私の思いと技術的覚え書き

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図書館探索の楽しみ(その3)

2011-07-09 | コラム
 ちょっと以前に「ちょっとHな図書館探索の楽しみ(その1、2)」を記しましたが、今回はその3として「マジメな図書館探索探索の楽しみ」として記してみます。
 今回、専門書コーナーで棚から抜き出した本は、題名「人間と放射線(医療用X線から原発まで)」(J.W.コフマン著・翻訳本)というA5サイズで厚さ5cm近く(800ページ弱)あろうかという分厚い本です。こんな小難しそうで、ましてや定価2万円也もする本を購入するのなら相当躊躇するはずですが、図書館では無料で借りられるのですから、ありがたいことです。なお、本のボリュームがあるから、価格が高いから本の価値が高いなんてことは思ってもいません。しかし、20年前に出版されたこの本の内容は、今の日本の原発関係、政治家、御用学者、大手ジャーナリズムなどの云っていることの欺瞞性だとか、近未来に起こるであろう、戦慄すべき現実を知るという意味において価値あるものと感じました。
 この本は1991年と20年前に著された本ですが、放射線が人体に与える影響を豊富な統計データと共に、比較的易しく(といっても難しく感じる部分もありますが)解説しています。なお、借りてから判ったことですが、日本語翻訳者10名の内7名が反原発学者として信頼感を感じている小出裕章氏ら京都大学原子炉実験所の方々であることを知りました。 さて、好きな歴史小説に比べると、流れる様に読む進むという訳にはいかず、ところどころ飛ばし読みしながらも、なんとか読了したというのが実感です。しかし、現在進行形で起きている事態や、過去に受けて来たX線検査などのことも含め、その危険性への理解が深まったというのが実感です。
 以下、私が大事なことだと感じた要点を列記してみます。①被曝線量と放射能の量の単位 この本では被曝線量をラド(吸収線量)とレム(線量当量)で記しています。最近の報道発表におけるSv(シーベルト)との対比は、1レム=0.01Sv(10mSv)となります。
 また、放射能の量はキューリーで表していますが、最近のBq(ベクレル)との対比は、1キューリー=370億Bq(37GBq)となります。②X線や放射線の種別 X線とガンマ線は、高エネルギー光子(電子)に分類されるもので類似性がある。非常に透過能力が高く、生体に影響を与えずただ透過するものもあるが、生体細胞内の原子同士の化学結合を切断する効果を持つ。 ベータ線とガンマ線は、粒子性(電子)の放射線である。透過能力は低いが、決してエネルギーがX線やガンマ線より低いと云うことではない。X線やガンマ線が生体に影響を与えずだだ通り抜ける場合があるが、ベータ線とアルファ線では、これらの軌跡が生体組織を通過すれば生物学的障害が確実に発生する。③X線、放射線との癌や白血病との因果関係。
 癌や白血病の原因は、X線や放射線だけではないが、X線や放射線との因果関係を否定する学者はいない。
 当書では、X線、放射線との関係を被曝量において比例関係にある(グラフA)と結論付けています。
 さらに、極低線量においては害はないと期待する意見や、低線量を何回かに分けて受ければ安全だとする意見があるが、その様な意見は認められるものではないと結論付けています。何れにせよ、どんな低線量であっても、応じた影響が統計上観察され、そこには安全性としての、しきい値はない(グラフCはない)としています。
 また、低線量被爆については、発癌率との関係を下に凸と(グラフC)の意見を唱える学者がいるが、統計上からはむしろ上に凸(グラフD)の傾向が伺えるのであるとしています。
④被爆時年齢の影響
 被爆時の年齢との発癌率を統計処理した結果のグラフを示すが、曲線aはデータ数が少なく保留するが可能性はあるとしています。学者の中には曲線bを相当とする意見があるが、少なくとも曲線cを現状では認めることができるとしています。
⑤被爆と発死との結論
 年齢、男女を平均化した、被爆における癌死の危険度は、268人・ラド(10mSv)と算出される。これは、対象者10,000人・ラドでは、10000・ラド×(1癌死/268人・ラド)であり、37.313件の癌死が発生することを意味する。
 これを、対象者が500万人と仮定し、被曝線量を1ラド(10mSv)とすれば、17,482件の癌死が増加することになり、さらに被曝線量が20mSvでは34,965件となるのです。

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