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大型車の左後輪タイヤ脱落が多い件のおける、ある専門家と称する意見に異論

2022-01-29 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
大型車の左後輪タイヤ脱落が多い件のおける、ある専門家と称する意見に異論
 どうも、この記事(下記参照)にコメントしている事故鑑定ラプター・中島博史氏の説明だが懐疑的に感じる。
 まず、同氏が説明する「2010年にはトラックの輸出などのために、ナットが国際規格に変更された」とあるが、この解釈は疑問だ。トラックの輸出量が増えているとなんてことはない。乗用車は80年代の日米貿易摩擦を引き起こし、日本の乗用車メーカーは輸出自主規制すると共に現地工場の進出を進めた。しかし、日本の大トラメーカーが海外生産する程のことはない。

 そもそも、日本でのhがJISからISOにホイール規格を変更した最大要因は、日本が貿易における非関税障壁を取っていないことをデモンストレートしたいと云うことが一番ではなかろうかというのが私見だ。

 そういう、懐疑点から始まり、ボルトのネジ部の馴染みが云々(うんぬん)の話しになると、それはJISでもISOでも同じじゃないのかと突っ込みを入れざるを得られなくなる。

 ここからは、未だ結論は出せていないが、このところ起きた、渋川市そして長野市の左後輪の脱落事故だが、2本が同時に脱落していることから、共締め方式のISOだと判るが、もう一つの共通点に気が付きつつある。

 それは、後輪2軸車で、脱落したのは共に左後後輪だという共通点なのだ。考えてみれば、タイヤの取り付けネジの緩みは、初期トルクの管理が非常に大事だと理解するが、過積載など過重と共に、左右へのこじる負荷も大きな要素になる想像できる。その様な視点でISOでは、ボルト本数をJISの8本から10本に増やすと共にPDC(ピッチデットサークル:ボルト配列が描く円弧径)も大きくしているのだが・・・。

 後輪2軸の場合、見かけ上のホイールベースは後輪2軸の中央値を基準として表され、最小回転半径の計算にも使用されるのだが、小旋回になるほど大きなこじる力が働くことが理解できる。こんなことを考えると、後輪1軸車である、中型トラックとか、フルサイズ全長12mの大型バスでも、後輪2軸車は日本ではほぼないが、こういう脱落事故は起きているのだろうか。この辺りの、事故調査からの検討を真剣に考えてみる必用がありそうに感じる。

 トルク法は摩擦力の影響などから±30%程軸力が変動すするという意見があり、本来、こういう大負荷のボルトほど、トルク法ではなく軸力のバラツキの生じ難い回転角度法が推奨されるのだ。しかし、如何にせん、そのトルク値の大きさから角度法となると手作業となり、人力から考えて困難だろう。(下記ランクの過去記事:「ボルト締結のトルク管理は絶対か?」を参照)

 理想の姿を云えば、コストは要するが、大型車で、特に2本を共締めする長いサイズのボルトを優先して、ボルト内に、軸力を低下させないなるべく小さな穴を開け、歪みゲージセンサーを応用した軸力センサーを内蔵装備できればと感じる。これは、既に乗用車用として空気圧をセンシングしてリアルタイムに表示できる装備車もあるが、電波でデータをボデー側に伝えているのだが、後輪2軸それぞれ合計40本のホイールボルトにIDを割り当て(前輪も入れればさらに20本加算)、シリアル無線通信でCANバス上に乗せてモニタリングできる様にはできる。これで、大型車用インパクトレンチで締める際も、OBDスキャンテスターで、軸力値を確認しつつ納車を行う。車両の運行中も軸力値が一本でも下限を下回ったら、専用警告灯を点灯すると共に、ナビ画面等に、その位置を示せる様にする。なお、センサー用電力は、ホイールハブ外面に、ボタン電池を内蔵して、最低でも1年は持つ様にしつつ、電波出力値から、電池電位低下も警告できるシステムとする。
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【対象記事】
なぜタイヤ脱落『9割以上が左後輪』なのか…専門家が指摘する“日本の道路事情”と“ナットの締め方の変化”
https://news.yahoo.co.jp/articles/2ec2adf6e0ff1eadca4454a58c6f51f17d709330

↓ 以下は記事リンク切れに備え、専門家と称する意見のみ抜粋
■冬場に多発し近年増加傾向の大型車のタイヤ脱落事故 専門家に聞いた原因
 100件以上の交通事故鑑定を行ってきたラプターの中島博史所長に話を伺いました。
 まず、冬場に多い原因として「初期なじみ」が考えられるといいます。
 ネジはナットと山と谷がぴったり合わさることで締まりますが、サビや傷などによって表面にはわずかな凹凸が存在します。この凹凸が走行することで擦れて平らになり、わずかなスキマができてネジが緩みやすくなる現象を「初期なじみ」といいます。
 中島さんによると、冬を前にスタッドレスタイヤに交換し、その後「初期なじみ」によってタイヤが脱落しやすくなるのではないかと話しています。
 また、タイヤが脱落する場合は9割以上が左後輪で、これには「日本の道路事情」と「ナットの締め方の変化」が関係するのではないかと中島さんはみています。
 日本は左側通行で、左折する時は小回りになって、左後輪のタイヤがねじれて負荷が増えます。逆に右折する時は大回りでスピードが出るため、遠心力によって左後輪の負荷が増えます。
 道路は排水のために中央がやや高くなっていて、緩やかな左下がりの傾斜を走っている状態のため、左のタイヤへより負荷がかかります。こうしたダメージの蓄積で、脱落の可能性が高まってしまうと考えられるということです。
 2010年にはトラックの輸出などのために、ナットが国際規格に変更されました。
 左タイヤは、以前は左回しで締めていたものを、右回しで締めるものに変更。これにより、以前は走行中はナットが締まる方向へ力がかかっていましたが、変更後はナットが緩む方向へ力がかかり、脱落の可能性が高まると考えられるということです。
 中島さんは「因果関係はハッキリしていないが、この10年ほどの事故増加の原因になっているように見える」と話しています。
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【筆者・過去記事】
ボルト締結のトルク管理は絶対か?
2020-04-27 | 技術系情報
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/c92dfee080e5529ae45843062069aef2

#大型車左後輪脱落多発に専門家と称する意見への異論



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