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大阪富田林・衝突飛翔事故

2023-02-09 | 事故と事件
大阪富田林・衝突飛翔事故
  1/29午後5時頃大阪の富田林市で生じたという事故だが、被疑車両が当該交差路で停止中の車両や縁石に衝突後、飛翔しその前方高さ数メートルはある矢印看板に接触などしておよそ35m先で落下したという事故が報じられている。



 この様な飛翔事故と云うと、2017/6/10に東名高速愛知県新城市付近で、下り線走行の乗用車が飛翔しつつ中央分離帯を乗り越えて、登り線走行の観光バスの前部ルーフ先端付近に衝突し両者は食い込んで容易に切り離すこともできないと云う特異な事故があったことが思い出される。(同事故関係記事リンクは下記に記載)

 本件、富田林事故について、Net上から種々写真などを収集しつつ、今回の事故再現レポートをまとめてみたい。

 まず、下記転載の報道に付属した動画を見るのだが、35m飛翔しつつ、交差点付近の縁石に強く衝突し、そこに斜め上向きの切削痕があることや、その前方に立つ、矢印表示の看板が大きく変形などしていることから被疑車両が飛翔したと云うことは判るが、どういう交差路などか周辺状況がまるで判らない。




➀事故場所の特定
 そこで、いろいろNet探索して、本件事故現場の交差路を特定できたのが添付写真だが、基本的にはT字交差路なのだが、ちょっと変わったローターリー(環状)交差点(もしくはラウンドアバウト)に近い交差点になっており、T字路だが中心部に円形の島が設置されている。このラウンドアバウトでは、交差点へ進入する場合に減速徐行は必用だが一時停止の規制はない。
 この交差路を、被疑車両(運転者死亡)は、Tの垂直方向から水平方向へ向かっていた。掲載したGoogleMAPの写真でも判るが、当該T字交差点の水平直線部は、その50m程先が幹線路の信号付き交差路となっており、多くの場合赤信号の車列が当該交差路辺りまで続く様な場所のことが判る。


➁事故状況
 ここで、事故直後に撮影したとみられる、交差路付近で右後部が損壊した白いSUV車とその右側の左側へ横転しかけている白い軽自動車、そしてラウンドアバウト島の縁石の強い衝突痕跡などを合わせて思考すると、どうやら被疑車両は停止し右後部破損車に被疑車の左前部を衝突させ、ほぼ同時に右前部はラウンドアバウト縁石に強く当てつつ、ここで乗り上げる様に飛翔が開始されたと想定できる。

 その後は、右前部を上に持ち上げる様な状態で被疑車の後方視で左に傾いた状態で、T字の信号待機の車列に突っ込み、軽自動車などを転覆させると共に被疑車車体上部は矢印看板に接触し損壊、ほぼ同時に看板下のガードレールを押し曲げ、その先の空き地へ飛翔しつつ着地したと云う状況なのではないだろうか。


➂被疑車の衝突速度の推定
 被疑車が飛翔している訳だが、この様な飛翔云う現象は、放物運動として知られ、世界最初に開発された、真空管を1万本とか使用したENIAC(エニアック)というコンピューターは、大砲の弾道計算を行うことを目的の一つとしていたそうだ。つまり、弾道計算は、初速とその射出角度の2つのパラメーター(実際には風速だとかその他要素も絡むがここでは省略)で、弾道計算式は成り立つ。

 こういう物理の計算の際、非常に役に立つ計算サイトがあり、時々利用しているが、以下のURLだ。
ke!san
https://keisan.casio.jp
 今回の場合、このサイトの放物運動(高度と距離からの計算)において、高度を3m、距離を35mと入力し計算ボタンを押すと、速度が85km/h、打ち出し角度が約20度と算出された。

 まず、角度については、縁石に残されている斜め上がりの切削痕の角度と比べても、さほど違和感はない。だが、速度については、射出後(飛翔開始前後)に何も衝突していない場合を前提としたもので、今回の場合は、縁石を切削した、衝突相手車右後部を損壊させた、看板をそして、ガードレールを曲損損壊させた、それぞれに吸収された運動エネルギーをどの程度見積かにおいて、この計算値に加算する必用があるだろう。それにより、被疑車が衝突前にどの程度の速度に達していたかが判ると云うことになる。

 被疑車にはエアバッグ装置があるので、EDR機構が装着されているので、少なくとも縁石衝突時点では起爆しており、これ以前5秒間の速度は連続記録なされている。それと、被疑車の走行路は長い直線路であり、最終的に制動しABS装置が機能した可能性もあり、必ずしも正しい実車速が記録されているとは限らないが、参考値とはなるだろう。

 ここでは、あまり緻密煩雑な考察を省略するが、先の計算値85km/hは、本来速の20%程度は減じられた結果と見積とすると、衝突前速度は106km/h(85/0.8)となる。

 しかし、現場は下り坂の長い直線路だが、100キロを超える速度でT字路交差点に向かい走り続けるとは、死亡した75才女性は、どういう理由で減速しなかったのだろうか。病変が起きたのか、はたまた減速しようとブレーキを踏む足の動きが、アクセルを踏むと云うペダル踏み間違いを起こしていた可能性も否定できない。この関係は、前記EDR装置の記録パラメーターに、ブレーキペダルON、OFFおよびアクセル開度0から100%という記録項目があるので、判明することとは思える。

【飛翔事故・参考記事】
昨年6月の東名空中衝突事故を回想する
2018-02-04 | 事故と事件
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/7cbbac1b1b4b5d997818048cb034a3e6

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突っ込んだ車が宙に… 35m先で止まる 女性死亡
テレ朝news 2023/01/30 19:40
動画:https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000285451.html

 29日午後5時半ごろ、大阪府富田林市の交差点で「事故で車が吹っ飛んでいった」と警察に通報がありました。
 警察によりますと、会社役員の北村慶子さん(75)が運転する乗用車が猛スピードで縁石に乗り上げて車が浮き上がり、信号待ちをしていた車2台に接触するなど、約35メートル先で止まったということです。
 この事故で北村さんが死亡し、接触した運転手など2人が軽傷です。
 警察が事故の詳しい状況を調べています。


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