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 私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

ベアリングのこと

2009-02-21 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険

 ベアリングとは軸受けのことですが、クルマに限らず何かしらの回転動作をする機械には欠かせない機構です。例えば、パソコン内部にには、ハードディスクという外部記憶装置がありますが、極めて平滑度の高い磁性を帯びた円盤(ディスク)が5千~7千rpm程度でモーター駆動で回転しています。そして、データを読み取るヘッドは、ディスクとの数ミクロンという極めて小さい間隔で非接触で動作しているのです。このためには、ディスクの平滑さも必用ですが、如何に軸振れなく回転させるかというベアリングの精度が強く求められるのだろうと想像されます。

 ベアリングには、ローラーやボールを使用した「転がり軸受け」と、平らな面の間の油膜を利用する「滑り軸受け」があり、滑り軸受けのことは、一般にベアリングと呼ぶよりも「メタル」と呼称する場合が多いと思います。この2つの方式のベアリングは、使用ヶ所が異なると共に、ベアリングの製造メーカーも明確に異なっているのが面白いところと感じます。

 先ず、転がり軸受けとしてのボールベアリングや、線接触として更に許容負荷を高めたローラーベアリングやスラスト加重も負荷できるテーパーローラーベアリング等があります。これらベアリングの耐久性等の信頼性を決める要素としては、材質や表面硬化という問題もありますが、ボールもしくはローラーの真球度や真円度が極めて高いことが要求されます。

 私はパチンコをしませんが、多分パチンコのボールと同径のベアリングボールを使用したら、100発100中とまでは行かなくとも、100発90中位の精度で、打撃強さが決まれば、同一軌道を描いて入ってしまうのではないかと思います。

 転がり軸受けとしてのベアリングの寿命ですが、設計許容値内で使用している限りですが、クルマの場合でいれば、軽く20万キロの走行を超えるものを持つと思います。しかし、衝突に類する様な強い入力を受けたり、何らかの原因でシール不良からグリスが流れ出したりしますと、ボールもしくはローラー表面に剥離状の摩耗(コロージョン)を生じ、急速に摩耗が進行して行きます。この場合、一気にベアリングが焼き付くと云うことはなく、摩耗に伴い真円度が低下した結果として、異音を伴い増すから、それなりの知識がある者であれば判るものです。

 しかし、ホイールベアリングの異音等は、タイヤのノイズの間違えやすいので注意が必要と思います。タイヤをローテーションして見るとか、一時的に他のタイヤと付け替えて、異音の様子を確認して見ることが必用でしょう。

 なお、ボールもしくはローラーベアリングの点検は、ベアリング単体状態にして、指で強く押し付けながら回転させた時、もし「ゴリ」付きを感じる様であれば、異常であると判るものです。昔の後輪リジットアクスル車では、リアシャフトのベアリングが単列のボールベアリングが使用されており、比較的壊れやすい箇所であたっとの思い出があります。ですが、今やこの様な箇所も、複列のボールベアリング(ダブル・アンギュラ・コンタクト・ベアリング)が普通ですので、故障するケースも少ないものと想像します。

 滑り軸受けとしての「メタル」ですが、クルマでもエンジン内部にしか使用されない少数派のベアリングと云えます。過去からメタルは使用されてきましたが、昔は信頼性に乏しく、高速もしくは高負荷エンジンでは、あえてヒルト接ぎ手等の高度な機械加工を使用して組立式クランクを使ってまで、メタルでなくローラーベアリングを使用していたことが、古い資料には記されています。

 しかし、今や超高速回転のレーシングエンジンから、船舶用の超大排気量エンジンまで、メタルを使用した滑り軸受けが、クランクおよびコンロッド部分に使用されています。これらメタルの信頼性が向上したのは、メタル自体の品質向上もありますが、メタルが接する軸面の表面精度の向上に負う所も大きいのだと思います。

 一般にメタルは裏金(鋼)の表面にメタル材(アルミが多い)をクラッド材として成型されています。更に、場合によりですが、メタル材の表面に比較的柔らかい錫等の合金をオーバーレイとして薄くコートしている場合があります。長距離路線を走る大型トラックや大型バスは、その延べ走行距離数が100万キロを優に越し、200万キロの達する様な場合すらあるそうです。この様なクルマのメタルを観察しても、メタルはほとんど摩耗しておらず、摩耗していたとしてもオーバーレイ部分までなんだそうです。

 この理由ですが、エンジン回転中は、クランクシャフトはメタル表面から僅かに浮き上がり、隙間が狭くなったクサビ状部分にエンジンオイルが入り込むことで、非接触により摩耗が防がれているのだそうです。従って、メタルが摩耗する瞬間は、停止したエンジンを始動して回転を始める一時と云うことになります。

 なお、シリンダーヘッドは現在ではアルミ製がほとんどですが、カムシャフト等の軸受け部分は、メタルを省略してしまっています。なお、クランク部分等と同様に、十分なオイルの供給が行われる様に油通路が確保なされています。

 この様な高信頼性を持ったメタルですが、適正な粘度のエンジンオイルが十分に該当部分に供給されて、初めてその能力が発揮されます。エンジンオイルを切らしてしまったり、長期間オイル交換しないためにスラッジが溜まり、オイルポンプの吸い込み口を塞いでしまい油圧が上がらず、必用な油量が得られない場合等、急激にメタル部分の温度は高まり、焼き付き等のトラブルを生じてしまうのです。

 若干話が変わりますが、ガソリンおよびディーゼルエンジンに装着されるターボチャージャーですが、その軸受け部は、フルフローティングベアリングという、一種のメタルが使用され、メタル自体も回転する機構が一般的となっています。10年近く前、このベアリングにボールベアリングを使用したものが採用されたとのニュースがありましたが、その後継続生産されることはなかった様です。最高20万rpmにも達する回転もさることながら、僅かなアンバランスで微かに震えるシャフトを、オイル上に浮かせて回転させた方が、メリットがあったということなのかなと思います。


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