私の思いと技術的覚え書き

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アイシングとは・・・

2019-09-24 | 車両修理関連
 ここではエンジンの不具合現象として、希に発生することがあるアイシングについて私見として記す。なお、似た用語にアーシングなる用語があるが、まったく私見となるが正常な配線がなされた車両において、様々なアース回路をバッテリーマイナス端子に直接接続するものだが、こんな僅かな効果を過大な宣伝をしたり、それを信じて金を投じるユーザーがいるが、まったく気が知れない方々だと感じている。

 さて、Netなどで「アイシング」なる用語を検索すると、「キャブレターの・・・」とか「気化潜熱が・・・」とか記してあるだろう。では、現代のクルマ用として絶滅しキャブから燃料噴射になったことにおいて、「アイシング」も絶滅したのだろうかといえば、それは否なのだ。

 現代のEFIとかの燃料噴射の多くが、インテークマニホールドはサージタンク(もしくは給気コレクタ)という一定容量の集合部にまとめられ、そこに吸入空気量を制御するスロットルボデーが取り付く。そして、多くの場合、このスロットルボデーには、細い冷却水配管の入り出が備わり、冷却水の一部が循環する場合が多い。ところで、エンジンに装着される機器として、ターボチャージャーのタービンとコンプレッサー簡にある軸受け部にも、オイルの吸排循環パイプと共に冷却水の循環パイプ(ホース)が接続され循環する構造となっている。このターボでの冷却水循環は、軸受け部が高温になりオイルが炭化して潤滑不良になるのを防ぐために装備される。一方、スロットルボデーへの冷却水循環は、スロットルボデーが高温になる訳もあく、逆にスロットルボデーを温めてやる効果を期待してのものなのだ。

 燃料噴射のスロットルボデー(バルブ)は、燃料噴射(供給部)よりかなり上流にあり、燃料の気化潜熱による温度低下はあり得ない。しかし、アイドルとか比較的低開度での運転を継続すると、絞られた空気の流速により温度が低下し、大気湿度が高い場合など、スロットルバルブ周辺が凍結閉塞し、アイドルが停止してしまったり低速走行の運転が不安定になったりしてしまう現象たるアイシングが起こりえるのだ。

 このアイシングの実際は、直接視認することも難しく、それが原因かの判断は難しいと思える。しかし、その発生原理からして、例えキャブレターでも燃料噴射でも、スロットルが全開に近い高負荷時に生じる可能性はなく、スロットルが比較的小開度領域もしくはアイドル時に生じる現象だろうと想像している。

 と、こんなメカニズム解説を久しぶりに記すことになったのは、つい先日LPGガス式のマイクロバス・コースターで、走行終了後のアイドリングでエンストを生じたとの報告を聞いたことからなのだ。事後たる近日、さらっと点検してみたところ、そんな兆候は一切ないことから、当日の走行状態がかなり低負荷な走行状態(平坦路を3、40km/hでしばらく走り、アイドリングするに至っている状況であること、その時の気象条件が突然土砂降りの雨天となっていたことから、可能性が多いにあるだろうと記すものなのだ。

 なお、LPG式エンジンは昔ながらのベーパーライザー(液体を気体にして一定圧力にする装置)を使用しミキサーという機構で混合気を作るものと、現在ではLPG液体燃料を液体まま間接ポート噴射するものなどがあるが、何れもオットーサイクルエンジンであるので、吸入空気量がすなわちエンジン出力となるから、スロットルバルブを持ち、類似の現象が起きうるだろう。

 なお、燃焼方式がまったく別となる拡散燃焼(圧縮着火)となるディーゼルエンジンにおいては、そもそもスロットルバルブを持たないものも多いし、あってもスロットルペダルに連動して開くものではない。従って、スロットルバルブはあったとしても、アイドルと減速時を除けばほとんど全開しているものであり、スロットルバルブで生じる絞り効果はなく(だからスロットルによる給気損失がないのも燃費が良くなる理由)、アイシングは起こり得ない。


追記
 こんな覚え書きを記すため、適当なスロットルボデー写真をNet探索中に、写真2を見つけた。これは、3連スロットルだが、ソレックス(2連)やウェーバー(これはトリプルチョーク:3連もある)も含め、スロットルボデー部のバルブとシャフトを切り離す分解は、一般に御法度のことだ。そんな知識のある、プロ整備屋には、こういう作業は恥ずかしいのでやって欲しくないと思いあえて記す。

 その理由は、製造時に小開度領域の空気流量を精密に合わせ込んでスロットルバルブの固定ネジを固定してあり、これが狂うと小開度領域の吸気量がばらついてしまい、幾らキャブ間の連動バランス調整を行ってもムダなことになってしまうからなのだ。
 なお、さらに関連情報として記すが、昨今はBMWが先鞭を付けたバルブトロニックと同様の機構が国産車でも一部エンジンに採用されている。このバルブトロニックや類似の機構では、ストットルバルブの代わりに、バルブのリフト量で給気量を制御するが、小開度領域では特にバラツキがエンジンの振れなどに影響を与える。従前も同メカニカル解説で記したかもしれぬが、該当メーカーではバルブ開度のバラツキを±0.2mm以内に追い込んだ精度設計を行っているとのことであった。

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