私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

ライレーとちょっと塗装の話

2016-10-04 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 写真のクルマは、何年か前に比較的近くの美術館に日本刀の鑑賞に行った時、さりげなく見掛けたクルマだ。パッと見、英車だなとは思いつつも、名前が浮かんでこない。グリルエンブレムから「ライレー」と読めたが、帰宅してwik見ると、ライレーRMAという1950年代のクルマの様だ。写真では判り難いが、サイドウインドウから室内をチラと覗くと、センターピラーのインナーに木目のニス仕上げしたものが見える。つまり、このクルマのアッパーボデーの骨組みは木骨で、それに板金ボデーを被せてあるものと判った。

 さて、このクルマの塗装だが、ラッカー(正式には硝化綿ラッカー)で塗装されていると推定される。現代車は、通称焼き付け塗装と呼ぶ熱硬化型塗料(130℃、3、40分で乾燥)が金属部分には使用される。バンパーなど樹脂部分は、そんな温度に昇温したら変形するのでウレタン塗料(60℃、40分程度で乾燥)を使用する。だから、色味に違いが生じる要因ともなる。

 ラッカーと熱硬化型塗料もしくはウレタン塗料と比較すると、耐溶剤性、耐黄変性、耐候性、塗膜の硬さ(キズ付き難さ)など、すべての諸性能について、ラッカーが劣る。ウレタンについては、その設計(硬化剤の配合比など)によって差異はあるが、熱硬化型に準じるか、もしくは上回る性能を持ったものまでがある。と、ここまで記すと、安物ラッカーと思う方がほとんどだろう。しかし、BMW買収以前のロールスやVW買収以前のベントレーは、最終モデルまでラッカーで塗装されていたと聞く。また、旧車をレストアするマニアックなオーナーは、ラッカーのしっとりしたツヤ感が良いと、あえてラッカーによるリペイントを指定するというから驚く。

 今回の最期に、例えばトヨタのコンフォート(タクシー仕様)とセンチュリーにおいて、純黒色のカラーコード(202)は変わらず、塗料メーカーの納める塗料も同じものだ。しかし、実車の塗り肌を比べると、コンフォートのユズ肌状の凹凸(ラウンドと呼ぶ)が、センチュリーには見られず、深みのある漆黒が表現されている。この違いは、コンフォートの3C3B(3コート3ベーク:3回塗り、3回焼き付け)に対し、センチュリーでは、4C4Bもしくは5C5Bを施し、各ベーク後中研ぎ研磨(水研ぎサンディング研磨)を行いつつ塗り重ね、最終乾燥後にコンパウンドによるバフ磨き作業までを行っているからだ。

※塗装については、まだまだ記したい事柄があるが、今回はここまでとする。






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