私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

首都高速・タンクローリー横転炎上事故の顛末

2016-11-28 | 事故と事件
 H20年8月、首都高速5号池袋線の熊野町ジャンクションにおいて、右カーブを大幅な速度超過で走行した大型タンクローリー(20KL積)トレーラーが横転し、漏れ出たガソリン、軽油のほぼ全量が燃焼する単独車両事故+火災事故が生じた。その損害賠償に関わる民事訴訟が行われていたが、今年7月に約33億円弱の賠償責任との判決となった。そして、8月には、事故を起こした「多湖運輸(株)」に対する破産開始の判決もあった。

 この事故、当然対物賠償保険に加入しており、保険会社お得意の担当者在任期間における本社稟議の忌避を目的とした引き延ばしと、顧問弁護士の高訴額による訴訟意欲の増進により、訴訟案件になってるものと想像していたが、保険未加入だったのかもしれない。だとすれば、道路公団(というか国(=税金))は、ほとんど賠償金を回収しきれぬことだろう。(どうやら共済保険に加入し限度額10億は支払済らしい。)

 以下は、事故原因と損害額についての勝手な意見である。

■事故原因
 事故車はいわゆるセミトレーラータイプの牽引車であるが、このトレーラーはコンテナなどで内部不明から重心点が高く横転する事故が後を絶たない。また、今回の様な液体を運搬するローリー車においては、内部に前後、左右への流動をある程度押さえるバッフルを持つとはいうものの、コーナリングの遠心力による重心点の外側移動も併せて考慮しなければならないだろう。つまり、ローリングと積荷液体の遠心力による外側移動による更なるロール量の増加が急激に起きることを想像させる。

 そして、トレーラーでない単車であれば、一体となった車体だから後部荷台の挙動が掴みやすいが、トレーラーとトラクタはカプラー連結されており、そこでの自由度を持たせる構造上の問題から、限界に達したトレーラーのロールオーバーは、唐突にすらトラクタ側に伝えられ横転させるのではないか。(あくまで想像の話)

■損害額
 今回事故では、大量可燃物による高温(恐らく800°C以上)を、長時間(3時間以上)受けたことによる熱害により、鋼鉄製梁に熱変形を生じ、特注梁1スパンを作り替える工事を行っている。

 また、隣接マンションの壁も、かなりの焼損による熱害を受け修繕工事が行われた。

 たぶん、損害額の半分近くを占めたのは、2ヶ月を越えて通行止となった営業損害だろう。一節に寄れば首都高の日当たり売上は5千万程度あるらしいから、その一部としても60日で、10億を越えるのは容易だ。なお、鉄道における踏切事故や自殺においても、あまり公表されてはいないが、かなりの高額営業損害が遺族に請求されている実例がある様子だ。


首都高速・タンクローリー横転炎上事故の写真集

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。