。なんだかもう面倒くさい。
さらにこのあと、グラディエイターが現れ、ダム広場は、ますます混沌を深めていく。
この旅で、僕はいくつもの芝居を見たのだけど、うーん、案外この3人のこのなにもしないというショーが、一番記憶に残っている。