私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

打ち砕かれ続ける安全神話

2011-03-30 | コラム
 思えば1995年1月に生じた阪神大震災の時も思ったのですが、大震災を目にすると、従来の安全神話が瓦解して行くことを感じます。それまでどんな強い地震でも壊れっこないと思っていた、高速道路・高架橋の馬鹿太い鉄筋コンクリートが柱が、根元付近で複合材の母材たるコンクリートが粉々に粉砕されました。そうなると当然垂直過重を支えきれないで柱は引き倒され鉄筋の束が露出しているという写真を見て驚愕しました。また、十数階建てのデパートやオフィスビルが、中間階で縦柱が座屈した様になってしまった姿も見ました。これは。縦柱で先の高架橋のコンクリート柱と同じ現象が起こったのでしょう。
 地震動は初期動の縦波であるP波と、その後に続く大きな横波であるS波に別れるそうです。このS波による前後、左右への反復する振動加速度(ガルと呼ぶ単位を用いるらしいです)により、構築物などは頭上のマス(重量)に反復加速度より生じた応力が破壊部位に集中した結果なのでしょう。
 その後、既存の高速道路や鉄道高架などのコンクリート製縦柱に鋼板を巻き付ける補強工事が狂った様に進められました。しかし、次に起こるであろう大地震に耐えられるか・・・保証の限りでないでしょう。あの阪神大震災で、引き倒された高速道路・高架橋の姿は、それまで壊れないと信じていた巨大建築物の安全神話を見事に吹き飛ばしたと感じます。
 そして、今次の東北巨大震災と広範囲への巨大津波の来襲です。直撃の受けた町の姿は、まるで血も涙もない広島の原爆投下の跡とか、とんでもない絨毯爆撃をうけた東京大空襲の跡の如きです。恐るべき津波の破壊力を見せつけられたと思います。さらに、この津波はもっともっと恐ろしい災厄を誘発したのでした。
 我が国は地震の多い国ですから、ある程度大きな地震が来る都度、震源地に近い原発は自動停止しました(ですから安全です)と報じられ、安堵していたと思います。でも、今更知る原子炉の停止とは、核連鎖反応が停止した状態であって、クルマのエンジンに例えればアイドリング状態みたいなものと感じます。しかし、その停止状態でも発熱は大きなもので、冷却水の循環を数年は続けない限り炉内温度は上昇を続け、燃料のウラン(融点は約2200度もある!)さえ溶かし、炉心溶融(メルトダウン)を起こすのだということを知り驚きます。
 2重、3重の放射線防御だから安全だとか云われてきた原発です。しかし、素人ながら思うのは、確かに原子炉や格納容器に地震の揺れや津波でも、本来は損傷は生じていなかった様です。しかし本体は確かに安全は保たれても、緊急電源だとか各ポンプ装置、そして配管などの付帯設備があまりにも脆弱かつ設置場所の考慮不足などの欠陥があったことは明かな様に感じます。
 こうして、安全だ、安全だを連呼してきた電力会社や政府など行政関係者や大学教授達のまやかしが露呈し、新たな安全神話が崩壊したと思います。



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